超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第十五話 血晶&MG強奪事件

プラネタワーで夜を明かした日の翌日…というと、明かす前の日の翌日なのか、明かした後の日の翌日なのか分かり辛いね。で、どっちなのかと言うとそれは前者なんだけど…私達は皆で朝食をとっていた。

 

「ふぁ、ぁ……」

「ユニちゃん、寝不足ですか?」

「はい、少し…昨日夜に色々ありまして…」

 

手を当て欠伸をするユニ。少し、って何だろうと思う私達だったけど…その中でネプギアは、一人にこやかな表情を浮かべていた。……?

 

「…それより、今日は血晶探しをするんですよね?」

「うん、そうだよ?」

「血晶の方は、何か情報ってあるんですか?」

「ううん、今のところはゼロだね」

 

咀嚼していた卵焼きを飲み込んだ私はそう返答。因みに、昨日手に入れた宝玉は昨日のうちにラステイション教会に送ってもらうよう、職員さんに話を通しておいた。血晶のありかがどこであろうと、ラステイション教会にすぐ戻るのは無理だと思うし、わざわざ手元に置いておく理由もないからね。

 

「血晶…一体どんな見た目なんでしょう?やっぱり色は赤かな…」

「案外、縁起でもない物かもしれないわよ?」

「縁起でもない物…?」

「そうね…例えば、女神の血を全て抜き取って、それを濃縮する事で精製出来る…とか」

『ち、血を全部……』

「や、止めてよアイエフ…そういう冗談は笑えないよ…」

 

アイエフは少し伏し目がち&マジなトーンで禄でもない事を言うものだから、女神であるネプギアとユニは血を抜かれた…レベルではないけれど顔がブルーに。私も私で卵焼きを摘んだ箸が止まってしまう。……卵焼きばっかり食べてるって?い、いいじゃん別に…そんな何十個も食べてる訳じゃないし……あ、甘くて美味しいんだもん…。

 

「もうあいちゃん、二人を怖がらせちゃ駄目ですよ?」

「軽いジョークよジョーク、仮にそれが本当だったとしてもやらせる訳ないじゃない」

「ジョークがブラック過ぎるって…食事中なのに…」

「あーはいはい分かったわよ。三人とも悪かったわ」

 

ぺこり、と椅子に座った状態でアイエフは頭を下げて謝罪。まぁ悪い冗談とはいえほんとにショック受けた訳じゃないから、笑って許そうかな…と思ったところで、後ろからおはようございます、という声がかけられる。…ん?この声は……

 

「あ、イストワールさん」

「いーすんさん、おはようございますです」

「はい。朝食ご一緒しても宜しいですか?(´・∀・`)」

「それは勿論」

 

私達が首肯するとイストワールさんはテーブルに着地。頂きます、と言って特注の食器に盛られた朝食を食べ始める。

 

「りょ、料理も食器も小っちゃい…」

「わたしにとって普通の食器は食器として扱えませんし、ユニさん達と同じ量食べたらわたし、破裂してしまいますから(´-ω-`)」

「は、破裂……」

「…いや、それ以前にそんな量食べられませんけどね?(~_~;)」

 

イストワールさんの食事姿をちゃんと見るのは初めてなユニは、そのミニマムさに興味ありげな様子。……一人前食べたら破裂するというのを聞いて、無理矢理食べさせる度にぶくぶく太っていくイストワールさんを想像してしまった私は、悪い妹です…ごめんなさい…。

 

「…イリゼ?」

「な、何でもないよ……イストワールさん、血晶の事は何か分かりました?」

「……?…あ、もしかしてイリゼさん、昨日いーすんさんに訊いたんですか?」

「もしかしたら、って思ってね。それでどうです?やっぱり三日かかっちゃいます?」

「む…わたしが何でもかんでも三日かかると思ったら大間違いですよイリゼさん( *`ω´)」

「あ、すいません…」

「ものによっては三分や三時間でも調べられます。……逆に三週間や三ヶ月かかる事もありますが…(・ω・)」

「は、はぁ……」

 

