超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第三十三話 決着は唐突に

ピンチはチャンス、という言葉がある。ピンチはピンチなんじゃないかなぁ…とわたしは思うけど、チャンスはピンチ(になり得る可能性がある)の逆だって考えれば、そうなのかもって思えてくる。だって、有利になったり何かに成功したりしたら、どうしても嬉しさとか安心感、達成感で油断をしてしまうから。──例えば、今のわたし達の様に。

 

「くっ……完全に抜かったわね…!」

「こんな装備があったなんて…」

 

遠隔操作端末はプラネテューヌでも研究されているし、うちのMG…ルエンクアージェもざっくりした区分けで言えば、遠隔操作端末に該当する。けど、一武装として機動兵器に搭載されているのを見るのはこれが初めてだった。

…でも、だからってそれは言い訳になったりしない。わたしとユニちゃんは確かにあの時油断してて…そのせいで、イリゼさんが被害を被る事になったんだから。

 

「…イリゼさん、大丈夫だよね?あれ位じゃ死なないよね…?」

「大丈夫よ、イリゼさんなら。…アタシ達が、追撃を許したりしなければね」

「……!そ、そうだよね…!」

 

イリゼさんを投げ飛ばしたキラーマシンは、壁に向けて胸部ビーム砲を放とうとしていた。その向きは、明らかにイリゼさんが飛んでいった方と合致している。それに気付いたわたし達は…勿論、キラーマシンの自由になんてさせない。

 

「女神候補生二人を無視なんて、舐めた事してくれるじゃないのよッ!」

 

女神化するわたし達。ユニちゃんはそれと同時に銃撃を始めて、わたしは飛翔して距離を詰める。…一瞬、無事女神化出来た事に一安心する気持ちが芽生えたけど……同じ轍は踏みません…!

 

「やぁぁぁぁっ!」

 

わたしの接近とユニちゃんの銃撃に気付いたキラーマシンは後退。ホバーで滑る様に移動しながら武器とエネルギーシールドでわたし達の攻撃を捌いていく。

 

「ネプギア!そいつ相手に正面から戦える!?」

「いけるよ!わたしはイリゼさんやお姉ちゃん程強くはないけど…機械に対する知識では負けてないもん!」

 

正対したまま両腕のビームを撃ってくるキラーマシンに対し、わたしはバレルロールで回避しながら距離を詰める。機械は本能とか直感とかはないけれど、代わりにレーダーやセンサーがある。戦闘の勘とか身体に染み付いた動きとかはないけれど、戦術データや設定された動きがある。そしてそれは似てる様だけど……実際は全然違う。

 

(機械は確率の低い賭けなんてまずしない。だから、『攻撃は最大の防御』が通用する…!)

 

射撃をかいくぐりながら接近して、M.P.B.Lを振るう。両手の武器で防御されたらすぐに引っ込めて次の一撃を狙って、その合間には近距離射撃も交える。すると予想通り、キラーマシンは無理に私を弾き飛ばしたり相討ち覚悟で攻撃したりはせずに防御に徹していた。

今のところわたしのペースだけど、攻撃は全部防がれてるからあまり有利という訳ではない。でも……わたしは、一人じゃない。

 

「そのまま引きつけてなさい!まずはその頭を吹っ飛ばしてやるわッ!」

 

M.P.B.Lとトゲ付きハンマーで鍔迫り合う。その最中、キラーマシンの肩越しに見えたユニちゃんは、背後からキラーマシンを狙っていた。

次の瞬間、割れる様な音と共にキラーマシンの頭部が揺れる。

 

「よしっ!ネプギア、今ので後頭部の装甲を剥がせたわ!」

「なら、もう一度狙って!それまではわたしが……わぁっ!?」

 

引きつけている。そう言おうとしたわたしだったけど…突然キラーマシンが下がった事でがくんと前のめりになって、言うどころか危うく舌を噛みかける。それでも何とか踏み留まって、下がってしまった視線を上げると……キラーマシンはその場で反転してユニちゃんの方へと向かっていた。

