超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第九十話 決闘布告

毎日、大なり小なり犯罪組織に纏わる情報が耳に入ってくる。犯罪組織は壊滅して、残党の勢いもお姉ちゃん達守護女神の存在や軍による警戒のおかげで日々下火になっている筈なのに、入ってくる情報はあまり変わらない。それは元々がとんでもない規模の組織だったからというのが大きいんだと思うし、まだ四天王の内三者が存続しているのもあるだろうし、犯罪神の復活はまだ阻止出来ていないというのもあるように思える。

アタシ達は、現体制側は、反体制組織を潰す事に成功した。なのに心から安心出来ないのは、国家規模の戦争なら仕方ない事なのか、それともまだ……

 

「……ユニ、ちょっと聞いてるの?」

「へ?…あ……」

 

少しだけ眉をひそめて訊いてくるお姉ちゃんの声に、アタシは思考の海から引き戻される。ここはラステイション教会内にある会議室の一つ。行政各部の代表を集めた今後の対犯罪組織(残党)プランの確認の後、アタシはお姉ちゃんに呼び止められて…会話の最中、思考に耽ってしまっていた。

 

「もう、何ぼーっとしてるのよ……体調悪いの?」

「う、ううん。そういう事じゃなくて…」

「ならいいけど。…で、私の話は聞いてた?」

「……アタシの△攻撃は膝が血だらけになりそうって話…だっけ…?」

「違うわよ!?全然違うわよ!?っていうかそれUの話よね!?何で今それ出したの!?」

「あ、あはは…ごめんなさい、聞いてませんでした…」

 

話をちゃんと聞いてた…というか聞こえていたのは最初だけで、正直に言えば聞いていない。でもアタシ的にはそれを誤魔化したくて、けどそんな急に妥当な返し思い付かなくて……結果変な事を言ってしまった。…でもあれほんと、絶対痛いと思うのよね…。

 

「聞いてないなら素直にそう言いなさいよ…」

「うん、アタシもそうするべきだったと思ってる…」

「全く…私は外出の時気を付けなさいって話をしてたのよ」

「外出の時?」

 

呆れながらも改めて言ってくれるお姉ちゃん。けれどそう言われてもアタシはピンとこない。外出の時気を付けろって……

 

「…教会周辺に不審者情報でもあったっけ?」

「そういう事じゃないわ。…あ、でもそれは常日頃から気を付けなきゃ駄目よ?一部とはいえ、どの時代でも女神に邪な感情を抱く人はいるんだから」

「分かってる。それで、お姉ちゃんが言う気を付けなきゃいけないっていうのは…?」

「犯罪組織の残党が、一発逆転狙いで私やユニを狙ってくるかもしれないって事。犯罪組織の有するアンチシェアクリスタルが一つだけとは限らないもの」

 

真剣な眼差しで言うお姉ちゃんに、アタシは頷く。普通の人なら奇襲を受けても何とかなると思っていたけど……もしアンチシェアクリスタルを使われたら話は別。お姉ちゃん達曰く、一瞬で戦闘不能レベルまでシェアエナジーを吸収される訳じゃないらしいけど…それでも、それがアタシ達女神にとって天敵である事には変わりない。

 

「…じゃあ、出掛ける時は誰かに護衛をお願いした方が良い?」

「そこまではしなくていいわ。ただ、これだけはちゃんと覚えておきなさい。劣勢に立たされていたり、後が無くなったりした人は何をしでかすか分からない、って」

「了解。……えと…あ、ありがとねお姉ちゃん。…アタシを心配してくれて…」

「あ…こ、これは心配っていうか…あ、貴女も女神だから言っただけよ。候補生だって何かあれば国や国民に影響があるんだから…」

「そ、そっか…うん、そうだよね。アタシの油断で国民を不安がらせるような事はないようにしないと…」

 

お姉ちゃんはアタシを心配してくれたと思ったらそうじゃないらしくて、でもお姉ちゃんの言う事はその通りで、アタシは現に一度国民に助けられた経験もある訳で……最終的にアタシは、まぁまぁ前向きな感情に行き着いた。…こうやって言われるって事は、きっとお姉ちゃんもアタシの女神としての影響力を認めてくれてるって事だもんね。だったらヘマなんてしないようにしなきゃ…。

 

