超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第百話 信じてくれるから

「…ロムちゃん、ラムちゃん…大丈夫かな……」

 

元々の高度と雪国ならではの寒さで冷たい風の吹く、ギャザリング城の上空。そこでベールさんと共に待機をしているわたしは、心の中で不安を募らせていた。

 

「何かされてないかな…怪我してないかな……」

 

最初から不安だった訳じゃない。でも、お姉ちゃん達が城内に入って以降通信が出来なくなって、お姉ちゃん達の安否が分からなくなってから、段々不安になっていった。こんな時、いつもならすぐに突入するけどいーすんさんが人質になっているから動く訳にもいかなくて、しかも通信阻害をされている状態なのにお城は相変わらず静かなままだから、その静けさがわたしには逆に不気味に感じられて……気付けばわたしは、数分毎にそんな事を呟いていた。

 

「……ふふっ」

「……?…ベールさん…?」

 

気になるのに分からない、行きたいのに動けない…そんなもやもやした気持ちをわたしが抱いている中、隣から聞こえたのは落ち着いた笑い声。こんな上空にいる人なんて、わたしを除けばただ一人しかいない。

 

「いえいえ、気にしないで下さいな」

「そうですか……って、そう言われても気になりますよ…」

「別になんて事はないのですわよ?ただ、前はネプテューヌの後をついていくばかりだったネプギアちゃんが、今やネプテューヌの名前よりロムちゃんラムちゃんの名前を多く口にするんですのね…と思っただけですもの」

「え、あ…わたし、そうでした…?」

 

ベールさんの指摘に目を瞬かせるわたし。そんな事…と一瞬思ったけど、思い返してみると……確かにわたし、お姉ちゃんやブランさんよりロムちゃんとラムちゃんの名前の方が口にしてたかも…。

 

「ネプテューヌが聞いていたら、さぞ悔しがると思いますわ」

「かもですね…で、でも別にお姉ちゃんとブランさんの事は心配してないって訳じゃないですよ?二人はわたしからしてもちょっと年下の子って感じがありますし、相手が相手ですし、そもそも自分より強い人を心配するっていうのも変というか……」

「分かっていますわ。ごめんなさいネプギアちゃん、少し意地悪な事を言ってしまいましたわね」

「い、いえ。訊こうとしたのはわたしですし…」

 

ショックを受けるお姉ちゃんの姿を想像したわたしが軽く慌てていると、ベールさんはわたしの思いをすぐに理解してくれた。それからちょっとした事なのに謝ってくれて、その後すぐにお城へと目を戻して……ベールさんは、最初からずっと落ち着き払っていた。

 

「…ベールさんは、確信を持てる位にお姉ちゃん達を信じているんですね」

「え?」

「へ?」

「……えっと、ネプギアちゃん…それはどういう…?」

「あ……え、えと…わたしはベールさんがお姉ちゃんとブランさんが絶対大丈夫だって思ってるから、慌てる事なく落ち着いていられてるんだと思ったんですけど…」

「あぁ…そういう事ですのね」

 

会話する上で、伝えたい事を常に一から十まで口にする人はあんまりいない。だって毎回そうしていたら時間がかかるし、文脈や相手との共通認識なんかで全部言わなくても伝わるのが人と人との会話だから。…でも、言わなきゃ駄目な部分と言わなくても大丈夫な部分の見極めは重要で……それを失敗すると、今のわたしとベールさんみたいになります…。

分かり辛くてごめんなさい、と頭を下げるわたし。するとベールさんは軽く肩を竦めて…少し、遠い目になった。

 

「…別に、信じてるからというだけではありませんわ。こうして待つのは初めてではないというのもありますし、ネプギアちゃんの心配を加速させない為に余裕のある態度を取っている…という面もありますもの」

「そ、そうなんですか…気遣いさせちゃってすいません…」

「年上として当然の事をしているだけですわ。…それに……」

「それに…?」

「…もし、助けが必要だと分かった時、助けを求められた時、慌てていて対応が遅れてしまえば確実に後悔しますわ。だからこそ、わたくしは落ち着いていようと思っていますの。迅速に動けるように、一秒でも早く力になれるように」

 

