超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress 作:シモツキ
戦争は、勝てば終わりなんかじゃない。事後処理…と言えば簡単だけどその内容は多岐に渡るし、それが済んだら今度は事前…これから先で同じような事が起きないように、起きてしまっても早期終結を迎えられるように備える為の計画も、出来るならば事後処理と並行して、それが無理なら事後処理の後すぐに進めなければならない。そして、今日行われているのが……その『今後』を見据えた、四ヶ国の会議。
「……というアンケートから得られた結果として、信仰の自由の是非に関して強く制限すべきだという意見と、ある程度制限すべきだという意見が合わせて約四割。犯罪組織の件がまだ過去のものとなっていない今でも過半数を超えていないという事からも、信仰の自由を制限するのは得策とは言えないだろうね」
「けれど、犯罪組織の勢力拡大において信仰の自由がこちら側の枷になってしまったのも事実。だから私達は制限こそしなくても、一度見直す必要があると見ているのだけど…その辺り、貴女達はどう考えているの?」
女神に、教祖に、教会の重役や軍部の高官など、国に強い影響力を持つ者が多く集まるプラネタワーの特別会議室。それぞれが円を意識した座席に座り、女神と教祖が中心となって会議は進んでいく。
「そうですわね…わたくしもその考えには同感ですわ。元構成員の話を聞く限り信仰心以外の目的で犯罪組織に所属していた者も多いようですし、信仰の自由本来の用途とは違う形で盾にされるのであれば一考すべきですもの」
「わたしは熟慮した方がいい、と言わせてもらうわ。勿論枷となった事を良しとはしないけど、元々信仰の自由は今の社会の根底を成す権利。それに手を加える事は…いや、見直す事すらも一歩間違えば自分達の首を絞める事になりかねないのは、念頭に置いておくべきじゃないかしら」
ノワールの問いかけに、ベールとブランがまず反応。元々重要な仕事の時はふざけた様子を欠片も見せない三人だけど、今日は特に『国という超巨大組織を運営する者』としての顔を前面に押し出していて、一つ一つの言葉に重みを感じる。勿論威圧している訳じゃないから、教祖の四人や意見を求められた方々は各々考えを口にしていくけど……女神候補生であるネプギアとユニは些か気後れした様子で、ロムちゃんラムちゃんに至っては始まってからずっとぽかーんとしていた。で、私とネプテューヌはと言えば…ご覧の通り。
「特務監査官…いえ、各国を歩いて回った身として感じたのは、我々によるテロ組織認定までは犯罪組織を悪と認識していなかった方が一定数いたという事。そこから考えるに、信仰の自由へ手を出すのは『自分達の思想や行動が、罪に該当するようになるのでは?』…という不安を煽ってしまう可能性があるのではないでしょうか」
「んー…色々考えはあると思うけどさ、一番大事なのは国民が安心安全の生活を送れる事だよね。だから、この選択が安心安全にちゃんと繋がるのかどうかって視点は欠かしちゃいけないんじゃないかな」
私は旅の中で見てきた人の姿とそこから推測出来る感情を口にし、ネプテューヌは平常運転…でも他の三人と同じ視点で意見を述べていく。立場的に場慣れしてる私はともかく、ネプテューヌもロムちゃんラムちゃんみたいにぽかーんとしてると思った?…残念、ネプテューヌもこういう時はそれ相応の態度を取るんだよね。
「ふぅむ…信仰の自由に関しては協議を重ねる必要がありそうですね。他の議題もありますし、この件は一度保留にしてはどうでしょう?」
「そうね。重要な事ではあるけど、早急に決めなければならない事でもないもの。…で、次は……」
「…軍部から、でしたね」
大方意見が出尽くし、でも明確な着地点は見つからないまま会議が膠着しつつあったところで、ミナさんが保留という形をとって次の話に進める事を提案。チカさんに続いて皆が同意し、イストワールさんがチカさんの言葉を引き継ぐと……そこでラステイション軍部の一人が口を開く。
