超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth2 Origins Progress   作:シモツキ

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第七十八話 やっときたその日

お姉ちゃん達を助け出してから、そこそこの期間が経った。その間に何度もお見舞いに行って、休暇を貰って皆で発明を進めてみたり、クエストで浮き島に行ったり……そんな日々を、わたし達は過ごしていた。そして今日、わたし達の待ちわびていた日が遂にやってくる。

 

『〜〜♪』

「ふふ、皆さんご機嫌ですね」

「あー、ミナちゃんがギャグいってる〜」

「ミナちゃんが、みなさん…(くすくす)」

「な、何故これまで何度もありながら触れられる事なく済んでいたものを今になって…」

「それだけ気分が舞い上がっているという事だろうね。まぁ分からない事はないさ」

 

教祖の皆さん(ミナさんじゃないよ?…皆さんの中にミナさんは入ってるけど…)と共に、お姉ちゃん達の病室へ向かうわたし達四人。今のわたし達は頭から音符が出てきそうな位心が弾んでいて、普段なら流してしまう事にもつい突っ込みたくなる気分の真っ最中。因みに活字だから分からないと思うけど、実はチカさんもわたし達と同じ『〜〜♪』側だったりします。

 

「皆さんがそこまで嬉しがってくれるなら、ネプテューヌさん達もさぞ回復する事に専念した甲斐があるでしょうね( ´ ▽ ` )」

「お姉ちゃん達、来る度変な事してたり賑やかに話してたりして、あんまり回復に専念してた感じありませんでしたけどね」

「さらっと毒を吐きましたねネプギアさん…(⌒-⌒; )」

「え……あ、言われてみると確かに…」

 

いーすんさんの言葉へ何の気なしに返答したわたしだったけど…無自覚に遠回しなお姉ちゃん達disりをしてしまっていた。…浮かれていたとはいえ、まさかこんな心にも無い事……でもないけど…を言っちゃうなんて…。

 

「アンタ…お姉ちゃん達の前でまで言うんじゃないわよ?今日は特別な日なんだから」

「う、うん。そうだよね…折角特別な日、なんだもんね」

 

そう、今日は特別な日。わたし達がずっと待ってた、お姉ちゃん達も早く来てほしいと常々言っていた……お姉ちゃん達の、退院日。

 

「やっとお姉様が帰ってくる…やっとお姉様とリーンボックスに帰れる…うふ、うふふ、うふふふふ…」

「ち、チカさんから危なそうなオーラを感じる…」

「あぁ、これは気にしなくて大丈夫さネプギア。彼女は普段からこんな感じだ」

「ちょっとケイ、聞こえてるわよ?」

「ある意味お二人は平常運転というかなんというか…こほん。ネプテューヌさん達の退院は勿論喜ばしい事ですが、守護女神の公務復帰は即ち対犯罪組織…いえ、対犯罪神の作戦を更に次へと進めるという事です。そこは忘れてはいけませんからね?(・ω・`)」

「イストワールさんこそ平常運転ですね。…皆さんもそれはちゃんと分かってる筈ですし、今日は素直に喜んでも良いのではないでしょうか?」

「…そう、ですね。えぇ、それもいいかもしれません(*´ω`*)」

 

浮かれ気味のわたし達を窘める様にいーすんさんはそう言ったけど…ミナさんの言葉を受けた後は、いーすんさんもまた微笑みを見せてくれた。……でも、そうだよね。お姉ちゃんの退院は凄く嬉しい事だけど、それで全部解決はいお終い、って訳じゃないもん。

 

「…いーすんさん、いつも気を付けてくれてありがとうございます」

「いえいえ、わたしも長く生きていますからね( ̄▽ ̄)」

「長く…そっか、いーすんさんってお姉ちゃん達よりもずっと長生きなんでしたね」

 

お姉ちゃん達も相当長く生きているらしいけど、いーすんさんはもう一人のイリゼさん…原初の女神さんが生み出した存在で、わたし達どころかお姉ちゃん達とも生きている年数の桁が違う。なのに見た目は可愛らしい妖精さん風なんだから、これって不思議なものだよね。

そうしてわたし達は丁度出てきたお医者さんとすれ違う形で病室前へ到着。面会謝絶が解かれたあの日の様に、興奮と少しの緊張を抱きながら、わたし達は扉の前へと立つ。

 

「…開けたらまた大賑わいだったりして」

「いやいやまさか、幾らお姉ちゃん達でもそんな事は……」

『……ありそう…』

「あ、あはは…はは……」

 