もしもの時がないと思っているから落ち着いているんじゃなく、もしもの時があっても大丈夫なように落ち着いている。……それは、わたしにはない考えだった。信じるかどうかの単純な考えじゃなくて、その先にある事まで見据えた上での考えと行動。それを迷いなく、しかもわたしへの気遣いまでしながら出来るベールさんは…やっぱり凄い。

 

「…格好良いです、ベールさん」

「うふふ、ネプギアちゃんにそう思ってもらえるのは嬉しいですわ」

「……あの、それに妙な意図は…」

「さぁ?…それよりも、気を引き締めていきますわよ」

「あ…は、はい!」

 

大人っぽい笑みを数秒間浮かべていた後、ベールさんは真剣な顔になった。それに触発される形でわたしも気持ちを切り替えて、視線をお城へと戻す。…なんか誤魔化された気もするけど…今大切なのは『万が一の瞬間』を見逃さない事。わたしは、わたし達はそういうもしもに備えて待機してるんだから、ベールさんの言う通り気を引き締めなくちゃ…!

 

 

 

 

迂闊だった。外で起きている事が分からない以上、安易に目の前の状況を信じるべきじゃなかった。

軽率だった。トリックが策謀を弄する奴だと分かってたのだから、何かあると思うべきだった。

少し考えれば、分かる筈だった。このロリコンなら、無駄な戦いを避けて目的を達成しようとするこいつなら……わたし達を傷付けずに無力化してくるだろう、って。

 

「そんな……」

「クソが……ッ!」

 

何人もの操られた残党に組み伏せられ、わたしもネプテューヌも苦渋の声を漏らす。女神化が出来ない。力も普段より入らない。……わたし達は今、完全に無力化されている。

 

「守護女神二人を戦わずして捕まえるなんて、やっぱりトリック様は凄ェっすね!」

「敵を知り己を知れば百戦殆うからずという事だ、リンダよ。長所を活かし、敵の短所を突く…単純だが、これ程万能且つ強力な策はそうそう無い」

「敵を知り何たらってのはよく分からねェですけど…そうですよね!アタイもアイツの変装をした甲斐があるってものです!……ふぅ…」

 

策の成功に満足そうな表情を浮かべるトリックの隣で、ネプギアの偽者が興奮した様子を見せる。言動は本物と正反対の、けれど外見は本物としか思えない程に再現している、ネプギアの偽者。そして彼女は……正体を表す。

 

「あー!あんたは…!」

「はっ、今さら気付いても遅いんだよ女神候補生!残念だがアタイはネプギアなんかじゃなく……」

「したっぱ…!」

『……下っ端?』

「違ェよ!誰が下っ端だ誰が!テメェ、大人しそうな顔して言ってくれたなッ!」

「ふぇっ!?…ち、ちがった…の…?」

「違うわ!ってか、マジで勘違いしてたのかよ!?」

 

ロムとラムは偽者の正体とは初対面ではないらしく、彼女の通称を口にする。…下っ端って…酷いあだ名ね、下っ端的な小物臭は物凄くするけど。

 

「くそっ、ふざけんなよ餓鬼の癖に…!」

「…おいリンダ、我輩の前で幼女を愚弄するつもりか?」

「へっ!?あ、い、いやそんなつもりはないっすよ!えぇ全くないです、はい!」

「ならば良い。…さて…ではそろそろ話を進めようではないか、麗しき幼女達よ」

 

一度は下っ端らしい奴によって緩んでいた雰囲気が、その言葉によって一気に消え去っていく。…ちっ…奴にペースなんかくれてやるかよ…!

 

「ロム、ラム!お前達は逃げろ!」

『え……?』

「そうだよ二人共!一度逃げて!」

「い、いやよそんなの!こんな時ににげるなんて……」

「こんな時だからこそだ!奴がわたし達も人質にしようとしてるの位、二人だって分かるだろ!」

 

組み伏せられたまま、わたし達は叫ぶ。わたし達が戦闘不能になっただけならともかく、残党に捕らわれている以上ロムラムだけでの状況打破は難し過ぎる。こんな事を二人に強いる位なら、わたし達がこのまま手中に収められる事になったとしても、二人が外の皆に状況を伝えて作戦を練り直した方が、よっぽど勝てる可能性が高い。…その思いで叫んだわたしだったけど……二人は、首を縦には振ってくれない。

 