「恐らくこれは各国の軍部でも少なからず意見が出ている事かとは思いますが、ここは我々から。…シュゼット君」
「はい。女神様方の奪還作戦及びその後の制圧作戦で、我々軍人は国内を奔走致しました。国益を守り外敵を鎮圧する事は軍の本懐であり、有事に忙しくなるのは当然以外の何物でもない事は承知の上ですが…それでもやはり、出撃の度に基地や拠点に帰還しなければならないというのは、負担であり同時に時間的ロスが大きいというもの」
「…悪いわね、貴方達軍にとっては縛りの多い条約で」
「いえ、法や条例に縛られない軍など違法な武装組織と変わりませんから。…しかし、前線指揮を担う者としてこの問題を無視出来ないのも事実。よって…提案させて頂きます。解体前の軍において運用されていた移動基地……陸上艦を始めとする戦闘艦艇の復活を」
戦闘艦艇の復活。戦闘部隊が拠点に戻らずとも長期の活動や戦闘後の補給を行える、移動基地の開発。…それは即ち、大幅な軍拡を求める軍からの声。その提案に守護女神と教祖の皆はほんの僅かに目を細めて、軍部の方々は小さく頷く。
奪還作戦以降国内を東奔西走してきた軍…特に前線を担う人達にとっては、求めて然るべき要求。けれど軍拡なんて安易に決めていいものではないし、そもそも軍拡は様々な危険を孕むもの。故にその判断は…慎重に下さなきゃいけない。
「…一つ、質問宜しいですか?」
「イリゼ様…はい。何なりと」
「今の提案は、距離や規模に関わらず拠点からの出撃を余儀なくされている現状の改善を求めるものだと思われますが、その観点であれば非武装の艦でも同様の役目を果たせると思います。それはどう考えているのでしょうか?」
皆が提案に対する思案を巡らせる中、右手を上げて質問する私。……正直に言うと、武装している事によるメリットも、非武装のデメリットも思い浮かんでいる。にも関わらず質問したのは…軍の側での意識を見定める為。命令に従って動くのが軍だと言えど、軍拡に繋がる事への考えはきちんと聞いておかなきゃいけないと、私は思う。
私の問いに反応した軍人…シュゼットさんは、上官らしき人(最初に声を発した人)に視線で確認を行う。それから頷きを受け取った彼は、再び視線を私の方へ。
「…イリゼ様のご指摘はごもっともです。中継地点としての運用であれば、非武装艦でも問題ありません。…しかし、拠点として運用する以上はある程度のサイズが必要となり、そうなれば戦場で大きな的になるのは火を見るより明らか。その時自衛能力が無ければ……」
「直掩部隊に多くのリソースを割かねばならず、最前線や作戦領域に展開出来る戦力が減ってしまう。…加えて言うなら、自衛出来ないというのは乗員にとって精神的負荷が大きい。…そういう事ですね」
「……えぇ、おっしゃる通りです。そして艦船というのは、生身は勿論MGすら出せない大火力を容易に搭載出来る為、火力支援や対大型目標において非常に有用なのです。艦船の活躍により最前線部隊の負担が減り、それが作戦効率や生存率を向上させる…私はそう踏んでおります。…まあ、最悪通常コンテナと強襲コンテナを換装出来る仕様という手もありますが…それに関しては私個人の見解で言う事ではありませんね」
分かってて訊きましたね?…返答にそんなニュアンスを含ませながら、体格の良い軍人さんは答えてくれた。話し方に余裕が感じられた辺り…その返答も、きちんと自分の考えで言ってくれたんだと思う。
「え、と…艦船に関する事でしたら、わたしも一つ提案が……」
「待ったネプギア。その前にこの…こほん、こちらの資料を見て頂戴」
何か思い付いた様子のネプギアが手を上げ、ユニが発言の途中で素の反応になっていた事に気付いて声音を正す。