ちょっと呆れ顔で言葉を被せてきたロムちゃんラムちゃんに、わたしは乾いた笑いを返す事しか出来ない。…皆さん、ロムちゃんラムちゃんにすら呆れられるのは流石に不味いと思います……。

 

「…こ、こほん。とにかく入ろうよ。いいんですよね?」

「えぇ、いいに決まってるじゃない。さぁ行くわよ」

 

もしかするとわたし達候補生組以上に興奮してるのかもしれないチカさんが先頭に立ち、病室の扉は開かれる。また入院中らしくない事してたりして…なんてやり取りをしたわたし達だけど…わたしは知ってるよ。お姉ちゃんや皆さんはお茶目な部分もあるけど、同時に頼れる大人としての部分だってあるって。そう、きっと開いた扉の先ではふざけず荷物をまとめてるお姉ちゃん達が……

 

『…………え?』

 

開けた先で見たのは、確かにふざけていないお姉ちゃん達。…なんだけど……お姉ちゃん達は、何故か病衣を着たまま女神化していた。

 

 

 

 

ひゃっほーい!久し振りのわたし視点!プロローグ振りのわたし視点!やっぱり主人公たる者語り手やらなきゃ駄目だよね!細かい事言えば第六十七話でも一応わたし視点入ってるけど、あれは半分回想みたいなものだし正気も失いかけてたからノーカンノーカン!これから復活したわたしの魅力でねっぷねぷにしてあげるから、読者の皆はちゅーもーく……って、あ、あれ…もしかして今、わたし視点はわたし視点でも女神化したわたし視点!?……こ、こほん。…皆、楽しみにしていて頂戴。気品あるわたしの魅力で、皆の心を釘付けにしてあげるわ。…そ、そこ!慌てて立て直しを図ったとか言わない!た、立て直しなんてしていないわ!してないんだからっ!

 

「……お姉ちゃん?」

「…はっ……ご、ごめんなさいねネプギア。ちょっと意識が別のところに行っていたわ…」

「そ、そう…大丈夫?病み上がりで大変なら代わるよ…?」

「だ、大丈夫だから気にしないで…それとネプギア、貴女いつの間にかしれっと地の文読みが出来るようになったのね…」

 

心配そうにわたしの顔を見上げるネプギア。…前は会話しながらも地の文で色々してたのに、これは間違いなく鈍ってるわね…。

 

「にしても、入った時はびっくりしちゃったよ。ベットに座ってるかなと思ってたら、病衣着た状態で女神化してたんだもん」

「まぁ、普通は誰でも驚くわよね。…本当はもう少し早く終わらせるつもりだったんだけど…」

「終わらせるつもりだった?何かしてたの?」

「えぇ、わたし達女神は人と女神の二つの身体があるでしょ?だから普段過ごしてる人の姿だけじゃなく、こっちの姿でも同じように回復してるかの最終チェックをしてもらっていたのよ」

「あ…だからさっきお医者さんが出てきたんだ…」

 

色んな人が来てくれるとはいえ、最近は暇を持て余し始めていたわたし達だけど…流石に意味もなく女神化をする程退屈してはいない。…さて、まあこれは軽く流すとして早く片付けの続きを……

 

「ったく、ほんとにネプテューヌは抜けてるってか色々迂闊だよな」

「うっ……」

「……?迂闊…?」

「あ……な、何でもないのよ?」

「…そういえば、もう少し早く終わらせるつもりだったって言ったよね?何か遅れちゃうようなハプニングがあったの?」

「ま、まさか。ただちょっとゆっくりしちゃったってだけの話よ。そ、それよりほら、早く帰り仕度を……」

「…へぇ、半裸になりかけた事は貴女にとって特筆するまでもない事なのね。へぇ〜」

「ちょ、ちょっとノワール!?」

 

ブランに終わった話を蒸し返され、ノワールに揚げ足を取られてわたしの誤魔化し作戦はあえなく崩れ去った。……そしてわたしに向けられる、ネプギアの驚きと怪訝の混じった瞳。

 

「は、半裸って……お姉ちゃん、何…してたの…?」

「べ、べべ別に変な事はしてないのよ!?も、もう!ノワールのせいでネプギアに信じられないって目を向けられちゃったじゃない!」

「あら、随分な言い草ね。咄嗟に医師の目元を手で覆って貴女を助けてあげたのは誰だったかしら?」

「そ、それは感謝してるけど…それとこれとは話が別でしょ!?」

「ねぇお姉ちゃん、何してたの?もしかして、わたしには言えないような事なの…?」

「だ、だから違っ……止めて!?皆して『この人マジか…』みたいな視線を向けないで!?」

 

ネプギアどころか他の女神候補生と四人の教祖からも同じ様な目で見られたわたしは、たまらず自分を隠す様に頭を抱えて座り込む。…う、うぅ…あれは事故よ、不幸な事故なのよ……!