「…で、でも…それじゃ、またおねえちゃんが……」

「わたしなら大丈夫だ!だから早くしろ!」

「だ、だったらわたしたちが助けてあげる!こんなやつら、わたしたちの魔法で……」

「……っ!だ、だめだよラムちゃん…!そんなことしたら、あの人たちが…!」

 

ラムが杖をわたし達の方へ向けるも、それをロムが制止する。ロムの瞳に映るのは…操られている残党の姿。

わたしもネプテューヌも、床へと押さえ付けられている。それは一見過剰に思える程の人数によるもので、初めわたしはそれを確実に無力化する為だと思ったけど…この瞬間に気付いた。これは残党を手加減した攻撃では弾き飛ばせない盾にする為だと。殺傷の危険性が高い規模の攻撃でなければ、わたし達を助けるのは困難な状態を作る為だと。

 

「……っ…トリック…人質の次は盾だってのか!?テメェは人の命を何だと思ってんだよッ!」

「我輩にとっては幼女こそが至高であり、それ以外は些末事に過ぎん。それに…我輩は信じていたのだ。彼女達なら、彼等を殺しかねないような手段は取らんと、な」

「いちいち自分の行動を都合良く言い換えるんじゃねぇ!ロム!ラム!二人はいいから行けッ!逃げるってのが嫌なら転進だ!戦術的撤退だ!状況を考えて離脱する事は恥じゃねぇし、わたしもネプテューヌも見捨てられたなんて思わねぇよッ!だから……っ!」

「…素晴らしい、素晴らしい愛情だホワイトハートよ!我輩は今、猛烈に感動している!」

「いや、ちょっ…トリック様……?」

「……だが、だからこそ…逃がす訳にはいかんな」

 

一頻り興奮したように話した後、トリックは口元から笑みを消す。そしてその代わりとばかりにギョウカイ墓場で見せたあの目付きに…戦士としての顔付きになり、臨戦体勢に入ってしまった。……そうなればもう、こんな場所で逃げるのは容易じゃない。

 

「ふん!あんたがどんなつもりだろーが、わたしたちはにげる気なんてないんだからね!」

「たおしちゃえば、それでかいけつ…!」

「良い威勢だ。…だが、戦う前にまず状況を読まねば、満足に戦う事も出来ぬのだぞ?」

『……っ!』

 

トリックに反応してロムとラムも女神化し、いよいよ一触即発の雰囲気に。……けど、ここでもトリックの策が…卑劣で、それ故にわたし達には有効な謀略が、わたし達の下に迫っていた。

にゅるり、と首元に感じた不快感。…それは、魔法陣から伸びる触手だった。複数本の触手がわたしとネプテューヌの首に巻き付き、蛇のように蠢いていた。…それが意味する事なんて、一つしかない。

 

「…もし戦うつもりであれば、我輩も然るべき手を取らねばならん。さぁ、どうするルウィーの女神候補生よ」

「……っ…ひ、ひきょーよ!こんな、こんなひどいこと…っ!」

「お、おねえちゃん…ネプテューヌさん……」

「我輩とて、出来るならばこんな事はしたくない。これが考え得る限りで最低の策である事は、我輩も自覚しておる…」

「だ、だったら…!」

「あぁ。だからこそ、取り引きをしようではないか」

 

一度はわたし達を助けようと士気が上がっていたロムラムだけど、わたし達の首に触手が巻き付いた瞬間瞳に怯えの感情が映る。それを見たトリックは再びにやりと笑みを浮かべ……二人に取り引きを持ちかけた。

 

 

 

 

「とり、ひき…?」

「君達は二人を守りたい。我輩は幼女を誰も傷付けたくない。ならば、戦うよりも取り引きを行う方がお互いの為になるだろう?」

 

 

おねえちゃんと、ネプテューヌさんがつかまった。ネプギアちゃんだと思ったらネプギアちゃんじゃなくて、おねえちゃんたちはよくわかんない道具で力が出なくなっちゃって、ざんとうの人はいっぱいだからたすけようとしたらけがさせちゃうかもしれなくて、たたかおうと思ったらおねえちゃんたちのくびがしめられそうになって…今は、とりひきをしようって言われてる。

 

