超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第三十九話 意外な成果と再集合

リーンボックス教会に到着した日の翌日。チカさんに関する新着情報はなくて、それに対する一抹の不安を多少燻らせながらもわたしは皆と共にクエストを行った。

 

「…心なしかですけど、リーンボックスは他の国より雰囲気に不安さが感じられますね…」

「それは恐らく、リーンボックスには貴女やネプギアの様な候補生がいないからね。例え候補生でも、女神がいるのといないのとでは大違いよ」

「女神がいて、姿を見せてくれる…それだけでも意味があるんだよね、今の国の体制にとっては」

 

わたし達は今、クエスト完遂の報告を終えて帰る最中。一般の人には荷が重そうなクエストをこなして、道中何かあれば手を貸して、犯罪組織の噂があればそれを耳に挟んでおいて……そんな、芸能人の営業や政治家の選挙活動みたいな事をするのが各国でのわたし達の平常業務。それは、教祖さんときちんと話が出来ていなくても変わらない。

 

「…あれ?じゃあ、わたしやユニちゃんが自分の国から離れるのは不味いんじゃ…?」

「それは大丈夫よ。二人が旅の最中で、その中で人助けをしてるって事はもうそれなりに広まってるから」

「みたいだね。ほら、ネットでも話題になってるよ?」

 

そう言ってREDさんが見せてくれた携帯の画面には、『女神様の旅・2nd』というタイトルのスレッドが開かれていた。…こ、この旅スレのネタになってるんだ…。

 

「それはわたし知らなかったですぅ……って、あれ?ナースちゃんは今日もほんわかしてたなぁ…って、もしかしてわたしの事です…?」

「この面子の中でナースに該当するのはコンパだけだと思うよ?」

「で、ですよね……うぅ、なんだか恥ずかしくなってきたです…」

「げっ、よく見たら私の事らしきレスもあるじゃない…女神三人はともかく、私達まで個別に注目されるとは…」

「でもこれって人気者みたいで嬉しくなーい?アタシはもっと注目されてもいいかな〜」

 

わたしはお姉ちゃん達程じゃないものの、ネットで自分の名前を見つける事が時々あったから慣れてるけど…コンパさん達はそうじゃないからか、自分の名前がスレに出てくる度に一喜一憂していた。…わたしやユニちゃんが慣れない事に興味持ったり驚いたりしてる時って、こんな風なのかな……。

 

「えーと、気になるのは分かるけど…見るのは教会に戻ってからにしてくれないかな…?」

「あ……そ、そうね。悪かったわ…」

「別に悪いとは言わないよ。さ、明日も色々やるんだから早く帰って休息を────」

 

 

 

 

「みんなー!ボクの歌を聴けええぇぇぇぇ!」

『……?』

 

コンパさん達を窘めたイリゼさんが、歩き出そうとした瞬間……そんな声が聞こえてきた。

それぞれで不思議そうな顔をして、周りを見回すわたし達。それと同時に耳を澄ますと、どこからか演奏の様なものも聞こえてくる。これって、もしや……

 

「…ライブかな?これってライブだよね?」

「ですよね、わたしもそう思います。…聞こえてきてるのはあっちからかな…」

「言われてみるとそうかも…ねぇ、行ってみようよ!」

「え?…まぁ、行っちゃいけない理由は無いし、ご飯が遅くなっても構わないならいいと思うけど…」

「わたしもいいと思いますよ。音楽を聴くのは身体を休めるのにも効果的ですから」

 

いつもの様にREDさんが興味を持って、駄目な理由や反対意見が出てこなかった事でライブを観に行く事に決定。折角見るなら早く行こう…という事で、わたし達は会場がありそうな方へ小走りで移動する。…にしても、ライブかぁ…一体どんな人が、どんなライブをしてるんだろう…?

