超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第七十二話 病室の五人

お姉ちゃん達を助け出してから、一週間が経った。 あの後わたし達は女神候補生として救出と同時に行われた戦いの後処理だとか頑張ってくれた人達への慰問とかに追われて大変だったけど……それよりも堪えたのが、お姉ちゃんと会えない事だった。

お姉ちゃんが近くに感じられるお姉ちゃんじゃなくて、概念的な神様みたいな存在に感じられた放送の時。でも、その放送を終えた時にはお姉ちゃん達のドレスに血が滲み始めていて、それから着替え用の部屋に移動して……そこで、五人揃って倒れてしまった。お姉ちゃん達は職員さん達を心配させまいと、部屋まで必死に耐えていたみたいで、倒れたのは五人が入って扉を閉じたその瞬間だった(わたし達は倒れた事に音で気付いた)。

倒れた後すぐに運ばれて、治療を受けたお姉ちゃん達。お姉ちゃん達は全員一命を取り留めて、もう命の危険はないってコンパさんもお医者さんも言っていたけど…それからイリゼさんは一日弱、お姉ちゃん達は数日間目を覚まさなかったらしい。…らしい、というのは今日まで面会謝絶状態で、わたしはお姉ちゃんに会う事も話す事も出来なかったからで……今日やっと、その面会謝絶状態が解かれた。だから今、わたしは候補生の皆とコンパさん、アイエフさんと一緒にお姉ちゃん達が面会謝絶解除と同時に移動してきた大部屋へと向かっている。

 

「コンパさん、お姉ちゃんとは会うだけじゃなくて話す事も出来るんですよね?」

「そうですよ。まだ歩き回る事は出来ないですけど、話す事は目が覚めた後すぐ出来る様になったです」

「…コンパさん、おねえちゃんと先にはなせて…ずるい…」

「あはは、わたしはナースさんですからね」

 

ちょっと口を尖らせるロムちゃんに苦笑いするわたし達。…けど、その気持ちはよく分かる。せっかくお姉ちゃん達が帰って来たのに、ここまで来てお預けなんてあんまりだもん。家族なんだからちょっと位いいじゃん……っていうのが、わたしの本心だったから。…でも多分、わたし達の前だとお姉ちゃん達は体調悪くても無理して付き合ってくれるだろうし、わたし達もそれに気付かず長居しちゃうだろうから、そういう事を踏まえてわたし達は会っちゃ駄目だったんだろうなぁ…。

 

「ところで、MAGES.さんやREDさん達は来ないんですか?」

「皆は明日にするらしいわ。パーティー全員で来たら人数凄い事になっちゃうでしょ?」

「あ、それはそうですね…」

「じゃあ、ミナちゃんたちは?こっち来てるのにおねえちゃんに会わないの?」

「あ、いーすんさん達も時間ずらすって言ってたよ?教祖としてお姉ちゃん達が不在の間の事色々話さなきゃいけないし、自分達がいない方が皆さんは楽しく話せるでしょう、って」

「ふーん…わたしはミナちゃんがいても楽しくはなせるのに…」

「アタシ達姉妹とコンパさん、アイエフさんの付き合いの長い友達だけで話せるよう気を遣ってくれたのよ、きっと」

 

確かにいーすんさん達も含めた全員で一度に行ったら二十人いっちゃうし、そこまで多いともうお見舞いどころの騒ぎじゃなくなってしまう。何々どころじゃない、って意味じゃなくて…ほんとの意味で、騒ぎになってしまいますし…。

 

「……お姉ちゃん達の早期回復の為には、むしろお見舞いしに行かない方がいいんじゃ…」

「え…ネプギアちゃんは、おみまい…したくないの…?」

「あ、ううん。そういう事じゃなくてね…」

「はい、着きましたですよ」

 

宴会みたいな状態に疲れて容態が悪化するお姉ちゃん達を想像していたところで一歩先を歩いていたコンパさんが扉の前で立ち止まり、その扉に手をかける。

 

「分かってると思うですけど、ねぷねぷ達は怪我人さん、今から入る部屋は病室です。走り回ったり無理に何かをさせようとしたりするのは絶対駄目ですよ?」

『はーい』

「それと…ねぷねぷ達は、毎日ギアちゃん達と話したいって言ってたです。だから…ちゃんと守るべき事は守った上で、いっぱいお話してあげて下さいね」

『…はい!』

 