「聞くなロムラム!それも奴の策略だ!」

「わたし達の事は気にしないで!っていうか幼女を誰も傷付けたくないならこれ離してよ!言ってる事とやってる事が違うじゃん!」

「確かにそれはその通りだ。しかし、それを決めるのはこの二人。悪いが君達ではない」

 

二人はトリックの言うことをきいちゃだめって言ってる。でも、たたかおうとしたらおねえちゃんたちはくびをしめられちゃう。にげたら前のわたしとラムちゃんみたいにぺろぺろされて、またギョウカイはかばにつれていかれちゃうかもしれない。…そんなのは、やだ。ぺろぺろはすごく気持ちわるかったし、またおねえちゃんとはなればなれなんてぜったいやだ。……その気持ちは、ラムちゃんも同じ。

 

「……とりひきって、何よ」

「む?…おっと申し訳ない。取り引きというのは、お互い何かをするから代わりに……」

「いみをきいてるんじゃないわよ!わたしたちは何をすればいいのかきいてるの!」

「……ッ、ロムっ!ラムっ!」

「…おねえちゃんも、ネプテューヌさんも、ちょっとだけだまってて。…ちゃんと、考えてるから」

 

…だからラムちゃんは、トリックにきいた。きいたあとに、わたしの方へ「これでいいよね?」…ってふりかえってきたから、わたしはだいじょうぶだよってうなずく。

おねえちゃんとネプテューヌさんが、わたしたちをしんぱいしてくれてるのはわかってる。でも……わたしたちだってしんぱいだもん。わたしたちだって女神さまだもん。

 

「そちらだったか…アクク、二人共良い子だ。君達は会う度に成長しておる…」

「…はやく、言って」

「勿論。我輩の望む事、それは……」

『それは…?』

「……我輩に君達を、守らせてほしい」

 

わたしとラムちゃんがじっと見ると、トリックはへんなえがおでわたしたちを見てきた。このえがおはこわいし、元々トリックのかおはかいぶつみたいできらいだったけど…今はにげずに、ちゃんと見なきゃって思って見ていたら、トリックはまじめなかおになって……わたしたちに、おねえちゃんたちに付けたのと同じものを出してきた。

 

「トリック…テメェ、何を……」

「言葉通りの意味だ。守るという言葉は、然程広い解釈がある訳でもなかろう」

「ま、守るって…なんでそんなこと……」

「そ、そんなに…わたしたちが、すきなの…?」

「好き、か…。それはその通りだ。だが、それだけではない。これは我輩の、信念なのだ」

 

てきが、おねえちゃんたちを苦しめるやつが、わたしたちを守りたいなんていみがわからない。…でも、なんだかトリックは…今まででいちばん、本気のかおをしてた。

 

「…ホワイトハートよ、おかしいとは思わないのか?この様に年端も行かぬ幼女が、まだ重責を背負える筈もない子供が、女神として崇められ、人の…国の守護をしている事を。女神だからと、戦いを運命付けられている事を」

「……なんの話だよ…」

「我輩はそれが正しいとは思わん。光り輝く未来が待っている筈の幼女が、その為に優しい世界にいるべき幼女が、その手を血で汚し、国の運営に忙殺される事が正しいなど、あってなるものか。…幼女は守られるべきだ、誰かに幸せな場所を与えられるべきだ」

「…ふん、ロムとラムの現状が不満だってのかよ。だったらテメェに言われずとも、わたしが……」

「それは彼女達だけではない!…我輩が守りたいのは、君達もだ。ホワイトハート、パープルハート」

 

トリックはおねえちゃんたちの方を向く。向いて、むずかしいおはなしをする。わたしにはそれがよくわからないおはなしで、そうだねってことばも、ちがうってことばも言えなかったけど…守られるべき、って言われたときはむねがちくってした。

 

「わたし達もって…そんなの余計なお世話だよ!それがそっちの信念なら、わたし達にも守護女神としての信念があるんだよ!第一、わたしとブランが中身まで子供だと思ってるの!?」

「いいや、確かに君達の精神は幼女のそれではない。だがしかし、そもそも女神には明確な年齢がないのだろう?…ならば、何をもって大人と言えるのだ。一体何をもって、幼女ではないと断定するのだ」

「それは…その理屈なら、わたし達を幼女だって断定する事も出来ないじゃん!」

「左様。故に判断するのは個々人であり、我輩は君達を幼女だと認識した。…余計なお世話だと思うのなら、それでもよい。守れるのなら、どう思われようと構わん」

 

