超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

69 / 183
第四十八話 候補生探偵、ロム&ラム

数日前までの旅ではしっかりと準備をして、陸路で少しずつ(と言っても最短距離を選んでたけど)移動していたわたし達パーティーだったけど、今回はわたし一人で、これと言った準備も必要なくて、移動も空路(女神化)が使えたから、いーすんさんに話を聞いてからすぐルウィーに行く事が出来た。…女神化したって距離が距離だから、五分十分で移動出来る訳じゃないけど。

 

「ふぅ、こんな防寒性を捨ててる様な格好でもそこまで寒くないんだから、女神の身体ってほんと凄いなぁ。…今更何言ってるのって話だけど」

 

ルウィーの教会が見えてきた辺りでわたしは高度を落として、あんまり人目を浴びそうにない場所に着地。女神化を解除した後は身体が冷えない内に…と思って小走りで教会の正面に回って、挨拶と共に中へ入る。

 

「お邪魔しまーす…」

「ようこそお越し下さいました、ネプギア様」

「あ、フィナンシェさんこんにちは。…もしかして、ここで待っていてくれたんですか?」

「はい。と言ってもつい先程プラネテューヌから連絡を受けての事なので、あまりお気になさらずとも大丈夫ですよ」

 

わたしが中に入ると、聖堂の入り口付近で待っていたフィナンシェさんに早速わたしは案内を受ける。…応接室やミナさんの執務室ならもう場所分かってるのに、わざわざフィナンシェさんが待機してくれてるなんて…もう慣れっこだけど、こういう高待遇は気が引けちゃうなぁ……。

 

「…フィナンシェさんは、わたしが呼ばれた理由知ってるんですか?」

「えぇ。ネプギアさんにはご迷惑をおかけします…」

「迷惑なんて、そんな…それより『窘める』なんてどういう事なんです?」

「それはわたしよりもミナ様からの説明と、お二人の実際の様子を見た方が早いと思いますよ」

 

と、いう事で『窘める』の解説はお預けに。…わたしは多少理解に時間がかかっても早く知りたかったんだけど…こう言われると訊き辛いよね。

なんて思っている内にミナさんの執務室へ到着。

 

「ミナ様、ネプギア様をお連れしました」

「ありがとうございます。ネプギア様もよく来て下さいました」

「いえいえ。何かあればすぐ行くって約束していましたから」

「そうだったんですか…フィナンシェさん、ネプギア様にお茶とお茶菓子をお願い出来ますか?」

「かしこまりました」

 

ロムちゃんの事だから、もしかしたら「ネプギアちゃんがね、こんなこと言ってくれたの…」とかミナさんに話してるかも…と思ったけど、流石にそれはなかったみたい。

 

「…あの、ロムちゃんとラムちゃんは…」

「今は恐らく、クエストのついでに探偵ごっこ中でしょう」

「た、探偵ごっこ…?」

 

まだ日が落ちるまでは時間があるし、クエストに出てる…っていうのは分かる。けど、探偵ごっこというのは意味がさっぱり分からない。…も、文字通り探偵のフリして遊んでるって事…?

 

「一から説明しますね。まず、事の発端として、ロム様ラム様がネプギア様達を追ってリーンボックスへ向かった日を前後して、ルウィーで上流階級を狙った盗難事件が発生する様になりました」

「盗難事件…金銭狙いの犯行ですか?」

「いえ、金銭の他絵画や骨董品も盗まれていますので、単なるお金欲しさではないと思われます」

「…えっと、もしやそれって連続事件…?」

「……はい。そういう事です」

 

こくり、とわたしの言葉に頷くミナさん。…なんだかちょっと雲行きが怪しくなってきたかも…。

 

「じゃあ、探偵ごっこというのは…連続盗難事件の犯人を探している、という事ですか?」

「正しくは、事件の首謀者を探している、ですね」

「……?」

「全ての案件ではないですが、ある程度は犯人を捕まえられてるんですよ。しかし手口はどの案件も似ている事、ここ最近で何件も発生している事、何より犯人は全員一貫して雇われたと供述している事から、これは個々の事件を指示している首謀者がいると見て間違いないんです」

「…その首謀者が、犯罪組織の人間だったりする可能性は…」

「分かりませんが、それも視野に入れて捜査中です」

 