 

「やっぱり一筋縄じゃいかな──」

「腕!そっち行ったわ!」

「う、うん!」

 

キラーマシンはユニちゃんへ頭部と胸部からの砲撃を浴びせながらも両腕下部を分離、左右から挟み撃ちにする様な形でわたしへと飛ばしていた。

それをM.P.B.Lの射撃で牽制しながらも動きを見るわたし。遠隔操作端末である両腕下部は、後方のスラスターによる噴射とワイヤーの巻き戻しによる後退を利用してわたしの射撃を巧みに避けていく。その動きは、同じ位のサイズのマシン系モンスターとは比べ物にならないレベルだった。

 

(マシン系とは段違いなのは、恐らくAI系統を本体に積んでるおかげで内部構造に余裕があるのと、その本体AIが高性能だから。メインカメラがユニちゃんの方を向いてるのに正確な動きが出来るのは、多分こっち側にもカメラを搭載してるから。そして、撃破しようと思っても……)

 

マニュピレーター中央からのビームを斬り払って、片方へと急接近。そこから近接格闘で斬り裂こうとしたけど…横槍の様に今度は本体からのビームが飛んできて、わたしは斬撃を断念する。

遠隔操作端末の恐ろしさは色々あるけど、その中の一つには本体より先に落とそうと思わせる…というのがある。機能を限定し、更に一部を本体へ移譲してる分遠隔操作端末は小さくてもそこそこの強さがあって、しかも本体が遠隔操作端末の運用に特化してる訳じゃなければ大概は本体も強いから、遠隔操作端末に意識を向け過ぎると本体に不意を突かれてしまう。…いつどこへどう動くかが完璧に分かってる遠隔操作端末相手なら、相手と近接戦になってても心配なく攻撃出来るし、ね。

 

「ごめんネプギア!取り逃がした…!」

「気にしないで、それよりもちょっと作戦会議がしたいんだけど…戦いながら出来そう?」

「作戦会議、ね…出来ない理由が見つからないんだけど?」

「だと思ったよ。じゃあまずは、わたしの話を聞いて!」

 

両腕下部を引き戻したキラーマシンは四門の砲をわたし達に向け、胸部のビーム砲も拡散モードに切り替えて物量で押してくる。それをわたし達は壁に沿う様に飛び回りながら避け、これまでの戦闘で分かった事を伝える為に声を張り上げる。うぅ、ビームの音とユニちゃんの射撃音、それにその両方が壁や床に当たる音で騒がしいから大声出さないと会話が通用しない…。

 

「…って感じで、このキラーマシンには隙がないの!近付いても距離を取っても、攻めても守っても上手く対応してくる!だからはっきり言って、弱点を上手く突いて〜…ってのは通用しないよ!」

「そう…ってそんなマイナスな情報だけ出されても困るわよ!完全無欠な訳がないし、ほんとは弱点あるんでしょ!?」

「あるにはあるけど、わたし達じゃ突けないと思う!…あ、いや絶対無理って訳でもないけど…この施設の中には色んな人がいるんだもん!あんまり無茶苦茶は出来ないよ!」

「だったらどうする気!?っていうか、それを話す為の作戦会議なの!?」

「ううん!策はあるよ!だって、突ける弱点はないけど…欠点ならあるから!」

 

声を張って、気付いた欠点を…対キラーマシンの突破口を口にする。それは少なからず危険も孕んでいて、わたしよりもユニちゃんの方が負担が大きくなる作戦だったけど……

 

「へぇ……ネプギアも言う様になったじゃない!いいわ、その案乗ったッ!」

 

ユニちゃんは、不敵な笑みと共に快諾してくれた。そのユニちゃんの笑みを見てわたしは……ううん、わたしも自信が溢れてくる。

自分で言っておいてアレだけど…自分の案には、多少の不安もあった。機械関連に詳しいとはいえ所詮はわたしの推測だから、わたしの提案した作戦は根本から問題がある可能性も存在している。でも、ユニちゃんは不安を口にしないどころか、自信たっぷりの姿を見せてくれた。そんな姿を見せられたら…友達でライバルのユニちゃんがそこまで強気なら、提案したわたしが不安がってなんかいられないよね。