三人のはなしは、つづいている。このすきにこうげきすれば…って思ったけど、よく見たらトリックのしたの先っぽはわたしたちの方を向いてる。…今こうげきしても、気付かれちゃう…。

 

「…そんな戯言、誰が信じるかよ。こちとらテメェに殺されかけてんだぞ?」

「……あの時は、すまなかった。好きでやった訳ではないが…そんなもの、言い訳にすらならん事は分かっている。……だからこそ、我輩は…今度こそ守りたいのだ。…もし守らせてくれるのなら、約束しよう。例えどんな困難があろうと、犯罪神を敵に回そうと…我輩は君達を守り抜くと」

 

そう言って、トリックはまたわたしたちを見た。わたしたちを見て、手の上のくびわをわたしてくる。

 

「…これは、付けなきゃだめ…?」

「女神の力がある限り、君達は女神という重荷から逃れられない。…我輩がきちんと守る。だから、普通の幼女になってほしいのだ」

「…………」

(…また、守る……)

 

…また、むねがちくんってした。りゆうは、わかってる。わたしは…ううん。わたしも、ラムちゃんも、守られるのはいやだから。

 

(…でも、おねえちゃんはすっごくすっごくしんぱいしてる。ネプテューヌさんも、しんぱいしてくれてる。守られてばっかりはいやだけど…ふあんにさせたり、かなしい気持ちにさせたりするのは、もっといや…)

 

もしもわたしたちが、おねえちゃんたちがつかまった時すぐにうごいてたら、ちゃんとおねえちゃんのことばをきいてにげてたら、こうはならなかった。…わたしたちのせい。わたしたちがおばかで、まだよわいから、こうなっちゃった。それなのに、守られるのはいやなんて……もう、言えない。

 

「…ロムちゃん…わたし、わたし……」

「…うん。わたしも、同じ気持ち…」

「……ふぇ…ロムちゃん…ロムちゃん…っ」

「……うん…」

「……ロム、ラム…」

 

ラムちゃんは、なきそうなかお。でもがまんしてる。がんばって、がまんしてる。だからわたしは、ラムちゃんの手をきゅってした。…こうすると、あんしんするから。

それからラムちゃんがおちつくまで、わたしはそうしてた。おねえちゃんたちも、トリックも、何も言わなかった。その内にラムちゃんはおちついて…わたしたちは、いっしょにしんこきゅう。

 

「……トリック。あんた、やくそくはちゃんと守るのよね?」

「当然だ。この約束だけは、絶対に違わないと誓おう」

「…だったら、それなら……」

「…言える?ラムちゃん。もしいやなら、わたしが……」

「…待ってよ…駄目だよ、二人共……」

 

かくごをきめて、わたしたちはトリックを見ようとした。…でもその前に、ネプテューヌさんが待ってって言った。わたしたちがふりむいたら…ネプテューヌさんも、すごくつらそうなかおをしていた。

 

「そんなの駄目…そんな事、わたし達は望まないよ…」

「ネプテューヌさん…でも、そうしなきゃおねえちゃんもネプテューヌさんも…」

「大丈夫だよ、わたし達は。ちょっと位首締められたって、ちょっと位苦しくたって、わたし達は平気だよ?だって、天界から落ちて地面に刺さっても生きてたわたしと、そのわたしでもタフさに関しては勝てないと思うブランなんだよ?二人が戦ってる間、耐えてみせるって」

『…………』

「…ねぇ、ブランも何か言ってあげて」

「……そうね…」

 

ネプテューヌさんは、だいじょうぶって言ってくれた。…でも、ほんとにだいじょうぶなわけじゃないこと位、わたしたちだってわかる。けれど、そう言われるとトリックの言いなりはいやって気持ちも少しもどってきちゃって…その内に、ネプテューヌさんはおねえちゃんの名前をよんだ。それでわたしたちがおねえちゃんの方を見たら……おねえちゃんは、しずかに言った。

 

「…ごめんなさい、二人共」

『え……?』

 

……わたしたちに向けて、ごめんなさいって。…それから、おねえちゃんはつづける。

 

