超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress 作:シモツキ
組織というものは、大きくなれば大きくなる程内部に弱みが増えていく。強大な勢力となった事による慢心、味方の多さ故の油断、統制しきれない結果の腐敗……それ等は得てして避けられないものであり、適度な緩みの無い組織はそれを構成する人間にとってストレスとなるのだからある程度は許容しなければならない。
……が、それは問題の発生していない平時であれば通用する事。有事の際にその様な緩みは…ましてやその緩みが問題の原因となっているのであれば、そんな事は言っていられない。──弱みも緩みも、組織そのものが潰れてしまえば元も子もないのだから。
「そうだ!全機起動させて外に出せ!ここでお寝んねさせてたってなんの意味もねェんだからよ!」
ラステイション郊外にある犯罪組織の基地内、兵器格納庫にて指示を飛ばすのは偶々ここへとやってきていたリンダ。普通基地での指揮は基地司令やその基地所属の指揮官が出すものだが…上から下まで混乱している現状では、その場の判断で指揮出来る者が指示を飛ばすのが最適だった。
女神と教会による放送から数十分。その放送により情報流出が判明し、全ての人の耳に届いたのではないのかという程大々的な宣戦布告とテロ組織認定を受けた犯罪組織の裏側の構成員は、蜂の巣を突いた様な騒ぎに見舞われている。
「…くそっ、こんな形で大人数の指揮を取る事になるなんて……!」
「ボヤく余裕があるならもっと細かな指示を出したらどうだっちゅ?」
「うっせェ!…ってテメェか…どうだったンだよ?」
指揮官というのは、多数の人間に実力を認められる事でなれるもの。そう考えるリンダにとって多人数の指揮はある種の憧れであったが…こんな危機的状況で指揮など任されても、何も嬉しくはない。しかも自身の指揮能力には少なからず女神に連敗している経験が活きているのだと内心気付いているのだから、尚更喜びの感情を抱けない彼女。…と、そこへ同じく偶々この基地へと来ていて、今は基地の指揮系統及び他基地の状況確認を行っていたワレチューがやってくる。
「今はどの基地も似た様な状態みたいだっちゅ。状況が状況なせいで上からの指示も上手くきてない様子っちゅね。あー、後一つ朗報だっちゅ」
「朗報?なんだよ、トリック様が来てくれるとかか?」
「ここの司令部が今後の指揮も任せるって言ってたっちゅよ」
「そうかそうか……いやそれ朗報じゃねェよ!むしろ悲報だよ!…まさか責任までぶん投げてきたんじゃねェだろうな…!」
ただでさえ突然の出来事と役目にストレスが溜まっているとってのに、何テメェはふざけた事抜かしてんだ…てか司令ふざけんなよ…?……という文句を視線に乗せてワレチューを睨むリンダだったが、ワレチューの方はどこ吹く風で先程触れていた細かな指示を行いに向かう。その様子にリンダも不満をぶつけるのは諦め、指揮を再開。決して賢いとは言えない頭を捻って出撃準備を進めさせていく。
そうして十数分後。基地内にあった兵器と車両は全て外へと出され、全機同じ方向を向いていた。
「り、リンダさん!準備完了しました!」
「よーし、じゃあ一刻も早くギョウカイ墓場に向かうぞ!急げば守護女神を助けに行った奴等を墓場の味方と挟み撃ちに出来るんだからな!」
「どんな組織もトップを失えば力がガタ落ちするもの。ギョウカイ墓場に行ったであろう女神候補生ともう一人の女神に勝てば、まだ犯罪組織は盛り返す事が出来る筈っちゅ」
リンダとワレチューが車両の一つに乗り込んだところで、最前列のキラーマシン部隊が発進を開始する。普段ならば兵器や武装の存在が露見する事を避ける為、隠密行動を基本とする犯罪組織だが……今はそれもかなぐり捨てていた。