わたし達がルウィーを離れた後辺りから盗難事件が発生する様になって、それはただのお金狙いって訳じゃなさそうで、その全ての裏に誰か或いは何らかの組織が存在している……そんな事が判明したら、ロムちゃんラムちゃんが食いついちゃうのも仕方ない事だと思う。だって、そんなのわたしでも気になっちゃうから。……でも、そういう事なら…

 

「…あの、捜査中って事はまだ解決に至ってないんですよね?」

「そうですよ?」

「でしたら、ロムちゃんラムちゃんが捜査に協力するのは別に悪くはないんじゃ…?」

「……ロム様とラム様が、本職である警察や探偵の捜査にきちんと協力出来ると思いますか…?」

「あ、あー……」

 

肩を落とし、お姉ちゃんが中々仕事をしてくれない時のいーすんさんみたいな表情を浮かべるミナさんの様子に、わたしは乾いた同意の声を上げる事しか出来なかった。…ミナさんって教祖の中でもかなり常識的な人だし、その分苦労人なのかも……。

 

「今のところはまだ捜査の賑やかし程度に留まっていますが、その内重要な証拠を駄目にしてしまったり、或いは首謀者に嵌められて誘拐されたりしかねなくて、わたしも周りも気が休まらないんです。なので……」

「わたしに窘めてほしい、という訳なんですね。分かりました」

「本当にすいません…わたしがもっと威厳のある教祖なら、お二人も言う事を聞いてくれるかもしれないというのに…本当に本当に申し訳ありません…」

「そ、そんな自分を卑下しなくても……ええと、聞きましたよ?マジェコンヌさんにルウィー教会を乗っ取られた時、教祖っていう始末されてしまうかもしれない立場でありながらも教会に残り続けて、本物のブランさんを信仰している職員さんや兵士さんをまとめ続けていたって。それって、誰がどう考えても凄い事じゃないですか」

 

ミナさんだけに関わらず、教祖の皆さんはお姉ちゃん達が本気で殺し合ってた頃からそれぞれの形で国と女神の為に頑張ってた、頑張ってくれていたってわたしは聞いている。そんな教祖のミナさんが、今もまだまだ未熟なわたし達を支えて国を切り盛りしてくれてる人達が、情けない人間な訳がないよね。だから、これはわたしの本音。……「前に一度凄く怖い雰囲気纏ってましたけど…またあの状態で怒れば二人も言う事聞くのでは?」…って台詞と一瞬迷ったのは、内緒。

 

「そ、そう思ってもらえているのなら光栄です…ではその、お願い出来ますか…?」

「勿論ですよ。さっきも言った通り、わたしは約束しましたから」

「そう言って頂けると助かります。ロム様ラム様はもうそろそろ帰ってくると思いますので、もう少しお待ち下さい」

 

ミナさんのお願いにこくんと頷いた事で、会話は終了。丁度そのタイミングでフィナンシェさんがお茶とお菓子を持ってきてくれたから、わたしはそれを貰った後で聖堂へ移動。愛用の端末『Nギア』でさっき聞いた事件の事を調べながら、二人の帰りを待つ。

 

「うーん…当たり前だけど、ネットに上がってる情報はどれも有益そうじゃないなぁ…」

 

わたしの役目は捜査協力じゃなくて二人の探偵ごっこを止めさせる事だから、情報収集の必要は無いんだけど……やっぱり『上流階級を狙った、裏に首謀者がいる連続盗難事件』なんて、気になっちゃうもん。それに止めるにしても全然状況を知らないんじゃ会話にならないし、最低限の知識を得ておくのは準備の内に入るよね。

そんな事を考えながらネットサーフィンする事十数分。つい『合わせて読みたい』というところにあった、事件とは無関係な記事に興味を持ってそれを開こうとしたところで聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「あ、帰ってきたのかな?」

 

Nギアをしまって、正面扉に目を向けるわたし。すると数秒後、わたしの予想通り扉を開けて入ってきたのはロムちゃんとラムちゃん────

 

「しゅーかく、なし…やはりはんにんはこーみょーな手口をつかっていると見るべきか…」

「なぞがなぞを呼ぶ、なんじけん…(ぷはー)」

 

……じゃなくて、ちっちゃい探偵さん二人だった。探偵っぽい帽子とコートを纏って、探偵っぽいパイプを咥えた二人組だった。一人は指で帽子のつばを弾いていて、もう一人は咥えたパイプから煙を吐く様な動作をして……で、改めてよく見たらやっぱりロムちゃんとラムちゃんだった。探偵コスのロムちゃんラムちゃんだった。

