超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第八十話 それは拭えぬ心の傷

「いーすん、インカムは常に起動させておくから情報は逐次伝えて!それと別の場所でも動きがないか確認をお願い!」

 

会議室の窓を開き、窓枠に足をかけながら女神化。そこで一度振り向き、わたしの…ううん、わたし達守護女神の行動に驚いているいーすんへと頼み事をして外へ。すぐさま翼を展開してわたしは空へ。

 

「ちょ、ちょっとネプテューヌさん!?皆さん!?」

「悪いわねいーすん!後出来ればネプギア達にわたし達が到着するまで耐えてって話しておいて!女神化したわたし達が言ったらむしろ慌てさせかねないわ!」

「そ、それは構いませんが…ではなくて!は、早まり過ぎですよ!落ち着いて下さい!」

「見くびらないで下さいまし、これは落ち着いているからこその行動ですわ!」

「正気故だ、イストワール!考えるのも話すのも移動しながらでも出来るんだからよ!」

 

窓から次々と飛び立ったわたし達四人は、インカム越しの制止を振り切りギョウカイ墓場へ進路を向ける。

何故わたし達がこんな行動に出たのか。…そんなのは言うまでもなく、ギョウカイ墓場へ威力偵察に向かったネプギア達から『規格外の敵と交戦状態になった』という通信を受けたから。しかも、その敵はわたし達が倒すのに相当苦労した敵、魔王ユニミテス並みの再生能力を持っているという。

 

「…でもまさか、そんな敵が現れるなんて……私達はあの時ユニミテスを倒しきれてなかったって事?」

「どうかしら…ってそうよ、こっちにはマジェコンヌがいるじゃない。マジェコンヌ、どうなの?」

「断言は出来ない…が、あの時魔王は人々に『女神に打ち倒された』と認識され消滅した筈だ。だからワレチューとやらに入り込んだ靄が残ったユニミテスそのもの、という事はまず無いだろう」

「な、何普通に返答してるのよ貴女は…お姉様達は病み上がりなのよ?」

「言って止まるような彼女達なら止めているさ。…言って止まるようなら、な」

 

マジェコンヌの含みある言い方に、わたし達は薄く笑みを浮かべる。…マジェコンヌの理解は、何度も敵として戦ってきた事からくるものかしら、ね。

それから暫くわたし達は、情報を聞きながら全速力で空を駆ける。わたし達を突き動かすのは、不安と恐怖。今度はネプギア達が負けてギョウカイ墓場へと囚われてしまうんじゃないかという怖さが、わたし達を向かわせていた。

 

「…くそっ、こんなに距離をもどかしく感じるのはマジェコンヌからルウィーを奪還する時以来だ…!」

「何でよりにもよって威力偵察に出たタイミングで…!」

 

歯嚙みをするブランとノワールの気持ちはよく分かる。だって、わたしも同意見だから。先程ベールは「落ち着いているからこその行動」と言っていたけど…正直、焦りの感情がわたし達にはずっとあって、それもまたわたし達を動かす要因だった。

 

(皆、もう少しだけ頑張って頂戴。わたし達が、すぐ行くから…!)

 

そんな切実な思いを胸に飛ぶ事数十分。ゲイムギョウ界全土の中でも異彩を放つギョウカイ墓場の外観を目視したわたし達は、速度はそのままに高度を落としていく。

 

「…どうする?このまま一気に行く?」

「えぇ…といきたいところですけど、もしこの事態が図られたものだったとすれば、他にも罠がある可能性は高いですわ」

「…なら、一度降りた方が安全だな」

 

わたしの問いかけに対するベールの言葉は、急を要する場においては一見悠長でいて…その実一番適切だと思える返答だった。わたし達は今急いでいるけど、それは一刻も早く増援に駆け付けたいからであって急ぐ事そのものが目的な訳じゃない。これで罠がなければタイムロスになるけれど…罠があってそれにかかってしまったとすれば、それは気を付けた事によるタイムロスなんて目じゃない位の損失を負ってしまう事は間違いないんだから、これこそ急がば回れよね。