「わたしは、今まで二人が成長してる事を頭では分かってた。でも、変わらない部分も、わたしの知ってるロムとラムの部分もあって、だからネプギアに対するネプテューヌやユニに対するノワールのようにはなれなかった。…さっき貴女達を怒らせてしまったのも、わたしのせいよ。…駄目なお姉ちゃんで、ごめんね」

「え…ぶ、ブラン……?」

「…でも、わたしは考えたわ。トリックの言葉も、これまでの貴女達の言動も、今の貴女達の判断も、全部。考えて、自分の中で纏めて……答えを出した。だから、わたしから言う事は一つだけ。…ロム、ラム」

 

 

 

 

 

 

 

 

「────二人の思う通りにやりなさい。わたしは、二人を……信じてるわ」

『……──っ!!』

 

……どくん、ってした。おねえちゃんがそう言ってくれたしゅんかん、わたしたちのだいすきなえがおを見せてくれたしゅんかん…からだの中から、力があふれてきた。そっか…おねえちゃんは…おねえちゃんは……

 

(…おねえちゃんは、しんじてくれてるんだ……!)

 

ラムちゃんと、目を合わせる。目を見るだけで、おんなじことを考えてるってわかる。わたしたちの気持ちは一つだって、つたわってくる。

それから、わたしたちはトリックにちかづく。ちかづいて、トリックを見上げる。

 

「…答えは決まったかな?」

「えぇ、きまったわ」

「わたしは…わたしたちは……」

 

わたしとラムちゃんは、くびわに手をのばす。のばして、くびわをつかむ。そして、わたしたちは……それを、ゆかにたたき付けた。

 

「な……ッ!?」

 

ぎょろぎょろしてる目を見ひらくトリック。そんなトリックの前でわたしたちはふりかえって……さけんだ。

 

「わたしたちは……おねえちゃんたちを、守る…っ!」

「だって、おねえちゃんが…しんじてくれたんだからっ!」

 

思いと魔力をこめて魔法を発動。でもその魔法でねらうのは、トリックでも、したっぱでも、あやつられてる人たちでもかい。わたしたちがねらうのは……おねえちゃんたち。

おねえちゃんたちがいるゆかに、二つの魔法陣ができる。その魔法陣は、わたしたちの魔力でかがやいて……わたしたちの作ったこおりのはしらが、おねえちゃんたちをうちあげた。

こうげきをうけたおねえちゃんたち。でもおねえちゃんたちがこうげきをうけたことで、おさえてた人たちもいっしょにとんでいく。そして…………

 

 

 

 

「げほげほ……まさか腹パンならぬ腹氷柱をされる日がくるなんてね…」

「えぇ……けど、二人共上出来よ」

 

あやつられてる人たちはみんなおっこちる中で、おねえちゃんたちだけはちゃんとちゃくちして……わたしたちに、えがおを見せてくれた。

 

「な…なな……ッ!?」

『おねえちゃん…!』

「かなり乱暴だけど、良い閃きよ。…この首輪、壊してくれる?」

「うんっ!」

「ネプテューヌさんのも、こわしてあげる…!」

 

二人を助けられたことがうれしくて、かけよるわたしたち。そんなわたしたちをおねえちゃんはなでなでしてくれて…わたしたちは、すぐにくびわをはかいした。

 

「ありがとね、ロムちゃん。…ふぅ、やっぱり…女神化出来るってのは、良いものね」

「だな。さて、それじゃあ散々好き勝手やられたが……ここからは、わたし達のターンだ」

 

しんじられないってかおのトリックに、わたしたちぜんいんでぶきを向ける。あいてはすごくこわいトリックで、ユニちゃんやイリゼさんみたいにかてるかはわかんない。…でも、ふあんじゃないよ?だって、わたしは一人じゃなくて…みんながいるもん!




今回のパロディ解説

・「〜〜我輩は今、猛烈に感動している!」
巨人の星の主人公、星飛雄馬の名台詞の一つのパロディ。何となく思い付いたパロディの元ネタは意外なものだったってパターンありますよね。今回はそれです。

・「〜〜ここからは、わたし達のターンだ」
天装戦隊ゴセイジャーの登場キャラの一人、ゴセイナイトの代名詞的台詞のパロディ。こちらも意外なものだったパターン。前に耳にしたのを覚えていたのかもしれません。
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