いつも通りのほんわかな微笑みでそう言われて、わたしのちょっと斜に構えた考えは消えていった。怪我人のいる場で騒ぐのはよくない…というのは間違いないと思うけど……変に身を案じて遠慮してたら、それはわたし達もお姉ちゃん達も寂しいもんね。だって…わたしとお姉ちゃんは、姉妹だもん。

 

「それじゃ、入るですよ〜」

 

ノックをして病室の引き戸を開けるコンパさん。わたし達は今度こそお姉ちゃん達とゆっくり話せるんだと胸を高鳴らせながら、でも同時にほんの少しだけ今のお姉ちゃん達の容態に心配も抱きながら、コンパさんアイエフさんと共に病室の中へ……

 

 

 

 

「残念!ノワールは身包みを剥がされてしまった!」

「ちょっと!?何でよ!?なんで遺跡の謎解きで身包み剥がされる展開になるのよ!?」

「えーっとね、それは…仲間だったベールとブランが双子の盗賊という本性を現し、謎解き中のノワールを後ろから襲ったからである!」

「まさかのわたくし達への設定追加&行動決定!?それは明らかにゲームマスターの役割を超えていますわよ!?」

「しかもわたしとベールが双子って…絶対適当に考えたわね…」

「ふふーんわたしは盛り上がり重視なのさ!遺跡の中で素寒貧となったノワール、丸ごとパクったはいいものの謎解きしてないから脱出出来ない盗賊姉妹、彼女達の命運はパーティーを離れさっきどっか行っちゃったサイコロを探すイリゼに託された!イリゼは謎を解き、ノワールの救出と双子の改心を行えるのか!?そして無くなったサイコロは無事出てくるのか!?頑張れイリゼ、負けるなイリゼ!それじゃあテレビの前の皆、また来週も見てねっ!」

「終わったぁぁぁぁ!?私がサイコロ探してる間に終わった!?っていうか、ゲームと実際の空間とが混ざっちゃってない!?それに来週もやるの!?テレビだったの!?ちょっ、ボケを突っ込み過ぎてて突っ込みきれないんだけど!?あーもう…」

『ネプテューヌにゲームマスターやらせるんじゃなかった……』

 

…………何故か、お姉ちゃん達はTRPGをやっていました。しかもお姉ちゃんは、某千年リング所有者さんばりに無茶苦茶なゲームマスターをやっていました。…お姉ちゃんも皆さんも、何やってるの…?

 

 

 

 

「わたし、昨日も言ったですよね?五人共怪我人さんなんですって。自分じゃ分からなくても、まだまだ皆さんの身体は重体なんですって。…それを、一日で忘れちゃったんですか?」

『いえ、覚えてます…』

「じゃあ、どうしてベットで寝てないんですか?寝てなくても、もう少しの間はベットに身体を預けて楽にしてなきゃ身体に悪いんですよ?」

『返す言葉もございません…』

「…わたしも、あんまり勝手されたら怒るですからね?」

『はい、以後気を付けます…』

 

わたし達とお姉ちゃん達とが衝撃的な再会を果たしてから数分後、お姉ちゃん達はコンパさんにお説教されていた。

 

『おねえちゃん…』

「あんまり見たくないわね、自分の姉が叱られてるところなんて…」

「う、うん…わたしは何度か見た事あるけど…五人まとめて怒られてるのを見るのは初めてだよ…」

 

自分の姉に加え、真面目で良識的なノワールさん、大人で落ち着いているベールさん、クールでしっかりしているブランさん、そしてわたし達の先生を務めてくれたイリゼさんが揃って人間のコンパさんに叱られる…というのは本当に何だか悲しくなってくる光景だった。…後、声を荒げたりキツい言葉使ったりしないのは、それはそれで怖い…。

 

「…コンパ、その位にしてあげたら?このままいくと株価の大暴落でねぷ子達、姉として倒産しかねないわ」

「それは、そうですね…じゃあ皆さん、以後気を付けるって言いましたけど…それを、約束してくれますか?」

『約束します…』

「じゃあ、今日は許してあげるです。でも安静にしてないと辛くなるのはねぷねぷ達自身なんですから、約束関係なしに気を付けなきゃ駄目ですよ?」

『あ、はい…』

 

わたし達がいたたまれない気分になっていたのに気付いたアイエフさんが助け船を出して、それでコンパさんのお説教は終わった。…で、改めてわたし達はベットへ戻ったお姉ちゃん達の所にそれぞれ行ったんだけど……