 

「皆、ここまで来て言うのもアレだけど…わたし達は病み上がりなんだから、無茶は禁物よ?」

「無茶は禁物って…しょっちゅう無茶する貴女がそれを言うの?」

「無茶に関してはここにいる全員が他人の事を言えないと思いますけどね」

「ま、保身第一よりはいいだろ。わたし達は女神なんだからよ」

 

侵入口の前で一旦止まり、内部へと目を向けるわたし達。病み上がりだけど、躊躇いはない。躊躇ってる暇なんて、微塵もない。それに…ここには、ノワールとベールとブランがいる。守護女神として苦楽を共にして、捕まってる間も一緒に耐えてきた、心強い仲間がいる。だから、病み上がりだって事さえ忘れなければわたし達は大丈夫。

頷き合って、ギョウカイ墓場へと歩み出すわたし達。一歩出て、二歩出て、後一歩でギョウカイ墓場の内部に入るという距離になって……

 

 

 

 

 

 

 

 

────身体が、動かなくなった。

 

「…………え…?」

 

一瞬、何が起きているのか分からなくなる。本当に最初は全く訳が分からなくて、何故、と考えるのにすら数秒かかった。

数秒経って、動けない事をやっと理解したわたしはその理由を罠か敵の攻撃かと思った。…でも、外部から何か受けた感覚はない。

 

「……何、だよこれ…」

「どうして、身体が…」

 

隣から聞こえるブランとベールの声は、驚愕と焦燥の感情が織り混ざったものだった。その声で、わたしの視界に三人の背が映らない事で、動けないでいるのがわたしだけじゃないと分かった。

今もネプギア達は戦っているのに、ネプギア達を助ける為に来たのに、わたしの身体は動かない。わたしの脚は前へと進んでくれない。理由も分からずただ動けないでいる事に、わたしの中にあった焦りの感情が一気に加速していく。

 

「……っ…何で…何で動けない、のよ…!」

 

驚愕と焦燥に加えて、悔しさの思いも混じらせたノワールの声。呼吸を整えてみても、肩の力を抜いてみても、それでも身体は動いてくれない。このままでは助けにいけないと、いつまでわたし達は動けないのかと、動揺して、焦って、冷静さを失いそうになって……気付いた。わたしの身体が、震えている事に。

 

(……あ…あぁ……あぁぁぁあぁぁ……)

 

身体の震えに気付いた瞬間、一気に動けない事の原因が……恐怖が、襲ってきた。

それは、ギョウカイ墓場に幽閉されていた時の記憶。今でも夢に見る、悪夢のような日々の記憶。一瞬足りとも忘れていられない激痛。身動き一つ出来ず、苦しい状態が延々と続く辛さ。力の源であり信仰してくれている人達の思いの結晶であるシェアエナジーを、一方的に奪われる屈辱。気を抜けば死んでしまうという怖さ。いつ来るかどころか、無事かどうかすら定かではない味方への不安。そしてその全てが生み出した……絶望。解放されたのに、もう過去の事なのに……ここにきて、記憶が鮮明になって…わたしの心は、気付けば恐怖心に支配されていた。

 

「……い、や…」

 

いつしか身体の硬直は解けていたけど、わたしは前に進めない。震えで立っていられなくて、自分の肩を抱きながら膝をつく。助けに行かなきゃって思いはあるのに、ネプギア達に同じ思いをしてほしくないって気持ちがあるのに、怖くて怖くてたまらない。普段のわたしならそれを情けないと思う筈なのに、それでも助けたいって気持ちが勝つ筈なのに……今は、そんな思いすら芽生えない程ただただ怖かった。

 

(…ごめん、なさい…ごめんなさい、皆……)

 

心の中で戦っている皆へ謝りながら、わたしは強く肩を握り締める。……今のわたしは、逃げる事すら出来ないわたしは、こうして謝る事が精一杯だった。

 