そう言われて言葉に詰まる私。何でもかんでも三日、というのは確かに間違いだった様だけど…私はこれになんて返せばいいんだろう…。

 

「こほん。それで血晶ですが…ユニさん、テコンキャットというモンスターを知っていますか?( ・∇・)」

「テコンキャット…えぇ、知っていますけど…」

「でしたら、その巣を探してみて下さい。理由は不明ですが、テコンキャットは血晶の採れる洞窟や洞穴を巣にする傾向がある様ですから( ̄^ ̄)」

「そうなんですか…分かりました、行ってみます」

 

期待していなかった…なんて事はないけど、昨日の今日で判明するとは思ってなかったから少なからず私は驚く。そしてそれは皆も同じ様で、真っ先にコンパが口を開く。

 

「いーすんさん凄いです!一晩でやってのけるなんて、ジェロニモさんみたいです!」

「まさかコンパの口からその作品のネタを聞く事になるとは思わなかったわ…でも、確かに凄いわね。ラステイション教会では両方情報を掴めなかったのに」

「そんな事ありませんよ。偶々過去にプラネテューヌでも血晶を採取しようとした事があり、その記録を見つけられただけなんですから( ̄▽ ̄)」

「それでもうちとしては大助かりですよ、ありがとうございます」

 

イストワールさんと、過去に血晶を探していたプラネテューヌの人達のおかげで思った以上に早く情報を得た私達。そのテコンキャットというのは主にラステイションに生息しているらしい(だからイストワールさんはユニに訊いたんだろうね)から、食事を終えた私達は手早く支度をし、数十分後にはプラネタワーを後にしたのだった。

 

 

 

 

「ねぇユニちゃん、テコン『キャット』っていう位だし、やっぱり猫みたいなモンスターなの?」

「いや、兜を被った爪の大きいチンピラみたいなモンスターよ」

「そっか……」

「なんでちょっと残念そうなのよ…あんまり可愛くない方が倒す時楽じゃない」

「あ、そっか……っていうか、ユニちゃんも可愛いモンスターならちょっと躊躇うんだね」

「…そ、そりゃそうでしょ……」

 

ユニの知る、テコンキャットが確認されているダンジョンへと足を踏み入れてから十数分。私達はモンスターを呼び寄せてしまわない程度に雑談をしながら巣穴を探していた。

 

「でも、どうして血晶の採れる場所を巣にしてるのかな…まさか鉱物を食べてるとかじゃないよね?」

「血晶に何かエネルギーがあるとか?それか…案外、光り物が好きなだけかもしれないわよ?」

「テコンキャットが出払ってるといいわね、それなら倒さなくても済むし」

「わ、わたしの顔見て言わないでよユニちゃん…そう思ってないって言ったら嘘になるけど…」

「けど、わたしも戦わずに手に入れられるならそっちの方がいいです」

 

それはその通りだ、と私はコンパの言葉に心の中で賛同する。大概のモンスターなら私達の相手じゃないし、例外級の強さを持つモンスターでも、まぁまず『逃げる事も叶わず全滅』なんて羽目にはならない。…とはいえどんなモンスターでも油断すれば怪我する可能性はあるし、慢心していれば足元を掬われる事もあり得る。だからこそ、端からそうならずに済む方が一番良い…って思うのは、当然だよね。

 

「…っと、ちょっと待って下さい」

「……?どうしたのユニちゃん」

「あそこ、サイズ的にもあり得そうでしょ?」

「確かに…ちょっと見てくるよ、皆はここで待ってて」

「イリゼちゃん、一人で大丈夫ですか…?」

「見てくるだけだから大丈夫。むしろ人数多い方が足音とかでバレちゃいそうだし」

 

と言って私は前進。万が一の為にバスタードソードを手元に出した後、ゆっくりとユニが見つけた洞穴へと入っていく。

そこから数分後……

 