 

「それじゃあ……やるよユニちゃん!」

「ヘマするんじゃないわよネプギア!」

 

絶え間なく砲撃を続けるキラーマシンだけど、弾幕の密度は時々薄くなる。その瞬間を狙ってわたし達は弾幕を突破……じゃなくて、突撃をかけた。

普通なら、砲撃をかけてくる相手に正面から突っ込むなんてただの自殺行為。でも、候補生でも女神は女神。常識外れの動体視力と反応速度、それに自分でも上手く説明出来ない本能的な勘をもってわたし達は砲撃を避けて、一気に至近距離にまで入り込む。

わたしとユニちゃんによる、同時の飛び蹴り。これはそこそこの危険を背負ってまで仕掛けた攻撃だったけど…それをキラーマシンは両腕の武器でそれぞれ受けて、そのままわたし達を左右に弾き飛ばす。

 

「ちぃ……っ!」

「まだまだ…!」

 

両腕を振り抜いた後すぐ腕の向きをズラして、両腕下部の砲口をわたし達へと向けるキラーマシン。次の瞬間にはビームを放たれるけど、わたしはM.P.B.Lの剣先を床に突き立てて急ブレーキをかけた後横に転がる事で、ユニちゃんはそのまま壁まで飛んた後壁を蹴って上へ跳ぶ事で追撃を回避する。

そこからまた接近をかけるわたし達。貫手、裏拳、肘打ち、回し蹴り…近付く度に攻撃をかけて、その度わたし達は失敗に終わる。大概は当たる前に防御か迎撃されていたし、突破出来ても…装甲に貫手したり裏拳したりしてもダメージがあるのはわたし達の方。…お姉ちゃん達みたいなプロセッサだったら装甲を軽く抉る位は出来たのかもなぁ。

 

「…ぐっ……!」

「っと、ユニちゃん大丈夫?」

 

何度かの攻防の後、装甲尾に叩かれてわたしの方へと飛んでくるユニちゃん。それをわたしは受け止める。

 

「え、えぇ、防御自体は出来たから大丈夫よ。…けど、アンタもイリゼさんもよくこんな奴相手に正面から近接戦出来るわね…」

「そこはまぁ、メインの戦闘距離の関係だよ。ほら、前にわたしがパンチでユニちゃんのキックに押し勝った事もあったでしょ?」

「…なにそれ嫌味?」

「そ、そういうつもりじゃ…それより戦闘だよ戦闘!」

「ふん、今に見てなさいよ…」

 

わたしとしては具体例を出しただけのつもりだったのに…ユニちゃんからの心象がちょっと悪くなってしまった。…きっとこれはキラーマシンのせいだよね、うん。

それからもまた近接格闘を狙っていくわたし達。キラーマシンの動きに慣れてきたおかげで行動予測をし易くなってきたけど…それでもやっぱり有効打を与えるところまではいかない。ここまで攻撃が失敗すると普段なら焦り出すわたしだけど……今回は違う。だって、作戦は失敗どころか順調に進んでいるから。

 

「ユニちゃん、そろそろどう!?」

「丁度準備完了ってところよ!ネプギアはいける!?」

「うん、いつでもいけるよ!」

「なら勝負をかけるわよ!タイミングはアタシが決めればいいのよね?」

「わたしがそれに合わせるから大丈夫!とびっきりのを頼むよ!」

「ふふっ、だったらネプギアも火傷するんじゃないわよ!」

 

お互い準備が完了した事を伝え合い、わたし達は再び合流する。そこからまたわたし達は正面から突撃。二人で二重螺旋を描きながら光弾を避け、ビームの柱も凌いでキラーマシンの前へと迫る。そして、一定距離まで近付いたところでユニちゃんは身体を持ち上げX.M.B.の照準を合わせにかかった。