 

 

 

「天舞参式・睡蓮ッ!」

 

空中で作り出した巨大な大剣を、同じく空中で掴んだ私はシェア推進で刀身を加速させながらワレチューの頭部へと振り下ろす。

 

「次!ロムちゃんラムちゃんお願いッ!」

「いくよロムちゃん!サンダーストーム!」

「うん…!ウインドストーム…!」

 

ワレチューの頭部を中程まで斬り裂いた大剣。続けて二人の魔法が両目を狙うように飛来し、頭部への連続攻撃でよろめかせる。これが普通のモンスターであればあまり直視したくない光景になっていただろうけど…巨大化したワレチューの頭から吹き出したのは闇色を放つ負のシェアエナジーだった。これまでの攻撃で薄々勘付いていた通り、やはり今のワレチューは巨大化したというより自分の姿を模したシェアエナジーを纏っているという感じらしい。

 

「もう一段…!ネプギア!ユニ!」

「はい!マルチプルビームランチャー!」

「吹き飛びなさいッ!エクスマルチブラスター!」

 

私が上空へ退避すると同時に、更に頭部へ二条のビームが撃ち込まれる。二人の通常射撃を大きく超える口径と出力を持った光芒は頭部に喰らい付き、抉り取らんとばかりに貫いて爆発を起こした。それを空中で、或いは地上で見据える私達。

 

「……う、ぅぅ…ぢゅうぅぅぅぅぅぅッ!!」

 

頭部が半壊した状態で後ろへ倒れ込んだワレチューは、一秒強の間止まっていた……が、猛々しい叫びを上げながらすぐに立ち上がった。その頭は、既に再生しつつある。

 

「そんな…女神五人の連続攻撃でも無意味なんて…」

「無意味なんて事はないでしょ。相手の許容範囲内ではあったんだろうけど…」

「どう、するの…?(おろおろ)」

 

距離を取り、ネプギア達に合流した私。四人は怖気付く事こそしていないものの、その再生力に狼狽し少なからず焦燥している様子だった。…でも、それは無理もない事。私だってユニミテスの事を知らなければ、同じように狼狽していただろうから。

 

(このまま力押しを続けてたら、向こうより先にこっちがガス欠になる、か…)

 

交代する形でRED達がワレチューの注意を引く中、私は考える。私は勿論、恐らくネプギア達もここまでの戦闘で使ったシェアエナジー量なんて総量からすれば誤差レベルだろうけど、教会(私は魔窟奥のあの部屋)から単位時間当たりで送られてくるシェアエナジー量を考えると、今の消費ペースで戦える時間はそう長くない。そしてじゃあ更に高火力にして短期決戦を図ればいいのかというと……それで倒せる保障はない。

 

「…ちょっと、ロムちゃんがきいてるんだから答えてよ。なにかさくはないの?」

「策、ね…今すぐ出来て且つ可能性がそれなりにある策を上げるなら…皆が時間を稼いでる中私が体内で出来る限りのシェア圧縮を行なって、その状態で接近して…」

『(接近・せっきん)して…?』

「…そのまま接触してシェアを全て解放すれば、流石に再生も出来ないレベルで粉々に出来るんじゃないかな?」

「それって……えぇ!?じ、自爆じゃないですか!だ、駄目ですよ!?そんな16号さんみたいな事しちゃ駄目ですからね!?」

「言ってみただけだよ、安心して。…けど、それ位の事をしないと確実に倒すのは難しいと思うよ。何せユニミテスの時は守護女神四人がかりでやっとこさだったんだから」

 

人数では今の方が多いけど、将来的にならともかく現段階じゃやっぱりまだ女神候補生の四人は守護女神の四人に劣っているし、RED達に女神クラスの火力を要求するとなると相当無理をしてもらわなくちゃいけなくなる。無理は禁物だって言われてるのに、仲間にそんな事をさせられる訳がない。