 

「…えぇ、と…何があったんです…?(-_-;)」

「それは二人が今言った通りの事ですわ。迂闊なネプテューヌが女神化前後でスタイルが大きく変わる事を忘れて女神化した結果、人の姿のスタイルに合わせた病衣がはだけて半裸状態になってしまった…ただそれだけですの」

『……(お姉ちゃん・ネプテューヌさん)…』

「止めて…お願いだからネプギアもいーすんもそんな残念な物を見るみたいな顔をするのは止めて…」

 

妹と教祖にこんな哀れみを含んだ瞳で見られる女神なんて、長いゲイムギョウ界の歴史の中でもわたし位なんじゃないかしら。……泣きそう…。

 

「後悔してるならこれに懲りて今後はもっとしっかりする事ね。…にしても、あの時のネプテューヌの羞恥に染まった顔は中々見ものだったわ」

「お、お姉ちゃん…ネプテューヌさんが可哀想だしもう言わないであげて…」

「ネプテューヌはいいのよ。普段私を散々からかってきてるんだから」

「ここぞとばかりに優越感に浸ってるな、ノワール…」

「さ、それはともかく片付けを再開すると致しましょうか」

 

事が事だからかわたしを慰めてくれる人は誰もおらず(男の人の前で半裸になる位どうって事ないよ、なんて言われても余計泣きたくなるからある意味助かったけど…)、三人は早々に女神化を解除&着替えをして片付けを再開していた。……うっかり半裸になった事といい今といい、今日のわたしはいたたまれな過ぎるわ…。

 

「折角久し振りのわたし視点なのに…なんでこんな酷い目に…」

「…やっぱり、わたしが代わろっか…?」

「やだ……」

「そ、そう…」

 

皆にちょっと遅れる形で普段の姿となったわたしは、ネプギアの提案に首を横に振る。…ネプギア、その優しさは嬉しいけど…今代わってもらったらわたし、いいとこゼロのままわたし視点を終える事になっちゃうよ……。

 

「…っと、そういえば…ネプギア、イリゼは?」

「あ、イリゼさんならお仕事だよ。えっと…慰問、だったかな?」

「そっか…」

 

今来てくれているのはネプギア達候補生に、いーすん達教祖の計八人。この面子でイリゼがいないのはちょっと不思議だったけど…仕事だったんだね。……でもそっか…慰問か…。

 

「……ねぇネプギア、最近のイリゼどう?」

「…どう、って?」

「何か変だったりしない?物凄く仕事をやってたり、周りに気遣い凄くしたり、口癖のように『イリゼ、頑張ります!』って言ってたりしてない?」

「うーん…そういう事はないと思うよ?確かにちょっと外回りの仕事は多めな気はするけど、仕事し過ぎって感じじゃないし」

「そうなの?だったらいいけど…」

 

片付けをする中、わたしが思い出すのは犯罪組織壊滅作戦での被害報告を聞いた後の様子。あの時のイリゼは平然としていたけど…それがわたしにとっては違和感だった。だって、イリゼだもん。わたしと同じ位大事な人が傷付くのが嫌いで、わたしと同じ位無茶をしでかそうとするイリゼだもん。……だからもし、イリゼが気丈に振る舞おうとしているなら、わたしはイリゼの支えになってあげたい。それが友達ってものだし…何より、わたしはもう二度とイリゼが自分に過去が無いって知った時みたいな状態になってほしくない。

……って、思ってネプギアに聞いたんだけど…これは空振りかなぁ…。

 

「……イリゼさん、どうかしたの?」

「ううん。ちょっと確認しておきたかっただけだよ?……わたしを差し置いてOAOP共に第一話から主人公を行い、OIでも主人公担当率が高いわわたしより先にディメンジョントリップを二度もしてるわなイリゼの事を…」

「主人公関連で凄く根に持ってる!?わ、わたし嫌だよ!?そんな事で友達に負の感情抱くお姉ちゃんとか嫌だよ!?」

「あはは、ネプリカンジョークだよネプリカンジョーク。又はメキシカンジョークでもいいかな」

「どっちも聞き覚えのないワードだよお姉ちゃん…」

 

確定じゃないわたしの不安を話してネプギアにまで心配させるのは避けたい、と思ったわたしは再び誤魔化しにかかり…今度は成功する。…うん、やっぱり誤魔化す事についてはクールで真面目な女神化してる時のわたしより今のわたしの方が上手くいくっぽいね。……ってこれじゃ人の姿のわたしが能天気で不真面目な子って感じになっちゃうじゃん!…否定は出来ないけどさ!

