超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第三十一話 制圧作戦、始動

ルウィーの生活圏から離れた、辺境の雪山。その一角の開けた場所に、工場施設は位置していた。

 

「第四第五陸戦歩兵中隊、展開完了しました」

「同じくこちら第二魔術機動部隊、いつでも行動可能です」

 

インカムから聞こえてくるのは各部隊長の通信。一瞬私も何か言ってみようかな…と思ったけど、そんなふざけた事を言える場ではない。というか、私達は独自に動くから逐一連絡する必要もないし。

 

「イリゼちゃん、確認ですけど…わたし達はとにかくキラーマシンを倒せばいいんですよね?」

「うん。厳密には施設内の戦力を削る事が目的で、その戦力の筆頭がキラーマシンなんだけどね」

「こういう施設でキラーマシンを…ってなると、アヴニールの取り引き妨害を思い出すわね。その時はルウィーじゃなくてラステイションだったけど」

 

私達がいるのは、施設の正面出入り口を目視出来る距離にある岩陰。作戦開始時刻になったらまず私達が侵入し、道場破りが如く侵攻していくというのが作戦の第一段階。だから私達の結果如何で作戦全体の進行速度も軍の側の負担も変わる訳だけど……幸い私達の中で緊張してる人はいなかった。

 

「こんな所に作るなんて…苦労したんだろうな〜」

「それを考えるとちょっと忍びないわね…情けをかけるつもりはないけど」

「悪い事は悪い事、ですもんね」

 

既に破茶滅茶な出来事や戦いを何度も経験してきたコンパアイエフと、筋金入りのマイペースなRED。およそ緊張とは無縁そうな雰囲気の私達が期待の戦力とされてるんだから、世の中変わってるよね。…恐らく一番変わってるのは女神の私だろうけど。

 

「……っと、そろそろ時間だよ。皆、準備はいい?」

 

作戦開始時刻の数分前にセットしておいた携帯のアラームが鳴り、私達は気持ちを切り替える。

 

「…ネプギアとユニは間に合わないみたいだね」

「ごめん……でも、その分も私が頑張るから心配しないで」

 

二人については昨日の段階でもう話したし、実のところネプギアとユニがロムちゃんラムちゃんの部屋で肩を寄せ合って寝ているのを見てきた。その上で、二人を起こさなかったのは私の判断。だから内心意気込んでいた私だったけど…そこでこつん、とアイエフに小突かれた。

 

「頑張るのはいいけど、変に気負ったりするんじゃないわよ?女神にとってキラーマシンは格下なんだろうけど、それでも油断すればどれだけ怪我するか分からないんだから」

「それに、わたし達もちゃんと戦えるんですから、頼るところは頼ってほしいですっ」

「そーそー、アタシも二人の分まで頑張るつもりだもん!」

「……だよね…うん。皆、二人がいない分の余裕はなくなるだろうけど、何かあればその時は頼むよ?」

『勿論(です)!』

 

皆からの言葉に私は一瞬驚いて…すぐに笑みを溢す。……全く、皆ってば…こういう時に心強過ぎて、これじゃ女神の私の立場がないよ…ふふっ。

そして、時間になると作戦司令(会議室にいた軍人さん)から作戦開始の通信がきて、私はそれに返答すると同時に皆と動き出す。

 

「取り敢えずは出入り口からどう入るか、ね」

「えーっと…男の人が二人見えるよ?倒しちゃう?」

「待った待った。あの人達は雇われてるだけの警備員かもしれないし、一度話し合いでの解決を試みたいんだけど…駄目かな?」

 

歩きながら侵入方法について会話を交わす。…別に話すの忘れてたんじゃないよ?さっきまでいた場所からだと、人なのか模様なのかよく分からなかったからだよ?

 

「まぁ…そうしたいならそれでいいんじゃない?イリゼなら近距離で先手取られても何とかなるでしょ?」

「二人ならまあ、女神化しなくても無力化出来るね」

「どんな話をするつもりです?」

「うーん…特務監査官としての立場を利用した話、かな?」

 

変に刺激しないよう、抜剣せずに向かう私達。暫く歩いたところで出入り口の見張りらしき二人は私達に気付き、顔を見合わせて何かやり取りを始める。さしずめ、「おいおい人来ちゃったぞ、どうする?」「そうだなぁ…てか女の子四人だけに見えるが…遭難かなんかか?」…ってところかな?