それからも、会議が続いた。信仰の自由の件の様に、はっきりとした結論の出ないものも多かったけど、そもそも一朝一夕で辿り着けるようなものではないし、そんな決め方をしてはいけないものなんだから当たり前の事。各国の各員がどのような事を考え、どんな方向へ進めたいのかはっきりしただけでも十分な意味があったと、私は思う。
「…はふぅ…疲れたぁ……」
「普段から仕事してないからそうなるのよ…と言いたいところだけど、今回はいつもと違って高官を多く呼んだものね。気持ちは分かるわ」
「お疲れ様です、お姉様。早速アタクシがマッサージを…」
会議が終わり、女神と教祖という面子だけになったところで雰囲気も軟化。身体はあんまり動かしてないけど…何だか肩凝ったような気がする…。
「あぅ…なにも言えなかった…(しょぼん)」
「わたしもー…よくネプギアとユニは言えたわね…」
「まぁ、一応はね。…でもアタシも、お姉ちゃん達に比べれば全然だったわ…」
「こういうのは慣れが肝心、っていうのは分かってるけど…アクティブにいったら慣れる前にHPが無くなりそうだよね…」
ふと横を向いてみると、ロムちゃんラムちゃんはテーブルに突っ伏し、ネプギアとユニも身体を預けるように深く椅子へと座っている。…四人も、ご苦労様。
それから数分程雑談を交え、私達もそろそろ解散しようか…となった特別会議室内。……そこで、予想していなかった事態が起こった。
「……?はいどーぞー」
「失礼します。女神様、教祖様、至急お伝えしたい事が…」
「至急お伝えしたい事、ですか…?」
扉のノックに反応したネプテューヌが許可を出すと、入ってきたのは一人の職員。声音も表情も険しいその人の言葉を受けて、三人が私達から離れつつ集まると、そこへ職員さんも移動し小声で報告。それが終わり、こちらの方を向いた三人は…酷く曇った顔付きになっていた。
「…何があったの?」
「ええと、それはですね…(¬_¬)」
ブランの問いかけに、イストワールさんは歯切れの悪い言葉を発する。もうこの時点で伝えられた事が朗報じゃないのは明白だったけど、その内容まで分かるようなテレパシー使いはここにいない。
「言い辛い事なんですの?」
「そう、ですね…(-_-)」
「まさか、残党が何か大きな動きを…?」
「残党…それは当たらずとも遠からずと言いますか…(−_−;)」
「焦れったいね…ならばせめて他国に口外出来る事なのかどうか位は教えてくれないかい?出来ない事だというなら、僕達も無理には訊かないさ」
続くベールと私の質問にも(ベールのには答えているとはいえ)、イストワールさんの反応は同様。そこでこのままじゃ埒が明かないとばかりにケイさんが少し違う角度からの質問をすると…そこでネプテューヌが「そうだよね…」と呟いた。
「…ごめんね皆、別に口外出来ないような事じゃないよ。皆の国でも多かれ少なかれ起きてる事らしいし」
「アタシ達の国でも、ですか…?」
重い話は茶化そうとするネプテューヌらしからぬ、落ち着いたトーンのままの返答。それに私達が一層の深刻さを感じる中、ネプテューヌはうん、と頷いて……
「……街で発生した信仰抗争被害の会のデモ行進、こっちに向かってるんだって」
『……っ…』
発された言葉に、私達は息を呑んだ。確かにそれなら、今の三人の雰囲気も頷ける。
信仰抗争被害の会。…それは、起訴を免れた犯罪組織の元構成員やその家族が中心となって結成された、政府へ謝罪と賠償を求める集団。自分達は四ヶ国と犯罪組織による一連の戦闘と、犯罪組織の台頭を許した政府の失態の被害者であるというのがその人達の主張で…ネプテューヌの言った通り、今日までにどの国でも一回はデモが起こっていた。
「……確かにそれは、言い辛い事ですよね」
「…ネプテューヌ、その人達が暴動になる可能性は…?」
「…多分、ないと思う。人数も比較的少ないらしいし」
私の問いに、ネプテューヌはゆっくりと首を横へ振る。デモにおいて一番怖いのは暴動と化してしまう事であり、その可能性が多分でもないなら一安心だけど……安心は出来ても、ほっとは出来ない。
『…………』
