【東方】<八雲梗>【九尾伝】   作:甘味料

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任務遂行の為なら手段は選ばない、伐瑠羅を撃ち抜いたウィルディの行動は梗の逆鱗に触れた。生死超越の術で既に瀕死の梗はウィルディを倒せるのか……。



第七刻:駆け引き

 

 カチャリ

 

 ウィルディが拳銃の調子を確認し、二丁の拳銃をホルダーから抜き、片方の銃口を梗に向ける。

 生死超越の(すべ)を使用したために撃たれた穴という穴あから血が流れ出ている梗は虚ろな目つきで肩で息をしていた。

 リズムを取りながらウィルディの出をうかがう梗。それに応える形でウィルディが引き金を引いた。

 

 紙一重で銃弾を躱しながら梗が前に出る。

 もう片方ではなく同じ銃でウィルディが次の弾を放つ。

 引き金を引くよりも一瞬はやく切り替えし梗は横に回避する。

 梗が着地する足元を狙って三発目。

 

 それを完全に躱せなかったが足に掠らせる程度でウィルディを間合いに入れる。

 テイクバックをせずに梗がスピードを重視したショートパンチを放つ瞬間、殺気を感じた梗は後ろに飛んだ。

 

 距離を取った位置に着地し様子をうかがうと、先ほどまで自分が立っていたところから煙が上がっていた。

 

(間合いを詰めれば自然と視界は狭くなる。拳が届く距離ともなると相手の腰から下はよく見えない。おそらく、俺の死角からもう片方の銃で足を狙ったんだな)

 

 体をほぐし離れた距離を梗が詰める。梗の動きに反応する形でウィルディも引き金に手をかける。

 梗が一歩踏み込むごとにウィルディの集中力も高まる。

 蹴りが届くか届かないかの距離まで近づいたところで引き金が同時に引かれる。

 膝と顔面を狙った銃弾に対し梗は目の前の銃弾に意識を注いだ。

 頬をザックリと弾が切り裂き、もう片方の銃弾は右膝を完全に打ち抜く。

 痛みに顔を歪ませながらも梗は右足を軸にして左足で上段蹴りを放つ。

 それを、ウィルディは右腕でガードする。

 骨の軋む音が聞こえたがウィルディは梗の蹴りを受け止めたまま左の拳銃を梗に向ける。

 左足を受け止められ、右膝を打ち抜かれた梗は回避行動をとれず右腕で拳銃の銃口をふさぐ。

 

 空気を切り裂く銃声が響き渡り、ウィルディの拳銃から煙が辺り、しばらく二人の動きが止まる。

 

「………!!」

 

 ウィルディがもう片方の拳銃でトドメを刺そうとしたところを梗が左腕で応戦する。

 梗の手刀が下がり際のウィルディの頬に赤い線を描き。二人は再び対峙する。

 ウィルディに撃たれた梗の右膝からは動くたびに噴水のように血が飛び出、右腕に穿たれた穴から染み出した血が右腕の肘から先を真紅に染めていた。

 拳銃に銃弾をリロードしながらウィルディが苦笑いを浮かべた。

 

「あんた……固すぎでしょ」

 

 そう言われた梗が右腕の穴の反対側を叩いた。すると、コトン。という音と共に梗の腕からウィルディが放った銃弾が出てきた。

 <幻武(げんぶ)剛身弾刀(ごうしんだんとう)>。体を鋼のように硬化させた梗は何とか銃弾の貫通を免れたが、凶弾は梗の肉を抉りその身を真っ赤に染めていた。

 

「正直、今でも震えが止まらない……後、一呼吸遅れていたら、俺はお前に2回殺される所だったぜ」

 

 拳銃のグリップを確かめたウィルディはまたその銃口を梗に向けた。

 

「姑息な真似を……所詮は少し寿命を延ばしただけに過ぎないのに」

 

 ウィルディの殺気を受け止め、梗も構えを取る。

 

「そろそろ、体も温まってきたから本気で行くよ」

 

 その声と共に、ウィルディが今回初めて先手を打つ。

 梗の顔面を狙った銃弾が標的へ向けて一直線で飛んでいく。

 それを梗は余裕をもって躱し、それから前に出る。

 一定のリズムで確実に梗へめがけて銃弾を放つウィルディ、その銃弾を梗は一つずつ避けたり、払ったりしながら距離を詰めていく。

 息がかかるほどの距離に詰め寄った梗だったが、その瞬間、その眼前には銃口が構えられていた。

 ウィルディが引き金を引くのと異変を感じたのはほぼ同時だった。

 

「どこに消えたっ!?」

 

 梗を見失ったウィルディが辺りを見渡すと、真後ろに梗の姿が現れた。

 

「<幻武:輝白(きびゃく)>。気が乱れ、視野が狭くなれば、死角に入り込むのも容易くなる」

 

 瞬時に反応し相手の額に銃口を合わせたウィルディだったが、その拳銃は梗によって叩き落とされた。

 体勢が悪く、回避もできないウィルディに梗が妖気を溜めた拳を振りかぶる。

 そして、ウィルディの顔面へそれを放つ。

 

 バァァン!