 

(…まぁ、これからは自由に動けるんだから自分の目で確かめてみようかな)

 

別にネプギアの話を信じてない訳じゃないけど…イリゼにとってネプギア(というか候補生の皆)は指導してあげてる相手、って認識があるだろうから心情に気付かれないよう振る舞っていてもおかしくない。それに普通に生活してたネプギアと、注視しようと思ってるわたしとじゃそこでも差があるだろうから…ね。

 

「…よし、お片付け完了!」

「お片付けって…ネプテューヌさんはバックに荷物詰め込んだだけじゃないですか…(ーー;)」

「でもほら、結局詰め込むのが一番だって収納上手・力の書にも書いてあったよ?」

「あのですね…はぁ、これからまたネプテューヌさんに困らせられる日々が始まるのかと思うとお腹が痛くなってきます…(;´д`)」

「いーすんお腹痛いの?じゃあまだ残ってる痛み止めあげよっか?」

「…はぁぁ……」

 

お片付けとか荷物持ちとか大方そういう事には向いていないから、という事でベット下や引き出しの奥なんかに物があったりしないか見てくれていたいーすんは、わたしの言葉を受けて深い深い溜め息を吐いていた。…こんな反応しつつもストライキ起こさずわたしの国の教祖やってくれてるんだから、中々いーすんもツンデレさんだよね。

 

「誰がツンデレですか誰が…そういう事言うならほんとにネプギアさんかイリゼさんをプラネテューヌの新守護女神にすべく動きますよ…?( *`ω´)」

「そ、それは勘弁…それよりほら、皆も終わったみたいだし早く帰ろうよ?」

「今日のネプテューヌさんはやけに話を逸らそうとしますね…まあいいです。ここには丁度イリゼさん以外は女神が全員いるので、帰る前に一ついいですか?( ̄Д ̄)ノ」

 

いーすんは病室の中央窓側に移動し、わたし達全員へ向けて声を上げる。その動きと言葉から考えるに…いや考えなくても真面目な話だってのは分かるよねぇ。

 

「構いませんけど…イリゼがいない場で、というのは何か意図があるんですの?」

「いえ、何も意図はありませんよ。女神と教祖がほぼ全員集まっていて且つそれ以外の方がいない、という都合のいい状況になっているからというだけです。イリゼさんには後で改めて伝えるつもりですし(・ω・)」

「そう…分かったわ。続けて」

 

ブランの続けて、という言葉にこくんと頷くいーすん。わたし達もベットやベット横の椅子にそれぞれ座っていーすんの次の言葉を待つ。

 

「ありがとうございます。…ネプギアさん達には先程も言いましたが、守護女神の公務復帰はわたし達体制側が犯罪神勢力に更なる一手を打つ機会です。更に言えば、先日ネプギアさん達がクエスト先でマジック・ザ・ハードから奇襲を受けた事からも分かる通り、犯罪神勢力の脅威が去ったとはまだとても言えない状況です。…だからこそ、今後も女神が中心となり、犯罪神勢力の完全撃破を目指さなくてはいけません」

「その通りね。あの時マジックが言ってた言葉もただの負け惜しみとは思えないし、国の長として尽力してほしいって事なら言われるまでもなくやるつもりよ」

「そう言って頂けると心強いです。…そして候補生の皆さん。各国で足並みを揃える為の調整もあるので正確な日にちはまだ断言出来ませんが…恐らく、休暇は今週いっぱいで終了して頂く事になると思います。……すいません、短い休暇しか用意出来ず…」

『…………』

 

申し訳なさそうに言ういーすんに対し、ネプギア達は誰もすぐには言葉を返さなかった。そんな様子を見たわたしは一瞬何かフォローを…と思ったけど、その後すぐにネプギア達の表情は曇っていない事に気付いた。

言葉は交わさず、でもアイコンタクトをするように視線を交わらせるネプギア達。そうして数秒後、四人はいーすんの方へと向き直る。

 

「…分かりました。気にしなくて大丈夫ですよ、いーすんさん」

「うん。おねえちゃんたち、ミナちゃんたちががんばるなら…わたしたちも、がんばる…」

「…感謝します、皆さん」

「いえいえ。それに、休暇中色々出来たもんね」

「そうね。休暇中だけで試作一号まで漕ぎ着けられたんだから十分よ」

『…試作一号?』

「ふふん、わたしたちははつめーをしてるのよ!」

『は、発明…?』

 

試作一号とか発明とか、なんの事かよく分からない単語が出てきて今度はわたし達が顔を見合わせる事に。…ネプギア達、何か作ってるのかな…?