「…あ、あの…おねえちゃん…」
「おねえちゃん…おかお、暗い…(おろおろ)」
「…ロム、ラム。今は多分、口を挟まない方がいいわ。アタシ達も無関係じゃないけど…何も考えず話していいような事柄じゃないんだから」
どうしたらいいか分からないという顔のロムちゃんとラムちゃんを、ユニが沈んだ顔をしながらも手で制す。
被害の会結成は私達にとって思ってもみない出来事で、凄くショックな出来事。元構成員にとってこの結果が満足いかないものだっていう事は分かっているけど……被害の会の結成と主張は、私達への全面否定だから。何も納得していない、納得なんか出来ないっていう人がこんなにもいるんだという事を、行動で見せ付けられているんだから。
暗い顔になっているのは、私達女神も教祖の皆さんも同じ。…でも、抱く気持ちは違う。
「…やるせないわね。自分達の不甲斐なさが…」
「えぇ…行動に移させる程の不満を、抱かせてしまっているという事ですものね…」
「そ、そんな事思う必要はありませんわお姉様!お姉様は…いえ、お姉様達は最善の選択をしてきたんですもの!」
「…だとしても、結果はこれよ。わたし達の行動の、結果がね」
「…それを言うなら犯罪組織に加担した方々の結果でもあります。ブラン様達が好き好んで害を与えた訳ではありません」
「ミナの言う通りだよ。罪に問われた事も、望まぬ戦いをする事になったのも、言い方は悪いけど自業自得なんだからね。…いや、悪いも何も、自業自得は正当な評価だろう」
自分達の責任だと負い目を感じる私達と、悪いのは犯罪組織とその元構成員だとする教祖の皆さん。…どっちが正しいなんて事はない。あるとすれば、それは…女神という視点か、人という視点かという違いだけ。
「…確かに元構成員さん達にも非があるのかもしれません。でも、私達にも非があるのが事実で、同時に私達にはしてあげられる事がある。…って、言っても私に国の長としての権限なんかないから、私がどうこう言うのは間違っているのかもしれないけど……」
「ううん、大丈夫だよイリゼ。イリゼに言うのは間違ってるなんて事はないし…わたしも考えている事は、同じだから」
「ネプテューヌさんまで…それは、本気で言っているんですか…?」
相手が悪いからって、切り捨てるのは女神のやるべき事じゃない。例え相手が悪くても、それでも救いの手を求めているならやれる限りの事をするのが女神で、それが女神の信じる道。
「本気だよ。冗談で話すような事じゃないもん」
「ふざけていない事は分かっています。そうではなく、わたしは…」
「過剰に反応し過ぎだ、そういう事ですわよね?」
「え…いや、まあ…それも間違いではありませんが…」
「過剰…確かにそれは否めないわ。でも…」
「私達は、過剰な位でもいいんじゃないかしら」
ブランの言葉を引き継いだノワールの言葉に、私達四人は強く頷く。過ぎたるは猶及ばざるが如しとは言うけれど、程々なんかじゃ多くの人の思いに応えられない。過剰な位じゃなきゃ、出来ない事が沢山ある。
「やり過ぎかもしれなくても、やる価値があるならやるべきだって私は思うわ」
「私もだよ。さっきも言った通り、私は皆の様な力はないけど、それでも協力を…ううん、私の出来る事と応えられる事に全力を尽くすから」
「心強いわ。…となれば、まずは何をするのが一番なのかを考えないと…」
守護女神の四人と私。それぞれでこの事に心を痛めていて、でも簡単にどうこう出来るものでもないからこれまで発言や行動は控えていて、それを心苦しく思っていた私達。
けれどここで、一つ分かった事がある。それは、私達が誰一人としてこの事をどうでもいいとは思っておらず、何とかしたい、何とかしてあげたいという思い。私達の、共通の気持ち。
(これも、元を辿れば私の責任。私が背負うべきもの。…でも、私一人で背負わなきゃいけないものなんかじゃないってイストワールさんが教えてくれた。だから…私達皆で、その人達の思いに応えるんだ…!)