 

「あの人達が『近付く奴は問答無用で撃て』って指示を受けてませんように、っと……すいませーん!」

 

声が十分届くだろう距離まで来たところで私は声を上げ、小走りで見張りの人達の前へ駆け寄る。…すると、二人は扉を塞ぐ様に移動した。

 

「……どうしたんだい?登山の最中かな?」

「いえ、用事なんです」

「そうなんだね。えー…悪いけど、ここは企業の私有地なんだ。道が分からないなら案内してあげるから、帰ってくれないかい?」

 

一瞬考える様な表情を浮かべた後、二人は親切そうな雰囲気で私に応対してくれた。……けど、どうも慣れてない感じがする。それも人と話し慣れてない、ではなく演技に慣れてない感じの。

 

「案内、ですか…では、一つ案内してほしい場所があるんですが、聞いてもらえますか?」

「構わないよ、と言っても分かる場所に限るけどね」

「それなら…この中の、兵器生産工場内の案内は出来ますか?」

『……!?』

 

小首を傾げてそう私が訊いた瞬間、二人の眉がぴくり、と動いた。…やっぱり…この人達、嘘を吐き慣れてないんだね。まあ、こんな辺境の山の一角にわざわざ出向く人なんて滅多にいないだろうし仕方ないのかもしれないけど。

 

「は、はは…兵器生産工場なんて、勘違いしてないかな?ここは焼却場だよ?」

「焼却場?でしたら、焼却場の見学を…」

「だからここは私有地なんだよ、分かってくれないかい?」

「そうですか、なら仕方ありませんね……」

「分かってくれて助かるよ。じゃあ、真っ直ぐ帰って……」

「──特務監査官の権限を持って、これより本施設の強制監査を行わせて頂きます。邪魔をする場合、威力業務妨害に抵触致しますので、ご了承を」

『と、特務監査…!?』

 

そういう指示を受けているのか、あくまで隠そうとする見張りの二人。だから私は……女神の武力とは別の力、特務監査官としての権力というカードを切った。

本来は監査や監視がきちんと機能しない女神に対する牽制力として設置された特務監査官だけど、三権どころかほぼ全ての権威を超越する存在である女神にきちんと対抗出来るように、本来の目的からすれば過剰とも思える権力……それこそ、一般企業に対して監査の名の下一方的に捜査を行う事だって出来てしまう。だけどその分乱用すればえらい事になるし、私自身そんな事をしたら嫌な奴にしかならないから普段は名前すら出さないけど……今回は相手が既に非合法という事で話は別。

そして、私はそこから更に揺さぶりをかける。

 

「現在、本施設には工場建設時に関わる各種法律違反、違法兵器建造等の容疑がかかっています。これより強制監査を行いますが、その結果に関わらず法的制裁が発生するのはほぼ確定でしょう」

「や…えと、俺等は雇われっていうか…」

「経営者及び役員でなくとも、場合によっては処罰の対象となります」

「……っ…や、ヤバい仕事かもとは思っていたが、マジだったのかよ…おい、どうする?」

「ど、どうもこうも…顔と役職的にどう考えても相手は女神様だろ?…絶望的だ……」

 

法の執行者と言わんばかりに冷たい声音で、説明の定でもって二人を暗に脅す。それを受けた二人は雪山でありながら額に汗を浮かべ、明らかに動揺した様子で小声のやり取りを始めた。

もう演技をする余裕なんて皆無な見張りの二人。そんな二人の言動を見た私は……心の中で笑みを浮かべる。…よし、機は満ちた…。

 

「……まあ、それはともかくちょっと困り事があるんですよ。聞いてくれませんか?」

「そ、相談…ですか…?」

「はい。先程言った通り強制監査をするつもりなんですが…私達、内装は全く知りませんし、中にいる人が素直に言う事を聞いてくれる保証もないんですよね。だから、施設の地図があると凄く助かるんです」

「…俺等に、地図を渡せと…?」

「いやいや、ただの愚痴ですよ。はー、どこかに出入り口を開けてくれた上、地図の提供までしてくれる人達はいないかなー。もしいてくれたら、その人達の事は『良心に従い、積極的に監査に協力してくれた善良な方々』として口添え出来るんだけどなー。その場合処罰は受けないか、受けてもかなり軽いもので済むんだろうなー」