その瞬間、待っていたと言うばかりに頭部のビーム砲を向けて放ったキラーマシン。でも、そこからユニちゃんは両脚の踵を床に落として、踵で無理矢理ブレーキングする事でビームをやり過ごす。

 

「予測射撃が仇になったわねッ!」

 

ユニちゃんのすぐ前の床を直撃するビーム。それをユニちゃんは見送って……引き金を引く。

X.M.B.の砲口から放たれる、大出力のエネルギーの奔流。それは、作戦開始からずっと溜めていた最大の一撃。携行火器は勿論、機動兵器でも再現出来るかどうか怪しい程のビームは轟音を立てながら真っ直ぐ伸びていって…………発電機の周囲、防衛設備であるエネルギーシールドに直撃した。

女神の溜めに溜めた光芒と、恐らくはキラーマシンのもの以上に大型の装置を使った光の壁が激突。互いにエネルギーを拡散させ、激しい音とスパークを響かせる。…けれど、キラーマシンは何の反応も示さない。感情がなくAIで動くキラーマシンは、既に自機への影響がないかあっても無視していいレベルと判断したユニちゃんの一撃には欠片も反応せずに、ただ淡々と右腕部のトゲ付きハンマーを振り上げる。

感情がないからこそ余計なものに思考や判断を邪魔される事がなくて、AIだからこそ常に合理的で認識した状況に最適な行動を取れるキラーマシン。それは確かに長所だけど……この時点で、キラーマシンが今の一撃を無視した時点でわたし達は勝利を確信した。そしてキラーマシンがユニちゃんを狙う中、わたしは────()()()()()()()現れる。

 

「このチャンス…無駄にはしないッ!」

 

ビームの柱を背にする様なバレルロールでキラーマシンの前へと躍り出たわたし。ビームで隔てていたとはいえ、元々わたしとキラーマシンはさほど距離が離れていた訳じゃない。でも、わたしは断言出来る。もしキラーマシンに表情があったなら……驚愕に包まれていただろうと。

一気に懐に入ったわたしは、M.P.B.Lを振るって斜めに一閃。ユニちゃん同様にフルチャージしていたエネルギーを刀身に回した事でM.P.B.Lは超出力の光実複合剣状態となっていて、わたしの一閃は胸部を装甲ごと深くまで斬り裂いていった。…勿論、装甲の内側のビーム砲も破壊して。

 

「よしっ!次行くよユニちゃん!」

 

胴体に大きなダメージを負ったキラーマシンは、ユニちゃんへの攻撃を中断して後退。それを見たユニちゃんはビームの照射を終了して、わたしと共に追撃の体勢をとった。

 

「■■■■ー!!」

 

二人同時に床を蹴った瞬間、キラーマシンは両腕下部を射出。射撃を行いながらわたし達へと突っ込んでくる。

キラーマシンへと向かうわたし達と、わたし達へ向かう両腕下部。お互いぐんぐん近付いていって、その距離がゼロになる瞬間、わたしとユニちゃんは交差。射撃を避けながら両腕下部とすれ違う。

当然わたし達を追う様に方向転換をする両腕下部。その間にわたし達は…武器を両腕下部と本体とを繋ぐワイヤーに向かって投げつけた。

 

「やっと…捕まえたッ!」

「せーのっ!」

 

それまで常に端末と本体を直線で結んでいたワイヤー。でもそれは両端からしか力が加えられてないからで、もしワイヤーの中央に強い力が加われば……端末側である両腕下部が勢いよく本体側に突っ込んでくる。つまり…制御を失った状態で、その線上にいるわたしとユニちゃんの元へ飛び込んでくる事になる。

わたしとユニちゃんは飛び込んできた両腕下部をキャッチ。そのまま脇に抱えてホールドし、勢いをつけて二つの両腕下部をぶつけ合う。それによって両腕下部の前方は大破、ビーム砲もひしゃげて発射不能になっていた。