 

「……こ、凝ってるなぁ…」

「あ…ネプギアちゃん…!」

「え?…ネプギアだ……」

 

思いもよらなかった格好に、ついわたしが声を出した事で二人はわたしを発見。その瞬間ロムちゃんは嬉しそうに駆け寄ってきてくれて、対してラムちゃんは「うわ来たのか…」みたいな表情を見せてくる。……友達の事は保留って言われたけど、ほんとに考えてもらえてるのかなぁ…。

 

「ネプギアちゃん、きゅうにどうしたの…?」

「ちょっとミナさんからお願いを受けてね。…えっと、そのパイプは…」

「これ?これはね、ラムちゃんとおもちゃ屋さんで買ったの」

「そ、そっか…そりゃそうだよね…」

「……?」

 

パイプ咥えてる姿を見て、二人が喫煙を始めちゃったのかと不安になったけど…それはわたしの勘違いだった。…そもそもの話として、ニコチンは女神の身体にも害があるのかどうか謎なんだけど。

 

「…で、ネプギアは何してたのよ。ミナちゃんのおねがいは?」

「あー…うん、その事なんだけどね…二人共、ちょっといいかな…?」

「なによ?」

「…えーっと、その……」

 

事件の首謀者探しは止めてくれないかな?……そうわたしは言おうと思っていたし、ミナさんから頼まれているのもそういう事。でも、いざロムちゃんとラムちゃんを前にしたら言えなくなってしまった。だ、だって……こんなTHE・探偵装備をお揃いで纏って、二人して探偵のフリしてるロムちゃんとラムちゃんを目にしたら言うに言えないよ!ロムちゃんは絶対しゅんとするだろうし、ラムちゃんは絶対怒り出すに決まってるもん!論ずるまでもないよこんなの!

 

(ま、まさか…わたしに頼んだ真の理由はこれなんじゃ……)

「……ネプギアちゃん…?」

「あ…ううん、何でもないよ何でも…」

「何でもない、って今ぼーっとしてたことが?それともちょっといいかな?…ってことが?」

「それは……」

 

わたしは考える。探偵ごっこを止めろとは精神的に言えないんだから、他の方法で止めさせるしか……ううん、二人に自ら止めようと思ってもらうしかない。わたしなら、どういう状況だったら止めたいと思う?何があったら興味を失う?

──それは、探し出す事なんて無理だと諦めちゃった時。探偵なんてそんな格好良くも面白くないと感じた時。そして……探偵よりも楽しそうなものを見つけた時。

 

(…でも、諦めるには捜査を続ける事が必要不可欠。好印象を抱かなくなるにはこれも捜査を続けるか、探偵の悪い見本を用意しなくちゃいけない。で、他のものに興味を移らせるのは…言うまでもなく難しいよね……)

「ちょっとー、それはのあとは?」

「…はなしたくない、ことなの…?」

「ち、違うよ。別に悩みとかそういう話題じゃなくて、えっと…」

「…なんかたくらんでる?」

「うっ…や、やだなぁ…そんな事ある訳ないよ。…それより、二人のその服格好良いね。何してたの?」

 

話を切り出しておいて一向に喋らないのは誰が見たって(聞いたって)不自然で、そのせいでわたしはロムちゃんに心配されラムちゃんに不審がられてしまった。それでこのままじゃまずいと思ったわたしはかなりあからさまだけど話を逸らして、別の会話をしながら策を練る事を画策。大人が相手なら、こんなの即『脈絡なく話を変えた…何か隠してるな』と思われるだろうけれど……

 

「へぇ、これがかっこいいなんてネプギアもわかってるじゃない。これはめいたんていセットよ!」

「わたしとラムちゃんはね、これでじけんのそーさをしてたの…虫めがねとか、手ぶくろもあるんだよ…?」

「そ、そっかぁ名探偵セットかぁ…よっ、格好良いよ二人共!」

 

二人はすんなりと、逸らした話に乗ってくれた。…この純粋さ、わたしは無くしてほしくないと思います。

 