一人では辛い事、抱えきれない事も皆となら頑張れる。皆が同じ方向を向いているなら、躊躇う事なく手を取り合える。そしてそれが人々の為なら…皆の大切にしてる国民の為なら、頑張るのが女神の本懐。…大丈夫ですよ、イストワールさん。私はもう、自分一人が…なんて思ってませんから。
「必要なのは補償ですわね。それをなくしては形だけだと思われてしまいますわ」
「で、ですからお姉様それは……」
「その為にはきちんと被害の会の主張も聞かないとね。こっちの申し出を受けてくれるかしら…」
「…僕達の言葉を聞いていたかい?元構成員は自業自得であって、僕等が下手に出る事なんて…」
「申し出を受けてもらうには、公式な場を用意するのが一番よ。だからその予定も立てないと…」
「相手の主義主張を聞くのは確かに大切です。…ですがそれは相手が正当な物言いをしている場合であって、今回は……」
「皆の言う通りだね。…けど、まずはちゃんと声明を出す事が大切じゃないかな?行動も大事だけど、その前に言葉を…思いを伝えてあげないと」
「ですから皆さん落ち着いて下さい。皆さんの気持ちも分かりますが、わたし達が言いたいのは……」
「…うん、決めたよわたし。デモの人達のところ言って、貴方達に精一杯の事をするって伝えてくる。やっぱりこういうのって、一日でも早くやる方がいいもんね!いーすんサポートお願い!わたし達の気持ち、今から皆に……」
「……いい加減にして頂けますか、皆さん…」
『え……?』
意思を決めた顔のネプテューヌに、私達は強く頷く。その頷きを受けたネプテューヌはイストワールさんに手伝いを求め、それからさっと反転して扉の方へ行こうとしたその時…………イストワールさんの、怒気を孕んだ声がネプテューヌを止めた。
「ちょっ、あの…いーすん…?」
「…この世界の正義は、貴女方にあります。しかし…わたし達が皆さんの盲信者だとでも思っているのであれば、まずはその勘違いを正して頂きましょうか」
「も、盲信者だなんて…イストワール、わたくし達は別にそんな事を……」
「思ってないという事は知っていますわ。知っていて…その上でイストワールは言っているんですのよ、お姉様」
怒る事はあっても、底冷えする様な怒気の孕ませ方は滅多にしないイストワールさんの声に、ネプテューヌも私達も驚いて彼女の方を見る。…そして、気付いた。怒っているのが、イストワールさんだけじゃない事に。ケイさんにミナさん、それにベール大好きなチカさんですから、厳しい目を向けている事に。
「あ、あの…私達何か、おかしな事でも…?」
「言いました。女神らしいと言えば女神らしいですけど…わたし達はそれを肯定出来ません」
「ミナ…それはわたし達が、これから被害の会に対してしようとしている事を言っているの…?」
「それ以外、あると思うかい?」
「だ、だとしたらそれは…ほら、某業界の未来に対するイデオロギー闘争みたいな感じに、わたし達といーすん達で進み方が違うだけっていうか、きっと願いは同じっていうか……」
「…その様子だと、本当に分かっていないみたいですね……」
何故ここまで怒っているのか分からない私達に、イストワールさんは溜め息を吐く。これまでストッパー役をする事はあっても、真っ向から否定する事なんてまずなかった教祖の皆さんにNOを突き付けられて動揺する私達と、どうしたらいいか分からないという様子でこの場を見つめる候補生の皆。…その中で、イストワールさんが静かに言葉を続ける。
「…わたし達は言いましたね。皆さんは最善の選択をしてきたと、犯罪組織に加担した方々の結果でもあると、自業自得だと。ですが皆さんは、一貫して自分達に非があるという方向性で話してきました。自分達の非は疑わず、元構成員は『かも』という表現をしていました」
「え、えぇ…言われたし、私達もそういう話をしたけど…」
「では、お訊きします。本当にそれは、貴女方が責任を取らなくてはならないのですか?自ら過ちを犯した者、自身の利益の為に他者を踏み躙った者の責任すら、貴女方が取るというのですか?」
「それは…そ、そういう責任はその人達にもあると思うよ?でもそんな人にも手を差し伸べるのが女神でしょ?出来る限りの事をしてあげなきゃ、悪い事をしたんだからって見捨てちゃったら、その人達は……」