 

「有線遠隔操作端末の欠点、それは射出してる間ワイヤーが常に無防備になり続ける事!」

「残るは本体のみね!」

 

両腕下部を潰した後、即座にわたし達はワイヤーを掴んで左右に飛翔。するとキラーマシンは力のかかり方の関係で前に、数瞬前までわたし達がいた所に引き寄せられる。

わたし達も、別に目的無く移動した訳じゃない。わたし達が目指したのは、それぞれ投げつけた自分の武器の落ちた先。ワイヤーを掴みながら一直線に飛んでいったわたし達は素早く武器を回収し、最後の一撃の為に反転からの接近をかける。

モノアイを反復横跳びの様に素早く左右に動かしたキラーマシン。わたし達の接近に対応する様に両腕部の武器を振ろうとしたけど…それはわたし達を捉えるにはあまりにも遅かった。もしかしたら両腕下部が無い状態だと腕部のパワーが劣るのかもしれないし、そうでなくとも胴体を斬り裂かれて悪影響が出ない筈がない。胸部への攻撃も、両腕下部の破壊も、今の突撃も……全部、予想通りの結果になった。

 

『これで……決めるッ!』

 

わたしは後方へ、ユニちゃんは前方へ。わたしはユニちゃんの射撃で装甲が剥がれた後頭部を、ユニちゃんはわたしが斬り裂いた胸部を狙う。

キラーマシンがここまで一気に追い詰められたのは、一重にキラーマシンが機械であり、無人機であるから。

機械というのは光学映像や熱源探知等の、カメラやレーダー、センサーなんかを使った方法で外部の情報を取り入れる。だからこそわたしを隠せる程大口径で高い熱量も持っているビームの裏に隠れて接近したわたしの姿に気付かなかった。でも、そこまでは人間だって同じ。人間だって同じ状態ならわたしの居場所を捉える事は出来ない。……けど、もしキラーマシンが人ならユニちゃんがあの距離で攻撃を外した事、わたし達がわざわざ武器を使わず素手の攻撃に専念していた事、何よりわたしの姿が見えない事に疑問や不安を抱いた筈。そして、そういう考えが頭をよぎった人は用心をする。だって、人は言動や状況に理由を求めるものだから。もしそうなれば、わたし達の作戦は失敗していたかもしれない。

だけど、キラーマシンはそうしなかった。疑問も不安も持たない…認識した状況を認識した通りにしか受け取らないAIにとって、ユニちゃんが射撃を外した事に対しては『対応不要』としかならないし、わたしの姿が見えなくなった(認識不能になった)事に至っては『存在しないもの』として捉えてしまう。それが、AIの欠点。仮にそういう事柄に対応するシステムがあっても、そこに引っかからない限りは同じ結果になる。プログラムされた事以上のものはバグでも起こさない限り一切しないし出来ないのがAIの限界。だからわたし達の策を看破される事はなかったし、キラーマシンはわたしの存在を予測する事も出来なかった。

想定された通りには完璧に動くけど、想定の外というものに対しては何も出来ないのが機械。常に合理的で正確な動きをするからこそ、対処をする際方法が正解なら絶対に予想通りになるのが長所であり短所。でも……だからこそ、機械のそういうところが愛くるしいんだよね、とわたしは思いながら、引き金を引いた。

 

 

 

 

投げ飛ばされて場外退場処分を喰らった私は、動ける様になった時点で全速力で発電所へと戻った。

私達が相手にしていたのは、これまででも最大クラスの性能を持ったキラーマシン。投げ飛ばされる直前の様子から、多分女神化封印システムは潰せたんだと思うけど…それでも、二人だけで戦う事には不安があり過ぎる。だから焦る気持ちと不安感を必死に抑えながら施設上空まで戻り、私の身体で開けた穴(人型の穴が出来ていた。……恥ずかしい…)を通り易い様破壊しつつ発電所まで戻った私が目にしたものは──頭部と胴体を撃ち抜かれ、バチバチと電気の漏れる音を立てながら倒れるキラーマシンの姿だった。

