超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第五話 目指すべき強さ

ギョウカイ墓場からの離脱と新たな旅の決定を下した日の翌日。私とイストワールさんは朝一で魔窟奥の私の眠っていた場所を調査していた。…というか、調査して帰路についていた。

 

「正直ガラリと変わってるかと思ってましたけど…」

「そこまでの変化はしていませんでしたね(^_^;)」

 

街へと戻る道を歩く私と、私の肩の辺りの高さを飛ぶイストワールさん。私の眠っていた場所は意外と変化が無く、中央の柱(それまでもほんのりエネルギーを感じていた物)にシェアクリスタルや女神の瞳に浮かぶマークと同じものが浮かび上がってた位だった。

 

「…でも、機能としてはやはり変わってましたよ?あそこからは教会のシェアクリスタルと同じ力を感じましたから( ̄▽ ̄)」

「となるとやはりイストワールさんの見立て通りの様ですね。…元々そういう機能も用意されてたんでしょうか…」

「うーん…それもあり得ますし、新たに機能が生まれたのかもしれません。それについては調査を重ねないと分かりませんね(´・ω・)」

「そうですか…しかし朝だけあって空気いいですね」

 

朝である事に加えて周りに人工物がまるでないからか、私は空気が相当澄んでる様に感じていた。そしてそれはイストワールさんも同じ様で、私達は顔を見合わせて微笑む。…なんか、姉妹で朝の散歩してるみたいで楽しいな。

 

「…今度、一緒にお出掛けしてみます?それより今はやらなければいけない事がありますから、すぐには無理ですが…(・ω・)」

「え……いいんですか?」

「いいも何も、わたし達は家族じゃないですか。…家族と出掛ける事は、変だと思います?( ̄∀ ̄)」

「……じゃあ、やるべき事が済んだら私から誘いますね」

「はい、お待ちしてますよ(^-^)」

 

イストワールさんと約束を交わした私は、思った。ネプギアも…候補生の皆も、きっと今の私の様に自分の姉とまた話したり、遊びたいって思ってる筈だって。…ただ守る為だけでも、取り戻す為だけでもないんだよね。だからこそ、頑張らなきゃ。

 

「さて、そろそろ街に着きますね。イリゼさんは今日どうするんですか?(・ω・`)」

「今日はクエストをします。昨日の戦いでは余裕がありませんでしたし、今日は違和感以外にも何か変化はないか確かめながら戦おうと思って…」

「では、一つ頼んでも宜しいですか?昨日ギルドからクエストの依頼がありまして…(´-ω-`)」

「ギルドからですか…なら放置は出来ませんね。分かりました」

 

ギルドから教会へと直接委託されたという事は、そのクエストは一般人には危険過ぎるか、何かしら一般人には触れてほしくない情報や事情が絡んでるという事。今回のそれがどちらに該当するかは分からないけれど、どちらにせよ女神が担当するのが一番なんだから断る訳にはいかないよね。私は何かやりたいクエストが決まってた訳でもないし。

という事で、プラネタワーに戻った私はそのクエストを確認し…ネプギア、コンパ、アイエフの三人を誘ってクエストに向かうのだった。

 

 

 

 

従来のクエストは、ギルドで受付を通して受注しなければクエストを行なった事にならない(受注せず依頼内容を達成しても報酬は払われないから、タダ働きになるんだよね)。けど、教会へと委託されたクエストを教会が突き返す事はない(突き返してもデメリットしかない)から、教会に来た時点で受注完了となっており、ギルドに寄らなくても済む。だから私達は、今回の目的地であるバーチャフォレスト深部へと直接向かっていた。

 

「こうやって来ると、ねぷねぷと初めてクエストに行った時の事を思い出すですぅ」

「最初のクエストは自然公園のものだったんだっけ?確かにここは自然公園に近いものね」

「はいです。それでクエストの後ねぷねぷが刺さってた場所を見に行って、そしたら地面が陥没して魔窟に落っこちちゃったです」

「それで私が出会って、その後魔窟の隠し通路みたいな所の先に行ったらイリゼが現れたのよね」

「こう振り返ると、私達の出会いって偶然に次ぐ偶然なんだってよく分かるよね」

「誰一人として普通の出会いをしてないって…どうなってるんですか皆さん……」

『あはははは……』

 