『…………』

「…聞いてくれてありがとうございました。それで…何か、あります?」

「…………」

「…………」

「……地図は、手書きでも構いませんか…?」

「勿論」

 

ごくり、と唾を飲み込んだ二人の質問に、私はゆっくりと首を縦に振る。そう……

 

 

────交渉成立である。

 

「……で、こことここが繋がってる訳ですよ。小さいメモ帳しかなくてすいませんね」

「いえいえ、むしろ無理に一枚に詰め込まず二枚に分けてくれてありがたい位です」

「なんのなんの。あぁそうだ、カードキーもどうぞ。これで重要区画以外はすんなり入れる筈ですよ」

「わっ、こんな物もくれるんですか?」

「へへっ、これで平和に一歩近付くなら安いもんです」

「ふふっ、こんな善良な方々に接触出来るなんて私達は幸運です」

 

にっこにこで地図のメモとカードキーを受け取る私。私もにっこにこ、見張り…もとい善良な二人もにっこにこ、これぞwin-winの関係だよね。勢い余ってにっこにっこにーとか言いそうなレベルでにこにこだよ。

 

「それでは……どうぞ!」

「はい!さ、皆行こうか」

「え、えぇ……」

「……皆?」

 

二人が私に渡してくれたのとは別種のカードキーで扉を開いてくれたところで、私は皆へと振り返る。前の私は政治的能力がないどころか知識も足りていなかったけど、今の私はそうじゃない。そんな私の様子を見せたんだから、付き合いの長いコンパとアイエフはさぞ感慨深い表情を……

 

「……悪い女になっちゃったわね、イリゼ…」

「イリゼちゃんがそんな子に育っちゃって、わたし達は悲しいです…」

「悲しまれてた!?え、何その娘が不良になった事を嘆く家族みたいなの!?わ、私悪い女にはなってないよ!?」

「そうね、どんな形であれ成長は喜んであげなきゃよね…」

「だからダークサイドへの成長はしてないって!誰も怪我しないどころか双方が利益を得てる、ベストな状況に持っていっただけだよ!?」

「…結果だけを追い求める人になるのは、寂しい事です…」

「ねぇ!?私の言葉聞いてるの!?それじゃ私が真っ当じゃない手段取ったみたいじゃん!」

「えと、イリゼ…今のはアタシからしてもちょっとうわぁ…って感じなんだけど……ま、まあでもアタシはそんなイリゼも魅力的だと思うよ!うん!」

「そんな慰めは要らないよッ!」

 

してないどころか完全に私が悪女になったと思ってたよ!しかも弁明をまるで聞いてくれなかったよ!……酷い、酷過ぎる…友達なのに…。

 

「しょぼーん…」

「あ…く、口で『しょぼーん』って言う位イリゼちゃんが落ち込んじゃったです…」

「これから突入、って時にこれは不味いわね…ほらイリゼ、しゃきっとなさい。今の状況忘れた訳じゃないでしょ?」

「そ、それはそうだけどさ…いいもん、じゃあもう何か困った事あっても私何にもしないもん」

「と、言いつつ実際には何とかしようとしてくれるんですよね」

「そうね、だってイリゼだものね」

「そんな都合よく持ち上げられても困るよ…信頼が嬉しいから元気出すけどさ…」

「あ、元気出すんだ…」

 

我ながらちょろい奴だなぁ…と思いつつも、立ち直って扉をくぐる。続く形で皆も歩く最中、後ろから声が聞こえた私は立ち止まった。

 

「…約束は、守ってくれますよね?」

「約束?何の事やら……私は良心的な人に協力してもらったという事しか覚えにないんですけど…これだと不味かったりします?」

「い、いえ。では監査頑張って下さい!」

 

びしっ、と敬礼なんてしてくれた二人に軽く頭を下げて、私は先行する三人に合流。ここから私達による施設強襲はメインフェイズを迎えるのだった。……皆さんは私を悪女なんて思ってないよね?私、信じてますからね?