…と、そこで私は思い出した。イストワールさんがこの作戦に対し、一体なんと言っていたかを。

 

「……あのワレチューの強さは分かったし…威力偵察の任務は果たせてるんだよね、これって…」

「え?…まさか、アイツを放置して撤退するって言うんですか…?」

「あくまで案の一つだよ、私だって放置するのは不味いと思ってる。…けど、イストワールさんの言葉も忘れちゃ駄目だって事」

「そういう事ですか…でもアタシは極力倒したいと思います。アイツがここを出て、人の生活圏まで来たりしたら被害は計り知れませんから」

 

ユニの意思が籠った意見に、私はこくんと頷いた。無理はしないって決めているけど、人々を危険に晒さないようにするのも女神にとって大事な仕事。だからこそ、私は迷う。ここで早々に離脱の判断を下して確実に威力偵察を完遂させるか、ゼロではない筈の可能性にかけてギリギリまで戦うかという選択に。

 

「(…いや、これを私一人で考えるのは身勝手だよね…)皆!スタミナは大丈夫!?」

「えっと、休憩時間にクエストで消化したから大丈「そっちじゃない!」あ、ごめんなさい…アタシはまだいけるよ!」

「問題ないわ。…勿論、このペースがいつまでも続くとは思えないけど」

「OK、ならもう少し粘ってみるよ!例え今倒せなくても、相手の得手不得手や弱点が分かれば次の戦いに繋がる……」

 

私は早期離脱の判断を取り下げ、継戦する事を選ぶ。無理は禁物、二兎追うものは一兎も得ず…そういう言葉は気にしなくていい。だってまだ無理のレベルには至ってないから。欲をかいて二兎追ってるんじゃなく、今現在出来る範囲で二兎目を追っているんだから。…ユニの懸念と、皆の声に含まれたやる気が私にそう選択させた。

長剣を構え直し、思考を戦闘に切り替え直す。私は近接メインの女神なんだから、いつまでも人間組の皆に任せてないで戻らないとと考えながら、翼に力を込める。……そんな時だった。

 

「──皆さん!まだ交戦中ですか!?でしたら急いで後退して下さい!ネプテューヌさん達が…守護女神の皆さんが大変なんですッ!」

『……っ!?』

 

それまで集中の邪魔になっては悪いという事で、向こうから声をかけられる事がなかった通信。そこに突如、切羽詰まったイストワールさんの声が聞こえてきたものだから私達は驚いた。そして、その内容が聞こえた瞬間愕然とする。

 

「た、たいへんって…おねえちゃんたちに何かあったの!?」

「分かりません!ただ、尋常ならざる状態である事は事実です!」

「尋常ならざるなんて不明瞭な…イリゼ!」

 

ワレチューから離れながら、きっと鋭い視線を私へ向けてくるファルコム。平時にされれば動揺してしまうようなその目は、私へ強く訴えかけていた。今し方出した判断は、そのままでいくのか、と。……そんなの、考えるまでもない…!

 

「皆ッ!粘るのは無しで作戦変更!遠隔攻撃で足止めしながら飛んで離脱するよッ!」

 

指示を飛ばしながら飛び上がり、ワレチューの脚へ向けて精製武装を射出。RED達がこちらへ下がる中私に続いてネプギア達も攻撃を行い、足止めと目眩しの為の遠隔攻撃が次々と放たれていく。

 

「と、飛んでって…ボク達はどうすれば…」

「こういう事!しっかり掴まってて!」

「わわっ!?」

 

ルウィーでの施設攻防戦の時の様に、説明を飛ばして5pb.を抱え上げる。5pb.を含むその時の事を知らない三人は何をされるのかと目を白黒させていたけど、幸い候補生の四人にはちゃんと伝わって即座にRED、ケイブ、ファルコムもまた抱え上げられた。