「……ふぅ、ただいま」

「ご苦労様ですイリゼさん。それで、どうでした?」

「そうだね…良いニュースと悪いニュース、どっちから聞きたい?」

「良いニュースと…悪いニュース?」

 

調査を終えた私が含みのある表現をすると、ユニが怪訝な表情を浮かべながら聞き返してくる。総合的に言うと悪い結果を伝える事になるんだけど…一回言ってみたかったんだよね、この台詞。

 

「えと…どうしようかな…」

「上げてから落とされるのは嫌だし、悪いニュースからにしない?」

「えっ…わ、悪いニュースからにするの…?」

「……?何?悪いニュースからじゃ不味いの?」

「それは、その…悪いニュースを聞いた後に良いニュースを聞いても意味無いというか、良いニュースは悪いニュースの前情報も兼ねてるというか……」

「えぇ、何よそれ…だったらわざわざ選択肢出す必要ないでしょ」

「そ、その通りです…」

 

アイエフに呆れ気味に突っ込まれた私は…ご覧の通り、言葉を返せませんでした。……思い付きで妙な事するべきじゃないね、うん…。

 

「ま、いいわ。なら良いニュースから教えて頂戴」

「う、うん…こほん。良いニュースって言うのは、巣の中にはテコンキャットが一匹もいなかったから戦闘になる心配はないよって話」

「それは良かったです。なら血晶も安心して採れるですね」

「…と、私も思ったんだけど……」

「あ、ここから悪いニュースなんですね」

「そうだよネプギア、えー…いないのを確認した私は血晶を探したけど…血晶らしき物は見つからなかった」

 

ゆっくりと首を横に振るう私。もう分かったよね。悪いニュース先に聞いてたら後で良いニュース聞いたって何の得にもならないって。…うん、ほんとアイエフの言う通りどうして私はこれで二択にしちゃったんだろう…。

 

「そ、それじゃ確かに意味ないですね…今回は血晶のない巣だったんでしょうか…」

「それか、アタシの見立てがそもそも間違っていて、あれは巣じゃなかったとか……」

「いや、それは違うと思うよ?」

「ほぇ?どういう事です?」

「血晶そのものは見つからなかったんだけど…鉱物を採った形跡はあったんだよ。それも、最近出来たっぽいのがね」

 

一部だけ埃を被っていない岩盤、そこに付いた新しい傷、そしてテコンキャットのものとは思えない足跡。そこから私は、誰かが血晶を採掘したのだと推測した。けれど、問題は……

 

「だからどうしろ、って話よねそれって…」

「そうですね。いくらアタシ達に必要だからって、その相手が譲ってくれたり交渉に乗ってくれたりするとは限りませんし」

「そもそもどこの誰かも分からないもんね。イリゼさん、その形跡から誰かって分かります?」

「うーん…足跡がやけに小さかったから、大人が採った訳ではないと思うけど…」

「それだけじゃ、探せないですね…」

 

コンパの締めに皆が頷き肩を落とす。別にテコンキャットの巣はこの一つのみ…って事はないだろうし、出発当初は『一つ目から見つかるとは限らないよねー』なんて思ってたけど…いざ巣を見つけたとなると、しかもそれが家主不在で、更にもう少し早ければ血晶入手出来たのかも…となると、気を落とさずにはいられない。でも、無かった以上仕方ないし、採った人探しは絶望的だから…と諦め、次の巣を探そうとしたところで……

 

『……あれ?』

 

私達は、揃って眉をひそめた。眉をひそめ、視線を合わせて…アイコンタクトで伝え合う。

──今、声が聞こえなかった?