 

「!?」

「……気が乱れ、視野が狭まっていたのはお互い様だったみたいね」

 

 梗の左膝が撃ち抜かれていた。

 ウィルディは右手に持っていた拳銃で梗のもう片方の膝を打ち抜いたのだ。

 その痛みによって気の乱れた梗の拳に溜められた妖気は空気中に拡散していってしまった。

 それでも、左腕の突きを止めなかった梗。

 だが、その突きは余裕をもってウィルディに躱された。

 

 距離を取ったウィルディが冷や汗を浮かべながらも余裕を持った笑みで梗を見据える。

 膝を庇い両足を引きずるような形で横に移動し、ウィルディとの間合いを測る梗。

 しっかり、穴の開いた膝を中心に梗の足は震えていた。

 

「よしよし……そろそろ大丈夫かな……」

「?」

 

 ウィルディは片方の拳銃の引き金を引いた。

 膝に走る激痛に耐え、体を倒すようにして回避した梗。だが。

 

 躱したはずの銃弾が空中で直角に軌道を変え、梗の腹を横から打ち抜いた。

 

「!? こいつ!」

 

 立て続けに銃弾を放つウィルディ、梗は胸の前で腕を交差し防御姿勢を取るが、銃弾は再び軌道を変え梗の膝に追い打ちをかけた。

 たまらずに膝から崩れ落ちる梗。

 

「貴様……弾丸の軌道を……」

 

「変えられるよ、これが、私の能力(スキル)。自分が撃った弾丸なら自在に操れるよ」

 

 膝を庇いながら脇腹を押さえ立ち上がる梗。

 

(やばいば……傷口全部から激痛が走ってやがる……いつ意識がぶっ飛んでもおかしかぁねぇ……対して、俺はあいつにろくに有効打を与えられてねえ……だが、ワンチャンス、隙をつければ………一撃だ……一撃で決める……)

 

「1……2……3………」

「?」

「……さて、何発撃ったか、私覚えてないな~」

 

「!」

 

 梗がウィルディの言っている意味を理解した瞬間だった。

 背中からひとつの弾丸が梗の腹部を貫いた。

 梗の口元に血が滴る。

 

「こいつ……!」

 

 体勢を持ちなおそうとする梗だったが、無数の弾丸が立て続けに背中から梗の体を貫いていく。

 梗の体を貫き、ウィルディの能力の干渉から外れた弾丸は力を失い、力なく地面に落ちていく。

 そして、弾丸に嵐を食らい、蜂の巣となった梗は遠のく意識を引き戻すのを諦め、前から地面に倒れ伏した。

 動かなくなった梗をウィルディはまた、レンズ越しに見ていた。

 その機械には心拍数を示す波線が流れていた。

 

「生きてる……今度こそやったと思ったけど気絶しただけか……」

 

 梗に叩かれた左でをさすりながらウィルディが倒れている梗に近づく。

 穴からあふれ出した血が水たまりを作り始める中、ウィルディは梗の近くに落ちている、はたきおとされた拳銃を拾い上げた。

 

「確実な道を」

 

 ウィルディは梗にではなく、宙へ向けて引き金を引く。

 銃口から勢いよく飛び出した弾丸はすぐに空中でピタリと止まり、ゆっくりと先端のむきを梗へと変えていった。

 もう一段、さらにもう一弾リロードも挟みウィルディが準備した銃弾は百近くに上り、その全てが梗の逃げ場を奪うようにその体を囲み照準を梗に合わせていた。

 ウィルディ自身も両手に持った拳銃を梗の後頭部に狙いを定めて構える。

 

 

   外れる  お前の弾丸は外れる  当たらないな

 

 

 ウィルディが引き金を引くのと同時に固定していた弾丸が全て梗へ向けて放たれる。

 爆音とともに砂煙が上がる。

 沈黙を守り、徐々にその砂煙が晴れていく。

 