 

 

 

 

「今日はこんなに集まってくれてありがとう!皆の為にドンドン歌うよ!次のナンバーは…とっておきの、この曲だっ!」

 

シンガーさんの言うとっておきの曲が始まったのは、丁度わたし達がステージの見える距離にまで来た時だった。正に絶好のタイミング、という事でわたし達は早速気持ちを落ち着けて(曲調は静かな感じじゃないけど)歌に耳を傾ける。

 

「わあ…素敵な曲…」

「はい、皆も聴き入っているですね」

 

ステージの上で歌っているのは、青のストレートヘアーにルビーみたいな色合いの瞳を持った女の人。左目下の泣き黒子が特徴的なその人は……って、あれれ?

 

「…あの人、どっかで見た事ある様な……」

「アンタも?…アタシも最近…じゃないけど、そこはかとなく見覚えがあるのよね。…シンガーだし、テレビでかしら…」

 

間違いなくあの人とは初対面だけど…何故か既視感が感じられた。しかもそれはわたしとユニちゃんだけじゃないみたいで、イリゼさん達も気になる様子で首を傾げたり頬に指を当てて疑問を表現している。…何だろう、いつの間にかわたし達はループ世界に入っちゃったとか…?

 

「うーん…ねぇケイブ、彼女ってメディア露出とかはしてるの?私達が誰も明白に分かってない以上、世界的シンガーではないと思うけど…って、こういう言い方はあの人に失礼だったわね…」

「あの子は怒りっぽい訳じゃないから大丈夫だと思うわ。で、質問に対しては…彼女の名前は5pb.。ラジオ活動はしてるけど、それ以外のメディア露出はあまりしてなかったと思うわ」

「ラジオじゃ顔が見える訳ないし、そうなると気のせい…になるのかなぁ…皆で揃って気のせいなんて釈然としないけど…」

「アタシはむしろこの会話の方が釈然としないかなー、アタシはそんなに見覚えないもん。それより今はライブを楽しもうよ!」

「…そうだね。気にはなるけど…それを考えててライブを楽しめなくなるのも勿体無いし、この事は保留にしよっか」

 

……という事で、この話は一度打ち切りに。打ち切りにしたからって気にならなくなる訳じゃないけど、それよりもすぐに『この歌を聞き逃したら勿体ない』って気持ちが上回って、わたし達は歌を聴く事に熱中していく。

そうして聴く事約十分。

 

「あー、この曲もいいなー。アタシ、すっかりファンになっちゃったよー!これはあの子も嫁候補決定だね!」

「どんどん増えるわね嫁候補……ん?あれは…」

「どうしたですか?あいちゃん」

「…ちょっと嫌なもの見つけちゃってね、ほら」

 

皆で楽しく聞いていた中、突然気落ちしてしまったアイエフさん。それにいち早く気付いたコンパさんが声をかけると、アイエフさんはライブ会場の横…道路の植木の辺りを指差した。そしてその指差してる方向を見てみると、そこには……下っ端がいた。

 

「…なんともまぁこの場に似つかわしくない人が……」

「アイツがライブを楽しんでるとは思えませんし、むしろ何か企んでる可能性が高いですね。…狙撃しちゃいます?」

「そ、それはまだ早いよユニちゃん…でも企んでる可能性は確かにあるし、声はかけた方がいいのかも…」

「そうね、ならネプギア行ってらっしゃい」

「うん。……え、わたし?」

「言い出しっぺの法則よ。言葉には責任を持つのが当たり前よね?」

「言い出しっぺの法則と責任持つのとは別でしょ……ど、どう思いますか皆さん…って、えぇー……」

 

なんだかズルい理由で行かされそうになったわたしは、助け船を求めて皆に意見を……求めようと思ったのに、いつの間にか全員『よし、任せたよネプギア!』…みたいな表情をしていた。う、うぅ…もしわたし一人で行って何かあったらどうするんですか!相手はあの……って、下っ端だった…。

 