飛べない四人を抱え上げた私達は、反転し猛スピードで来た道を引き返していく。人数差で女神側が一人余る事にいち早く気付いたユニは引き撃ちで足止めを、ワレチューが有効射程圏外になってからは進路上で邪魔になるモンスターの迎撃を率先して行う事で私達のサポートをしてくれていた。

 

「いーすんさん、わたし達はプラネタワーに戻ればいいんですか!?プラネテューヌに何かがあったんですか!?」

「いえ、驚かせてはいけないと言うのは控えていましたが、守護女神の四人はそちらに…ギョウカイ墓場に向かっていたんです!なので墓場の出入り口付近に四人はいる筈です!」

「出入り口付近で大変って…まさか、お姉ちゃん達は誰かにやられたって言うの!?」

「そんな…おねえちゃん……!」

「まだそうと決まった訳じゃないよ!けど、それを確かめる為にも急がないと…!」

 

間違っても5pb.を落としたりぶつけたりしないよう細心の注意を払いながら、出来うる限りの速度で侵入口を目指す。もしユニの言う通りなら、私達は多少とはいえ消耗した状態でネプテューヌ達を倒すような相手と戦わなくちゃならないけど…そんなの関係ない。折角助けた四人を、やっと取り戻した大切な友達をまた失う事なんて……絶対、嫌だ!

そうして、私達は飛んだ。飛んで、加速して、一心不乱に侵入口へと進み続けた。そして見えてくる侵入口。その後ろ…外側のすぐ側にあるのは、四つの影。

 

『──っ!(お姉・おねえ)ちゃんッ!』

 

姿がまだはっきりとは見えていなくたって、私達にはその影がネプテューヌ達である事が分かり切っていた。こんな場所に訪れる人なんてまずいないし、何より私達が四人の姿を見間違える訳がない。

あぁ、よかった。ネプテューヌ達は誰かにやられてしまった訳でも、何かに襲われて行方不明になった訳でもなかった。そうなると何故ここで止まっているのか、何が大変なのかって話になるけど…そんなの四人の無事の前では些細な事。私は多くの人達やその人達が住む国だって勿論守りたいけど、それ以上に大切な友達や仲間を守りたくて戦っているんだから。

 

「皆、どうしてここに?というか何があったの?」

『…………』

「……?えっと…聞こえてるよね?ねぇ、ちょっと…」

 

ネプテューヌ達の姿を確認出来た私達は、安堵しながら速度を落として四人の前へ着地。少し不思議に思いながら、心配かけさせて…とちょっと文句も言いたい気持ちになりながら、でも安心感から顔をほころばせて四人へ声をかけた。……けど、返答は無かった。聞こえていないかのように、気付いていないかのように、四人は何の反応もしてくれなかった。

それを不審に思って、更に一歩前へ出る私。近付いて、顔を覗き込んで…………気付いた。四人が、震えている事に。

 

「…みん、な……?」

 

震える身体。血の気の引いた肌。普段の輝きが消え、弱々しい光が辛うじて灯っているだけの瞳。──そこにいたのは、凛々しく気丈な守護女神ではなく…何かに怯え立ち竦む、ただの少女だった。

 

 

 

 

守護女神の四人と合流した私達は、四人を連れてプラネタワーへと帰還した後それぞれが使っている部屋へと送り届けた。今は、旧パーティー組が四人に付いてあげている。

 

「…皆さんの見立て通り、その巨大化したワレチューという方は負のシェアに取り込まれているのでしょう(´・ω・`)」

 

まだ作戦を完遂していない私達新パーティー組は、昨日と同じ会議室に移動して教祖の四人へ報告をしていた。それを受けてイストワールさんが持論を口にするけど…作戦成功にも関わらずあまり表情は浮かない様子。

 

「…やはりそうですか。では、あのユニミテス並みの再生力も…」

「えぇ、シェアエナジーにものを言わせた強引な再生でしょう。本当に巨大化しているならきちんとした治癒が必要ですが、ただシェアエナジーが外見を模した形に集まっているだけなら減った分を補充するだけで済みますからね(。-_-。)」