 

「向こうから聞こえたよね…?」

「声的には、モンスターに襲われてる最中って感じじゃなかったけど…」

「…もしかして、血晶を手に入れた人の声じゃ……?」

『いやそんな都合良い事……あるかも(です)…』

 

そのまさかの可能性を思い浮かべてしまう私達。普通に考えれば、そんな都合良い事あり得ない。……けど、ここは信次元。ここはゲイムギョウ界。あり得ない様な事が、案外あり得てしまう、トンデモワールド。この世界で、このタイミングで声がしたんだから…その可能性を信じないのはあまりにも勿体ない。

 

「…行ってみる価値はありそうね」

 

アイエフの言葉に私達はこくりと頷き、声のした方へと歩き始める。その最中にも時折声は聞こえ、更に声の主は水辺付近いるのか段々と水の流れる音も混じり始めた。

そして、いよいよ声がはっきりと聞こえてきた…というところで私が目にしたものは……

 

「ちゅーちゅちゅちゅ!正に対岸の火事ならぬ対岸の猫っちゅね!オイラの策は完璧だったっちゅ!」

 

──数匹のテコンキャットと、水辺を挟んだ対岸側からテコンキャットを煽りまくる二足歩行のネズミだった。

 

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

((……ぽかーん…))

 

ぽかーんとしてしまった。その斜め上にも程がある光景に、私達は揃ってぽかーんとしてしまった。心の声とはいえ、ぽかーんと言ってしまう程ぽかーんとしてしまった。

 

「悔しかったら来てみるっちゅー!猫パンチの一つでもやってみろっちゅー!」

 

……本当に、これは何の光景だろうか。私達は一体何を見せられているんだろうか…と私が真剣に考え始めようとした時、ユニが「あっ……」と声を上げた。

 

「ユニちゃん…?」

「じょ、状況がアレ過ぎて最初見逃してたけど…あのネズミの後ろに落ちてる赤い原石っぽいのって…」

『……まさか、血晶…?』

 

ユニの指差す方を凝視すると…確かにそこには小さな赤い岩の様な物が転がっていた。……こんな偶然、あってもいいのでしょうか…ほんと、ゲイムギョウ界はバッドエンドが多数あるゲームのアニメ版ばりに何かの加護でも受けてるんじゃないのかな…加護云々っていうか私女神だけど…。

 

「どうします?泳いで渡るですか?」

「いや、それよりわたし達が女神化して渡った方が安全だと思います」

「うーん…これは陸路で向こう側に行った方がいいかもよ?テコンキャットは大分気が立ってるみたいだし、真っ直ぐ行ったら横槍を入れられかねないと思う」

「その場合、移動してる間に逃げられる…事はなさそうですね。両方共相手に夢中っぽいですし」

 

そんなやり取りの後、私達は走ってその場から離脱。すぐに向こう側へと渡れる道を見つけ、ネズミの方へと回り込んでいく。

そうして数分後……

 

「さーて、気晴らしは十分出来たし、そろそろ仕事に戻る……ちゅ!?」

 

ネズミと、回り込んできた私達は対面した。

 

「あー…残念、後少し待ってくれれば手の届く範囲まで近付けたのに…」

「な、何者っちゅかお前等は!まさか、あいつ等が雇った傭兵っちゅか!?」

「傭兵って…モンスターに雇われる女神候補生二人と女神、それに人間二人の組がいる訳ないでしょ」

「ならお前等は…って、女神!?くっ、女神の接近を許すなんて、オイラ一生の不覚っちゅ…!」

 

一体何故かは分からないけど、どうやらこのネズミは女神を敵視してる様だった。…因みに私達に気付いたテコンキャットは、向こう側から「やっちまえッ!」みたいな雰囲気を醸し出している。いやだから君達に雇われてる訳じゃないんだって。

 

「あの、事情はよく分かりませんが…その血晶、譲ってくれませんか?」

「血晶?あ、この石っちゅか…はっ、どうしてオイラがそんな事しなくちゃいけないんだっちゅ」

「何もただでとは言いません、代わりに何か欲しければ交換に…」

「そうじゃなくて、女神の要求に応える義理はないって事だっちゅ!」

 