「こんなのがまかり通ったら、誰も意見言えなくなるよ…」

「言い出しっぺ一人に任せるには荷が重過ぎる、って時にはきちんと皆でやるから大丈夫だよ。ふぁいと、ネプギア」

「わたしはそういう応援よりも戦力的な意味の応援の方が欲しいですよ…はぁ、行ってきます…」

 

とぼとぼ…なんて擬音が出てきそうな位肩を落としながら、わたしは下っ端の下へ。普通に話しかけてもまともに話してくれないだろうなぁ…という事で背後に回る。

 

「…あの、何してるんですか?」

「んぁ?…別に何もしてねェよ、強いて言えば休憩だけどな」

「休憩…お仕事の最中だったんですか?」

「あァ、尊敬する上司に頼まれた、重要な仕事をな」

(重要な仕事……?)

 

気を抜いていてわたしだって気付かないのか、下っ端はライブの方を見ながら返答してくる。それに一瞬わたしは「わたしが機械要素以外だとキャラ薄いから覚えられてないのかな…」と思ったけど……そんな事より、これはチャンスじゃないかと気付いた。…上手く会話を弾ませれば、その仕事について分かるかも…!

 

「重要な仕事を頼まれるなんて、下……こほん、貴女は期待されてるんですね」

「へへっ、当たり前だ。何せアタイは優秀だからな!この前なんか必死こいて追いかけてきた女神共を上手く撒いてやったんだぜ?」

「へ、へぇ…それは凄いですね…(ルウィーの件だよね、それ…必死こいてって……)」

「そうそうアタイは凄いんだよ。でもどいつもこいつもアタイは態度が悪いだの社会性が無いだの言って、まるで能力を評価しやしねェ。…それをしてくれるのは、トリッ…ごほん、上司だけなんだ。…アンタはどうなんだよ?アンタも性格と能力の評価を切り離せねェ輩か?」

「え?そ、それは…えっと……わ、わたしはさっき言った通り、貴女を凄いなぁと思ってたり…」

「だよな!いやー、あの人以外にも分かってくれる奴に会えるとは幸運だぜ!呑気にライブなんか観てる奴等ばっかりで気が滅入ってたけど、息抜きにここまで来たのは正解だったな!」

「そ、それは良かったですね…」

 

正直なところ、なら性格を直せばいいんじゃ…と思ったけど、折角上手く話を進められているんだからと考えて同意を示したわたし。すると、声だけで分かる位に下っ端はご機嫌になった。

 

「ほんと良かったぜ!さーて、そんじゃ仕事も頑張るとすっかな……っとそうだ、アンタ見込みがあるからこれ渡しておいてやるぜ!」

「あ、ありがとうございま……あ…!(不味いバレる…!)」

「これはなぁ、マジパネェへの推薦書だ!これ持って書いてある場所にくれば、アタイの名前できっとアンタも所属出来る!犯罪組織マジェコンヌはいつでもウェルカムだかな!それじゃあばよ!」

「……え、えぇー…」

 

くるりと振り返り、下っ端はわたしに書類を握らせて走り去っていった。……わたしが女神候補生・ネプギアだって事に気付かぬまま。

 

(…バレずに済んだのは良かったけど……な、なんか釈然としない…)

 

もう日も落ちて、しかも丁度わたしが立っていたのは植木の影になるところだったから顔がよく見えなかったのかもしれないけど…わたしの脳裏によぎってしまうのはやはり、顔を覚えられていないという可能性。…やっぱりお姉ちゃんみたいにはっちゃけたり、イリゼさんみたいに時々口調が変わったりした方がいいのかな…。

そんな事を考えながら皆の下に戻ったわたし。取り敢えず話した内容を報告しようかな……と思っていたら、皆は半眼でわたしを見ていた。

 

「……?…あの、皆さんなにか…?」

「何か?…ってアンタねぇ…犯罪組織の構成員を普通に見送ってどうするのよ!」

「あ……あぁぁっ!」

 

