超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

105 / 183
第八十四話 過剰なる女神の戯れ

ギョウカイ墓場での汚染ワレチュー撃破から数時間。目標を達成した私達は、増援部隊を返り討ちにした旧パーティー組と一緒にプラネテューヌへと帰還した。その日はそのまま解散となって、翌日の午後にまた私達は集合し…今に至る。

 

「いーすんさん、ユニちゃん達を呼んできましたよ」

「ありがとうございます。皆さん、昨日はお疲れ様でしたm(_ _)m」

 

守護女神奪還以降はよく使うようになった会議室に集まった、私とネプギア達と教祖さん達。今後の各国の指針を確認するのが今回の目的、という事でコンパ達は来ていない。

 

「あれくらいわたしたちにかかればよゆーよよゆー」

「ラムちゃんの、言うとおり…(どやっ)」

「まぁ、そうでなくては困るね。犯罪神の力の一部相手にすら女神九人で戦って負けるようなら、その時点でもう僕達の未来は絶望的だ」

『…………』

「……?」

「……ケイ、絶望的なのはゲイムギョウ界の未来じゃなくてアンタの空気の読めなさよ…」

 

ケイさんは何か間違った事を言った訳じゃないけど…発言内容が好ムードに水を差し過ぎだった。これが勝って兜の緒を締めよ的な内容だったならともかく…ケイさんは色々と独特過ぎるよ…。

 

「ま、まぁとにかく…これからするのは国のトップとしての会議ですよね?だったらどうしてお姉ちゃん達はいないんですか?しかも朝から姿を見かけませんし…」

「ネプテューヌさん達は、今天界にいるんですよ(´∀`)」

「あ、そうなんですか。……え、そうなんですか?」

 

文面的にはほぼ同じな発言を二度行なったネプギア。でも一回目は理解を示す意図、二回目は訊き返す意図という違いがあった。

 

「それは私も初耳…天界で何かあったんですか?」

「いいえ、天界へ行ったのはお姉様達の意思よ」

「何でも昨日の戦闘で自分達の身体の鈍りを痛感したらしく、早朝から勘を取り戻す為の模擬戦を行いに行ってるんです」

「あぁ…言われてみると確かにそうだったかも…」

「あの動きでも鈍りを感じてたんだ…流石お姉ちゃん達…」

 

昨日のネプテューヌ達の動きは久し振りの戦闘とは思えない程洗練されていて、戦闘能力ガタ落ち…なんてレベルではなかったけど、それでも本人達的には気になっていた…ってことかな?…口に出したユニは勿論、今女神候補生全員から尊敬の感情を抱かれてるよ、皆。

 

「わたし達もお姉ちゃん達を見習わなきゃなぁ…それじゃあ、会議には参加しないんですか?」

「いえ、してもらいますよ。なのでイリゼさん、ネプテューヌさん達を呼んできてもらっていいですか?(>人<)」

「あ、はい。どの辺りにいるかって分かります?」

「さぁ…ですが、ここのシェアクリスタルの間から転移出来る場所の近くにいると思います。わざわざそこから離れる理由もありませんからね(・ω・`)」

 

聞いてはいないけど、模擬戦の場所に天界を選んだのは気兼ねなく全力を発揮する為。その観点からも遠くへ行く理由は思い付かないし…飛べば簡単に見つけられるかな。

という事で私とネプギアはシェアクリスタルの間へ。

 

「悪いね、門の精製を頼んじゃって」

「いいんですよ、プラネテューヌの女神であるわたしの方がずっとシェアエナジーの消費が少ないですし」

「そっか。じゃ、お願いね」

 

こくんと私の言葉に頷いたネプギアは、転移門の精製を開始。大分前に門の精製方法を学んでいたネプギアはすんなりと門を作り、どうぞと前を開けてくれる。それに今度は私が頷き…転移門へと足を踏み入れた。

 

(天界か…行くのはマジェコンヌさんとの最終決戦以来だなぁ…)

 