「外した……?」

 

 ウィルディがゆっくり振り返ると肩で息をする梗の姿がいた。

 

「今、私の頭の中に変なイメージが飛んできたけど、作戦?」

 

「はぁ……はぁ……っ。まあな、それだけじゃないけどな……」

「?」

「意識が飛ぶ瞬間、俺は、自分の意識を精神の幻想(マインドイリュージョン)に逃がした。幻想(げんそう)(とき)で時間の流れを止め、止まった時間の中で必死に打開策を考えたさ……」

 

「どのくらい考えてたのかな?」

「半日ぐらいかな」

 

 苦笑いだった。

 

「そして、考えた作戦を実行したわけた。まず、精神の鎖(ソウル・チェイン)を現実のお前に使用した。そして、お前が銃弾を放つ瞬間、不思考の共有(シェア・ネガティブ)で俺に銃弾をよけられるイメージを見せた。そして、精神の鎖でお前がほんの一瞬、攻撃を躊躇させるように誘導し躊躇した瞬間にこの包囲網をかいくぐったってわけさ」

 

「それは大層なプランなことで……」

 

「躊躇いがなければ、後出しでもお前は俺を撃ち抜ける。だから、お前に一瞬でも隙を作らせる必要があった。本来なら、この調子で精神の鎖でお前の行動を操り有利に展開させるんだが……」

 

 そのタイミングだった。

 ウィルディの体の中からボロボロの鎖がこぼれ落ちた。錆びつき、ヒビが入った鎖は地面に落ちるやいなや、木端微塵に砕け散った。

 

「あいにく、ボロクソな俺の精神力で使用したもんだから、一瞬しか使い物にならなかったな……もう、能力を使用するのも難しいが……やってやるか!」

 

 枯れかけの妖気を全て解放し前に出る。

 ウィルディも今までにない集中力で銃弾を放つ。

 それを、梗は横に飛んで回避するが、弾丸も直角にカーブし梗を追う。

 着地した梗の膝が血を吹き悲鳴を上げる。

 自分を的確に追尾する弾丸を梗は空元気を振り絞りウィルディのほうへ走り回避する。

 それでも、弾丸は起動を変え、背後から梗を追う。

 目の前まで間合いを詰める梗だったが、ウィルディはしっかり自分の額に銃口を合わせてきた。

 横に回避しようとするが、膝が言うことを聞かない。

 

(避けれない)

 

 ウィルディが引き金を引く。

 背後からの弾丸と新たに放たれた弾丸が梗を追い詰める。

 

「おぉぉぉ!」

 

 梗は腰を落として、紙一重のところで弾丸を躱す。

 躱された二つの弾丸はぶつかり合い、相殺の形となった。

 

「ぐっ」

 

 ウィルディは右手の拳銃で梗の脳天を狙うが、撃ったばかりの右手は言うことを聞かない。

 常識外れの威力を持つ拳銃はウィルディでもそう容易に連発できない。

 

(この状況、左では一撃でこいつを仕留められない。でも、左しか使えない!)

 

 ウィルディが左の拳銃を構えると、梗も跳ね上がるような形で右の拳をウィルディめがけて放った。

 その梗めがけてウィルディも引き金を引く。

 

 銃声を掻い潜り、梗の拳がウィルディの右肩を捉えていた。

 ウィルディが放った弾丸は梗の脳天を貫くことはなく、首を掠る程度だった。

 

 梗が拳を振り抜くと、2発目の衝撃がウィルディの肩に追撃をかける。

 そして、立て続けに3発目、ウィルディの体が浮き上がる。そして。

 

「お前用の特別性だ!」

 

 4発目の衝撃がウィルディの脳天を打ち抜き彼女を岩壁に叩き付けた。

 

<幻武:四掌連(ししょうれん)

 

「まだ……だ」

 

 最後の力を振り絞り、まだ使える右手で拳銃を構える。

 そして、梗も前に出る。

 

 バァァン!!

 

 銃弾を躱し、梗の左拳がウィルディのみぞおちを打ち抜いた。

 

「<幻武〝奥義":虎波(こは)!!!」

 

 

 妖気が体を貫いたウィルディは力なくずり落ちた。

 




どうも、更新が遅くなりました^^;。
最近、モチベが上がらなくて、上がらなくて、無茶して3日で2本書いたりするからですね……。
こういう、差の激しい更新よりも、安定感のある連載ができるように頑張ります……。
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