【東方】<八雲梗>【九尾伝】   作:甘味料

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みなさんは小説を書くときどのように展開を考えていますか? 自分は結構最近まで何も考えずにパソコンの画面に向かっていましたwww。



第三刻:捜索届

 梗がパラノクスと戦闘を繰り広げていたころ、佐助は焔を抱えなるべく遠くへ避難していた。里から離れた木の生い茂る山までくると佐助は焔を下ろした。里の建物がジオラマのように小さく見える戦闘の様子を詳しく知ることはできないが里の一点からのろしのように上がる二人の妖気からどちらが優勢かぐらいはわかった。

「ちょっと里から離れすぎたかな? 梗になにかあってもこの子ひとりぐらいなら俺一人で守れるしね」

 腰に手をあて佐助が妖気の昇る場所を目を細くして眺めていると斜め下から自分にあてられている視線を感じた。その視線をたどると未だに自分も信頼しきってない目で見つめる焔がいた。

「あり? ひょっとして俺、まだ信用させてない?」

 

 そう尋ねると焔は小さく頷いた。ガッカリした様子で佐助が肩を落とした。

 

「どうしたら信用してくれるかな~? 梗の親友っつっても梗がこの子に俺の事を教えてくれるわけないしな~」

 自分の顎を撫でながら佐助が大きな独り言をつぶやく。とりあえず自分を警戒しながらも逃げようとはしないのでよしとした。

 

「にしても、みえね~な、何にも」

 

「今、梗が押してる」

 

 不意に焔から発せられた言葉に佐助は一瞬驚きすぐに聞き返す。

 

「え? なんでわかるの?」

「え? み、みえるから……?」

 

 焔が何か悪い事でもしたのかと聞きたそうな顔で答えてきた。そしてその回答に佐助はまた驚いた。ここからあの二人の戦闘の様子が見えるとなると相当凄い視力を持っている、現代の数値に直してみると3.5はくだらないといったところだろうか。

 

「はへ~凄いんだな。って確かに妖気の乱れ具合からも梗が優勢で間違いないだろう。このまま行けば梗のか……ち…………?」

 

 

 その時だった。ふたりの身を異変が襲ったのは。パラノクスが時を止めたのだ。体が動かなくなった佐助は焔のときとは違う驚きを隠せない。焔のほうに視線を落とすと焔も同様に固まっていた。

 

「ほ、焔ちゃん。だっけ? 喋れるかい?」

 

「う、うん」

 

 少し震えが混じった声で焔が答える。佐助は今、自分が出来る事を確認した。動く事は出来なくても考える事、思う事、そして話すことができるようだ。

 次に何故、自分達が動けないのかを調べようとしたが辺りを見渡して佐助は驚愕した。さっきまで聞こえていた風の音や葉っぱのこすれあう音が全く聞こえないのであった。どうやら自分達が動けないのではなく全ての物が動かない様子だった。

 

「なんだ、なんだ? 敵さんの能力か? おい、焔ちゃん。ふたりの様子は見えるかい?」

 

「うん。でも、二人とも全然動かない」

 

「やっぱりか」

 

 どうやら妖気の流れも完全に停止している。おそらくあの二人も何らかの会話をしているのだろう。とにかくこの状況を打開せねば。佐助がそう思った瞬間だった。

 

「「!?」」

 

 ふたりの体が勝手に動き出したのだ。自分の意思と関係なく動く自分の体、一見、意味の無いように見える動きだったが佐助は瞬時に何が起こっているのか理解した。

 

「時間が、巻き戻ってやがる!?」

 

 正直、佐助も自分の目と頭を疑った。だが、仮にもここは幻想郷だ日頃から自分の目や耳を疑う事しか起こらないのならこの時間が巻き戻るという一番あり得ない出来事のほうがむしろ合点があう。

 しかし、それが分かったところでどうしようもできない。焔を再び抱きかかえ後ろ向きに飛びながら戻る佐助は戻る最中、雲の流れとひとりの女性を見ていた。その女性はここに来る途中にも見ていた。彼女は向かって歩いてきた男にぶつかってしまい、手に持っていた花瓶を割ってしまたのだ。もし、彼女もこの時間の逆行に気付いているのなら男を避けられるはずだ。