至極真っ当な指摘をされて、乾いた笑いを零す私達。そうやって言われると、確かに私達…特に女神はまともな出会い方をしていない気がする。…出会い方からしてこんなんだから、私達はまともなガールズトーク一つ満足に出来ないんだろうね…。

 

「…それで、犯罪組織の影があるのはこの先なんですか?」

「うん。…と言っても、犯罪組織って確定した訳じゃないけどね。依頼確認しておく?」

「あ、はい」

 

歩きながらプリントされた依頼書をネプギアに渡す。

この依頼の元々の依頼主は、バーチャフォレストの深部で時折キノコ狩りを行なっているという男性。…あ、キノコ狩る男性って言っても赤いオーバーオール着てたりしないよ?……その人の依頼は『最近本来生息しない筈のモンスターが現れる様になったから退治してほしい』というものだだたけど、それを請け負った人は『妙な人達がモンスターと一緒にいたから変に思って止めた』らしい。

本来生息しない筈のモンスターに、モンスターと一緒にいた人達。この時点で怪しいし、更にこの時期に…となれば犯罪組織が絡んでいる可能性は十分にある。だからこそギルドはこのクエストの一般公開を停止し、教会に報告したのだった。

 

「しかしその最初受けた人が賢明で助かったわね。…教会に依頼がいく事を狙った犯罪組織の自演自作かもしれないけど」

「それならそれで、犯罪組織を捕まえるだけですよ」

「…もし、勘違いだったらどうするんです?」

「そしたら普通にモンスター討伐して終わりだね。その人達ってのが不審な行動してたなら、女神候補生と特務監査官の権限でもって取り締まればいいだけだし」

 

なんて事なければ普通に、なんて事あれば武力や戦力をフル稼働して成敗すればいいだけの話。私とネプギアは勿論、コンパとアイエフも人外の域に片足どころか両足突っ込んでる様なレベルで強い。…自分で言うのも何だけど、大概の事なら私達四人で何とかなると思って問題ない筈。

 

「…だったら、逆に…四天王がいたら…」

「そうなったらまぁ…私とネプギアで時間稼ぎ、その間にコンパとアイエフに軍を呼んでもらうよ。それなりの部隊が援護してくれれば今の私でも勝ち目あるし」

「ここはプラネテューヌ領だから軍も展開出来るものね」

「それはそうですね……あの、わたし達って実は結構余裕があったりします…?」

「…まぁ、なりふり構わなかったら…ね」

 

私のニュアンスだけで理解出来たのか、ネプギアはこくりと頷く。

犯罪組織は勢力拡大をしつつあるとはいえ、ネプテューヌ達の獅子奮迅の活躍のおかげで、武力的には四ヶ国の総戦力が上回ってる可能性は高い。…けど、ただ犯罪組織を潰しただけじゃ『四ヶ国が勢力拡大中の新興宗教を一方的に武力で壊滅させた』としかならない。犯罪組織が表向きには好意的に見られてる今そんな事をすれば、一体どれだけの人々が現女神体制に叛旗を翻すだろうか。そしてそれは、私達の目指す先だろうか。…・そんなものは、断じてい──

 

「あ、例のモンスター見つけたです…!」

「タイミング悪っ!」

「えぇっ!?」

 

い、否って格好良く言おうとしたところなのに…!

…って、何馬鹿やってんだろ私…コンパにごめんなさいしなきゃ…。

 

「…ごめんなさい、コンパ……」

「あ、えと…何だかよく分からないですけど、ごめんなさいは受け取ったです」

「よく分かんない事してないでよね。周りに人は…」

「……あ、いました!あそこです…!」

 

ネプギアが指差す先にいたのは、フードを被った一人の少女。私達は取り敢えず近くの木々の陰に隠れ、彼女とモンスターの様子を伺う。

近くにモンスターがいるにも関わらず少女は逃げる事も戦う事もせず、モンスターも少女を認識出来ている筈なのに襲う様子は一切見せない。ベールとベールの意図を知る一部の人達はまだモンスターとの共存案を口外していない以上、この時点でクロである事はほぼ間違いなかった。