 

 

 

 

「死にたくなければついてこい!…じゃなくてついて来ないで!」

 

行く手を塞ぎ、或いは後ろから撃とうとする敵の武器を引ったくり、はたき落とし、蹴り飛ばす。狼狽えている間にその人達の間を駆け抜け、コンパ達も後から続く。

交渉による侵入から数十分後、私達は施設防衛に動く人を蹴散らしながら(今のところ完全不殺だけど)侵攻中だった。

 

「アイエフ!次は左だっけ!?右だっけ!?」

「左よ!で、その次は右!」

「了解……っとッ!」

 

地図のメモを持つアイエフに次の目的地…まだ破壊作業を行なっていない格納庫の場所を聞いて、十字路を曲がろうとした瞬間逆側から銃弾が放たれた。けどそれに私は反応し、瞬時にナイフ二本を精製して全弾撃墜。次の射撃が来る前にそのナイフを投擲し、弾丸の発生源であるライフルを破壊する。

施設は工場だけではなく倉庫も兼ねていたらしく、格納庫の中には結構な数のキラーマシンが格納されていた。しかも格納庫は一つではなく、場所も襲撃に備えてか位置がバラバラ。そのせいで私達は、現在施設内一周マラソンみたいな事をする羽目になっていた。

 

「こういう場合、手分けして動いた方が手っ取り早いけど…」

「皆で動かないと危ないんじゃないかな?」

「そうですね。それに、わたし一人じゃキラーマシンは倒せないと思うです…」

「一つずつ潰してくしかないって事…って言ってる内に到着したわね」

「皆、遠隔攻撃の準備はいい?」

 

格納庫前の扉で立ち止まり、エラーを起こさない様丁寧にカードキーをパネルにかざす。すると当たり前ながら、電子ロックが解除されて扉が開く。…壊そうと思えば壊せるけど、やっぱりこっちの方が楽だし安全だよね。気を利かせてくれた事に感謝しないと。

中に入ったところで目に映るのは、キラーマシンを始めとする多数の機動兵器。その中にはラステイションで戦った空戦仕様のキラーマシンもちらほらと見受けられる。

 

「これはまた壊し甲斐のある数だね!」

「まぁ、気持ちは分からないでもないかな。それはともかく、一斉掃射いくよ!ファイヤッ!」

 

扇状に広がった私達は、各々技やら魔法やらを発動し、私の掛け声で一斉に攻撃。幾らキラーマシンやそれに準じる機動兵器と言えど、起動していなければただの鉄の塊に過ぎず、その状態ならばそれなりの威力を持つ遠隔攻撃でも有効打を与える事が出来る。だからこその、一斉掃射。

精製した武器や爆炎、魔力によるビームや熱線による第一陣が起動兵器群に直撃し、最前列の兵器を破壊していく。そして、それによる煙が上がる中で放たれた第二陣。だが……

 

『■■■■ーー!』

『な……ッ!?』

 

着弾の直前、煙を霧散させながら展開された光の壁……否、キラーマシンシリーズの装備である高エネルギーシールド。強固なエネルギーの盾に衝突した私達の攻撃は、全て弾かれ四散していく。見れば、次列以降の機動兵器には次々とメインカメラに光が灯り始めていた。

 

「向こうがこっちの侵攻に追いついたみたいね…」

「なら、ここからはいつも通りの戦い方をするだけだよ。とにかく私が撃破しつつ注意を引くから、三人は一機一機確実に倒していってくれるかな?」

「はーい、それじゃ皆頑張ろーね!」

「もし怪我したら、その時はちゃんと言って下さいね?」

 

コンパの言葉に私達は頷き、次の瞬間には散開。私は真っ直ぐに突っ込んでいき、三人は屋内で本来のスペックを発揮出来ないであろう空戦仕様から狙っていく。……そこからは、激戦だった。

 

「せぇぇぇぇぇぇいッ!」

 

機動兵器の間を縫う様に飛び回りながら、目に付いた機体を手当たり次第に攻撃していく。時には武器を射出し、時にはシェアエナジーの爆発で長剣を加速させて斬り裂いていく。殆ど全方位から私に向けて巨大な武器や装甲に覆われた尾を振るわれ、ビームが駆け抜けていく中で飛び回るのは相当な臨場感と緊迫感、そして高揚感があった。

 

「この程度の、攻撃でぇッ!」

 

真っ直ぐに振り下ろされた両刃の斧を紙一重で躱し、そこから瞬時に前へと跳んで肘関節を一突き。次の瞬間後ろから迫る装甲尾の存在を直感的に察知し、振り向くと同時に長剣を振るって装甲尾を横へと逸らす。息つく間も無く襲いかかる攻撃に対し、私は全神経全感覚をフル稼働させる事で対応していた。