「それと、日々の鍛錬もね。女神の道にゴールはないんだから、大きな目標を達成した位で満足してたら他国の候補生に負けちゃうわよ?」

「他国の候補生……」

「貴女達は仲が良いみたいだし、候補生間で仲が良いのは国の為にもなるけど…シェア獲得においてはライバルだって事も忘れないように。いいわね?」

「はい!」

「……いや、姉妹なんだからそこは『うん』とか『はーい』で良いのよ…?」

「あ……ちょ、ちょっと前までイリゼさんに指導してもらってたから、その癖でつい…」

「あー…はは、生徒が板に付いちゃったのね…」

 

少し照れながらそういうと、お姉ちゃんは苦笑混じりに納得していた。…今はお姉ちゃんだったからよかったけど、ケイ辺りにこの反応しちゃったら絶対馬鹿にされるわね…は、早く矯正しておかないと…。

伝えるべき事は伝えたから、とお姉ちゃんは執務室に戻って、アタシもこの後の予定であるクエストの準備の為に自室へ。早速外に出るんだから、お姉ちゃんからの言葉を意識して行こう…と心に決めて歩くアタシだった。

 

 

 

 

今回行うクエストは、他国へ向かう輸送車数台の護衛。本来民間企業が護衛を雇う場合、企業側が直接雇うかギルドを介して募集するかで、この系統のクエストが教会に回ってくる事はまずない。でも、お姉ちゃんは時々社会の実情を知る為にギルドでクエストを受けていて、アタシもそれを前から真似させてもらっている。今日請け負ったのは、その一環のクエストだった。

 

「女神様、うちみたいな中小企業の依頼にわざわざありがとうございます…ほんとに、光栄です…!」

「これも女神の務めよ、気にしないで。…けど、それを聞くのはもう四回目よ…?」

「え、あ…そうだったんですか…?」

「えぇ…このままいくと到着前に全員コンプしそうだから、もう言わなくて大丈夫だって伝えて頂戴…」

 

国境へ向けて走る輸送車と、その上で風を受けながら周辺警戒を行うアタシ。当然走っている最中に車内にいる企業のドライバーと車外(コンテナの上)にいるアタシが会話するのは困難だけど、輸送車の通信機とアタシのインカムの周波数を合わせる事で、通信を可能にしていた。

 

「しかし、今更な話でもありますが…そこで宜しいのですか?私達としては、何かあった際に出てくれればそれで十分ですよ?」

「いいのよ、ここで。車内よりこっちの方が視界を確保出来るもの」

「え、えぇ…それはまぁそうですが…」

「どんな依頼であれ、受けた以上は抜かりなく遂行するのが大事だとアタシは思うの。…貴方達の仕事だってそうでしょう?」

「…仰る通りです、ユニ様。私達も頼んだ者として、最後までミスなく運転すると約束します」

 

アタシの乗るコンテナ上部は勿論人を乗せて走る事を前提としていないから、乗り心地は悪いし落ちる危険も大きい。…けど、現状落ちそうになる事は一度も無かった。……というか、今でこれなら女神化すれば立って射撃しても大丈夫そうね。

 

(…今のところ怪しい影はなし、と……)

 

守る対象のある護衛依頼は、常に気が抜けないから大変ではあるものの、ゲームなんかと違って必ずしも敵が現れる訳じゃない。そもそも今回の依頼も『モンスターや犯罪組織残党に襲われた時困るから』という『かも』の観点から出されたものだから、実際のところはアタシの出る幕がない可能性も十分にある。…最も、安全性的にはそっちの方がいいんだけど。

 

「……貴方達の会社って、犯罪組織絡みで何か被害や損害を受けてたりする?」

「へ?…えぇと…なかった、よな…?」

「あぁ、無かったと思うぜ」

「強いて言えば、俺が一回勧誘受けた事位だな」

「え…貴方、それ大丈夫だったの?」

「あ、はい。あの時は夜勤明けで寝ぼけてたんで、適当に返してたらいつの間にかいなくなってました」

「そう…だったらよかったわ」

 

ふといい機会だと思ったアタシは、民間企業…それもそこまで規模が大きくないところに犯罪組織がどこまで影響を及ぼしていたのか確認する為、質問を口に。もし甚大な被害を受けているなら、国としての支援も考えないと…と思っていたけど、これなら大丈夫そうね。…ここがセーフだからって他もセーフだとは限らないけど。