部隊が順次発進する中で、リンダは考える。一体情報流出はどういう経緯なのか。裏切り者がいるのか、スパイに入られたのか、それとも端から知られていたのか。いつから今日の計画は進められていたのか。裏側を知らない構成員への対処はどうするのか。普段なら考える事すらない『目の前以外の問題』が次々と頭の中を巡り、それを振り払うが如くギョウカイ墓場に到着した後の展開を想像する。攻め込んで来ている女神さえ潰す事が出来れば、きっと問題も解決するだろうと。そしてその時は、自身の指揮と判断が評価されるだろうと。
ある種の防衛本能とも言える思考で多少落ち着きを取り戻すリンダ。…しかし、彼女の希望的観測は早くも崩れ始める。
「……っ!?あ、アラート!?」
「これは…キラーマシンがこちらへと向かう熱源を探知した様です!」
キラーマシンのセンサーが探知した情報に反応し、けたたましいアラートを鳴らす車両内の機材。その想定外の事態に多くの人間が慌て、一体何が迫っているのか確認する為行軍を中断。確認した後にどうするか考えていた訳ではなかったが…確認せずに進む程、彼等は愚かでも度胸がある訳でもないのである。
行軍を止め、センサーの探知した方向へと目を凝らす事数秒。見えてきたのは…およそ二桁の、人型の集団だった。一瞬それを見て安心した犯罪組織だが……すぐにそちらから機械の駆動音が聞こえてきている事に気付く。そうして姿が露わになったのは、黒を基調とする巨大な鉄騎。それは国の、女神の、教会の意向を受け武力を行使する組織、国防軍の部隊に他ならない。
犯罪組織の進路上に躍り出た部隊は、統制の取れた動きで犯罪組織へと武装を向ける。それに反応する形で犯罪組織側も武装を向けた瞬間…四脚の機体のパイロットが声高に言い放った。
「我々はラステイション国防軍だ!貴様達にはテロ組織としての嫌疑及び個人・集団それぞれの権利を超える武器密造と保有、その他多数の容疑がかけられている!こちらの指示に従い、速やかに武装解除し投降せよ!…これは提案じゃねぇ……命令だ!」
*
教会より通達されていた通り、四ヶ国同時放送の終了と同時に出撃した各国防軍の部隊。その目的は…テロリズム組織の一斉検挙に他ならない。
「…………」
外部用スピーカーによって送った投降命令。敬愛する女神を幽閉し裏で悪事を働いていた犯罪組織に温情をかけたいと思うMG部隊員はあまり多くはなかったが、相手が何であろうと国家組織である国防軍が個々の自由で武力を行使する事は許されていない。よって隊長以下全機が武装を向けてはいるが、今はまだ武装を向けるだけに留まっている。治安維持の為の組織が、その職務の中で自ら進んで戦闘状態を起こす訳にはいかないのである。
「……っ…な、なんで軍がこんな所にいるんだよ!今は女神の奪還に力を入れてるんじゃねェのかよ!?」
「んぁ?まさか嬢ちゃんがそっちの指揮官なのか?…人手不足なのか嬢ちゃんがよっぽど有能なのかは知らねぇが、これは意外な展開だな…」
「んな事はどうでもいいだろうが!くそっ、まさかギョウカイ墓場に向かってねェ部隊があったなんて…」
「あー、残念だがギョウカイ墓場に向かってねぇ武装はうちだけじゃねぇよ。つか、そもそもギョウカイ墓場行ってる部隊がゼロなんだよな」
「は……?」
別に指揮を任されているからとかではなく、単に黙っていられず反応したリンダ。身を乗り出した事で彼女が指揮官だと知ったシュバルツ中隊の隊長、シュゼットは若干驚いたが…予想通りの言葉が返ってきた事にコックピット内で笑みを浮かべる。敵が術中に嵌まってくれるのは楽しいものだ、と思いながら。
「そら確かにイリゼ様は全力で奪還するって言ったぜ?…だがよ、全軍でだとか全戦力でなんて言ったか?言ってねぇよな?…つまりはそういう事だ」
「……っ!そ、そういう事っちゅか…体制側の癖に姑息な策を打ってくるっちゅ…!」