「そうですね、その通りです。…ならば、言わせてもらいましょう。公平と平等は違うと。国民皆を愛する事と、国民皆に同じ接し方をする事は違うと。……改めてお訊きしましょう」
「──皆さんは、皆さんを信じ、皆さんの為に戦ってくれた方々と、皆さんに…そしてそんな方々に害を成した者達を、同列に扱うと言うのですか?それが、貴女方の『愛』なんですか?」
────一瞬、息が止まったような気がした。心を、平手で打たれたような気がした。私達が、元構成員や被害の会の人達の事ばかりを見て……私達の味方でいてくれた人の事を、何も見ていなかった事に…愕然とした。
「……わ、わたしは…わたし達は、そんなつもりじゃ…」
「えぇ、ないでしょう。そんな事は分かっています。ですが……皆さんの思った通りの行動をした時、皆さんを信仰して下さる方々は納得すると思いますか?皆さんの為に戦い傷付いた方が、皆さんの敵として戦った結果傷付いた方と同じだけの補償を受けた時、笑顔でいてくれると思いますか?」
『…………』
言い返せない。だって正しいのはイストワールさんの方だから。もしここで止められていなかったら、今イストワールさんが挙げた例を実際にしてしまっただろうから。そしてその時……私達は私達を信じてくれていた人達に、酷い仕打ちをする事になっていたんだと思い知らされたから。……私も皆も、あまりにも愚かだった。
「…ごめんなさい、皆さん。私達、軽率でした……」
「感謝しますわ…もし言って下さらなかったら、わたくし達は恩を仇で返す女神になるところでしたもの…」
「……気にしないで下さいまし、お姉様。アタクシは…いいえ、教祖というのは、信仰者の代表として、信仰者としての思いを伝えるのが役目なのですから」
「だとしても、私達は女神なのに……」
「女神だから気付かない事もあるだろう。時に視野狭窄となってしまう程、君達は優しいからね」
言い訳のしようもない程の間違いに、私達は…特に守護女神の四人は、普段の余裕を完全に無くす。人の上に立つ者は凛としている事が必要だけど、それを意識していられない程に、私達は自分で自分がショックだった。
けれど同時に、私達は実感する。教祖の皆さんが、どれだけ頼もしい存在なのかを。こうして支えてくれているから、私達は致命的なミスをせずにいられたのだと。…間違えた私達にそれでも尚信頼の言葉をかけてくれる教祖の皆さんだからこそ、四人も情けない姿を晒せるのかもしれない。
「…正しいのは貴女達だったわ。…それは、分かっているけど……」
「すぐに割り切る事は出来ない…それは何も悪くないと思いますよ。皆さんを止めたわたし達ですが…元構成員すら気にかける皆さんの姿を、わたし達は尊敬していますから」
「じゃあさ…もっといーすん達の意見、聞かせてくれないかな?いーすん達の考えを聞いて、色んな人の事を考えて…その上で一番良いって思える結論を、皆で出したいから」
「ふふ、勿論です。……ですがそれは、犯罪神を封印して決着を付けてからにしましょうか」
「はい。……って、それはもしや…」
教祖の皆さんに協力を求めると、皆さんはそれぞれの微笑みで頷いてくれた。そんな教祖の皆さんの心強さに私達は少しだけど心の穏やかさを取り戻して……その直後の言葉に、揃って目を丸くする。
全員で「もしや…」と思いながらイストワールさんへと視線を集める中、イストワールさんもわたし達をゆっくりと見回す。そして、全員を見終わったところで一度目を瞑って……それから目を開き、言った。
「……そうです。会議前に得られたギョウカイ墓場内部のデータから…犯罪神を再封印可能状態になったと、判明しました」
今回のパロディ解説
・通常コンテナ〜〜仕様
機動戦士ガンダム00に登場する宇宙艦、プトレマイオスの事。大型追加ユニットっていいですよね。そして戦闘艦もいいですよね。どちらも浪漫です。
・某業界〜〜イデオロギー闘争
新日本プロレス、WRESTLE KINGDOM13のケニー・オメガ選手VS棚橋弘至選手(IWGPヘビー級ベルト戦)の闘争の事。丁度明日という事で、ふと思い付いたのです。