 

((…き、気不味い……))

 

とにかく今は気不味かった。…いや、だって今し方叱られてるのを見た(見られた)ばかりだもん…コンパさんが怒ったのは当たり前の事だし、悪いのは全面的にお姉ちゃん達何だけど…。

 

「え、ええと…ベール様達、なんかミイラみたいな状態になっちゃいましたね…」

「あ、あぁ…そうですわね。目が覚めたばかりの時はもっとミイラ風だったんですのよ?」

 

そんな状態の中で最初に口を開いたのはアイエフさん。アイエフさんの言葉にベールさんが反応して、わたし達候補生も確かに…と心の中で同意する。

元気良く声を出していたお姉ちゃん。でもお姉ちゃんの頬には医療用テープで大きなガーゼが貼ってあって、右腕は三角巾で吊り、左脚はギプスで止められており、頭に首に手足首と服から出てる部位の多くが包帯で巻かれているという、とても元気には見えない身体をしていた。勿論それはノワールさん達も同じで、四人よりは怪我の少ないイリゼさんもやっぱりミイラ状態には変わりない。

 

「お姉ちゃん、両脚共折れてたんだね…」

「左脚はヒビだけよ?こっちは確か押し潰された時ので、右腕は…多分ブレイブの大剣を蹴りで迎撃した時に折れたんだと思うわ」

「ね、ねぇ…左の目、見えなくなっちゃったの…?」

「大丈夫よ。アイマスクは付けてるけど、傷を負ったのは目じゃなくて瞼だから」

「ま、まぶた切れちゃったの…?(ぶるぶる)」

「…………」

「……あれ?ネプギアは訊いてくれないの?」

「え…訊いた方がよかった…?」

「そりゃ勿論!訊いてくれたら『衛星軌道上からのダインスレイヴは想定外で…』とか『輻射波動もブレイズルミナスも尽きて殴り合いするしかなくて…』とか言おうと思ってたのになぁ…」

「そ、そうなんだ…」

 

外見はどう見ても酷い怪我なのに、それを事もなげに話すどころかネタにすらしてしまうお姉ちゃん達はやっぱり凄い。…さっき下がった株の回復には足りないけど。

 

「…ほんとに悪かったわね。幾ら話し合った結果とはいえ、女神の皆だけに任せちゃって」

「もう、そういう事はいいんだって。折角面会許可が降りたんだから、もっと楽しい話しようよあいちゃん」

「そうだよ。アイエフだって四人と話すの楽しみにしてたんでしょ?」

「…そう、ね…全く、貴女達はほんとに明るいんだから…」

「え…いや明るいのは否定しないけど…私ネプテューヌと同列なの…?」

「突っ込みの時のテンションはねぷ子に匹敵してると思うわよ?」

「それは突っ込み限定じゃん…」

 

段々空気が和んでいって、お姉ちゃん達との会話も弾み始めるわたし達。わたし達四人はやっぱりまず自分達の成長を報告したくなって、話の中心は旅の事に。

 

「でね、わたしとユニちゃんは決闘する事になったんだ。あの時はまさか候補生同士で戦う事になるとは思ってなかったよ…」

「へぇ…プラネテューヌの女神はラステイションの女神に勝負を持ちかけられて勝つ、ってジンクスでもあるのかな?ねーノワール〜」

「うぐっ…わ、私の時はイリゼもいたし、ユニは負けたと言えるかどうか微妙でしょ!」

「ううん、あの時はアタシの負けだったと思う。……あの時は、ね」

「戦いといえば、ルウィーでも勘違いで勝負になっちゃったですね」

「戦い?ロム、ラム、その時貴女達は何か勘違いしていたの?」

「え?そ、それは……わ、わたしわかんなーい!」

「わ…わたしも、わかんなーい…」

「……取り敢えず二人が迷惑かけたのは間違いなさそうね…姉として謝罪するわ…」

 

お姉ちゃん達はわたし達の話を興味深そうに聞いてくれて、それが嬉しくてわたし達も言葉が進む。持ってきた林檎をコンパさんがテンポ良く剥く音をBGM代わりに会話を弾ませていたわたしは…そこでふと、ベールさんが膨れっ面をしている事に気付いた。

 