ユニちゃんに言われてわたしは愕然とする。……わ、忘れてた…シンプルに忘れてたぁぁ…。

 

「ぎ、ギアちゃんはうっかりさんですね…」

「何もせずに帰らせた、と捉えればまぁ…私は彼女の事を何も知らないけれど」

「すいません…肯定的な捉え方させちゃう位のうっかりをしちゃってすいません…」

「ほんとよ…アンタこれじゃほんとにただ話しただけじゃない」

「うぅ…で、でも情報は引き出せたよ?下っ端は重要な仕事を任されてるって言ってたもん」

「あら、それなら確かに成果も……って、なら尚更見送っちゃ駄目でしょうが!重要な仕事なのよ!?」

「うぅっ、考えてみたらその通りだった…」

 

結構な剣幕で怒るユニちゃんに、わたしはユニちゃんの言う通りって事もあって言い返せない。せめてまだ下っ端が見える距離にいたなら「それより追わないと!」って事で有耶無耶になってくれたかもしれないけど、それは無い物ねだりというもの。……しょんぼりだよ、わたし…。

そのままわたしは怒られるのかな…と思っていたけど、そこでイリゼさんがわたしへ擁護をかけてくれる。

 

「まぁまぁユニ、それ位にしてあげなよ。ネプギアは確かに失態を犯しちゃった訳だけど、雰囲気作って上手い事ネプギア一人に任せた私達にも問題があるんだからさ」

「それは、そうですけど…」

「反省してる相手に言い過ぎるのはよくないよ。……で、ネプギア。その手に持ってる紙はなんなの?さっき下っ端から貰ったみたいだけど…」

「あ…はい。話の流れでご機嫌になった下っ端がくれたんです」

「へぇ、なになに……ってこれ、なんか犯罪組織への紹介状っぽいんだけど…」

「あはは、下っ端もそんな感じの事言ってました…」

「あのねぇ……女神が犯罪組織に勧誘されるなんて前代未聞にも程があるわよ!アンタ馬鹿ぁ!?」

 

今回のもう一つの成果、貰った推薦書(?)を見せた結果またわたしはユニちゃんに怒られてしまった。さっきは擁護してくれたイリゼさんも、「これに関しては擁護出来ないかなぁ…」といった様子で苦笑いを浮かべるだけ。ここまでくるとわたしも、言い出しっぺの法則なんて適当な理由で向かわせたくせに…って気持ちが湧いてきて、その気持ちを込めて反論を……しようとした瞬間、イリゼさんの手元の書類を見ていたケイブさんがちょっといいかしら…と声を上げた。

 

「…なんですか?」

「一つ確認なのだけど、貴女は勧誘という形でこの書類を渡されたのよね?」

「は、はい…そうですけど…」

「なら…ここを見て」

 

わたしとユニちゃんの間を割って入ったケイブさんは、イリゼさんから受け取った書類の一部…地図がプリントされた所を指差した。当然わたし達二人は勿論、他の皆さんも急にどうしたんだろうと思ってケイブさんと地図に注目する。

 

「言うまでもなくこれは犯罪組織の支部なり派出所なりの案内図だと思うわ。そして、ここはリーンボックスの生活圏外に位置しているの」

「生活圏外?じゃあ、アタシ達みたいにモンスターと正面から戦える位じゃないと行くのも大変じゃん」

「そうなるわね。下っ端は犯罪組織の裏側の人間だし、同じく裏側の人間が使ってる場所なんじゃないかしら」

「…そして、ここは教会がまだ認知してなかった場所よ。……お手柄ね。教会の人間としてお礼を言うわ、ネプギア」

「え……お、お手柄?」

 

ケイブさんは小さな笑みを浮かべてそう言った。わたしは手柄を上げて、感謝をされた訳だけど……こんな形で成果が出るとは微塵も思っていなかったから喜びや安心感より意外に思う気持ちの方が強過ぎて、言われてから数秒はきょとーんとしか出来なかった。