それからも散発的に会話をしながら、アタシは周辺警戒を、企業の人達は運転を続ける。襲ってくる気配の無さそうなモンスターは無視し、近付いてきそうなモンスターには極力殺気を発さないようにしながらスコープで監視し、近付かれる前に撃てるよう神経を張り詰める。クエストを完遂する為、この企業に損害を発生させない為に。…でも……

 

「お、国境管理局が見えてきた。女神様、ここまでお疲れ様です!」

 

……結果から言えば、アタシの銃が火を吹く事は一度も無かった。今回のアタシ、ただコンテナの上に乗って会話してただけ!

 

(ちょ、ちょっと…一体位は来なさいよ!アタシはトリプル主人公に入ってないからって手抜いてる訳!?)

 

張り切って、地の文でもやる気を見せてたのに全く出番がなくてやりきれない気持ちのアタシ。いや、さっきも語った通り安全性的には出番がなくて済む方がいいんだけど…それでもこれ描写されるのよ!?何か起こるかな?…何もありませんでしたー、のパターンなら描写しなくたっていいじゃない!しかもなんでアタシの時に……。

 

「…って、いけないいけない…アタシはこんなメタ思考するポジションじゃないんだから…」

「……?えと、何です?」

「あぁいや、独り言だから気にしないで。貴方達こそお疲れ様ね…って、貴方達はまだ往復の四分の一しか行ってないのか…」

 

運搬である以上往復となるのは必須で、しかもここはまだ国境管理局前だから、ドライバーの人達はまだまだ気が抜けない。対してアタシが請け負っているのは管理局までで、基本的に国を跨ぐクエストはそれぞれの国のギルドに依頼を出す事になっている(国外まで行ってもらう場合は手続きが複雑になる)から、ほぼ何もせずに終了となるアタシは何だか少し申し訳ない気分に。これがクエストじゃなきゃここから先も護衛を…って言いたいところだけど、ここから先では別の護衛を受けた人がいる訳だし、何よりそれはやるべきじゃない。依頼を出した側と受けた側という仕事上の関係だからこそ、善意を出す部分を間違えてしまうとクエストのシステムそのものに悪影響を与えてしまう。実情はどうあれ請け負った仕事は請け負った仕事なんだから、アタシがすべきは管理局に到着するその時まで護衛を完遂する事。……そう、思ってた時だった。

 

「──え?」

 

目線を動かしていたその最中、視界の端にちらりと映った鉄の色。岩の色や乾燥した砂利の色とは違う、個人が携帯出来るような物とも違う、確かな金属光沢。……それが映った瞬間、アタシは狙撃体勢に入った。

 

(今の方角に普通の車両が行く訳ないし、軍も今この周辺には展開してない筈。って事は、まさか…!)

 

スコープを覗き、目を凝らし、映ったものの正体を探す。もし見間違いなら良し、不法投棄された鉄くずとかなら良くないけど危険はない。でももしそれが兵器なら、それも非合法な組織が有する物だとしたら……。

一抹の不安を抱きながら探すアタシ。そして…その不安は、的中する。

 

「……っ…確認だけど、管理局に着いた時点で護衛は終了でいいのよね?」

「あ、そうですけど…」

「だったら、少し確かめたい事が出来たから到着したらすぐ移動させてもらうわ。ごめんなさい、慌ただしくて」

「い、いえ。女神様に護衛して頂けただけでも光栄なのですから、問題ありませんよ。…それでその、確かめたい事というのは……」

 

アタシの確認に対し、どこか不安そうな声が返ってくる。でもそれは、女神が突然こんな事を言い出したのなら仕方のない事。だからアタシは、ふっと微かな笑みを浮かべて言う。

 

「…大丈夫よ、何があろうと国と貴方達はアタシとお姉ちゃんが守るんだから。それじゃ、貴方達も頑張りなさい!」

 

管理局へと到着したトラックが停止した瞬間、アタシはコンテナを蹴って跳躍。それと同時に女神化し、挨拶も早々に目標へ向かって突進する。

 

(いるのは一機、それも携行武装無しのキラーマシン…妙ね……)

 