マジェコンヌさんがまだ負のシェアに…犯罪神の力に汚染されていた頃の事を思い出しているのも束の間、実質ワープという事もあってあっという間に天界へ到着。…相変わらずシェアの生み出す力って凄いよね。

 

「さて、ネプテューヌ達は…あっちか…」

 

飛ぶ前にまず見回そうかなと思っていた私は、そこで早速戦闘音を耳にした。で、その音のする方へ目をやると…やはりそちらにいたのはネプテューヌ達四人。…この距離じゃ大声出しても届かないかな…。

 

(全員一斉に戦ってるんだ…そういえば、四人が戦ってたのも天界なんだよね…)

 

私が目覚める前。ネプテューヌが記憶を失う前。四人はここで殺し合っていた。その場所で、今は仲間として模擬戦をしていると考えると…やっぱり、感慨深いものがある。……目覚める前の事を感慨深いって言えるのかどうかは怪しいけどね。

女神化して私は飛翔。ある程度飛んだところで声をかける。

 

「皆ー!今から今後の指針確認するから、一回戻ってきてもらえるかな……」

「そらよッ!」

「甘いッ!」

「え、ちょっ……うわわっ!?」

 

四人へ向けて声を上げた私。でもタイミングが悪かったのか、場所が悪かったのか……その瞬間ブランが投擲し、ノワールが大剣で弾いた戦斧が私に向かって飛んできた。…言葉を投げかけたら、武器を投げ返されたのです。

 

「え、イリゼ!?」

「わ、悪ぃ!大丈夫か!?」

「大丈夫…二人の力が加算された戦斧は重かったけどね…」

 

まさかこんなありがたくない偶然が!?…と面食らいつつも、反射的に長剣を展開し弾く事で何とか難を逃れる私。…この威力…気を抜いてたら大怪我必至レベルの模擬戦やってたね、四人は……。

 

「ほんとに悪い、イリゼ…」

「いやいや気にしないでよ、私無傷だし殆ど事故みたいなものなんだから。ノワールも『私が弾かないでいれば…』とか思わなくていいからね?」

「え、えぇ…それでさっき何か言ってた?」

「うん。話をするからプラネタワーに戻ってくれる?」

「となると…わたくし達がこちらへ来てからもうそれなりの時間が経ちましたのね」

 

昼夜での変化がない天界は、時計(特殊な場所だから電波時計はアウト)が無ければ時間の経過が全く分からない。で、私がもう午後だと話すと…皆揃って驚いていた。…時計位誰かしら持ってきてるだろうに…さては戦闘の熱に浮かされてずーっと戦ってたね…?

 

「ま、そういう事だから戻るよ、皆」

「分かったわ。…けど、折角だから戻る前にイリゼも少しだけ参加しない?」

「え、私も?」

「イリゼは鈍っていないし、今は前と戦闘スタイルが変わってるから、イリゼが参加してくれればわたし達にとっていい刺激になると思うのよ。…それに、わたしは一度貴女とも刃を交えてみたいわ」

「うーん、それは一理あるかもね…」

 

皆が自分と仲間の為に早く勘を取り戻したいと言うのなら私は極力協力してあげたいし、互いに本気で戦える守護女神の四人と模擬戦をするのは私にとってもいい刺激となる気がする。…それに、私も女神。最初からずっと仲間だったからこそ敵対する事のなかったネプテューヌと、一戦交えてみたい気持ちが無いと言ったら……それは嘘になる。

 

「……いいよ。今の私が皆の知ってる私とはひと味もふた味も変わってるって事、教えてあげる」

「へぇ、中々乗り気じゃねぇかイリゼ。これは面白くなりそうだぜ」

「変わっていくのはわたくし達も同じ事。ブランクがあるからと見くびっているのであれば、その考えを即改めさせてあげますわ」

「貴女と戦うのは初対面の時以来ね。…本当に強いのはどっちなのか、ここではっきりさせようじゃない」

「皆ほんとに好戦的なんだから…ま、それはわたしもだけど。さ、それじゃあ戦闘再開よッ!」

 