そんなこんなで終わった、ライブの最中の出来事。…それにしても…振り向いた時の下っ端、これまで見た事無い程いい笑顔をしてたなぁ…。

 

 

 

 

……因みに、

 

「…………」

「……?」

「…………」

「えと…ユニちゃん?」

「…わ、悪かったわね……」

「へ?…悪かったって…何が?」

「せ…成果上げてた事にも気付かず好き勝手言って責めた事よ!それを悪かったって謝ってんのよ!そんだけ!」

「あ…う、うん……」

 

帰り際、わたしはユニちゃんに荒々しく謝られた。…謝る時はしおらしくなれ、なんて言う気は無いけど……その圧は何かおかしいよ、ユニちゃん…。

 

 

 

 

ライブが終わって教会へと帰った私達は、その日のうちに事実上の教祖代行であるイヴォワールさん(そういえば、私が初めてリーンボックスに来た時も教会代行してたっけ…)に書類とその地図の事を話した。ケイブの見立てでは未確認だったその場所はイヴォワールさんもやはり知らず、そこが完全に私達教会(女神)側の目を欺いている場所だという事が判明した時点で私達の翌日の行動が決定した。──そう、施設の潜入及び調査である。

 

「棚から牡丹餅、とは正にこの様な事を言うのでしょうな。…認知してない犯罪組織の施設があった事は、喜ばしい事とは言えませんが…」

「元々犯罪組織の保有施設を全て把握出来てた訳でもないですし、喜ばしい事と言えると思いますよ」

 

教会前で集合し、とある時間を待つ私達。幸いにも偽チカさんはもう出かけていたから、私達はこうして教会前での集合が出来ていた。

 

「今回もまた、機動兵器の生産工場なんでしょうか…」

「どうだろうね。でも今まで私達に気付かれてなかった以上、強い情報統制が敷かれている重要施設である可能性は高いと思うよ」

「残念だったわね、ネプギア」

「べ、別に工場である事を期待してた訳じゃないよ…でもまさか、そんな施設を下っ端が知ってるなんて…」

「もしかしたら、下っ端さんは下っ端じゃないのかもですね…」

「そういえばリーダー的仕事をしてた事もあったわね…あの言動でリーダーが務まるのか怪しいけど」

 

色々な事情から見逃してるか監視だけに留めているかが大半だけど……教会は多く(恐らくは過半数)の犯罪組織所有施設を認知している。でも犯罪組織側で情報統制や徹底的な秘匿をされてる場合までは把握出来ないし、国の中心機関である教会ですら把握出来ない場所は十中八九放置しておけない施設と見て間違いない。だからすぐに対処に動こうとしてる訳だけど…考えてみれば、確かにこんな施設を下っ端が知ってるって事は下っ端が単なる下っ端ではない証明になるよね。それを顔もよく確認してない相手に教えちゃうのは迂闊としか言えないけど。

 

「ごめーん!待ったー?」

「今来たところ…じゃないけど、遅刻じゃないからセーフだよRED」

「ふぅ、良かったぁ…」

「じゃあ、時間まで後数分だね」

「……えーっと…イリゼさん。面子はもう揃ってますし、今すぐ出発してもよいのでは?」

「ううん、まだ駄目だよ。何せまだ揃ってないからね」

『……?』

 

ケイブ含めた現パーティーの中で最後に現れたのはRED。待ち合わせ場所にやってきた彼氏みたいな言動についてはまあ流して、時間を確認。そこでユニがそんな質問をしてきたから……私は曖昧な笑みを浮かべて深みのある言葉で返す。すると二人は予想通り、不思議そうな表情を見せてくれた。

 

「にしても、ほんとに割と早いわね。陸路と空路の違いはあるけど」

「それは二人にとってもネプギア達にとってもいい事じゃない?…カタルシスはあんまりないけどね」

「二人?わたし達?なんの事ですか?」

「それは……丁度時間だし、あっちを見れば分かる事だよ」

 