ホバー特有の機動である方向…恐らくは街の方へと向かうキラーマシンの姿が、スコープ無しでもはっきりと見えてくる。

初期型でも並みのモンスターを大きく超える戦闘能力を有する無人機、キラーマシン。けど対キラーマシン戦術が確立されている今単機で運用するのは賢い選択じゃなくて、両腕に武装を装備していないのもおかしな話。一番初めに思い付くのは、それを有する組織がまともな運用も出来ない程困窮しているという可能性だけど…それなら尚更こんな所から出撃させる筈がない。

携行武装を用いない新型か、それとも本隊の動きを隠す為の陽動か、或いは別の目的か……アタシの中で、色々な可能性が渦巻いていく。どれが正解で、どれが最もあり得そうかなんて今の段階じゃ分からない。

 

「……けどッ!」

 

X.M.B.を振り出し、スコープ無しでキラーマシンの胴体へと狙いを付ける。例え目的が不明でも、危険な兵器を破壊しない理由にはならないし、放っておく事も出来ない。何よりこのまま進めば人の害となる事は間違いないんだから……それだけで、アタシが奴を撃つには十分な理由だった。だからアタシは、引き金を引く。

 

 

 

 

夜、アタシはその日使った銃の点検をする。これは趣味の一環でもあるし、常に自分の得物をベストな状態にしておく為の作業でもあるから、一丁も使ってない日や時間のない日以外は毎日行っている。

 

「…流石に摩耗は殆どしてない、か」

 

もしパーツが駄目になっているか、なっていなくてもかなり疲労しているなら取り替える必要があるけど、今日アタシは数発しか撃っていない。数発で駄目になるようなら、それは銃に何らかの問題があるんでしょうね。

 

「…………」

 

頭の中で手順を思い浮かべながら、分解した銃を組み直す。そして、組み直しながら考える。今日あった事…キラーマシンを撃った後に、起こった出来事を。

あの時アタシは、先制の射撃を放った。でも一撃で終わるとは思って無くて、即座に第二射も撃ち込んだ。けど……結論から言えば、キラーマシンは一撃で停止した。装甲を焼いて終わるだけだと思ったビームは、装甲ごと内部まで撃ち抜いてしまった。

 

(やっぱり、あのキラーマシンは意図して武装も装甲も簡易化していた…そういう事よね…)

 

苦労もなく倒せるのは嬉しいけど、あるべき苦労がなくして倒せてしまうのは逆に不安になる。何か罠があるんじゃないかって。わざとやられたフリをしてるんじゃないかって。

そういう時、一番安全なのは近付かずに撃ち続ける事。安易に近寄らず、木っ端微塵になるまで撃てば確実だから。…でもそれじゃ、異変の原因が分からない。安全性を取るか、異変の原因究明を取るかの選択をアタシは迫られ……そしてアタシは、近付く事を選んだ。

 

「……ブレイブ…」

 

アタシが近付いた瞬間、煙を上げるキラーマシンの胸部が開き、そこから奴の……四天王の一角である、ブレイブ・ザ・ハードの声が響いた。

──この機体を倒した者よ、貴様が誰かは分からないが、ラステイションの女神へと伝えよ!俺はこれ以上人々が争う事を望まない!貴君等には貴君等なりの正義があり、それが俺や犯罪組織の目指す先とは相容れない事も理解している!故に女神よ、正々堂々正面から戦い、雌雄を決しようではないか!俺はこれから指定する場所で待つ!貴君等が勝利を至上とするなら軍でも何でも率いて来るといい!だがもし女神としての道に誇りを持っているのなら、傷付く者は自分達だけで良いと思うのなら…俺との決闘を受けよ、誉れ高きラステイションの女神!