 佐助の体がどんどん巻き戻り、梗のもとから飛び出した直後のところで巻き戻るのは止まった。体が自由に動くのを確認すると、佐助は焔を下ろし女性の元へ向かった。向かう途中に空を見上げたが同じ雲が流れ、風が吹き、同じ場所を小鳥が同じ鳴き声をさえずり飛んでいった。そして、女性のもとに辿り着くと丁度女性は男とぶつかっていた。

 

「あぶねえな! どこ見て歩いてやがる!」

「すいません、すいません!」

 

「まったく、同じ会話……」

 

 佐助はそれを確認すると、梗と焔の元へ向かった。そして、梗からパラノクスへの能力について説明を受けた。

 

 

「……やはり、時間を戻すというのか。とても真似できない芸当だな」

「ああ、にわかには信じられんが」

 

 ふたりとも、顎に手を当て悩んでいた。

 

「どうする? パラノクスとかいう野郎お前らを狙ってんだろ」

「ああ、だが、名前を知らされているだけで顔や妖力の質は知らないようだ。現に俺に気付かなかったわけだからな」

「なら、藍さんや紫さんに辿り着く前に」

 

「叩くしかない。協力を依頼できるか、佐助?」

 

 未だに晴れない表情と声色で梗が佐助に聞く。その様子をみて佐助は軽く笑った。

 

「親友の頼みをこの佐助さんが断るわけないだろ。安心しろ、名前と顔がわかってんだからこっちのもんだよ、一週間もかからんだろ、問題は梗、むしろお前のほうだ。一週間で完全復活は難しいだろ、何か手を考えねえと」

「お前の方こそ余計な心配はするな。安心しろ、既にあいつの攻略法はわかっている」

 

 梗はそう言い切ると、二人は少し沈黙したのち、顔を見合わせて笑った。

 

「じゃあ、頼んだぞ」

「ああ、いい話を期待してな」

 

 そう言って、佐助と梗と焔の二人は別れた。

 

 

 

 ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ●

 

 

 

「なるほど、そんな事が」

 

 そう言いながら藍は盤上の駒を一マス前に進めた。その向かいにはまだ左腕の動かない梗がいた。

 

「ええ、そうなんですよ、理由は聞けませんでしたが紫様の命を狙う輩が」

 

 藍の攻めに対応するように梗は自分の駒を斜め前に動かす。

 

「しかし、時間を戻すのか、厄介な能力だな」

「いえ、その点では既に策を練っていますので問題はその上で奴に勝てるかです」

「自信はあるのか」

 

 その問いに珍しく梗が沈黙する。正座をし、盤を挟んで迎え合う二人、そとでは真夏の暑い日差しが縁側に差し込み蝉の五月蝿い鳴き声が屋敷の中まで反響してきていた。

 

「ありますとも。なんせ私は藍様自慢の式ですから」

 

 梗が藍の瞳を見つめなおし白い歯を見せる。それにつられて藍の頬も軽く緩む。

 

「そうか、ならこの件は任せていいようだな。紫様には伝えておくかい?」

 

 そう言いながら藍は横目を使いながら自分の駒を握り梗の陣地に向け進めた。梗の陣地に入り込んだ駒が裏返り赤文字で記された駒に変わる。

 それに合わせて梗が少し考える。そして、自分の駒に手をかけ、動かそうとした時だった。部屋の中に一匹の白い蝶が入り込んできた。梗の背中から近づいてきたので先に気付いたのは藍だった。

 

「おや? 幽々子様の蝶……にてはシンプルというか、地味だな」

 

 その声に反応し振りかえる。それを見て梗は何がこれから起こるのか大体理解した。それにしても二人にこの蝶がただのモンシロチョウだと疑う選択肢は無いのだろうか。

 

「佐助から呼び出しがかかりました」

 梗が立ち上がり、蝶を手の甲に止まらせながら言った。

 

「行くのかい?」

「多分、すぐ戻ってくると思います。というより、陽が赤くなる前に帰ってこれると思います」

 

 穏やかな表情で梗が言う、それを見つめる藍にも心配の色はみられない。

 

「それでは行ってきます」

「そうか、……ところで梗?」

 

「わかってます。投了ですよ」

 

 手から飛び立った蝶を追い、梗が屋敷を出ていった。

 

 

 梗が追う蝶はそう速くない。それを梗は飛びながら追っていた。多く人達で賑わう午前中の里をゆっくりと梗は上空から見つめていた。

 里から少し離れ、針葉樹が生い茂る林をしばらく飛んでいるとだんだんと視界が開けていった。林を完全に抜けるとそこには幻想郷のなかでもそこだけ時間が止まったような昔ながらの小さな村が合った。