 

「……?今の音なんだろう…って、イリゼさん!」

「ご無事ですか!?…って無事みたいですね。こっちはアタシとネプギアで片付けましたよ」

 

私の復帰に気付いて飛んでくるネプギアとユニ。その最中、キラーマシンの存在がスイッチだったのか、発電機を覆うエネルギーシールドが消滅したけど……それは正直二の次だった。

 

「…え、っと……まさか、二人で倒したの…?」

「今そういう意味でアタシ言ったんですけど…」

「あ…そ、そっか…でも、ほんとに…?」

「ほんとに…?って…もしかして、アタシ達の事疑ってます?」

「ひ、酷いですイリゼさん…わたしとユニちゃんの力とコンビネーションで倒したのに…」

 

私の反応が気に入らなかったのか、ユニはちょっとムッとした顔を、ネプギアは悲しそうな顔を見せてくる。……ってそりゃそうか…せっかく倒したのに先輩にこんな反応されたらそりゃ気分良い筈ないよね…。

 

「ご、ごめんね二人共。その、正直三人がかりでも一筋縄じゃいかないと思ってたから、二人で撃破した事に驚いちゃって…」

「む…わたし達だって女神なんですから、やる時はやりますよ」

「それに、ネプギアは勿論アタシだってキラーマシンの知識はそこそこあるんです。イリゼさん無しじゃ戦えないなんて事ないんですからね」

「…だよね……ほんとにごめんね。私、二人を見くびってた」

 

適当にお茶を濁して済ませられる雰囲気じゃない事と、私の中で二人を過小評価していた事に気付いた私は心の中で反省。同時に頭を下げて二人に謝罪する。

 

「やっぱりですか…まあでも、アタシ達も油断してイリゼさんに迷惑かけたんですから当然といえば当然ですけど…」

「…それに、実のところわたしも二人で倒せた事にはちょっと驚きだったり…」

「それもそうね…その、今回はネプギアの知識のおかげで倒せた面が大きいと思うし……い、一応礼を言っておくわ…」

「そ、そんな事ないよ。それにもし仮にそうだったとしても、ユニちゃんの強さとわたしへの信頼あっての勝ちだもん。お礼を言うのはわたしの方だよ」

「し、信頼なんて……そういうネプギアだって、良い動きしてたし…」

「ユニちゃん……」

「ネプギア……」

 

 

 

 

「…えぇー……」

 

私が謝って、二人がそれを許してくれて…という流れの筈だったのに、何故だかネプギアとユニが二人の世界に入っていってしまった。……私いるんだけどなー…そういえば初めてキラーマシンと戦ったのは丁度二人の姉だったなー…ネプテューヌとノワールが二人っきりで出かけて、偶々それを見かけた私が陰から見てるって出来事が前にあったなー……はぁ…。

 

「……どうせ私は蚊帳の外ですよーだ…」

「……へっ?…あ、す、すいません…」

「い…今のはなんでもないですから!気にしないで下さい本当に!っていうかなんでアタシ妙な雰囲気になってたのよほんと!自分で自分が訳分からないわよ!」

「ふーんだ、私はいるのは蚊帳の中じゃなくて雪の中ですよー…」

「ゆ、雪の中?…あ、イリゼさん投げ飛ばされた後雪に埋まってたんですね…」

「アタシ、ネプギア、ロムに続きイリゼさんもとは…次はラムが埋まるんじゃないかしら…」

 

また話がズレて(今度は私がズラして)、内容がなんだかよく分からない事に。結果グダグダになってしまい、私達が当初の目的を思い出すまで数分程……かからなかった。

 

「き、緊急事態です!緊急事態発生ですイリゼ様!」

「え……?」

 

突如私の耳に聞こえてきた、切羽詰まった声。それは、インカムから聞こえてきたもの。

 