 

「…どうする?回り込んで捕まえる?」

「でもあの人がいるのは開けてる場所だから、回り込むのは難しそうです」

「となれば、正面から仕掛けるかここで向こうのアクションを待つか、だね。出来れば捕まえたいし、下手に仕掛けたりせず待つのが無難……」

「…いえ、仕掛けましょう皆さん」

『え?』

 

私の意見に異を唱えたのは、ネプギアだった。それまでは周りに合わせる事が多かったネプギアが自ら意見を言うだけでも珍しい事なのに、その意見が慎重論ではなく大胆論だったものだから、その意外さに私達は目を瞬かせる。

 

「し、仕掛ける…?」

「そうです。あの人が私達とは逆側に行ってしまうかもしれませんし、モンスターが街の方に行くかもしれません。そう考えれば、相手が動かないうちに仕掛けるのも間違ってはいませんよね?」

「それはそうだけど…急にどうしちゃったのよ?なんだかねぷ子みたいな思考になってない?」

「お姉ちゃん…はい、お姉ちゃんならこうしてた筈です!」

「ちょっ…ネプギア!?」

 

そう言うや否や、ネプギアは木の陰から飛び出してしまう。私達がそのネプギアらしからぬ行動に驚き目をぱちくりさせてる間にもネプギアは進んでしまい、結果引き戻す事も叶わずモンスターに気付かれてしまった。

 

「ど、どういう事よ…って言ってる場合じゃないわね」

「だね、皆戦闘準備は出来てる?」

「勿論です!」

 

既にもう回り込むも何もない状態になってしまった以上、隠れてたってしょうがない。という事で私達はそれぞれ武器を手にして駆け出した。

 

「ああ?なんだモンスター共急にざわつきやがって…って何だテメェ等!」

「ネプギア!策はともかく勝手に飛び出すのは駄目だよ!」

「そうです!皆で一緒に動くべきです!」

「あ…す、すいません…」

「ったく、出るにしてももう少し上手くやれば奇襲になったのに…」

「いや無視するなよ!?」

『あ……』

 

ネプギアに追い付いた私達が叱責していると、無視するなと文句が飛んできた。…というか、あんまり気にしてなかったけど叱責する前にも何か言われた気がする。

 

「あ、じゃねェよ!無視か!?無視したかったのか!?」

「い、いえそういう事ではなく…貴女こそここで何してるんですか!」

「質問に質問返すんじゃねェよ…まあいいさ、教えてやるよ、耳かっぽじってよく聞きな。犯罪組織マジェコンヌ・四天王直属部隊マジパネェ構成員、リンダ様たぁアタイの事だ!」

 

ばん!と見得を切って名乗り上げる少女。彼女の言葉を聞いた私達は、その瞬間────同時に呟く。

 

 

 

 

『…月外縁機動統合艦隊アリアンロッド……?』

「違ぇよ!?全然違ぇよ!?おまっ、掠りもしてねェじゃねぇか!漢字と片仮名の組み合わせで漢字の割合が多いって事位しかあってねェじゃねェか!」

「…あいつ結構突っ込むわね。意外だわ」

「現段階ではわたし達のパーティーでもやってけそうですぅ」

「入るかよ!…ふん、口上にビビって思考がとっちらかってんだな?テメェ等は」

「いやそれはないわよ、というか構成員って事は下っ端?」

「下っ端だね」

「下っ端ですね」

「下っ端さんです」

「な……ッ!?誰が下っ端だ!誰が!」

 

私達による四連下っ端コールで怒りがうなぎのぼりの下っ…いやリン……やっぱり下っ端。…うん、いきなり下っ端扱いは酷い気もするけど…何だろうね、下っ端以外の呼び方はしちゃいけない気がするんだ。

 

「五月蝿いわよ下っ端の癖に。で、アンタはここで何してんのよ?」

「下っ端言うな!…はっ、誰がテメェ等見たいな小娘に教えるかよ」

「小娘…あの、外見的には貴女もイリゼさん達とあんまり変わらない気が…」

「どっちにしろ小娘だろうが!……うん?イリゼ…?」

「はい、なんでしょう?」

「…あー…もしやお宅、女神のイリゼさん…?」

「女神のイリゼさんですけど?」

「……という事は、お隣の方は…」

「あ、女神候補生のネプギアです」

「…………よし、逃げるか」

『切り替え早っ!?』

 

くるり、ぴゅー!下っ端は 逃げだした!