私達は挑戦的な笑みを見せ合い、高揚感を混じらせたネプテューヌの一声によって戦闘を再開させた。言うが早いかネプテューヌは大太刀で私達を薙ぎ払おうとし、それをベールが大槍の柄でガード。その次の瞬間には私、ノワール、ブランが一斉にネプテューヌへと襲いかかる。

 

「な……ッ!?さっきまで皆イリゼに対して対抗心剥き出しだったじゃない!なんでさらっと共闘してるの!?」

「それは貴女が四人纏めて狙ってきたからよッ!」

「恨むなら自分の選択を恨むんだなッ!」

「そうそう、模擬戦とはいえこれは…戦いだからねッ!」

「後ろから!?やったわねイリゼッ!」

 

辛うじて攻撃を避けたネプテューヌへと追撃する、ノワールとブラン。けれど私はそれに乗じず、敢えてワンテンポ遅らせて二人の背中へ襲撃を仕掛けると、二人は驚きの表情を浮かべ……気付けば私の後ろへもベールが迫っていた。

 

「共闘は一瞬にして崩壊する…戦いは非情なものですわね」

「そしてピンチがチャンスに変わるのもまた戦いよッ!」

 

背中を狙う者の背中を狙うという『裏の裏』をかいたベールと、共闘関係が崩れた事を感じ取って転身するネプテューヌ。全員が初手からフルスロットルの戦いは、相手が仲間であっても肌がひりつくだけの刺激があって……私達女神にとってそれは、心を踊らせるには十分過ぎる程の魅力だった。

 

(軽く打ち合う程度のつもりだったけど……これは、手を抜くには惜し過ぎる戦いだね…ッ!)

 

 

 

 

「待っていても全然来ないと思ったら……なんで呼びに行ったイリゼさんまで戦ってるんですか…」

「うっ…ごめんなさい……」

 

それから凡そ一時間。守護女神四人との戦いに全身全霊で興じていた私は……追ってやってきたネプギアに呆れられていた。

 

「イリゼはそういうところあるのよね、ネプギアもそれは頭に入れておかなきゃ駄目よ?」

「いや、呼ばれてるって知っていながらイリゼさんを誘って模擬戦続けたお姉ちゃんも似たようなものだから」

「あ、はい……」

「誘った時点でネプテューヌも十分抜けてる……」

「ノワールさん達三人もですからね?」

『ですよね……』

 

口を挟まなきゃいいのに言っちゃうものだから余計に注意されるネプテューヌ達。……あれ、なんかちょっと前にも似たような事があった気が…なんで私達は女神なのにナースさんや妹(後輩)にちょいちょい怒られてるんだろう…。

 

「全くもう…皆待ってますから、すぐ戻りますよ?…あ、わたしは誘われても参戦しませんからね?」

「わ、分かってるって…ところでさネプギア。悪いんだけど…後ちょっとだけ遅くなるって伝えてくれないかな?」

「…何かする気なの?」

「何かっていうか…ほら、女の子として汗びっしょりのままは嫌だしシャワー位は浴びたいなぁって…」

「あ、そういう事…それならシャワー浴びてるって伝えておくね」

 

シェアエナジーというのは便利なもので、女神化状態なら汗をかいていようとシェアで身体を綺麗に出来るんだけど……食事と同様、機能的な部分を賄う事は出来ても精神的なリフレッシュにまでは繋がってくれない。だから私達を代表して女神化解除したネプテューヌが頼み込むと、ネプギアも女の子として分かってくれたのか快諾してくれた。

 

「悪いわね。待たせた分は後日何かするとも伝えておいて」

「分かりました。それじゃ多分まだ門が開いたままだと思うので、早く戻りましょうか」

 

そう言ってネプギアは歩き出し、私達も(ネプテューヌ達は持ってきた荷物を持って)それに続いて転移門へ。そこからプラネタワーに戻った後、私達は大浴場……ではなくシャワールームへと向かい、そこの脱衣所で服を脱ぐ。そして……

 

『はふぅ……』

 

私達は貸し切り状態のシャワールームで、少し熱めのシャワーを浴びていた。……気持ちいい…シンプルに気持ちいい…。

 