「……ベールさん?」

「…三人が羨ましいですわ…旅の事を語ってくれる妹がいる三人が……」

「ベール様…(頬膨らませてるベール様、ちょっと可愛い…)」

「え、えぇと…あ、じゃあリーンボックスでコンサートに参加した時の話しましょうか?ネプギア達も構わないわよね?」

「あ、うん。リーンボックスでも色々あったよね」

 

戦いの事、出会いの事、訓練の事…わたし達は話したいって思った事を片っ端から口にして、それを全部聞いてもらった。あんまり時系列の事は気にしてなくて、情報もわたし達が伝えたい事ばっかり優先して言っていたから説明としてはきっと駄目駄目だったと思うけど…それでもお姉ちゃん達はうんうんと相槌を打って、話の流れが崩れない程度に質問を交えながら聞いてくれた。

ただ話しているだけなのに、前は日常的に行ってた事なのに、それが今は凄く嬉しい。こうしているだけで幸せで、こうしていられるだけで満足で、心が奥底から和らいでいくのを感じられる。…だからこそ、思う。お姉ちゃん達を助ける為に、ここまで頑張ってきてよかったって。

 

「ユニ達も中々壮絶な旅をしてきたのね…イリゼ、コンパ、アイエフの三人には感謝するわ」

「わたしもよ。特にロムラムは貴女達が引率してくれてなければどうなっていた事か…」

「そんな事ないですよ、ブラン様。確かに私達も色々しましたけど…候補生も皆、ただ着いてきただけじゃないですから」

「そっかそっかぁ…うぅ、ネプギアの成長を側で見ていられなかった事は後悔の極みだよぉ…」

「わたくしも新たな旅でのあいちゃんの勇姿が見られなかった事が残念でなりませんわ…」

「あはは…皆さん、林檎が剥けたですよ〜」

 

…と、少し恥ずかしくなりそうな話題になりかけたところで林檎の皮剥きが終了。コンパさんに呼ばれた私達とアイエフさんは小皿に分けられた林檎とフォークを取りに行き、それを持って再びベット横の椅子へ。

 

「あ、これ…うさぎさん…」

「ほんとだ!見て見ておねえちゃん、りんごのうさぎさんよ!」

「全部兎になってるとは…凝ってるね、コンパ」

「折角だからやってみたです。でも、今すぐ食べる事を考えるとそんなに意味はなかったかもしれないです…」

「そんな事はありませんわ。わざわざやってくれたというだけでも嬉しいんですもの」

 

ぴょこりと耳を付けた林檎はロムちゃんラムちゃんが喜ぶのも分かる位可愛らしくて、その出来栄えからちょっぴりだけ食べる(のはお姉ちゃん達だけど…)のが惜しいな、と感じてしまうわたし。でもだからって放置したら腐る一方だもんね、とお姉ちゃんに小皿を渡そうとして……気付く。

 

(あ…お姉ちゃん、普段通りに食べられるのかな…?)

 

今お姉ちゃんは右手が使えない状態で、左手へお皿を渡したら犬みたいにがっつくしかなくなってしまう。取り敢えずそれはベット備え付けの机に置くとか脚の上に置くとかで片手あければ解決するけど…フォークとはいえ、利き手じゃない手で食べるのは難しいよね…。

 

「……?ネプギアー、お林檎ちょーだーい」

「…お姉ちゃん、わたしが食べさせてあげよっか?」

「え?…あ、もしかしてわたしが怪我してるから?」

「うん。今の状態じゃそっちの方が楽でしょ?」

「ね、ネプギア……お姉ちゃんは心優しい妹を持てて幸せだよ!ネプギア大好き!ネプギア愛して…痛た…」

「お姉ちゃん…折れてる腕で抱き締めようとするのはそりゃ無茶だよ…」

 

嬉しそうな顔から一転、痛みに顔をしかめるお姉ちゃんを見てわたしは苦笑い。腕気にして提案したのに、そのやり取りの中で腕痛めちゃったら本末転倒だよ…。

 

「うっかりしてたよ…じゃあ、ネプギアお願いね」

「はーい。お姉ちゃん、あーん」

「ん、あーん」

 

うさぎさん林檎の一つにフォークを刺して、お姉ちゃんの口へと持っていく。それで半分位が口へと入ったところでお姉ちゃんはしゃくりと音を立て噛み、それからもごもごと口に入った林檎を咀嚼していた。

 

「…どう?って言ってもわたしは林檎移動させただけだけど…」

「うん、美味しいよ!こんぱの技術とネプギアの優しさが融合して、この林檎の甘さは当社比1.8倍だね!」

「そ、そうなんだ…まだ食べるよね?」

「食べる食べる!あーん」

 