ネプギアの頼みを跳ね除けるネズミ。いきなり譲ってと言った一回目はともかく、次の発言も荒く跳ね除けていたネズミに、私達は悪印象を抱くけど…ネズミはそれを察した様子はない。

 

「というか、突然後ろに回ってきた奴等の言う事なんて聞きたくないっちゅ!」

「うっ…全然聞いてくれそうにない……」

「そ、そこをなんとかお願いしますです!」

「コンパ、多分こいつに交渉は無理よ。諦めましょ」

「そうそう、諦めてさっさと帰る……ちゅ、ちゅちゅ!?」

『……?』

「……あ、あのあの…柔らかそうな髪のお嬢さん、お…お名前は、なんというんでちゅか…?」

「柔らかそうな髪…って、わたしの事ですか?」

 

左右を見回した後、私達の「いやコンパだよコンパ」的視線に気付いて聞き返すコンパ。ウェーブのかかった飴色の髪は、少なくとも私達の中じゃ一番柔らかそうだもんね。実際柔らかいし。

 

「あ、わたしなんですね…えっと、わたしはコンパって言うです」

「コンパちゃん…コンパちゃん……」

「な、なんでコンパさんの名前反芻してるのよあのネズミ…」

「……はっ!コンパちゃんだけに名乗らせるなんて失礼だったちゅ!次はオイラの番っちゅ!」

「へ?あ、ネズミさんの名前の事ですね」

「こほん、オイラの名前はワレチュー!ネズミ界の映えあるナンバー3、ワレチューとはオイラの事っちゅ!」

『…ナンバー…3……?』

 

勝手に話を進めて名乗りだすネズミ改めワレチュー。私達がナンバー3、というワードに反応したのをワレチューは感銘を受けてる…と見ている様だけど、私達は現在全然違う事を考えている。

 

「…ナンバー3、って言ったね、今」

「言いましたです。という事は、ネズミさんより上は二人…」

「ナンバー1は…恐らく王様よね」

「ナンバー2は、ねずみポケモンかな?」

「で、その次がアイツになると…」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 

『……大尉は?』

「ぢゅっ!?」

 

全員でワレチューの顔を見て、聞く。いや、だって…大尉だよ?ゲイムギョウ界にも負けず劣らずのギャグ補正世界にいる住人だよ?その大尉より上…?

 

「ね、ネズミさんはほんとにナンバー3なんですか?」

「ううっ…す、スペックならともかく人気の面ではオイラの方が……」

『…全世界の子供を、長年相棒と共に爆笑の渦へと誘ってるのに?』

「……う、うう五月蝿いっちゅ!そんな事言うならこれを投げ捨てるっちゅ!」

『まさかの逆ギレ(です)!?』

 

あからさまに慌てたワレチューは、なんと血晶を流れの速い水辺へと投げ捨てようとした!そのあんまりな行動に私達は目を剥いてしまう。

 

「さぁ!血晶を捨ててもいいんだっちゅか!?」

「いやいやいやいや!これ私達間違ってます!?っていうかそんな事言ってるとほんとにネズミ界で怒られますよ!?」

「うぐっ…し、知るかっちゅー!」

「うわ、なんか引くに引けなくなってない…?」

「なってるね、うん…」

「……って言うかイリゼ、あんたいい加減敵にまで敬語使うの止めたら?どう考えたって敬意払うべき相手じゃないし、今の貴女は社会から女神って思われてるのよ?」

「それは確かに…指摘ありがと、アイエフ」

「それはその通りかもですけど、今話す事じゃないと思うですよ二人共…」

 

と、私とアイエフはコンパに注意されてしまった。…でもアイエフの言う通りだね。コンパみたいに普段から敬語ならともかく、女神が謎のネズミや犯罪組織の下っ端に敬意を使ってたら私を応援してる人達に示しがつかないか…。うーん、そうなるとジャッジ辺りはどうするか微妙だけど……まぁそれはその内決めればいっか。

 