……こちらに返答する間も余裕も与えない、一方的な決闘要求。…それは、ブレイブからのメッセージだった。

 

「メッセンジャーにキラーマシンって…武装がないのは被害を出さない為でしょうけど、それにしたってキラーマシン選ぶのはどうなのよ…」

 

言うだけ言ったブレイブは最後に場所を伝え、それからは一言も発さなかった。けれどそれは録音なら当然の事。…きっと今、ブレイブは指定してきた工場(と倉庫)で待っている。このメッセージが、奴の言う女神の下へと届いていると信じて。

 

(…ブレイブが指定したのは、きっとお姉ちゃん…実力でも覚悟でも負けたアタシじゃなくて、ブレイブ自身が敬意を表していると言ったお姉ちゃん)

 

アタシだって女神だけど、ブレイブが決闘を申し立てたのはアタシじゃない。ブレイブの意思を汲むなら、賢明な選択をするなら、アタシがすべきは今すぐにお姉ちゃんに伝える事。そして、お姉ちゃんなら……絶対、ブレイブとの決闘を受け入れる。敵ながら天晴れよ、って言って工場へと行く。そうして…お姉ちゃんだったら、多分勝てる。

 

(……でも…)

 

お姉ちゃんはアタシより強い。けど、アタシは知っている。今の段階でもアタシより強いけど、コンディションが完璧な状態に戻るまでは後ほんの少しだけかかるって。…それにもし、お姉ちゃんがブレイブを倒してしまえば……アタシは再戦が出来ずに終わる。完全敗北したまま、リベンジが出来ないまま終わってしまう。

 

(……それは、嫌。実力が足りなかったのはまだ飲み込めるけど、覚悟でも負けたまま終わるのは絶対に嫌。…けど、それはブレイブの言う『自分本位の理由』…)

 

悔しいけど、ブレイブの言葉はアタシの心に響いていた。ブレイブの覚悟は本物で、だからこそアタシはブレイブの言葉を跳ね返す事が出来なかった。……あの時からアタシは、どこまで成長出来たか分からない。実力は上がってる筈だけど、覚悟はどこまで強くなったか分からない。

 

(…………)

 

賢明なのは、お姉ちゃんに任せる事。そうでなくとも、お姉ちゃんやケイにこれを伝えるのが正しい選択。リベンジしたいという気持ちは自分本位で、国のリーダーが自分本位じゃきっといけない。…………だけど、

 

(…アタシはあの時教えてもらった。国民は…アタシを信仰してくれる人は、資格や条件に合うから信仰してるんじゃなくて、信仰したいって心が思ったからそうしてるんだって。理想の女神でも、お姉ちゃんでもなく、『ブラックシスター・ユニ』を信仰してくれてるんだって)

 

あの時二人が、国民としての思いを教えてくれた。あの後ネプギアが、アタシの心を支えてくれた。これまでアタシは、多くの人に助けられて、成長させてもらってきた。……だからアタシはあの時から、負けたあの時からずっと考えてきた。これからアタシはどうするべきかって。どんなアタシになるべきかって。…そして今、アタシの心には決めた覚悟がある。アタシの進む、指針がある。

 

「……アタシは、アタシなりの道を進む。周りがどうとか、自分本位だとかはどうでもいい。だって…女神の道は、自分自身で作っていくものなんだから」

 

気付けばいつの間にか、銃は組み上がっていた。自分でも思った以上に考え込んでいたのね…とアタシは苦笑しつつ、銃を置いて立ち上がる。これからある人に、伝えなきゃいけない事があるから。

 

「今の時間なら…ま、自分の部屋に居るわよね」

 

自室を出て、廊下を歩く。寄り道せずに真っ直ぐ目的地へと向かい、部屋の扉へノックをかける。

 

「ケイ、いる?」

「……なんだい?」

 

ノックをして数秒待つと、予想通りケイは部屋にいた。部屋の内装は…前の時も触れてなかったけど、別に今言う事でもないわよね。気になるなら一言だけ言っておくわ。ケイらしい部屋よ。

 

「頼み事があるの」

「頼み事?君がわざわざ部屋に来てまで頼み事とは珍しいね」

「えぇ、真剣な頼み事よ」

 

いつも通りにクールなケイ。でもアタシの雰囲気から察してくれたのか、余計な事を言わずにアタシの言葉を待ってくれた。そんなケイの気遣いに感謝しつつ、アタシは一つ深呼吸して……伝える。ブレイブからのメッセージと、それを受けてアタシが出した、一つの決意を。

 

「…伝えたい事は以上よ。時間を取ってくれてありがと、じゃあ頼んだわよ」

「ちょ、ちょっと待った…いや本当に待とうかユニ、本当に…」

 

ケイは立ち去ろうとしたアタシの服を掴み、額を押さえて待つよう念を押してくる。アタシとしては準備をしたいから早く戻りたいところだけど…ケイの気持ちも分かるから足を止める。…アタシが言ったのは、ケイなら止めて当然の事だから。