「シンプル故の厄介さ、という事ね。…でも、どうして急に負のシェアが…」

「……あまり考えたくはありませんが…恐らく、犯罪神が力の一部を放ったのでしょう」

『……っ…!』

 

イストワールさんの言葉に、ここにいる全員が息を飲む。あの負のシェアが、イストワールさんの言う通り犯罪神の放ったものだというなら、それは……

 

「も、もう犯罪神が復活したって事…ですか…?」

「くっ…アタシ達、復活を防げなかったの…?」

「いえ、それはないと思います。犯罪神が兆候も前触れも無しに復活する筈がありませんし、完全復活しているならイリゼさん達がギョウカイ墓場に入った時点で何かしら感じる筈ですから(´・ω・`)」

「そ、そっか…なら一安心……じゃ、ないよね…」

 

流石のREDも今は普段の元気がない。…でも、その原因の話はしない。その話は報告が終わってから、って最初に決めていたから。

 

「…相手の存在が分かったのなら、次は対処法だろう。奴に即座にギョウカイ墓場を出る様子はあったかい?」

「それはありませんでした。私達が戦っている最中も暴走している感じでしたし」

「なら、すぐに出てくる事はなさそうね。準備をする時間があるのはありがたいわ」

「とはいえ、相手は常軌を逸した再生力の持ち主…」

 

報告を聞いた教祖さん達四人は、対ワレチューの策を話し始める。一見落ち着いてる教祖さん達もまた、どこか上の空…とまでは言わないものの、ネプテューヌ達の事が気掛かりだって表情の端に表れていた。

そこから約数分。対策会議は途中私達の意見も交えながら進み、その後方針が決まったのか輪になっていた教祖さん達が元の位置に戻っていく。

 

「…たおしかた、決まったの…?」

「はい。と言ってもあまり凝ったものではありませんよ?無理矢理倒すか、倒し易い状態にして倒すかの二通りですから(´・∀・`)」

『……?』

 

説明は単純且つ短くすればする程すんなり伝わってくるけど、同時に情報不足で理解し辛くなるもの。今回はその典型で、実際には何をするのか今の段階じゃ全く分からなかった。けど、それはイストワールさんも分かっているところ。

 

「具体的に申しますと、倒し易い状態にして倒す…というのは、ギョウカイ墓場の外に誘き寄せて倒すという事です( ̄^ ̄)」

「おびきよせる?わなにはめちゃうの?」

「いいえ、再生力を落とす為に誘き寄せるんです。ギョウカイ墓場は負のシェアに溢れていますからね。そこならば幾らでも再生出来るでしょうし、逆に言えばギョウカイ墓場以外なら再生力は低下する可能性がある…という事です。…シェア配給方法を確立していた場合は、その時点で作戦失敗になる危険もありますが…(¬_¬)」

「そ、それは不安のある作戦ですね…」

 

5pb.が私達全員の代弁をするするな事を言うと、イストワールさんは肩をすくめた。イストワールさんの説明は続く。

 

「…続いてもう一つの方ですが…これは言葉通り、再生出来ないようなダメージを叩き込むという単純明快なものです。正直これは無策と大差ありませんが、下手に策を弄するよりは力技の方が良い事もありますから( ̄▽ ̄)」

「…それを実行するのは私達ですけどね…」

「すいません、いつも戦いを任せてしまい。…そして、その力技は……恐らく、守護女神の四人にも協力して頂かなければ成功しないでしょう」

『…………』

 

会議室は静寂に包まれる。だってその作戦は、ネプテューヌ達にまたギョウカイ墓場へ来てもらわなくちゃいけないという事だったから。あれだけ怯えていた四人を、見ている私達すら切なくなる程の四人を、その原因の場所へと連れていく作戦だったから。

 

「……どちらも完璧な作戦ではありませんし、行うのはあくまで皆さん。ですから、どちらにするかは皆さんにお任せします。…ただ、ネプテューヌさん達の事を考えるならば、後者の作戦は……」