「…何があったんですか?」

「敵襲です!正体不明の機動兵器が強襲!こちらの部隊の迎撃を突破し、進軍を続けています!」

 

返答と共に、大きな爆発音が響く。その爆発音は次々と響き、音を立てる度に大きくなっていく。……私達のいる場所に、近付いてきている。

 

「……っ…皆さんは作戦遂行を優先して下さい!機動兵器はこちらで対応します!」

「あ、あの…イリゼさん、何があったんですか…?」

「うん、敵襲…増援だよ」

 

その一言で、ネプギアもユニも表情が変わる。ただでさえ連戦で、しかもたった今強敵を倒したばかりの二人だけど……スタミナ的にはともかく、精神的にはまだまだ戦える様子。それに一安心した私は気持ちを切り替え、長剣も構え直して音の聞こえる方へと身体を向ける。そして、十数秒後……発電所の壁が、吹き飛ばされた。

 

『な……ッ!?』

 

壁が吹き飛び、煙と共に姿を現した機動兵器。キラーマシンか、パンツァーか、はたまた新たな種類かと思いながら目を凝らす私達は……その機体を見た瞬間、驚きの声を上げる。その機体は……人型をした機動兵器、マルチプル(M)ガーディアン(G)だった。

 

 

 

 

全身を赤い塗装に包んだ、重厚そうな雰囲気を持つ人型機動兵器。バズーカを携えたMGが、キラーマシンに似た頭部のモノアイを私達に向けた瞬間……ネプギアとユニが叫ぶ。

 

「あれはまさか…ラステイションのラァエルフ!?」

「えぇ、恐らくあの時強奪された機体よ!」

 

私達がラステイションに滞在していた時、襲撃によって運搬中の機体を一機盗まれる事態が発生した。その後その機体の行方は不明だったけど……二人の言う通り、間違いなく目の前にいるのはその機体だった。

思いもよらぬ増援に動揺した私達だったけど…構えを崩したりはしない。こんな形で現れた機体が味方な訳がないし、一機で侵入してきたのなら弱い筈もない。……油断出来る要因は、一つもない。

それぞれの武器を構える私達と、バズーカを肩にかけて発射体勢をとるMG。数秒の沈黙がその場に起こり……次の瞬間、MGが先制の一撃を放った。…………私達に向けてではなく、発電機に向けて。

 

「な、何を……!?」

 

再び驚く私達。対してMGはそれだけで満足したが如く反転し、スラスターを吹かして離脱を始めた。

 

「……っ!理由はよく分からないけど…ッ!」

「逃がしはしません!」

 

ハッと我に返り、MGの背に向けて攻撃を放ったのはネプギアとユニ。だが……キラーマシンは機体各部の小型スラスターを利用する事で機体の姿勢を逸らし、二人の射撃を回避してしまった。

 

「そんな…避けた!?」

「嘘…あの機体のパイロットは何者よ!?」

 

巨大な者の攻撃を小さい者が避けるのは比較的楽だけど、その逆は難しい。それが常識であり、ネプギアはともかくユニの射撃は的確に機体の中央を狙ったものだったけど…それでもMGは確かに避けていた。確かに避けて、あっという間にMGは脱出していく。

──そして、私達が反射的に追おうとした瞬間…発電機が、大爆発を起こした。

 

「これは…ま、不味いですイリゼさん!これ下手したら…施設全体が爆発しちゃいますよ!?」

「嘘でしょ!?…ってこんな状況で嘘言う訳ないよね!今は軍人さん達もここにいるってのに……ネプギア!ユニ!皆と合流して離脱するよ!」

 

元々あった自爆機能が作動したのか、発電機が暴走した事によるものなのかは分からないけど…このままいたら洒落にならない事だけは間違いない。そう判断した私はネプギアとユニを連れ、コンパ達と合流する為に飛翔する。

 

「全部隊に通達!当施設は自爆規模の爆発を起こす可能性が生じました!作戦行動中の皆さんは施設員を連れて即時に施設内から離脱して下さい!全軍……退避ッ!」

 

廊下を駆ける最中、私は通信で軍の皆さんにも離脱の指示を出す。軍人さんは分かれて移動してるから口頭で伝える事は出来ないけど…そういうところは職業軍人。今の言葉だけで全員投げてくれる筈!