再び私が時間を確認すると、携帯端末の時計は丁度伝えられていた時間を示していた。だから私がもったいつけながら、教会へと繋がる大通りを手で指し示すと……

 

「……あ…ネプギア、ちゃん…!」

「ふふーん、わたしとロムちゃんがきてあげたわよ!」

「……!ロムちゃん!ラムちゃん!」

 

────ぱたぱたと足音を立てながら、こちらへとやってくるロムちゃんとラムちゃんの姿がそこにはあった。

名前を呼ばれたネプギアは勿論、ユニも突然二人がやってきた事に目を丸くする。…ふふっ、これなら二人にだけ昨日ルウィーから連絡がきた事を教えなかった甲斐があるね。

 

「ネプギアちゃん…わたしも、ラムちゃんも、ちゃんと準備…してきたよ」

「うん。二人がきてくれるの待ってたよ」

「せんこーてーさつごくろーさまね、二人共」

「相変わらず生意気ね、アンタは…まあこんな短い間に変わってたら変だけど」

「ふぅ…お待たせしました、皆さん」

 

嬉しそうに顔をほころばせるネプギア&ロムちゃんと、皮肉っぽい言葉を交わすユニ&ラムちゃん。そんな女神候補生四人のやり取りを私達が微笑ましく思っていると、二人に遅れる形でフィナンシェさん(付き人兼道中の保護者)も私達の元へやってくる。

 

「フィナンシェさんもご苦労様ですぅ」

「いえいえ、これは侍従の仕事の範疇ですから。…ところで、そちらの方は…?」

「リーンボックス特命課のケイブよ。今は諸事情で彼女達と行動を共にしているの」

「そうなんですね。では、お二人の事宜しくお願いします」

「はい、任されました」

 

フィナンシェさんの侍従らしい綺麗なお辞儀を受けた私達は、しっかりと頷いて返答を述べる。…うちの女神さまを、というのが一番なんだろうけど…この場合は、「色々ご迷惑をおかけするかもしれませんが…」という意図もあるんだろうなぁ…。

そのやり取りの後、二人の方へ向き直るフィナンシェさん。

 

「…ロム様、ラム様。皆さんがしているのも、これからお二人が行うのも女神としての責務であり、とてもとても大事な事です。きちんとやらなくてはいけませんよ?」

「そんなの言われなくてもわかってるわ」

「おねえちゃんの為にも、わたしたち…がんばる…!」

「そうそう、フィナンシェちゃんもわたしたちのかつやくを期待しててよね!」

「ふふっ、元気の良い返事を聞けてよかったです。では最後に、ミナ様との約束は覚えていますか?」

 

やっぱり二人は国の指導者候補、ではなく庇護対象として見られてる面が強いのか、ミナさんと何やら約束をしてきたらしい。きっと夜更かしはしないとか、どこか行きたい時は私達に行く場所を伝えるとかなんだろうなぁ…。

 

「えっと…毎日ぎゅうにゅうをのむ、と…」

「おへやを片付ける、と…」

『…あいさつを忘れない?』

「あ、そういう約束してたんだ…フィナンシェさん、私達もその約束守れるように注意をしておきますので、どうぞご安心を……って、いやそれ界堂親子の約束じゃなかった!?え、何!?ミナさんって実はあの人だったの!?」

「あ、あはは…二人共約束間違えてますね…」

「で、ですよね…びっくりした……」

 

どうやら二人の言った事は偶々合致してしまっただけらしく、フィナンシェさんの訂正を受けて私は一安心。……候補生四人だけじゃなくてタツノコレジェンズにまで協力してもらわなきゃいけなくなるとか無茶過ぎる…(なんて私が思ってる間に改めて二人は約束を言い、今度はきちんと言い当てていた)。

 