「む、無視するなっちゅ!……あ、というかよく考えたら、これを利用すれば女神へ有利な交渉が出来るんじゃ…」

「げっ、気付かれた…どうします?この距離なら確実に撃ち抜けますよ?」

「待ちなさい、ここで撃ったらその衝撃で血晶が水中に落ちかねないわ」

「で、でも結構不味い事要求されるかもしれませんよ?折角女神の信仰を回復しようとしてるのに、それと真逆の事言われたら…」

 

ワレチューが冷静になった事で不利になってしまった私達。水は幅が広く流れも速いから、落とされたら回収が恐らく厳しい。かといって要求を飲むかと言われると…それはない。まだ何も言われてないけど、何かワレチューからは悪の気配がする…でも、血晶は惜しいし……。

 

「…き、聞くだけ聞いてみる?ほら、こっちが従うフリすれば油断するかもしれないし…」

「…そうね。でも変な事言われても貴女達、従わなくなっていいんだからね?っていうか変な要求しようものなら私があのネズミはっ倒してあげるわ」

 

姉御感溢れるアイエフの言葉に後押しされた様に頷く、私達女神三人。そして、代表してネプギアが声を上げる。

 

「アイエフさん…分かりました。わたし達は要求を聞きます!言ってみて下さい!」

「ふっ、利口で助かるっちゅ。じゃあまずお前達女神には、オイラと一緒にこれを売る仕事を……」

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待ったーーっ!」

「ぢゅぅぅっ!?」

 

悪どい表情を浮かべ、要求を言い切ろうとしたワレチューは──茂みから現れた少女の飛び蹴りを横から受けて、跳ね飛ばされた。

 

「げふぅっ!い、痛いっちゅ!蹴られて地面に激突したのも痛いっちゅけど、それ以上にローラースケートのタイヤに肉が挟まれたのが痛いっちゅぅぅぅぅ!」

「そんなの知らないよ!それよりも可愛い女の子達に、なんて酷い事させようとしてるの!」

「ひ、酷い事って…まだ言い切ってない──」

「その子達は嫁候補としてずーっと前から狙ってたんだから、これ以上酷い事させようとするなら、このREDちゃんが許さないよ!」

「い、言ってる意味が分からないっちゅ…」

 

ローラースケートで器用に着地した少女…REDさんは、ぽーんと空中に飛んだ血晶をキャッチしてワレチューに啖呵をきった。その行動自体は凄くありがたいし、颯爽と現れて啖呵をきる様子はちょっと格好良かったけど……

 

((……ぽかーん…))

 

それを受けた私達は、本日二度目のぽかーんだった。え、っと…え?嫁候補?狙ってた?……性別的に生徒会長になれた方のエロゲーマーさんかな…?

 

「え、あ、あの…貴女は……?」

「将来の嫁の為、助太刀させてもらったよ!」

「よ、嫁…でもありがとうございます!」

 

血晶を持って私達の方に来るREDさん。いまいちまだよく分からない人だけど…助けてくれたのは事実。しかも普通に血晶を渡そうとしてくれたから、一番近かったネプギアがお礼と共に受け取ろうとして……

 

「そ、そうはさせないっちゅ!ネズミを蹴り飛ばした事、この一撃で後悔して……」

「ーーッ!ギアナックル!」

「ちゅうっ!?な、殴られ…ぢゅっ!?も、燃えてる!燃えてるっちゅー!」

 

…復活したワレチューが突っ込んできた。けど、咄嗟に反応したネプギアがパンチで跳ね飛ばし、その一撃で引火したワレチューはあたふあと水辺へ飛び込んでいった。……見事なまでの返り討ちだった。

 

「はぁ、はぁ…濡れ鼠になってしまったっちゅ…どうして火が出てくるんだっちゅか…」

「正義の心が燃えているからです!」

「説明になってないっちゅ……」

「それより、血晶は頂いたわよ?これでもまだアタシ達に有利に立てると思ってる訳?」

「ぐっ…こ、ここは戦術的撤退っちゅ!覚えていろっちゅ!」

「あ、逃げた!?」

「それと、コンパちゃんご機嫌ようっちゅ〜!」

 

私達には捨て台詞を、コンパにはにこにこ笑顔で挨拶して逃げ出すワレチュー。そうはいくかと私とアイエフが追ったけど…あっという間に草木の多い場所に入り、私達は見失ってしまった。…ね、ネズミだけあって速い……!