「身も心も洗い流される気分ですわね…」

「え、それってベールの腐の部分も綺麗になっちゃってる感じ?」

「シャワー如きでわたくしの腐心が消えるとでも?」

「何を堂々と言ってるのよ…けど、こうしてると浴槽にも浸かりたくなっちゃうわね」

「浴槽にまで浸かったら眠くなりそうな気が…」

「イリゼでそうなら、朝から戦ってたわたし達は確実ね…」

 

シャワーの流れる音の中、髪の毛を洗ったり身体を洗ったりしながら駄弁る私達。あんまりゆっくりしてるのは待たせてる身としてよくないけど…ほら、急いで出て身体冷やしちゃったらいけないからね。それに女の子として身体の清潔さを疎かにするのもよくないし。

 

「そういえば…皆、お昼は食べたの?まさか食事も惜しんで模擬戦を?」

「流石にそこまではしないわよ、途中休憩取って食事はしてたし」

「って言っても食べたのはゼリー飲料だけどね〜」

「それは食事と言えるのかな…お弁当位頼めば誰かしら作ってくれたんじゃない?」

「お弁当にしたら、ゆっくり落ち着いて食べたくなるわ」

「あ、端から食事に時間かける気は無かったんだ…」

 

模擬戦の合間に食べるものとしてなら、ゼリー飲料は確かに良さそうだけど…それじゃとても心が休まるとは思えない。そこまでして模擬戦に熱を入れてたのは、全力でぶつかれる事に浮かれてたってのもあるんだろうけど……もしかしたら皆、私の想像以上に早く勘を取り戻さなきゃ…って思ってるのかな…。

 

「……皆、焦ったりしてない?」

「…わたくし達が、焦っていると?」

「ううん、確認じゃなくて質問。そんな事無いんならいいんだけどさ」

「焦り、ね…まぁ確かに、早く完全な状態に戻したいって気持ちはあるわ。私達は未熟だった筈の妹や他国の候補生の成長を見た訳だし」

「焦っているつもりはないけど…広義的には、そうなのかもしれないわね」

「そっか、皆は少しずつ成長したんだって過程を見てないもんね…」

 

私はネプギア達の成長が順風満帆だった訳じゃないと知ってるけど、四人からすれば知らぬ間に格段の成長を遂げ、自分達との差を(まだ大きく開いているとはいえ)大きく縮められたようなもの。そんな成長した候補生達を、姉や守護女神としての矜持を持ってる四人が見たら……そりゃ、自分達も負けてられないって気持ちになるよね…。

 

「…危ない橋を渡るような事はしないでよ?」

「大丈夫よ、私達がしてるのはあくまで身体の調子を戻す事なんだから」

「そうそう、それに忘れちゃったの?わたしは手を抜く事に関しては天下一品なんだよ?」

「…ネプテューヌってさ、がっつり手を抜くのは得意だけど『適度に』手を抜くのは苦手だよね…?」

「そういえばそうですわね。ネプテューヌは変なところで真面目さを発揮しますもの」

「えぇー…ここはわたしサイドに立ってよベール…それ言われたらイリゼ余計心配しちゃうじゃん…」

「わたくしが言わずとも突っ込まれてるでしょうに…こほん。…イリゼ、わたくし達は皆がどれだけの思いでわたくし達を助けてくれたのか、よーく分かっていますわ。そんなわたくし達が、馬鹿な真似をすると思いまして?」

 

一つ咳払いをし、衝立越しに私の方を向いてそう言ったベール。その後ろでは、ネプテューヌ達三人も(ネプテューヌとブランは背丈の関係でしっかりは見えなかったけど)力強く頷いていた。…四人からは、確固とした意志を感じる。焦りという衝動的なものではない、強い思いの下行動してるんだって感じ取れる。……そういう事なら、心配なんて要らないかな。

 

「…しないよね、皆はそんな事。なら…また模擬戦の相手が必要なら時間を作るから、時には私も頼ってね」

「えぇ、頼らせてもらうわ」

「うん、任せてよ」

 