 

(敵陣中央にいる限り、ビームは放たれても散発的か私が空中に飛んだ時のみ。無人機でも、そう簡単には味方ごと撃ったりはしない訳ね)

 

両手の武器や尾での攻撃なら気付くのが直前になっても防御という選択肢を取れる。けど、ビームは長剣一本で防げる訳がないから当然厄介さ度合いが跳ね上がる。それを防ぐ為に敢えて敵陣のど真ん中に身を躍らせていた私だったけど……そんな私の前に、明らかにキラーマシンのものとは違う攻撃が通り抜けていった。

 

「銃弾!?……まさかッ!」

 

捻る様な動きで攻撃を避けながら視線を出入り口へ向けると…そこには銃を持った人、施設の人間がいた。……これは不味い…。

 

「皆!出入り口付近の人を倒せる!?」

「む、向こうまで行くのは無理ですっ!」

「キラーマシンと銃弾の両方を避けながらはキツ過ぎるよ!」

「く……っ!」

 

その場で歯噛みをする私。キラーマシンや他の機動兵器の遠隔武装は対兵器、大多数を想定したものだから味方に当たればダメージに繋がるけど、あの人達が持つライフルは対人用だからもしキラーマシンに当たっても大半は弾かれて終わってしまう。だからこそ、あの人達は乱戦状態の私VS機動兵器群に対しても躊躇いなく撃てているのだった。

 

(ここからじゃまともな攻撃も出来ないし、出来たとしても致命傷を与えちゃう危険性が大きい。かといって無視してたら私に当たるのが時間の問題だし、どうすれば……?……いや、待った…)

 

防御と回避に専念する事で何とか避けながら、私は考える。今ある情報全てを洗い直し、考えて……思い付く。そうだ、無人機は心理戦なんて通用しないし、合理的にしか動かないけど…人間は、そうじゃない。

 

「ふ……ッ!」

 

回転斬りで攻撃を牽制し、スペースが空いた瞬間近接武器を多数精製。それ等を全方位にまとめて放ち、周りの機体全てに攻撃を仕掛ける。

予想通り装甲、或いはエネルギーシールドで難なく攻撃を弾いていく機動兵器。でも、そのおかげで私には大きな余裕が出来た。数秒足らずの短い…けどこの状況においてはとても大きな余裕が。

 

「……ッ!天舞参式・睡蓮ッ!」

 

私の頭上に精製された、巨大な大剣。私の身長よりもずっと大きい、それこそキラーマシンやMG用武装サイズの大剣を両手で握り、私の力とシェアの爆発の併用でもって前方のキラーマシンへと斬りかかる。斬りかかり…頭部諸共胴体を大きく削り取る。

 

「ふんッ!」

 

巨大剣がキラーマシンを腰部まで斬り裂いたところで私は手を離し、剣の柄を蹴って一気にキラーマシンの肩へと飛び移る。そして……

 

「こ……のぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」

 

半壊した頭部の切れ目に腕を突っ込み、全身の膂力を込める。キラーマシンの肩を踏み締め、お腹の底から声を上げ、内部の機材を破壊して……頭部の片側を引き千切る。

そのあまりにもパワフルな、そして乱暴な破壊行動に目を剥いたのか、私への銃撃は止まっていた。それに気付いた私は一瞬笑みを浮かべ、その後すぐに憤怒の表情へと切り替える。

 

「こんな状況じゃ、流石の女神も誰一人傷付けずに制圧するのは正直難しい。だから──命が惜しいなら、邪魔を、するなッ!!」

 

そう吠えて、私は引き千切った頭部の片側を投げ付ける。狙ったのは銃を持つ人達より数mも前の床だったけど……その人達は蜘蛛の子を散らす様に逃げて行ってしまった。…あの人達には、私が人の形をした猛獣かモンスターにでも思えてるんだろうな。

 

(でも、そう思ってくれたなら御の字。それなら、暫くは戻ってこないだろうしね)

 

と、私が演技の成功に安堵するのも束の間、人と違って恐れたりビビったりを一切しない無人機が次々と攻撃を仕掛けてくる。既に全機頭部を引き千切られた機体は戦闘不能だと判断したらしく、その攻撃は容赦の欠片もない攻撃だった。