そうして私達がそれまで行っていなかった格納庫…つまり皆がいる場所の前まで到着した私達は、飛び蹴りで扉をぶち破って突入。それに驚いているコンパ達の前へ一気に移動する。

 

「わわっ!?ど、どうしたんですか!?」

「どうしたもこうしたもないよ!とにかくロムちゃんラムちゃんは着いてきて!それでえーと…ネプギアはコンパ、ユニはアイエフを掴んで離脱!ちょっと失礼するよRED!」

 

私はあんまり『説明は後!』っていうのは好きじゃないけど…今回ばかりはそうはいかない。今回ばかりはやっつけ仕事の指示を出して、目の前にいるREDを掴んで出口へと向かう。もしこれに皆が戸惑って棒立ちになったら困ってたところだけど…幸い全員これだけで理解してくれて(ロムちゃんラムちゃんには大声をビビられたけど)、私に続いて出口へと向かってくれた。

記憶を頼りに爆進する私達。各所から聞こえる爆発の音にヒヤヒヤしながらもスピードは一切落とさず進み続け、やっとの思いで(実際にはそんな長い時間じゃなかったのかも)施設を脱出。私達の目に雪山の雪原と先に脱出した軍人さん達の姿が見えた瞬間……これまでで最大級の爆発が響き渡った。

施設全体を包む様な大爆発が巻き起こる。私達の後ろで、それなりの広さがあった施設が巨大な火の玉の如く燃え盛る。その様を見た私達は……呟く。

 

『…あ、危なかったぁ……』

 

──それは、その場にいた全員の言葉だった。その瞬間、『危なかった』がその場にいる全員の総意だった。…ここまで多くの人が同じ感想を抱くって、かなり珍しい事なんじゃないかな……。

 

 

 

 

脚部のローラーでもって雪原を走る、赤い機体。その機体へと、一般の通信が入る。

 

「あー、お疲れ様っす。成果はどうですか?」

「一先ず成功と言ったところだ。…と、言っても私は発電機を破壊しただけだがね」

 

通信を入れたのは犯罪組織構成員の一人、リンダ。彼女が些かながらも敬意を持って話す相手もまた、犯罪組織の一員である事は…言うまでもない。

 

「ったく、まさか女神共が偶々いる時に見つかるなんて…環境も厳しいですし、ここの人員はついてネェですね」

「…偶々いる時に、か…私もよくよく運のない男だが、君は見つかった事をそう思っているのか…」

「……?」

「いや、なんでもないさ。ただの戯言に過ぎんよ」

「そうですか?…というか、あんた…貴方ならキラーマシンと協力すれば女神を倒せたんじゃネェんですか?」

「まさか。私の操縦技術がどれだけあろうと、所詮対人戦闘をメインに据えていないMGで女神に勝つのは無理というものさ」

「そうですかネェ…ま、ほんとお疲れ様です」

 

リンダの言葉に対し、赤いMGのパイロットは終始冷めた様子で返す。そんなパイロットに、リンダは思った。…どうも信用出来ない人間だ、と。

スラスターを吹かし、速度を上げるMG。そのコックピットの中に座するのは……仮面の男だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「作戦終了。アズナ=ルブ、これより帰還する」




今回のパロディ解説

・全軍……退避ッ!
機動戦士ガンダムSEED destinyの登場キャラの一人、イザーク・ジュールの台詞のパロディ。一応このシーンはパロディ元のシーンよりは時間に余裕がある感じです。

・私もよくよく運のない男
機動戦士ガンダムのメインキャラの一人、シャア・アズナブルの名台詞の一つのパロディ。今後も彼はシャアパロをしていくかと思います。だって存在自体パロがですから。
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