…って違う違う違う!逃げられちゃったよ!?

 

「切り替えもだけど逃げ足も速いです!?」

「追うわよ皆!」

「そうはいくかよ!やっちまえお前達!」

『グルルルゥッ!』

「っと、そうはいかないみたいだよ…!」

 

下っ端の声に反応し、臨戦態勢に入るモンスター。数的には撒ける可能性もあるけど…下っ端を追う最中ずっと追いかけられるのは勘弁だし、もしもこのモンスターが街の方に向かってしまったら洒落にならない。今はネプテューヌがいないしネプギアはネプテューヌ程の突撃型じゃないから、ここは私が一番前に……

 

「……っ…わたしが女神化して追います!下っ端は任せて下さい!」

『ネプギア!?』

 

指示を出そうと口を開いたその瞬間にはもう、ネプギアは飛翔していた。その突然の行動に私達だけではなくモンスターも一瞬硬直し、その間を縫ってネプギアは出来つつあったモンスターの包囲網を突破していく。

再びの自己判断と独断専行。またもやのネプギアらしからぬ行動に、私達は『変だ』と確信する。でもその本人は既に飛び去っており、目の前にいるのは今にも襲いかからんとするモンスター。ネプギアの真意を問いただすには…まずこの場を片付けるしかなかった。

 

「イリゼちゃん、昨日ギアちゃんに話をしたんじゃなかったんですか…?」

「したよ、けど…こんなの全く持って予想外だよ…!」

「とにかく今は倒すしかないわね…それともイリゼ、貴女も追う?一応私達二人でも何とかなると思うけど」

「…いや、あんまりバラバラになるのもよくないから先に倒す事にする。…二人共、一気に片付けるよッ!」

 

そう声を上げると同時に女神化。それに触発されて飛び込んできたモンスターを斬り伏せ交戦を開始する。でも、私の頭の中にあるのはネプギアの事。ネプギアらしくない……それこそまるで、ネプテューヌの様な(・・・・・・・・・)行動を取った、彼女の事を。…ネプギア…どうして……!

 

 

 

 

「逃がしません…!」

 

女神化して飛ぶわたしは、すぐに下っ端をはっきりと目視出来る距離まで追いついた。そこからわたしはM.P.B.Lで威嚇射撃。移動しながら移動する相手への攻撃だったけど…そもそも当てる事が目的じゃなかったから上手くいった。

 

「うおわっ!?くっ、飛ぶなんてずりぃぞ!」

「そ、それをいうならモンスターを使う事の方がずっとズルいです!」

「うっせェ!…けど、追ってきたのはお前一人か…だったら!」

「……!」

 

その場で急ブレーキしつつ反転した下っ端。一瞬戦う気なのか…と思ったけどそうではなくて、彼女は懐からディスクみたいな物を取り出した。あれって…まさかお姉ちゃんが前に言ってたエネミーディスク!?だったら……

 

「ほぉら、こいつならどうだ!」

「……ッ!大きい…!」

 

ディスクから飛び出る様にして現れたのは巨大な狼型モンスター。そのモンスターはわたしを捕捉するとすぐに襲いかかってきた。

 

「これ位…わたし、一人で……ッ!」

 

先制の突進を上昇する事で回避。同時にM.P.B.Lを構え、モンスターの背を素早く斬りつける。…けど、流石にそれだけでやられてくれはしない。

爪での切りつけを捌き、噛みつきを避け、攻撃後の隙を狙って遠近両方から少しずつ攻撃を当てていく。わたしはモンスターより小さいおかげで上手く立ち回る事が出来ているけど、逆にモンスターは大きい分数度の攻撃じゃビクともしない。