「…それでは、わたしはルウィーに戻りますね。皆さんもお気を付けて」

「あれ、フィナンシェは一人で帰るの?…大丈夫?」

「公共交通機関を使いますし、多分大丈夫ですよ」

「でも可愛い女の子を一人で帰らせるのは、アタシ的にちょっと不安……」

「──ならば、彼女の事は我等が送り届けよう」

『……!そ、その声は…!」

 

REDの不安の言葉を遮る様に後ろから聞こえてきた、男性の声。キャラが強烈過ぎて忘れようがない、その人の声に反応する私とアイエフ。そして振り向いた先には……あの兄弟がいた。

 

「げ……やっぱり…」

「……?誰?」

「僕達はリーンボックス教会でお世話になっている兄弟さ。身長に似合わぬ豊かな胸を持つお嬢さん」

「コンパ様、ケイブ様、そしてお嬢さん。フィナンシェの事はお任せを」

「……相っ変わらずね、こいつ等は…」

「わたし達、挨拶した方がいいのかな?」

「止めときましょ、碌な反応しないわよこの二人は」

「そ、そうだね…(わたしは多分可もなく不可もない反応されると思うけど…黙っておこう…)」

 

二人の登場で一気に私達はざわつき状態に。……勿論、良い意味でのざわつきじゃないけど。

 

「…貴方達、ちゃんと彼女を送ってくれるの?」

「当然ですケイブ様。皆様の代わりである以上下手な仕事など出来るはずもありませんし、それに…」

「フィナンシェとはそこそこの付き合いだものね、兄者」

「ま、まぁご心配なさらずケイブさん。一応わたしは二人を信用していますから…」

「な、ならいいけど……」

 

…という事で、フィナンシェさんは兄弟を護衛に帰っていった。皆はその様子を不安そうに見ていたけど……私は、そんなに不安でもないかなぁと思っていた。…だって、二人とフィナンシェさんは友好的な関係の幼馴染みらしいからね。

 

「……こほん。それでは皆さんも、出発してはどうでしょう?」

「あ…そうですね。ロムちゃんラムちゃん、早速なんだけど…私達と一緒にお仕事、してくれるかな?」

「ふぇ……?…え、えと…そのおしごとは、ネプギアちゃんもするの…?」

「そうだよ。わたし、二人と一緒に行けたら心強いなぁ…」

「…なら、おしごとする…」

「ロムちゃんがそういうならわたしも……って、あ!前に言ってた、ヒーローは…ってのはこのことだったのね!いいわ、わたしたちが力をかしてあげようじゃない!」

「そう言ってもらえてよかったよ。……それじゃ、出発しようか」

 

思ったより話が盛り上がったり脱線したりしてしまったけど……私達の目的は、発覚した施設の調査に変わりない。だから私は一拍置く事で気持ちを切り替え、皆と共に地図に示されたその場所へと向かうのだった。




今回のパロディ解説

・「〜〜ボクの歌を聴けええぇぇぇぇ!」
マクロス7の主人公、熱気バサラ又はマクロスFrontierのヒロインの一人、シェリル・ノームの代名詞的台詞のパロディ。きっとこの後はアップテンポな曲だったんでしょう。

・アンタ馬鹿ぁ!?
エヴァンゲリオンシリーズのヒロインの一人、惣流・アスカ・ラングレーの代名詞的台詞の一つのパロディ。女神の中じゃユニが一番この台詞に合いそうな気がします。

・「〜〜毎日ぎゅうにゅうをのむ」「おへやを片付ける〜〜」『…あいさつを忘れない?』、界堂親子
infini-T Forceの主人公、界堂笑と父親界堂一道の事と二人が交わした約束の事。別に西沢ミナラスボス説を建てた訳じゃないです、単なるパロディネタなんです。

・タツノコレジェンズ
タツノコプロが1970年代に手がけた作品四つの主人公(ガッチャマン、ポリマー、キャシャーン、テッカマン)の総称の事。この四人が参戦したら心強過ぎますね、えぇ。
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