「でしょ?今日も色々しらべたんだよね、ロムちゃん」

「うん。しょーこさがしにしょーげんさがし、いっぱいしたの」

「そうなんだ、結構本格的だね」

「とーぜんよ、なんたって西田さんの名にかけてるもの!」

「そ、それだとラムちゃんの苗字は金田一に……って西田さん!?西田さんの名にかけたら探偵は探偵でもナイトスクープの探偵になっちゃうよ!?」

「うわっ…きゅ、きゅうに大声出さないでよ、びっくりするじゃない…」

「わたしはラムちゃんから深夜番組のネタが出てきた事にびっくりだよ…」

 

取り敢えず会話は相槌主体にして、二人が話をしてくれてる間に考えようと思っていたわたしだったけど…ラムちゃんの(天然)ボケが強烈過ぎてついしっかり突っ込んでしまった。…へ、平常心平常心…落ち着いていこう…。

 

「えーと…それで、何か分かったの?」

「んとね…今日は、おっきい会社のしゃちょーさんのほうせきがぬすまれたってわかったよ」

「うんうん、それで?(これ確かネットニュースのトピックに乗ってたやつだよね)」

「……?…それだけだよ…?」

「あ…そ、そうなの…?」

「うん」

「……そっか、調査ご苦労様…」

 

不思議そうな顔でわたしの問いに答えるロムちゃん。…もし二人がネットやテレビを使わず直近の事件へ辿り着いたならそれは凄いけど……確かにこれだと捜査の賑やかし程度にしかなりそうにないね…。

その後もわたしは二人の独自捜査を聞いていたけど、やっぱりその内容や結果は『ごっこ』の域を出ておらず、しかもちょくちょく的外れな推理を進めようとしていて、聞いている身としては苦笑いを通り越して最早不安すら抱いてしまうレベルだった。

 

「やっぱり、いちばんあやしいのははんざいそしき…」

「そう、だから前みたいにアジトにとつげきするのがてっとり早いと思うのよね」

「い、いやそれは安直過ぎるっていうか、推理じゃなくて当てずっぽうの様な…」

「でも、はんざいそしきあやしい…」

「それはそうなんだけど…ほら、それって『犯罪組織は悪い事してる』って最初から思っちゃってる部分あるでしょ?」

 

普段嘘ばっかり吐いてる人は本当の事を言っても疑われたり、逆にいつも優しい人にはつい難しい要望でも聞き入れてもらえると勝手に思ったりと、人は対象のイメージで勝手に予想しちゃうもの。優しい人の方はともかく、悪い印象は本人サイドにも問題があるんだけど…だからって間違った推理で犯罪組織のアジトに攻め込むのは頂けない。それに二人は女神候補生で社会への影響力も持ってるんだから、その間違いがもっと大きな間違いに繋がってしまうかもしれない。だから止めさせるにしても止めてもらうにしても、二人の間違った推理は正さないと……

 

「…………あ」

「……い?」

「う?」

「……え…」

『お!』

「いぇーい…って違う違う。そういうノリじゃなくてね…二人共、ちょっと今思い付いたんだけど…聞いてくれるかな?」

「また?こんどは何よ?」

「うん、二人共さ……捜査なんて瑣末事は、わたし達女神のする事じゃないとは思わない?」

 

──そう、その時わたしは気付いた。二人が捜査に出て、その結果邪魔になったり厄介事起こす羽目になったりする危険があるなら……捜査をしなくても、推理が出来る環境を作ればいいじゃないか、って。

 

 

 

 

「……という事で、捜査情報を二人に開示してくれないでしょうか?」

「え、えぇー……」

 

発想の転換で突破口を開いた数分後、わたしはロムちゃんラムちゃんを連れて再びミナさんの執務室へと訪れた。

探偵といえば捜査もするけれど、一番の魅力はやっぱり推理をするところ。捜査は地道なものだから、探偵ごっこ中ってノリがないとそんなに楽しくないだろうし、実際地道な作業無しで推理だけやれるとしたらどう?…と訊いてみたら、案の定二人はわたしの案に乗ってきてくれた。だから後は、これをミナさんが了承してくれるかどうか。

 

「…ネプギアさん、わたしの頼みとそれは些か離れている様な気が…」

「分かってます。でも、ここが妥協ラインじゃないかってわたし思うんです。……っていうか、わたしにもまるっと止めさせるのは無理ですよ…」

「そ、それに関しては完全に同意ですが…」

 

わたし(とミナさん)の真の目的は、ロムちゃんとラムちゃんに事件から手を引いてもらう事だけど、その二人がこの場にいる以上そこはぼかして話さなきゃいけない。…二人には部屋の前で待ってもらった方がよかったかな…。