 

「へへっ、少しはやる様だが…その調子じゃ先にバテるのはお前かもしれねェな!」

「そんな、事……っ!」

 

身体全体で押し潰そうする飛びかかりを後退で避け、着地した瞬間に鼻先へ光弾を撃ち込む。更にそこからわたしも着地し突撃、怯んでいるモンスターに横薙ぎを浴びせる。

吠えるモンスター。モンスターは少しずつでも身体に傷が増えていった事で激昂したのか、完全に目が血走っている。

 

(相手はたった一体のモンスター…お姉ちゃんならもっと無駄なく、相手に余裕を与えず倒せる筈……目指さなきゃ、それを目指さなきゃ……!)

 

腕を大振りさせた攻撃をしゃがんで避け、後ろ足に射撃。続けて斬り上げ、追撃射撃。モンスターの牙が顔のすぐ近くを喰らい、わたしの髪が数本切れたけど…気にしない。気にしてる様じゃ、わたしは変われない…!

 

「この、まま…押し切る……!」

 

後はもう、とにかく斬りつけ続ける。お腹の下に滑り込んだ状態ならまず攻撃なんてされないんだから、後は一気に攻めるだけ。お姉ちゃん程スマートじゃないけど、これなら…これなら勝て────

 

「グルガァァッ!」

「……ーーっ!」

 

どすん、とモンスターは身体を地面に着けた。後がなくなった…と言わんばかりに、M.P.B.Lが刺さるの覚悟で身体をわたしごと地面に押し付けた。

お腹の下にいたわたしは、体勢を低くしてた事もあって逃げられず、モンスターの目論見通り潰される。ダメージこそ小さいけど……息が、出来ない…ッ!

 

(そ、んな…後、少しなのに……!)

 

モンスターは重過ぎて、今の体勢からじゃ全く押し返せない。その間にも呼吸は出来ず、段々わたしは苦しくなってくる。…後、少しだったのに…もう少しで成長出来た筈なのに…お姉ちゃんみたいに、なれたのに……!

そう思ってもモンスターは動いてくれる訳もなく、わたしは苦しいだけじゃなく頭も痛くなってくる。苦しくて、痛くて、無念で……何より悔しくて、どうしようもない位悔しくて、でもやっぱり何も変わらなくて、それで…………

 

 

 

 

 

 

──わたしを押し潰そうとしていたモンスターが、跳んだ。

 

「……え…?」

 

後少しで勝てていた筈のモンスターが跳んだ。それは全然意味の分からない事で、わたしは一瞬呆然として……次の瞬間、わたしの上を高速で通っていった大槍を目にして、全てに気付く。それと同時に聞こえる、一つの声。

 

「ネプギアッ!トドメをっ!」

「……っ!はい!」

 

M.P.B.Lを握り締めて跳ね起きる。視線を周囲に巡らせると、そこには回避の為に跳んだまままだ空中にいるモンスターの姿。今なら…いけるっ!

 

「『スラッシュウェーブ』ッ!」

 

M.P.B.Lにシェアエナジーを一気に流し込んで刀身にビームの刃を展開。その状態でモンスターに向かって思い切り振るい……ビームの斬撃を放つ。

モンスター目掛けて駆ける斬撃。飛行出来ないモンスターは当然避ける事が出来ずに直撃。十分にダメージを蓄積していた事もあって、モンスターは地面に落ちると同時に消滅した。

 

「はぁ…はぁ……」

「ネプギア、大丈夫!?」

「は、はい…」

「うげっ、追い付かれた!?」

 

わたしの元まで飛んできて、わたしの肩に手を置いてくれるイリゼさん。対する下っ端はイリゼさんの姿を見て、「不味い」と言いたげな表情を浮かべていた。

 

「そうだ…あの人捕まえないと…!」

「つ、捕まるかよ!世の中逃げるが勝ち……」

「おっと、そうはいかないわよ?」

 

逃げようとした下っ端の前に現れるアイエフさん(コンパさんはわたしの元に来てくれた)。どうやらアイエフさんは逃げるのを見越して静かに回り込んでいた様だった。

 