「あぁ?なんだよ急に!」
シュゼットとリンダが言葉を交わす中、何かに気付いたかの様にワレチューが歯噛み。その様子をリンダが乱暴に問いかけると……ワレチューもまた身を乗り出し声を張り上げる。
「あの放送、てっきり各国の女神信仰者に対するものかと思っていたっちゅけど…真の目的はオイラ達犯罪組織を触発させる事だったんだっちゅね!」
「へぇ、中々察しが良いなネズミ」
「……どういう事だ?」
ワレチューの言葉にシュゼットは肯定の意図を込めた発言を、リンダはその意味を問う言葉を返す。
「犯罪組織は女神と教会の策に乗せられたんだっちゅ!効率良く且つ大義名分を持って犯罪組織を潰す為の策に!」
「ふむふむ…よし、もっと具体的に頼む」
「察しが悪いっちゅね…いいっちゅか?犯罪組織はテロリズム組織認定されたとは言え、国家権力というものはしがらみが多くて好き勝手に軍を動かしたり制裁を加えたりは出来ないんだっちゅ。権力の本来の持ち主である守護女神がいない今は尚更そうっちゅ」
「お、おう…(これは難しい話になりそうだな…)」
「けど、理由がないなら作ってしまえというのが権力者の常套手段っちゅ。おいそっちの指揮官!お前等は大方『巡回任務中に武装集団を発見。テロ組織の疑いがあった為確認を取ろうとしたところ攻撃を受け、止むを得ず戦闘を開始した』って名目の下武力行使するつもりだっちゅね!?」
「さぁて、それはどうだろうなぁ」
「白々しいっちゅ…ここまで言えば分かるだろうっちゅ!止むを得ず戦闘、って大義名分を得るにはまず犯罪組織が武装状態で動く必要があって、そうさせる為にあの放送をしたんだっちゅ!放送を聞いたオイラ達に奪還そのものが軍も用いた大規模作戦で、それを何とかするには援軍を出すしかないと思わせる放送だったんだっちゅよ!」
「それって……自作自演とかマッチポンプって奴じゃねェのかよ!?はぁ!?」
「犯罪組織は元々非合法な事をしていたから正しくはちょっと違うっちゅけど…要はそんな感じだっちゅ!」
二人のやり取りは通信機を通して各車にも聞こえており、放送以降落ち着く事のなかった犯罪組織内の動揺は更に増していく。確かワレチューの言う通り、犯罪組織は清廉潔白とはとても言えず構成員もそれを重々承知してはいたが…だからといって自作自演紛いの事をされては黙っていられない。……が、そこでリンダはある事に気付き、ワレチュー共々一度身を引っ込める。
「……ちょっと待て。テメェの言う通りなら、こっちから仕掛けない限りは向こうも強硬手段には出られねェって事だよな?だったら…」
「その通りだっちゅ。墓場への援軍は遅れるっちゅけど、今から出来る最善の策は攻撃せずに権利を主張する事っちゅ。殆どルール無用な戦闘よりさっき言った通りしがらみの多い場に持ち込んだ方が、何だかんだで切り抜けられる可能性が──」
「…お、今通信が来たから伝えておくぜ。他の地域でも犯罪組織らしき集団を発見し、既に数ヶ所で戦闘が開始されてるらしい。…そいつ等は、お前等の仲間なのかもしれねぇなぁ?」
『……ッ!』
ラステイションのMGはAEUの某可変機並みの集音性を有しているのか、それとも部隊長は驚異的な推理能力を持っているのか、はたまた今のは当てずっぽうの産物なのか。ともかくリンダとワレチューの会話がまるで聞こえていたかの様なタイミングで対抗手段を潰してきたシュゼットの言葉に驚愕する。
リンダ同様始めはワレチューの言葉の意味が分かっていなかった者の多い彼等だったが、今の言葉の意味は全員が分かっていた。別の場所にいる仲間が戦闘を開始した…つまりは軍に大義名分を与えてしまった以上、最早自分達だけ権利を主張しようと何の意味も無いのだという事を。
「……ぐっ…こ、こんなの許されるか!事実を知れば誰だっておかしいって言うだろこんなの!」