にこにこ笑顔でまた口を開けるお姉ちゃんへ、食べかけの林檎をまた運んであげる。…わたしは生まれた時からこの姿だったから、経験した事はないけど…普通の人みたいに赤ちゃんの姿で生まれてきたら、こんな感じにお姉ちゃんに食べさせてもらう事もあったのかな…。

 

「ネプギアちゃんも、ネプテューヌさんもたのしそう…」

「ね、ロムちゃん。わたしたちもおねえちゃんにやってあげようよ!」

「うん、おねえちゃん…あーん」

「あ、ありがとうロム、ラム…でも二人同時に出されても食べられな…むぐぐ…」

「あいちゃんあいちゃん、あーん、ですわ」

「えぇ!?……も、もう…しょうがないですね…」

「それなら、イリゼちゃんはわたしが食べさせてあげるですね」

「あ…それはちょっと恥ずかしいけど…ありがと、コンパ」

 

左右から林檎を口へ入れようとするロムちゃんラムちゃんに、恥ずかしがりながらもまんざらじゃなさそうにして林檎をあげるアイエフさんに、その声音で言われたら断れないなぁ…と感じさせるコンパさん。わたしの行動は思わぬ波及の仕方をして、病室はお姉ちゃん達へ林檎を食べさせてあげるムードへとなっていった。……ある一組を除いては。

 

「…………」

「…………」

(……あ、アタシも食べさせてあげようかな…でもお姉ちゃん、両手共動かせるから余計なお世話になっちゃうかもしれないし…)

(……わ、私も頼んでみようかしら…でも私、両手共動かせるからユニに図々しいって思われるかもしれないし…)

 

ちらちらと林檎や相手の顔を見つつも黙ったままなユニちゃんとノワールさん。どっちもあげたくないとか食べさせられたくないって感じは顔に出てないけど…なんだかとってもぎこちない。仲悪いみたいじゃないけど…うーん……。

…と思っていたところ、わたしはお姉ちゃんに肩をつつかれる。

 

「ねぇネプギア、もしかしてユニちゃんって…ツンデレ?」

「え?…うーん…ツンデレかどうかは分からないけど、候補生の中では一番素直じゃないかも…」

「あ、やっぱり?わたし達の前じゃ礼儀正しい普通の子って感じだったけど、何せノワールの妹だもんねぇ…よし、ここは一つ芝居を打ってあげるとしよっか」

「芝居…?…あ…うん、わたしも協力するよ」

 

言葉の意味は一瞬分からなかったけど…お姉ちゃんの悪戯っぽい笑みを見て、わたしはその意図を理解する。

 

「こほん……あれノワール、そっちの林檎余ってるの?」

「へ?…い、いや別に余ってる訳じゃ…」

「余ってるならわたし欲しいな〜、もっとネプギアに食べさせてもらいたいし」

「そ、それなら自分のでやりなさいよ!どう見たってまだそっちも残ってるわよね!?」

 

何にも違和感なく芝居に入るお姉ちゃん。それを受けノワールさんだけじゃなくユニちゃんも少し焦った様な顔を見せたのを確認したわたしは、お姉ちゃんに続いて演技を始める。

 

「ユニちゃん、どうかな?わたしもお姉ちゃんにあげるの楽しいから、もう少しあった方が助かるんだ」

「と、とんでもなく自己中な理由ね…嫌に決まってるでしょ」

「じゃあ早くノワールさんに渡してあげなよ?…あ、それともまさか、ユニちゃん自分が食べたいとか?」

「そ、そんな訳ないでしょうが!少なくとも先に自分が食べたりはしないわよ!」

「ノワールぅ、くれないの?ねぷは林檎を食べたいのー」

「ユニちゃん、林檎さんをわたしに下さいっ!」

「な、なんなのよ貴女達姉妹は…あげないったらあげないのよ!ほらユニ、私に頂戴!」

「う、うん!もうそこまで欲しいなら残った時あげるから、ネプギアは我慢してなさい!お、お姉ちゃんあーん!」

 

すっ、ぱくり、もぐもぐ、ごくん。フォークが突き刺さったまま放置されていたうさぎさん林檎は、やっとノワールさんの口へと運ばれました。

 

「……お、美味しいわね…ユニ…」

「そ、そっか…もう一口どう…?」

「い、頂くわ…」

「……上手くいったね、お姉ちゃん」

「うん。作戦成功だね、ネプギア」

 