「ぐっ…どきやがれ!痛い目に合わせるぞ!」

「痛い目、ねぇ…あんたに出来る訳?」

「……っ…覚悟しやがれッ!」

 

挑発する様にやれやれと首を振るアイエフさんに、下っ端は鉄パイプを手に殴りかかる。勢いよく振られた鉄パイプはアイエフさんに……ぶつかる前にコートの袖から露わにしたカタールによって遮られ、そこで止まってしまった。

 

「覚悟するのは…あんたの方よッ!」

 

にぃ、と笑みを浮かべると同時に下っ端を蹴りつけるアイエフさん。後退る下っ端に当然アイエフさんは追撃を仕掛け、連続攻撃を叩き込む。

数度の攻防。流れる様なアイエフさんの動き。防御に手一杯で時折反撃するのが手一杯の下っ端。そして……

 

「あぐっ……!」

「ふぅ…思ったよりは戦えるのね。普通の人間相手なら優位に立ち回れるんじゃない?あんた」

 

尻餅をつく下っ端と涼しい顔のアイエフさん。アイエフさんの言う通り圧勝ではなかったけど…それでも、結果は歴然だった。

 

「容赦なかったですね、あいちゃん」

「容赦してたら一発位は喰らっちゃうのかもしれないもの」

「くそっ…どういう事だよテメェ等!ここって確かアタイに強制敗北するやつだろ!?」

「はぁ?何言ってんのよあんた。残念だけど…」

 

またアイエフさんはやれやれと言いたげな様子を見せる。わたしの近くに立つイリゼさんとコンパさんが肩をすくめる中、アイエフさんは言い放つ。

 

「私達は本編一作に幕間の物語をこなしてきた、謂わば強くてニューゲーム状態なのよッ!」

「し、しまったぁぁぁぁああああああッ!」

 

がっくしと項垂れる下っ端。……な、何だろう…理由が理由過ぎるせいでなんて反応したらいいか分からない…。

……それはともかく、これがわたし達の勝利が確定した瞬間だった。

 

 

 

 

強くてニューゲーム。クリアデータを使う事でクリア時の状態を引き継いだままストーリーを初めからやり直せるシステム。原作シリーズにも採用されてるこのシステムは、本シリーズでも採用されていたのだ!

…というのは当然ボケで、実際は単に『積み重ねがある』から下っ端に勝つ事が出来たアイエフ。勿論積み重ねがあるのはアイエフだけじゃないから、私達は今圧倒的に有利な状態にある。けど…世の中良い事だけを積み重ねられる訳じゃない。良い事と同じ様に、悪い事も積み重ねてしまうのが人間というもの。例えば……

 

「畜生…こんな序盤から完敗するのかよ…」

「下っ端さん、諦めて素直に投降するです」

「ぐぅ…だったら、だったらもうあれしかねェ…」

「あれ?まだ隠し球があるっていうの?」

「あああるさ…ふっ、覚悟しやがれ……」

『…………』

「…………」

『…………』

「…………あ、あんなところに空飛ぶスパゲッティモンスターが!」

『えぇっ!?』

「……え?」

 

明後日の方向を指差す下っ端の言動に、私達は驚愕し釣られてしまう。そ、空飛ぶスパゲッティモンスターって…実在してたの!?そしてゲイムギョウ界に出てくるものなの!?くっ、そうなると恐らく空飛ぶスパゲッティモンスター教も存在してると思っていい筈。ただでさえ犯罪組織という存在がいるのに、そこに更にスパモン教が現れるんじゃ、あまりにも厄介過ぎる…………うん?