跳躍して回避した私への次の苦難は、キラーマシンが次々と放つビームの乱撃。それをヒヤヒヤしながら乗り切った私は、再び意識を機動兵器群に戻して戦闘を続行する。

 

 

 

 

それからまた数十分後。更に侵攻を進め、次の格納庫を制圧に入る私達だったけど……ペースは、明らかに落ちていた。

 

「はぁ、はぁ…もー!ロボット多過ぎ!ガンダム無双と間違えてるんじゃないの!?」

「格納庫に暖房は点いてないってのに、もう汗だくね…」

 

堪らず叫ぶREDと、焦燥を露わにするアイエフ。コンパは二人程は動いてないから身体的疲労は少ない様子だけど、治癒担当として常に気を張り巡らせてるだろうから精神的疲労は四人の中でも一番の筈。私は一応まだまだ戦えるけど……正直、開戦直後に比べると勢いは間違いなく落ちていた。

 

「RED!誘導してビームを撃たせるよ!その先にコンパとアイエフは攻撃をお願い!」

 

少し前から作戦を変更し、私も三人に合流していた。そうしてからは私と誰かが引きつけ、残りの二人が着実にダメージを与えるという戦法で効率と引き換えに負担を減らしていたけど……どうやらそれもそろそろ限界らしかった。

作戦通りに一機行動不能にした私達。でも、次の瞬間二つの呻き声が上がる。

 

「い"……っ!?」

「ぐっ……!」

「RED!?アイエフ!?大丈夫!?」

「……!イリゼちゃん!三十秒…いや、二十秒耐えて下さいです!その間にわたしがお手当てするですっ!」

「……っ…頼むよコンパ!」

 

怪我を負って後退した二人に駆け寄ったコンパの指示を受け、私は再び敵陣へと突撃する。本気のコンパの治癒魔法なら確かにその短い時間で応急手当てが出来るんだろうけど、やっぱりその間は注意を引きつけておかなければならない。

 

(休憩なしで継戦したら、今後も怪我は増える筈。ここは一度通路に退いて……いや、それともいっそ…)

 

私の脳裏によぎるのは、軍の施設内突入。そのタイミングは中で戦う私に任されていて、当初私はキラーマシンを全て撃破した後にしようと思っていたけど…キラーマシンの数は私の予想を大きく超えていた。

私達の役目はあくまでキラーマシンの数を減らす事。その目的は十分に達成出来ている筈で、これ以上今の状態で戦うのは本当に取り返しのつかない事になり兼ねない。……だったら、ここら辺が潮時だよね。

 

「……皆!もう十分だよ!私が道を作るから、皆は牽制しつつ撤退を────」

 

 

 

 

 

 

──その瞬間、二条のビームと二つの氷塊が私の眼前を駆け抜けた。

コンパ達のものでなければ機動兵器群のものでもない、完全に想定の外からの攻撃に目を見開く私。その間にもその攻撃は続けられ、私同様に想定していなかった様子のキラーマシンが立て続けに破壊されていく。

最初の攻撃は、何がなんだか分からなかった。けど、二条のビームと二つの氷塊といえば、私には思い当たる事が一つある。作戦開始時にはあり得ないと思っていた、けど0%ではないその可能性。まさか、でもそうだとしたら…という驚愕に包まれた私が、それ等の攻撃の発生源に目を凝らすと……

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました皆さん!──女神候補生、ただ今到着ですっ!」

 

……そこには、ネプギア達候補生が…四人の女神候補生全員が武器を構えて立っていた。




今回のパロディ解説

・にっこにっこにー
ラブライブ!のメインキャラの一人、矢澤にこの代名詞的台詞(掛け声?)の事。にこではなくイリゼなので、やるなら「いっりいっりにー!」…?…う、うーん……。

・「死にたく〜〜こないで!」
ターミネーターシリーズにおいて複数のキャラが言った台詞のパロディ。そう言いつつ全力で戦闘行動を取るイリゼは中々にアレですね。あくまで不殺に徹していますが。

・ガンダム無双
無双シリーズとガンダムシリーズのコラボ(というか無双のガンダムver)の事。流石にそんなとんでもない規模のキラーマシンが出てきてる訳ではないですけどね。
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