お互い照れながらまた一口食べる(もらう)二人を見て微笑み合うわたしとお姉ちゃん。姉妹で協力して何かを達成するのって、楽しいね。

その後も林檎をあげたり、追加でコンパさんが剥いてくれた林檎を食べたりしながら談笑を続けるわたし達。それは時間を忘れる位に楽しい時間で、気付けば数時間が経っていた。

 

「あ……ねぇコンパ、今日はこの位にした方がいいんじゃない?」

「ほぇ?…あ、そうですね…」

「このくらいって…わたしたちもうかえらなきゃなの?」

「…わたし達の身体を気にしてるなら、まだ大丈夫よ?」

「あ、そうではなくて…この後教祖さん達の面会があって、その時は仕事の話とかもしたいから…って言われてるんです」

「そういう事…それなら仕方ないわ。ロムラム、これからはこうして会えるんだから、今日はこれで我慢しなさい」

「うー…うん……」

「わかった…」

 

不満そうながらも了承した二人に、ブランさんは偉いわ、と言いながら頭を撫でてあげる。わたしやユニちゃんだって出来るならもう少しここに居たかったけど…後でいーすんさん達が来るっていうのは聞いていたし、仕事の話があるって事なら仕方ないって納得出来る。…何気にこれに関してはわたしよりお姉ちゃんの方が残念そうにしてたけど……そ、それはわたしと離れたくないって事だよね。別に仕事の話が嫌だとかじゃないよね…?

 

「皆、今日は会いにきてくれてありがとうね。皆が元気で私も安心したよ」

「出来るだけ早く復帰するつもりだけど、それまではもう少し国やゲイムギョウ界の事を頼むわね」

「わたしも皆さんに会えて嬉しかったです。お姉ちゃん、わたし出来る限り来るから頑張ってね?」

「それじゃあ皆さん、わたしがいなくなったからってまた騒いだりしたら駄目ですからね?」

『はーい』

 

時間が合えば明日だって会えるんだから、とわたし達は軽めの挨拶を交わして、それで出ていく事にする。会話だけなら電話でだって出来るし、もうそんなに悲しい気持ちになる必要なんてないよね。

 

(…でも、ほんとにお姉ちゃん達が元気でよかったな。これならお姉ちゃん達の復帰もそんなに遠くなさそうだし、それまでわたし達ももう一踏ん張り、だよね)

 

そうして病室の扉をくぐるわたし達。今日はお姉ちゃん達と話せて本当によかった。次来る時は先に何か欲しいものがあるか聞いて、あったらそれを持ってきてあげようかな。それにイリゼさんとも話したいし、他の皆さんの話も聞いてみたいし…ふふ、これからここに来るのが楽しみかも。……なんて、そんな事を考えながら出ていくわたし達でした────

 

 

 

 

「……あ、ところでさこんぱ。わたし達っていつになったらお風呂入れるのかな?」

『…………え?』

「それは…まだ分からないですね。でもお医者さんは凄い速さで治りつつあるって言ってましたし、そんなに遠くないと思うですよ」

「そっかぁ…うん、分かったよこんぱ」

 

……いい感じに終われると思っていたけど…やっぱりここは信次元ゲイムギョウ界。日常パートやギャグパートじゃ中々いい感じに終われないんだなぁと思うわたしだった。……消臭剤、持ってきてあげようかな…。

 

「いやわたし達身体は拭いてもらってるからね!?お風呂には入れてないけど、臭いの心配とかはしなくていいからね!?…ちょっ、閲覧者さんも変な事想像しないでよ!?」




今回のパロディ解説

・某千年リング所有者さん
遊☆戯☆王シリーズに登場するキャラ、獏良了の事。この作品のTRPG編を読んだ事のある方は分かると思いますが、TRPGでGMが無茶苦茶するのは駄目ですよね。

・『衛星軌道上からのダインスレイヴは想定外で…』
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズに登場する兵器及び最終決戦のワンシーンの事。あのシーンのバルバトスやグシオン並みの怪我なのかは…想像にお任せします。

・『輻射波動もブレイズルミナスも尽きて殴り合いするしかなくて…』
コードギアス 〜反逆のルルーシュ〜 R2に登場する兵器及び最終決戦のワンシーンの事。守護女神は爆散したりはしてませんよ?それは流石に死ぬ可能性が高いです。

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