 

…………。

 

…………。

 

…………。

 

 

 

 

『……あれ!?いない!?』

「いると思ってたんですか!?アレ絶対下っ端の嘘ですよ!?」

『嘘だった(の・です)!?』

 

……こういうあからさまな嘘でも、ギャグ感が溢れてるとついノってしまう。これが、私達の積み重ねの悪い面である。

 

「…下っ端は……」

「えと…皆さんが必死に探してるあいだに逃げていきました……」

『…やっちゃったぁぁぁぁ……』

 

その場で落ち込む私達。…一切の言い訳も弁明もありません。反省します、はい。

 

「…どうします……?」

「帰るしかないでしょ、あの逃げ足の速さじゃもうどこにいるか分からないし…」

「今日は猛省です……」

「取り敢えず報告しなきゃ……って、違う!ネプギア!」

「は、はい!?」

 

私とネプギアは女神化解除し、四人で肩を落としながら帰路に…つきかけたところで私は思い出す。そうだ…きちんと、問いたださなきゃいけない事がある。

 

「…どうしたの、ネプギア。二度も一人で動くなんて、ネプギアらしくないよ?」

「あ…えっと、はい…そうですね、ごめんなさい」

「いや、そうじゃなくて理由を言って頂戴。…大事なのは、そこだから」

 

謝る事は大事。でも、なんでも謝ればいいというものじゃない。何をやったかも重要だけど、何故やったかも重要なのだから。

 

「…強くならなきゃ、だからです」

「…それは昨日も言ってたね。でも、本当に?今日のネプギアは、それだけの様には見えなかったよ?」

「…それだけですよ」

「……もう一度聞くよ、本当に?」

「本当、です」

「そっか……」

 

ネプギアは、私の目を見て言った。その瞳に、嘘の色は見られない。それが分かった私は一瞬だけ考えて、その後コンパとアイエフに目配せする。少しだけ、私の自由にやらせてほしいって。

そして、二人がこくりと頷くのを見た私は……言い放つ。

 

「……なら、旅には出られないよ」

「え……?」

「旅には出られない、それだけだよ?出るとすればネプギアを置いて三人で行く。…でもネプギアが同行しなきゃ意味のない旅だから、私達は旅を遅らせる」

「な、なんでですか…?」

「なんで?…そうだね、自分で考えろ…なんて言うのは言う側の身勝手なだけだから、ちゃんと教えてあげる。…ネプギア、今のネプギアじゃ女神として及第点にも及ばないからだよ」

「……っ…!?」

 

ぴくり、と肩を震わせるネプギア。そんなネプギアに、あくまで私は同じ態度を貫く。…こういうのは苦手だけど、やるしかない。

 

「きゅ、及第点…そんな、わたしは……」

「頑張ってる、って?…違うよ、今のネプギアは迷走してるだけだもん」

「……お姉ちゃん達は、今も捕まってるんですよ…?」

「だとしても、だよ。ネプテューヌ達の事を思うなら、やっぱり今はいけない。何週間先か、何ヶ月先か…或いは何年先か分からないけど、ね」

「……ません…」

「…なに?」

「聞けませんッ!わたしは、嫌です!今だってお姉ちゃんは辛い思いをしてる、なのに、なのにわたしは……わたしは、もう役立たずじゃないのにッ!」

 

ぽたり、とネプギアの頬を垂れた涙が地面に落ちる。

辛かった。ネプギアの心を傷付ける様な事を言うのが、辛かった。…ネプテューヌ達は、こんな思いをしても尚ネプギア達を守ろうとしたんだよね……だったら、私も…私も、背負ってあげなきゃ。

 

「…役立たずじゃない、って言い放てるって事は…それなりの理由があるんだよね?…それとも、もう自分は強いって思ってる?」

「わたしは…わたしは強くなろうとしてますっ!でも、無理だから…すぐには無理だから…だから、心だけでも…思いだけでも強くなろうって、お姉ちゃんみたいになろうって、そう思ったんです!そう思って頑張ったんです!…なのに、どうして…そんな事言うんですか……っ…」

 

ぽろぽろとネプギアの瞳から涙が溢れる。その姿を見て、その言葉を聞いて、やっと私は知りたい思いを知る事が出来た。

お姉ちゃんみたいに、それがネプギアの根本にある思いだった。自己判断も、独断専行も、確かにネプテューヌはしている。強さは心技体からくるものだから、心だけでも強くなろうとするのも間違っていない。……だけど…

 