 

「逃げられた…結局なんだったのかしらあのネズミ…」

「喋ってたし、ただのネズミじゃないんだろうね…」

「でも、血晶は手に入れられたです。REDさんのおかげです」

「将来の嫁の為だもん、助けて当たり前だよ〜」

 

逃げてしまったものは仕方ない、と私達二人は戻り、REDさんに感謝を伝える。

左側で髪の毛をR字に結んだ赤い髪に、灰色の混じる黒目。胸のサイズはともかくぱっと見私達よりも子供っぽい彼女に、自然と私達は興味を抱く。…嫁発言関連も含めて。

 

「えっと…それで、結局貴女はどちら様なんです?わたし達とどこかで会った事あったですっけ?」

「ううん、今回は初めてだよ」

「今回『は』?」

「まぁまぁそれは置いといて、アタシはREDちゃん!嫁を探してゲイムギョウ界を旅してるんだ〜」

「嫁…そう言えば、聞いた事があるわ。嫁を探してゲイムギョウ界を旅している、不思議な女の子がいるって噂。もしかして、あんたの事?」

「おぉー!アタシって噂になってるんだー!アタシすっごーい!」

 

きゃっきゃと皆の問いに答えるREDさん。幾つか不思議な点はあるけれど、彼女が悪い人間じゃないって事は明白だった。…というか、この子…ちょっとテンションがネプテューヌっぽいかも…。

まだ疑問は多いけど、次は追求より私達の自己紹介の番。そう思ってまず私が口を開こうとしたところで……突然電子音が鳴る。

 

「これは…誰かの携帯?」

「っと、アタシのです…って、これは…!」

「……どうしたの?ユニ」

「今のは緊急用の通信です!ラステイションで何かあったのかも…!」

 

慌てて連絡に出るユニ。緊急用、と聞いた私達も何があったのかと心配になり、REDさんと共にユニを見つめる。そして、数十秒のやり取りの後……携帯を耳から離したユニは、言った。

 

 

 

 

「────うちのMGを輸送中の車が、郊外で正体不明の集団に襲撃を受けました!」

 




今回のパロディ解説

・ジェロニモさん
デスノートに登場するキャラクターの一人。ジェロニモが一晩でやってくれました、というそこそこ有名な台詞に掛けてみました。難易度的には…彼の方が上でしょう。

・王様
キングダムハーツシリーズの登場キャラの一人、ミッキーマウスの事。勿論KH自体公式パロみたいなものなので、実際にはディズニーシリーズのキャラと言うべきですね。

・ねずみポケモン
ポケットモンスターシリーズの代表的なポケモン、ピカチュウの事。ミッキーとピカチュウの次がワレチューと言ってますが…差があり過ぎて比較にならないでしょう。

・大尉
トムとジェリーシリーズの主人公の一人、ジェリー・マウスの事。大尉というのはある回でのジェリーの階級です。知ってる貴方はきっとトムジェリ好きですね。

・生徒会長になった方のエロゲーマーさん
ゲーマーズ!の登場キャラの一人、星ノ守心春の事。彼女も生徒会の先輩同様ハーレム思考なのかは謎ですが…まぁきっと理解あるのでしょう。碧陽の生徒会長ですし。

今回(というかOP)以降は、微妙に締まりが悪くなる…という事で技名に鉤括弧を付けないものとします。代わりに今後はOI同様技・スキル集を出し、技名と技名じゃない部分の区別はきちんと付くようにするのでご安心下さい。
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