「威勢のいい女は嫌いじゃないぜ、嬢ちゃん。…だがよ、本当にそうか?テメェ等テロリストで、世論は女神支持に沸騰中なんだ。その中で、一体誰が事実を話して信用してもらえるってんだ?」
「民意も放送で掌握済みだっちゅか…犯罪組織を徹底的に悪に仕立て上げて、逆に自分達を被害者に見立てる事で正義感の強い奴を、次に流され易い奴を、最後に騒ぎたいだけの奴を味方に引き込む……お前等本当に女神の信仰者っちゅか!?これはもう民衆を軽んじてるレベルだっちゅ!教会は何様っちゅか!」
「おいおい…ネズミ、テメェ人じゃねぇ癖にそこ等の無学な奴よりよっぽど人間社会を知ってんじゃねぇか。大したもんだな」
「ふん、外面ばっかり気にしてて中身が汚い人間や女神よりオイラ達ネズミ界の方がずっと綺麗なんだっちゅ!……あ、コンパちゃんだけは見た目も心も最高っちゅからね!」
私的な感性を最後に持ってきた部分はともかく、ワレチューの論はそれまで社会を騙し続けてきた犯罪組織側も、仕事とはいえ教会の策略に加担している国防軍部隊側も否定出来ない事だった。その中で、それまで煽りの成分を含ませた声音で話していたシュゼットが少し言葉をトーンダウンさせる。
「中身が汚い、か…ま、別に否定するつもりはねぇさ。男は馬鹿で、女は狡猾で、子供は軽率で、大人は卑怯なのが人間だからな。……が、そいつはあくまで人間の話だ。女神が汚いっつーなら、テメェは女神に対して偏見を持ってるかそう思わされてるかだろうな」
「よくもまあ堂々とそんな事言えるっちゅね…」
「あぁ言えるさ、俺は根っからの女神信者だからな。女神は人間の理想を体現した存在なんだ、その女神様が汚ねぇ訳あるかよ。平和の為に幾らでも命を危険に晒して、人民の繁栄の為になら汚名だって受け入れられる女神様は汚いどころか美しいって俺は声を大にして言えるね。……それと…一つ教えといてやるよ、嬢ちゃんにネズミ」
「…な、何だよ…」
「これが許されるか、教会は何様か…テメェ等はそう言ったな。…許されるんだよ、教会の長は女神様なんだよ。大昔は人が国を統治する時代もあったが…今は女神統治の時代だ。女神統治の国において、正しさっつーのは女神様の事で、女神様の決めた事、行う事が正義なんだよ。残念だったな、絶対的な正義があって」
しん…とその場が静まり返る。正誤はともかく、この様な論を展開されてはどちらの陣営も唖然とするのは仕方のない事。それはシュゼットも言葉を並べ立てる中で気付いており、やっぱり俺は馬鹿で卑怯だなぁと内心呆れつつ……再び声音に煽りの成分を含ませる。
「…ま、そういう事だからさっさと投降しろや。無抵抗ならこっちも危害は加えねぇし、国はテメェ等の扱いについてちゃんと法に則ってくれるさ。それに、女神様は敵であり憎くない筈が無いテメェ等にすら慈悲を向けてくれるだろうからな。いい加減イキった餓鬼みたいな真似は止めて、まともになれよ。な?」
「……っ…なぁ、もうここで投降したって意味はねェんだよな…?」
「…そうだっちゅ、自分の身の安全を最優先にするなら投降する意味はあるっちゅけどね」
「そうかい…おいテメェ等、ここではいそうですかと投降出来るか?」
味方の各車両に向け、リンダは言葉を発する。人間あまりにもイラつくと逆に頭が冷えるんだな、と割とどうでもいい事に気付きながら、皆に向けて呼びかける。
「アタイは出来ないね。そりゃ、アタイ等は悪どい事もしてきたけどよ、ここまで好き勝手されて我慢出来るかよ?アタイ達なりに目標があったってのに、奴等も教会もそれを馬鹿にしてきたんだぜ?だったら…痛い目の一つでも遭わせねェと割りに合わねェ!そうだろ!?」
「…ですよね…ふざけてやがるぞあいつ等は!」
「元々戦力はこうして戦う時の為に用意してきたんだ、使うなら今だよな!」
「……ここで戦ったら、それこそ向こうの思う壺っちゅよ?」