 

「ミナちゃん、だめ…?」

「けいさつの人たちがしらべて、わたしたちがすいりする…これって人と女神のきょーりょくでしょ?ミナちゃんもおねえちゃんもそれがだいじって言うじゃない」

「ですから、推理も警察に任せればいいんですよ」

「え?すいりはたんていとかふらっとあらわれた人のお仕事じゃないの?」

「確かに創作ではそのパターンが結構ありますが、実際はそうではないんですよ…」

 

今出来上がっているのは、既にわたしの案に賛成している二人はミナさんに頼み込んで、それをミナさんが困った顔で否定するという構図。多分これはわたしが来る前…ミナさんが説得を試みてた時にもあった光景で、こういう時のロムちゃんラムちゃんは中々分かってくれないからミナさんの苦労もよく分かる。

でも…同時に、わたしは二人の思いを無下にしたくない気持ちもある。気になるとか、探偵への憧れとか、そういうのも勿論あるんだろうけど…きっと、国内で起きた事件を放っておけないっていう、女神としての思いもあるんじゃないかって思うから。だから……

 

「……ミナさん、わたしより大人のミナさんへわたしが言う事じゃないとは思いますけど…わたし達の都合で止めさせても、二人には不満が残るかこっそり続けようとするかだと思いますよ」

「…えぇ、分かっています…ですが……」

「大丈夫です。捜査情報も二人の動向もちゃんとわたしが気を付けておきますし、何かあったら……その時は、わたしが責任を取ります。だから…ミナさん、宜しくお願いします」

「ネプギアちゃん…わ、わたしも…わたしからも、おねがい…!」

「…ミナちゃん、わたしたちは本気なの。…おねがい」

 

一歩前に出て、わたしは頭を下げる。本来の要望とは違う形にしようとしているんだから、こうして誠意を見せなきゃ分かってもらえる筈がないから。

そうしてわたしが頭を下げている中…気付いたら、ロムちゃんとラムちゃんも頭を下げていた。これはわたしが予め言った事じゃなくて、多分わたしの姿を見て二人が自らやってくれた事。わたしは、わたし達は……三人で、ミナさんに頼み込んでいた。

わたし達が頭を下げた後、数秒の沈黙がやってきた。一秒経って、二秒経って、三秒経って、そして……

 

「……はぁ、仕方ないですね…分かりました。そこまで言うのなら、お二人が推理をする事を認めます」

「……!ほんと…!?」

「やった!ありがとうミナちゃん!」

「…ですが、推理の結果がどうであれ、勝手に行動はしない事。その内容を誰彼構わず話さない事。……それは、約束してくれますね?」

『はーい!』

「…全く、まさかこうなってしまうとは……ネプギア様、わざわざお忙しい中呼んで、ネプギア様達が前回いらっしゃった時に散々お世話になったわたしが言うのは横柄が過ぎるのかもしれませんが…お二人と情報の事、宜しく頼みますよ?」

「はい。わたしが責任持って管理します。……本当に、ありがとうございます」

 

ミナさんはため息をついて、肩を落として、額を押さえて……でも、わたし達のお願いを聞き入れてくれた。結果的にミナさんのお役に立つどころか、困り事を増やしちゃった様な気もするけど…だからこそせめて、二人が暴走しない様にわたしがしっかり見ていようと思う。それが、わたしの…折衷案を出したわたしの、責任だもんね。

 

 

──こうして、ロムちゃんとラムちゃんはこの日探偵ごっこを止め……女神探偵へとジョブチェンジしたのでした。




今回のパロディ解説

・「〜〜の名にかけて」
金田一少年の事件簿シリーズの主人公、金田一一の代名詞的台詞のパロディ。候補生とはいえ女神に名をかけられる程の人物とは一体どんな者なんでしょうね。

・西田さん、ナイトスクープ
俳優西田敏行さん及び、彼がレギュラーを務める番組探偵ナイトスクープの事。西田さんの名にかけたら、事件の内容が大きく(バラエティ方面に)変わってしまうでしょう。

・「〜〜推理なんて〜〜思わない?」、女神探偵
貴族探偵シリーズ及びその主人公、貴族探偵の代名詞的台詞のパロディ。貴族探偵がしないのは捜査ではなく推理ですが…まぁそこはあくまでパロディネタですから、ね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。