「…いえ、そっちの方がいいと思います」

『え……?』

 

申し訳なさそうな顔で、説明と提案を締め括ろうとしたイストワールさん。私はその言葉に頷こうとしていたけど……ネプギアは、それを否定した。前者を否定し…後者を、推した。その言葉に、私達は驚きながら振り向く。

 

「ちょ、ちょっとネプギア…今アンタ、なんて…?」

「お姉ちゃん達と一緒に倒す作戦の方がいい、って言ったよ」

「……っ…アンタ、自分の姉の姿見なかったの?お姉ちゃん達がどれだけ心に傷を負ってたのか分からなかったの?今のお姉ちゃん達にギョウカイ墓場へ行けなんて、そんなの…」

「だからこそだよ、ユニちゃん」

 

自身を問い詰めるような口調となったユニに対し、ネプギアははっきりとした声で異を唱えた。私達がその様子に注目する中、ネプギアは言葉を続ける。

 

「勿論わたしだってお姉ちゃん達の傷は分かってるよ。…でも、それでいいの?今後もきっとギョウカイ墓場に行かなきゃいけない事はある筈なのに、それでいいの?ギョウカイ墓場に敵が現れる度お姉ちゃん達は留守番で、それでいいの?…お姉ちゃん達は、そんな自分達に納得出来ると思う?」

「それは……」

「お姉ちゃん達なら、きっとそうなる度に自分を責めると思うよ。情けないって、わたし達に申し訳ないって。…わたし、そんなの嫌だよ。自分を責めてもっと辛くなるお姉ちゃんなんて、見たくないよ。……だから、わたしはお姉ちゃんを勇気付けて…お姉ちゃんの心の傷を癒してあげて、それでお姉ちゃんと一緒に行きたい。…それが、わたし達の為にもお姉ちゃん達の為にもなると思うから」

 

初めは、ネプギアは何を言いだすんだと思った。でも…そうだ、確かにそうだ。ネプテューヌ達なら、過去に怯える自分達に甘んじる事なんてきっと出来ない。もしこのままネプテューヌ達無しで進めてしまったら、その後ずっとネプテューヌ達は自責の念に駆られてしまう。……なら…私達がすべき事は、ただ一つ。

 

「…そう、ね…えぇ、アタシもそう思うわ。お姉ちゃん達は、お姉ちゃん達だもんね」

「わたしだって、こわがってるおねえちゃんは見たくない…だから、えっと…ネプギアにさんせーよ!」

「うん…おねえちゃんに、元気になってもらいたい…」

「皆……イストワールさん!皆さん!お姉ちゃん達の事は、わたし達がなんとかします!だから…お願いします!」

 

そう言って、ネプギアは頭を下げた。この時皆がネプギアの言葉に反対の思いなんて持ってなかったのに、それに気付かず頭を下げていた。…だから、私達は顔を見合わせ……言う。

 

「…分かったよ、ネプギア。作戦はネプテューヌ達と一緒に行おう。……それに、ネプテューヌ達を助けてあげるのも、ね」

「……!ありがとうございますっ!」

 

ぱぁぁと表情を明るくするネプギアに、私は微笑みを見せる。…そう、助けてあげるのはネプギア達だけじゃない。私だって、ネプテューヌ達を助けたいって思う一人だから。…いや、助けたいじゃなくて…私は助けるんだ。私が本当に辛かった時、側にいてくれたネプテューヌを。あの時からずっと私の心の支えでいてくれている、皆の事を。……それが、友達ってものなんだから。




今回のパロディ解説

・「正気故だ、イストワール!〜〜」
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズの登場キャラの一人、ガエリオ・ボードウィンの台詞の一つのパロディ。…別にイカれているとは言われてませんけどね。

・16号
DRAGON BALLシリーズの登場キャラ、人造人間16号の事。自爆と絡めたネタなのですが、これだけだと伝わるか不安だったり…パロディネタも難しいものです。
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