聞こえる声音に、嘘や強がりは感じられない。だからこれはきっと、いつものような取り越し苦労で、いつものように私が心配し過ぎただけ。……でも、それ位はいいよね。気が回らなかったばっかりに誰かの無茶を見過ごすよりは、さ。

……と、ここまでは普通のシャワータイム。ここまでは別におかしな点のないやり取りをしていて…なんだか妙になり始めたのは、ここからだった。

 

「……?」

 

ふと横を見ると、何故かネプテューヌとブランが衝立に手をかけ覗く様にして頭を出している。ひょこりと手と顔の上半分だけが見えてる姿はちょっと可愛いんだけど……その視線からは凄く恨めしそうなものを感じた。

 

(何だろう…ノワールとベールに覗かれたとか?…まっさかぁ……)

 

一瞬そんな事を考えるけど、すぐにそんな訳ないと考え直す。ノワールはそんなタイプじゃないしベールは覗く必要もない、というかそもそも一緒にシャワー浴びてるんだから覗くも何もって話だよね。

なんて思った後、私は頭皮にシャンプーの泡が残ってないか確認したくて一度シャワーを止める。するとそのタイミングでカチャリ…という小さな音が聞こえてきた。

 

(…今のって、仕切ってある場所の扉を開けた音だよね?誰かはもう出るのかな────)

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁんっ…♡」

「ひにゃぁっ……♡」

(────!!?!?)

 

雷に打たれた様な衝撃を受ける私。え、ちょっ……い、いい今凄い変な声が聞こえてきたよ!?変って言うか艶っぽい声が聞こえてきたよ!?今のノワールとベールの声だよね!?何!?何!?ま、まさか男の人が入ってきて……

 

「おぉー!前からそうだろうなーとは思ってたけど、ノワールの胸もっちもちだね!」

「ゆ、指が完全に沈み込むなんて…くそっ、なんなんだよこのサイズは…」

(ネプテューヌとブランだったぁぁぁぁああぁぁああああっ!!?)

 

嘘ぉ!?痴漢か暴漢かと思ったらまさかの友達二人だった!?何故に!?どういう経緯で!?一体何を思って……って、それかぁぁぁぁぁぁ!さっき恨めしそうに見てたのは二人の胸かぁぁぁぁああ!

あんまりにも驚きの展開を受け、私の思考は一気にパンク寸前に。あ、あぅあぅあぅ…なんかすっごい地の文がカオスってるけど我慢してね!?わ、私そんな余裕ないもん!

 

「ね、ネプテューヌ!?あ、貴女急に何を…あひっ…!」

「何って…あのさぁ、わたしとブランはさっきからずーっと胸がぷるんぷるん揺れる様子とか谷間にお湯が留まる様子を隣で見せられてるんだよ?わたしだって女の子なのに、格差をここまでまじまじと見せつけられてるんだよ?…いいよねぇ、わたし達と違ってつるぺたボディじゃない人は」

「ふぁっ…ぶ、ブラン…貴女そんな事しても、後で虚しくなるだけ……ひぃんっ…!」

「何もしなくたって十分虚しいんだよ!同じ女神なのに、片やこんな豊かで非の打ち所がなく、片や打ってもなんの弾力もない胸だなんて……不公平過ぎるだろうがッ!」

『そ、そんなの(私・わたくし)のせいじゃ……』

『はぁ!?』

『くひぃ…っ!』

 

シャワーの音に混じる、ノワールとベールの嬌声。恐らくは二人の胸を後ろから鷲掴みにしているのであろうネプテューヌとブランの声からは冗談の気配を感じられず、本当に襲っているかの様な雰囲気だった。

 

「…なんか揉んでたら変なテンションになってきた…ねぇ、どうしよっかブラン」

「そうね…そういえば胸は脂肪だった筈。……普段胸が重くて大変そうだし、少し楽にしてあげるのはどうかしら」

「わー、ブラン優しいね。ふふーん、それじゃあノワール…常日頃大変そうだし、わたしが楽にしてあ・げ・る♪」

「ひっ……や、止め…んあぁぁぁぁぁぁっ!」

「ベール、わたしは貴女を仲間だとも友達だとも思っているわ。……だから、恨むなら格差を恨みなさい」

「せ、せめて優しく……はひぃぃいぃぃぃっ!」

 