 蝉の声が一層強く響き渡り、澄んだ小川にはメダカが群れを成して泳いでいた。川を遠く眺めると少し先にはこの村の住人とみられる少数の人間達が田んぼで作業をしている真っ最中だった。

 白い蝶が飛んで行くのを追いかけながら梗はゆっくりと村の中の丘を登って行った。昇りきるとそこには一本の木がありその日影で気持ちよさそうに寝息を立てる佐助がいた。蝶が鼻に止まると佐助は目を覚ました。そして周りを見渡し梗を見つけると体を起こした。

 

「相変わらず白い蝶で呼び出しをしてるのか」

 

「へへへ、可愛いだろ、この蝶」

 

「お前って虫苦手じゃなかったか」

 

「苦手なのは、百足とか蜘蛛とかの害虫。基本的に俺達に害を与えない虫は大丈夫だよ」

 

「じゃあ、虫を操る妖には勝てそうにないな」

 

「絶対無理だね」

 そうやってふたりはまた、笑い声を上げた。

 

「んで? 今日で丁度一週間だったな。なにか情報はわかったか」

 

「ああ、完璧よ、ラリー・パラノクス。奴は里の住人に片っ端からお前らの情報を聞きあさっている。恐らく、もう何らかの情報を掴んだだろう。奴が里に現れるのは午の刻(12時)以降、そして日が沈み始めると何処かへ消えていく。どこに行くかは俺でもわからん」

 

「充分だ。感謝する」

 

「お安い御用ってことよ。さて、じゃあ何時仕掛けるかだ。向こうが俺らを知っている以上、真正面からてのは無理な話だ。奴は既にお前らの顔と名前を一致させてる筈だからうかつに時間を無駄にしてると向こうから仕掛けられる可能性がある。向こうの土俵に持っていかれる前に仕掛けないといけないぜ」

 

 佐助と梗が息がかかる距離で作戦を考えるその様は、さながら悪戯を企む子供のようにも見えた。

 

「奴は何時、何処に現れるかを絞れれば今日の内に仕掛けられる」

「そうか、じゃあ、奴がどこにいるかを調べさせるか」

 

 そう言って立ち上がると佐助は蝶に指をかけた。すると蝶は光に包まれ、鳥へと姿を変えた。

 

「んじゃ、仲間と一緒に例の奴の場所を探してくるんだ、見つけたらすぐに俺に知らせに来い」

 

 佐助が指示を出し終わると、鳥は鳴き声を発しながら空を駆けて行った。しばらくするとそれを追うように数十の鳥達が各々の鳴き声を上げ飛んでいった。

 

「便利なもんだな」

「なに、お前さんたちの使う式神の劣化みたいなもんだよ」

 

 そう言うと佐助はまた腰をおろし木にもたれかかった。

 

「そういや、場所を特定したあとはどうするんだ?」

「ああ、これは俺ひとりで実行する。ひとりの方が確率が高く応用が利くからな」

「何、何? 気になるんだけど」

 

 佐助が耳を近づけると、梗は佐助に耳打ちした。その説明は以外と長く数分続いた。

 

 

「へ~面白そうだな。そんでその間、俺は何をしてればいい?」

「パラノクス以外の敵を引きつけていてもらいたい。あれほどリスクがどうだの言っていた奴だ。伏兵を用意しているに違いない」

「てことは少なくともそいつらはパラノクスよりも弱いってことになるな」

「まあ、そういう事だな」

「ちっと面白味にかけるが今回は梗に譲ってやるとするか。てかお前、左腕大丈夫なのかよ」

「まだ、動かんがどうにかするさ」

 

 梗がそう言うと、まだ遠くからだが先ほど飛んでいった鳥達の鳴き声が聞こえてきた。ふたりは立ち上がると飛んでくる鳥の群れを見据えた。

 

「んじゃ、行くか」

「おう」

 

 




最近、どうも文字数を意識してしまうんですね。最低でも4000(改行や空白を除く)文字は突破しなきゃという思いが強くてたまに文字稼ぎをしようとすることがあります。今回も文字数が心配でしたがなんとか越えられました。次回からはしばらく文字に泣く事は無いと思います。
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