 

「…大丈夫?」

「君があり得ない事を言わなければこうはならない…ユニ、君は自分が何を言っているのか分かっているのかい?」

「分かってるわ。それともアタシが正気じゃないように見える?」

「…正気じゃなければ、それを理由に一蹴出来たんだけどね…」

 

額から手を離し、ケイはアタシへ目を向けてくる。その瞳に浮かんでいるのは、疑問と呆れと……心配の感情。アタシのやろうとしてる事が無茶な事だって分かっているからこそ、アタシを止めようとしている。…でもアタシは、止めるつもりはない。

 

「どうして、そこまでして…」

「それは、今さっき説明したでしょ?」

「…わざわざ証明しなくても、僕は君の思いが正しいと思っている。ノワールや国民だって、きっと否定はしないだろう。…それじゃあ、駄目なのかい?」

「ありがとね、ケイ。…でもね、これはアタシに必要な事なの。アタシがもっと成長する為に、アタシも国民も誇れる女神になる為に」

「……もしもの事があったら、その時は…」

「その時の為に、ケイに伝えたんじゃない。…それに、アタシはもう名誉の戦死なんて考えないわ。生き恥を晒してでも、どんなに無様でも、アタシは終わる事を選んだりしない。死んで何かを残すんじゃなくて、生きる方が女神の戦いだって分かってるし…何より死ぬのは、アタシの進む道じゃないもの」

 

ケイの瞳を見つめ返して、アタシははっきりと言う。ここで迷いを見せたら、ケイは納得してくれないから。アタシの意思を証明しなきゃ、厳しいけど優しいケイは分かってくれないから。

お互いに相手の目を見据えながら、数秒の時間が流れる。アタシはケイを信じて、自分の選択に自信を持って、ケイの瞳を見つめ続ける。そして……ケイは、ゆっくりと溜め息を吐いた。

 

「……全く、君は…昔はもっと気が弱かった筈なんだけどね…」

「弱気じゃラステイションの女神は務まらないし、ケイもお姉ちゃんも弱気なアタシなんか望んでないでしょ?」

「ふっ、言うね…。……君が旅に出る時、僕は君に頼み事をして、君はそれを叶えてくれた。…だから今度は、僕の番…という事か」

「ケイ……」

「分かった、君の言う通りにするよ。…僕は、君の決意を応援する」

 

少しだけ笑みを浮かべて、ケイは頷いてくれた。応援なんて普段は使わないような言葉を出してまで、アタシの決意を肯定してくれた。もしかすると、仕方ない…と折れた部分もあるのかもしれない。でも一番の理由は、アタシをその言葉通り『応援してくれているから』だって、他でもないケイの表情が教えてくれていた。

頼みを聞いてくれた事に感謝の言葉を伝え、踵を返すアタシ。その背中越しに聞こえる、小さな声。

 

「……君も随分、ノワールに似てきたね。ユニ」

「え……?」

「何でもないさ。それより準備をするんだろう?」

「…えぇ、そうね」

 

追求はせず、アタシは戻る。ケイの言葉は、ちゃんと聞こえてたから。それがケイの気持ちだって、分かるから。だったら、アタシがすべきは掘り下げる事じゃなくて…準備を万全にして、明日を迎える事。

そうしてアタシは自室に戻り、準備を整える。戦いは明日。結果はどうなるか分からない。……だからこそ、アタシはこれまでアタシが培ってきたもの全てをかけて戦うと、決めた。




今回のパロディ解説

・△攻撃、U
原作シリーズの一つ、超次元アクション ネプテューヌU及びその中でのユニの攻撃の一つの事。ニーハイやズボンじゃないから余計に痛そうなんですよね、滑り込み射撃…。

・何か起こるかな?…何もありませんでしたー
モンハンシリーズにおいて、一部の採取ポイントで採取を行った際の表示のパロディ。作中ではあのように表現しましたが、何もない展開というのもいいと思うんですよね。

・「〜〜生きる方が女神の戦い〜〜」
機動戦士ガンダムSEEDの登場キャラの一人、カガリ・ユラ・アスハの名台詞の一つのパロディ。ユニと言えばガンダムパロ、私はユニ以外でも使いまくりですけどね。
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