艶やかさを含んだネプテューヌの声と、冷たく容赦のないブランの声が溢れた瞬間……ノワールとベールの悲鳴とも喘ぎともつかない声が響いた。…そして気付けば、私は助けるとか宥めるとかの選択肢を全て忘れ去っていた。

そうしてシャワールームの中に嬌声が木霊する事数分。二人の声とやり取りから四人の姿を想像してしまって私が立ち竦む中、濡れた床に何かが崩れ落ちる音が聞こえた。

 

「はーっ…はーっ……♡」

「…ん、ぁっ……♡」

「ふぅ、すっきりした〜」

「やらずに後悔するよりはやって後悔する方がいい…意外と当たってるものね、これって」

(き、気付かないで…お願い私に気付かないで……っ!)

 

ベール程は勿論無く、ノワールよりもほんの少し小さい私の胸。でもネプテューヌやブランからすれば間違いなく『大きな胸』で、それはつまり二人の標的になるという事。気丈なノワールと芯の強いベールすら陥落させた今の二人に襲われたら……そう考えるだけで頭がぐるぐるして、なんだか身体が熱くなって…でも何より恐怖で脚が竦んでしまった。

どくん、どくんと心臓の鼓動が聞こえる。いつもの何倍も大きいその音は周りにも聞こえてるんじゃないかと思えて、こうしてる間にも二人が私の後ろに回り込んでるんじゃないかと恐ろしくなって……でも、二人は来なかった。

 

「……けど、うん…確かにこれは後になって虚しくなるね…」

「言うなネプテューヌ…にしてもほんと、どうしてここまで差が付くのか…」

「だよね…ネプギアはそれなりにあるのに、どうしてわたしはこんなちんちくりんなの…?」

 

ぺたぺたと素足で濡れたタイルを歩いたような音のした後、そんな二人のやり取りが聞こえてきた。二人に私を襲う気はないのだとそのやり取りで分かった事で、少し気持ちに余裕の出来た私はゆっくりと首を動かす。すると見えてきたのはシャワールームの出口へ向かおうとしている二人と…………ゆらり、と幽霊のような動きで立ち上がった、ノワールとベールの姿だった。

 

「そんなのわたしに訊かないで……え…?」

「……?どうしたのブラ…あ……」

『…………』

 

腕を掴まれるネプテューヌとブラン。ブランは反射的に振り返って、ネプテューヌは振り向く最中にブランの腕が後ろにいる誰かから掴まれているのだと気付いて……硬直した。

 

「…の、ノワール…もう起きたんだ…」

「…………」

「べ、ベール…案外、回復早いのね…」

「…………」

「え、えーと…わたしもう出るつもりなんだ〜…だから離してくれると、嬉しいんだけど…」

「…………」

「せ、折角温まった身体がこのままじゃ冷えてしまうわ…ふ、二人も浴び直したらどう…?」

「…………」

 

引き攣った顔のネプテューヌとブランに対し、ノワールとベールは腕を掴んだまま何も喋らない。その様子はこの段階で襲われる可能性がほぼゼロになった私ですら背筋が冷えつく程のもので、シャワールームの熱気によるものとは別の汗が滲み出る。

 

「え、と…もしかして、怒ってる…?」

『…………』

「うん怒ってるよね、間違いなく怒ってるよね!よ、よーしブラン!ここは謝ろう!こういう時は謝るのが一番だよ!」

「そ、そうね!結局それが一番よね!さ、ネプテューヌ。声を合わせてせーの、ごめんなさ──」

「うふふ…あれだけして下さったのですから…」

「たーっぷりお返しをしてあ・げ・る♪」

『ひぃぃぃぃぃぃっ!?』

 

あたふたと慌てて謝ろうとした瞬間、二人はにこりと恐ろしい程の笑みを浮かべたノワールとベールによって衝立に区切られた内側へと引き込まれた。

 