「そう思うならさっさと逃げりゃいいじゃねェか、逃げ足速いのがネズミの特徴だろ?」
「失礼な、ネズミ界には鍵の剣を武器に闇と戦うネズミや相棒と共に伝説や幻と戦うネズミだっているっちゅ。それに…オイラだって犯罪組織の一員、ここで一匹逃げる程薄情じゃないっちゅ」
「はっ、よく言うぜ…おい!色々好きな様に言ってくれやがった礼に、アタイからも一つ教えといてやるよ!」
リンダは車両の足場を踏み締め、持ち歩いている鉄パイプをシュゼットの機体に向けて声を張る。シュゼットがコックピットの中でぴくりと眉を動かす中、リンダは息を吸い込み……叫ぶ。
「アタイ達は、犯罪組織はそういうテメェ等も女神も気に食わねェからこうして活動してんだよ!だから答えはこうだ!そっちの命令なんて……クソ喰らえだってなッ!」
彼女の声が響いた瞬間、キラーマシンは攻撃行動を開始し各車両からは砲火が上がり始める。それを受け、散開しながら反撃行動を始める国防軍。──こうしてまた一つ、信次元で人間同士による戦闘が始まるのだった。
*
プラネタワーには政府機関としての部屋、女神及び教会関係者の居住施設としての部屋の他に色々と設備がある。例えばその一つが、国防軍の指揮所。勿論司令部として活動する部屋は国防軍の基地にも存在しているが…状況や目的によっては、そちらではなくプラネタワー側の設備を使うという事になっている。
「B-2、制圧完了との事です!部隊の損害は12%!」
「パールス隊、第四基地に帰還!再出撃まで約1300秒!」
「C-1の残存戦力が投降したとの報告有り!処遇については如何なさいますか?」
「…各部隊、攻撃の手を緩めるな。だがアドバンテージも戦力もこちらに分があるのだから、無理に攻める必要はない。それとC-1にはこちらから輸送の部隊を送ると伝えろ」
各コンソールから管制と中継を行うオペレーターと、そのオペレーターの声を聞き分け冷静に指示を出していく司令官。その背後、教会の高官が座する為の場所でわたしは戦況を見つめている。
(…これならば、わたしが指揮する必要はなさそうですね)
ゲイムギョウ界の長い歴史からすれば現在再編された国防軍の歴史など浅く、決して積み重ねの多い組織ではないものの、司令官はよく指示を出してくれている。わたしがあまり出張っては軍上層部の面子が潰れてしまうと作戦開始前まで思っていましたけど…取り越し苦労の様で安心です。
現在国防軍は犯罪組織を壊滅させる為にプラネテューヌ各地を奔走していて、その行動はラステイション、リーンボックス、ルウィーでも同時に行われている。…守護女神奪還と同時に組織としての犯罪神信仰集団を壊滅させ、一気に犯罪神陣営を劣勢に持っていこうというのがわたし達教祖とイリゼさんによって考えられた、この作戦の真の目標だった。
「…………」
ギョウカイ墓場へ向かったイリゼさんやネプギアさん達が気になるが…インカムがあるからといっておいそれと連絡は出来ない。もし戦闘中であればその連絡のせいでやられてしまう可能性があるし、何かあったのかと心配させる事もしたくはない。それに、自分は教祖なのだからきちんと今起こっている戦いを見なければならない…という思いもあって、わたしは連絡を控えていた。
…なんて思っていたからなのか、その時わたしへ誰かから電話が入る。一瞬ギョウカイ墓場で何かが?…と思ったが…違う。
「…ビーシャさんですか?(・ω・)」
「うん、こっちはそれなりに人が集まったよ。もう警察の人とかも来てくれてるし、わたしの指示で動いてもらっていいのかな?」
「はい。ギルドで召集した以上はわたしよりビーシャさんの方が適任ですし、お願いしますねm(_ _)m」
電話の相手は、プラネテューヌのギルド支部長であるビーシャさん。ギルドの側でも上手く進んでいる様で、わたしは少し安心する。