「…ネプギア、それは無理だよ。ネプギアは、ネプテューヌみたいにはなれない」

「……っ…なれます…なれるんです、だってわたしはお姉ちゃんの妹だから…お姉ちゃんだって言ってたんです!ネプギアはいつかわたしに追いつけるよって!だからわたしは……」

「無理だよッ!」

「……う、うぇぇ…ぐすっ…」

 

私の言葉は、ネプギアの心を、ネプギアの支えを抉る。……でも、本当に責められるべきは私だ。昨日の段階で気付けてやれなかった、私の責任。その結果ネプギアは圧死の危険まであったんだから、私はその償いをしなければならない。これからするのは、その第一歩。

ネプギアの前に立ち、手を振り上げる。ネプギアの肩がまた震えるのを見て、私は心を決めて、振り上げた手を────ネプギアの頭に、優しく乗せる。

 

「……ぇ…?」

「…ごめんね、ネプギア。私、候補生皆を引っ張れる様になろうと思ってたのに、いつも一緒にいるネプギアの事すらちゃんと出来てなかった。私はネプギアを責めたけど、駄目駄目なのは私の方だよ」

「…………」

「…ネプギアはネプテューヌの様にはなれないよ。才能とか、努力とかじゃない。女神の魅力は、真価は一人一人違って、それは妹であっても同じにはなれないんだよ。有り体な言葉になっちゃうけど…ネプギアはネプギア、ネプテューヌはネプテューヌだもん」

「…じゃあ、わたしは…どうしたらいいんですか…すぐ強くなる事も出来なくて、お姉ちゃんの様にもなれないわたしなんて……」

「……だったら、私が見つけてあげる。ううん、私とネプギアで、ネプギアの魅力を、真価を見つけるんだよ」

「……っ…」

 

ネプギアは、顔を上げる。涙に濡れた、ネプギアの顔。でも、その瞳は死んでいない。まだ、心の底は諦めてはいない。

 

「ネプギアはネプギアなりに強くなればいいんだよ。きっとその強さは、無理にネプテューヌらしくするより、ずっと強い筈だよ」

「でも…そんな事、わたしには……」

「大丈夫。ネプギアは素直で頑張り屋で、本当は強い心を持ってるって私知ってるもん。それに…私はネプテューヌ達と名実共に並び立つ、もう一人の女神だよ?…私の事、信じられない?」

「……わたし…強く、なれますか…?」

 

私を見つめるネプギア。私は、そんなネプギアの頭を撫でながら…笑顔で、返す。

 

「──なれる、なれるよネプギアは。だから、一緒に頑張ろうよ。……ゲイムギョウ界を巡る、旅の中でね」

「……ーーっ!」

 

ネプギアは頷く。頷いて、涙声で声を返す。

それは、張り詰めていた心が溶かされる様に。やっと心から、前を向ける様になった様に。ネプギアの涙は、ネプギアの声は、私にはそう感じられた。そして、私は思う。それがどんなに大変でも、難しくても……絶対に、ネプギアをネプギア自身が望むネプギアになれる様にしてあげよう、と。

 

 

バーチャフォレスト深部の調査。結果的には犯罪組織の裏を知る構成員に逃げられてしまったけど……他には代え難い、大事なものを得られたと思った私だった。




今回のパロディ解説

・赤いオーバーオール
マリオシリーズの主人公、マリオの服装の事。いや別にマリオはキノコ狩りしてる訳じゃないですけどね。ブロック叩いたら出てきてるだけですけどね。

・下っ端は 逃げだした!
ポケットモンスターシリーズ又はドラゴンクエストシリーズの、敵(ポケモン、モンスター)が逃げた際の表示のパロディ。下っ端視点なら『うまく逃げきれた』でしょうね。

・原作シリーズ
超次元ゲイム ネプテューヌシリーズの事。原作シリーズにおけるデータ更新と違い、本作は文字通り全要素を引き継いでおります。…だってゲーム媒体じゃないもの。

・空飛ぶスパゲッティモンスター(教)、スパモン
ボビー・ヘンダーソンさんによって考案された、一種の風刺的パロディ宗教とその信仰対象の事。一応ちゃんとした宗教でもあるので、もしかしたら信次元にも支部が…?
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