「あらネプテューヌ、貴女自分の事をつるぺたなんて言ってたけど膨らみあるじゃない。ほんのりと膨らんでるのが貴女らしくて可愛いわよ?」

「や、やぁっ…の、ノワール許し…あ、ひぃっ…♡」

「確かに膨らみは僅かにある程度ですけど…すべすべで柔らかさもある綺麗な胸じゃありませんの。…そういえば知っていまして?揉まれる事でホルモンが分泌され、胸が大きくなるという説を」

「そ、それで大きくなるなら苦労はしな…うぁぁっ…♡」

「さてベール、上手い事捕まえてやったけど…まさかもう満足したとかはないわよね?」

「えぇ。百倍返し…とまでは言わずとも、数倍位はしてあげませんと」

『そ、そんなお返し要らな……』

『はぁ?』

『は、はぁぁぁんっ…!』

 

ノワールベールの時よりもあどけなさの残る喘ぎは、それが禁忌の側に近いからか先程よりも艶やかに聞こえてしまう。それにまた思考を掌握されかけた私だったけど……ついさっきもあった事が幸いして、私の思考は辛うじてショートするのを免れた。

 

(……っ…そ、そうだ…今なら逃げられる…!)

 

嬌声と興奮混じりの声が響く中で、私はドキドキする胸を必死に抑えて仕切りの外側へ。端にいた私は四人の前を通らなきゃいけないけど…今ならきっと逃げられる。どうにかなってしまいそうなこの雰囲気の中から、逃げ出す事が出来る。形としてはネプテューヌブランを見捨てる事になるけど…ふ、二人は自業自得だもん!

音を立てないようにしながら出来る最大速度で出口へと向かう私。後少し…後少し…後少…………

 

 

 

 

 

 

「────あっ…!?」

 

──足を滑らせて、転んだ。……ネプテューヌとブランが、ノワールとベールに襲われている真ん前で。

 

「…ぁ……い、イリゼ…」

「あらイリゼ、どうしたんですの?」

「べ、べべべ別になんでもないよ!?な、何でもない何でもない何でも…あぅっ!?」

 

考えうる最悪の場所に、最悪の状況でぶち当たった私はもうまともな会話すらままならない。もうとにかく早く逃げたくて、逃げなきゃ不味いと本能的に立ち上がり走ろうとして……私の両足首が、掴まれた。

床に顔をぶつけた痛みも忘れ、私は振り向く。そして見たのは……荒い息で必死に耐える二人の女神と、嗜虐的な笑みを浮かべる二人の女神の蠱惑的な表情だった。

 

「い、イリゼ助け…てぇぇ……!」

「逃げようと、するなんて…貴女も、二人の側なの…ね…」

「二人に掴まれちゃったわねイリゼ。…貴女はどっち側なのかしら?」

「その答え次第では…いえ、どの様な答えであっても…もうここは、魔窟なのですわよ?」

「あ…い……いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁあぁぁっ!!」

 

──ここから先にあったのは、混沌だった。タガが外れ、ただひたすらに目の前の胸を襲う……そんな混沌だけがシャワールームを包んでいた。

因みにその後、疲れ果てた事でやっと正気になった私達は随分と長いシャワーを終え、何とか会議に行くのだった。……行ってからは開口一番「か、顔赤いですよ…?」と心配されるし、その日はお互い恥ずかしくて顔もまともに見られなかったし……ほんと、私達何やってるんだろ…。




今回のパロディ解説

・「皆ほんと〜〜わたしもだけど。〜〜」
本作の原作のアニメ版における、ネプテューヌの台詞の一つのパロディ。アニメだとこの後捕まるんですよね…本作じゃこの後ネプギアに呆れられていますが。

・「〜〜戦いは非情なものですわね」
機動戦士ガンダムに登場するキャラ、シャア・アズナブルの名台詞の一つのパロディ。シャアの台詞はほんとに色んなところで使えますね。

・百倍返し
ドラマ版半沢直樹の主人公、半沢直樹の代名詞台詞のパターンの一つの事。百倍返しをやられたら…その場合はR-18のタグを付けなければならなくなるかもですね、あはは。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。