民意が味方になっているとはいえ、警察や軍人の数は限られており全ての場所へ部隊を派遣する事など出来ない。だからわたし達は、ギルドに一部の警察や軍人を派遣しその人達を中心にした、街中での取り締まり部隊の設立を考案した。勿論それは民間人に危険な役目を頼む事ではあるが…頼むのは比較的戦力の少ない場所であり、そもそも参加も強制ではない。というか普段危険な場所でモンスター討伐や採取を行なっている人であれば、むしろこのクエストの方が楽なのかもしれない…と内心わたしは思っているところ。
その後、数回のやり取りで会話が終了したわたしとビーシャさん。……けれど電話はまだ切れず、暫くの沈黙の後ビーシャさんはこう呟いた。
「……あのさ、イストワール。…これって、ねぷねぷ達は喜ぶのかな…?」
「…それは……」
それはきっと、
確かに、これはネプテューヌさん達守護女神の四人であれば恐らくやらない方法。決してベストなやり方ではなく、自分達でも非がない作戦だとは思っていない。……けれど、
「…分かりません。でも、わたしは…わたし達は、そういう方法だとしてもネプテューヌさん達を助けたいと、皆さんが必死の思いで作った平和を乱す犯罪組織を何とかしたいと思っているんです。…だって、ネプテューヌさん達はわたし達にとって大切な女神様ですから」
「…そう、だよね…うん、わたしだってねぷねぷ達は大切だよ!だからお互い頑張らなきゃだよね!」
…そう、ネプテューヌさん達はわたし達にとって大切な女神様。その女神様達の為なら…どんな事だってしたいと思うのが、わたしイストワールです。
ビーシャさんもわたしの言葉に納得してくれた様子で、わたし達の通話は終了。さて、戦況は…と思い司令部の方へ目をやると、いつの間にか司令官がわたしの方を向いていた。
「…何か、ありましたか?」
「はい。ヴィオレ隊が、四天王らしき敵と交戦を開始致しました。私はそれについて、足止めに徹する様指示致しましたが…宜しかったですか?」
「…えぇ、それで構いません。それと、四天王の情報は各国に送っておいて下さい。敵の中核戦力の場所は重要な情報ですからね」
そう言って、わたしは少し前へと出る。偶然か、状況打破に動いたのかは分からないものの…四天王が戦場に現れたのなら、戦闘は更に激化する筈。ならば、わたしも勤めを果たさなければならない。
「……皆さん、わたしはあまりこの言葉が好きではありませんが…世の中勝てば官軍、負ければ賊軍です。現段階でも犯罪組織をテロリズム組織だと認定出来ましたが、ここで勝てば完全に犯罪組織は集団としての力を失うでしょう。そしてそれは、ネプテューヌさん達守護女神の奪還にも大いに繋がります。……今一度言います、勝てば官軍、負ければ賊軍…今日、この戦いを持って犯罪組織を賊軍としようではありませんか、皆さん」
──イリゼさんも、候補生の皆さんも、女神に協力してくれる方々も、軍人もギルドの召集に応じてくれた人達も、皆がそれぞれで全力を尽くしている。だから教祖であるわたしも、この状況を作り上げた人間の一人であるわたしも、すべき事を最大限にしよう。わたしの思いは、ただ偏にそういうものでした。
今回のパロディ解説
・AEUの某可変機
機動戦士ガンダム00に登場するMSの一つ、AEUイナクトの事。ラステイションのMGに対してのパロディですが、性質的にはむしろプラネテューヌの方が近いですね。
・鍵の剣を武器に闇と戦うネズミ
キングダムハーツシリーズの登場キャラ、王様ことミッキーマウスの事。一応人同士で戦う事もありますが…基本は闇の存在と戦ってますよね、キーブレード使いは。
・相棒と共に伝説や幻と戦うネズミ
ポケットモンスターシリーズの代表的存在、ピカチュウの事。時には神(のポケモン)とだって戦うピカチュウは、女神相手でもその力を発揮…するのかもしれません。