 

「…こほん。それでは皆さん、わたし達教祖も出来る限りのサポートをしていきますので、今後も宜しくお願いします。…が、無理や深追いは禁物ですからね?特に守護女神の四人は様子見の段階なんですから(´ω`)」

「分かってるって。……って、あれ?まだ様子見の段階って事ならもしかして、わたしもう暫くはお仕事しなくてもいい……」

「書類仕事は普通にやってもらいますからね?( ̄▽ ̄)」

「ちぇー……」

 

わたしのささやかで淡い期待すらも許してくれない教祖、それがいーすんだった。しかもノワールやブランは勿論、ベールにすら呆れられていた。…やっぱ今日わたし厄日なんじゃ…このペースでいくと寝る頃には退院という大きなプラスすらトータルで覆しちゃう位のマイナスが降りかかってきているんじゃ……?

 

「…い、いやいやいや…こんなネガティヴ思考はよくないよわたし。わたしたる者ポジティブ解放する位に前向きじゃなきゃ魅力が減っちゃうよ…!」

「お姉ちゃん、何ぶつぶつ言ってるの?」

「あ…独り言だから気にしないで。よーし、いーすんの話が終わったんだから今度こそ帰るよ!」

「それもそうだね。じゃあ、よいしょっと」

「え……いやネプギア、それわたしの荷物…」

「そうだよ?」

 

荷物をまとめたバックに手を伸ばすわたし。でもわたしの手がバックを掴むよりも先に、ネプギアがそのバックを持ち上げた。…いや、ネプギアだけじゃない。ユニちゃんもロムちゃんもラムちゃんも、それにチカも荷物を手にしている。

 

「…なんのつもり?」

「なんのって…お姉ちゃん、退院って言ったってまだ完治はしてないでしょ?それなら重い荷物は持っちゃ駄目よ」

「ロム、ラム…そのバックは文庫本が入っているのよ…?」

「う、うん…知ってる…」

「ふ、二人でもてば…だいじょーぶ…!」

「…貴女も、わたくしの身を案じて…?」

「当然ですわ!アタクシ、荷物は勿論お姉様が望むのであればお姉様本人も運んであげる所存ですの!」

 

ユニちゃんはノワールの強情さを分かっているからかさっさと荷物を取っちゃって、ロムちゃんラムちゃんは二つある取っ手を片方ずつ掴んで、チカは…まぁ、うん…平常運転で…皆の代わりに荷物を持ってあげていた。…で、ネプギアはと言えば…言うまでもなく、優しい微笑みでわたしの荷物を持ってくれている。

 

「お姉ちゃん、わたしも持っていいよね?」

「う、うん…ネプギアがそうしてくれるなら、わたしは大歓迎だけど…」

「じゃあ、わたしが持っていくね。お姉ちゃん忘れ物ない?」

「ない…と、思う…」

「よかった。じゃ、帰ろっかお姉ちゃん」

 

そう言ってぽてぽてと荷物を手に歩いてくネプギアと候補生達。退院手続きはもう済ませてあるから後は帰るだけなんだけど……そんな妹の姿を見て、ついわたし達は足を止めてしまう。

 

「…ほんとに、あの四人はわたくし達が捕まっている間に変わりましたのね」

「…やっぱりちょっと残念よね。妹が自分の知らない間に成長していた、ってのは」

「だね…特にロムちゃんラムちゃんなんてかなり変わってない?」

「えぇ。根の部分はあまり変わってないようだけど…まさかネプギアやユニとここまで仲良くなるとは思ってなかったわ」

 

いつまでも立ち止まっていたって仕方ないから、と皆の後を追うわたし達だけど、わたし達の心に漂う複雑な気持ちは分からないまま。仕方ない事だけど、元に戻ってほしい訳じゃないけど…過程を、変わっていく時間を見られなかったのは残念だし、その成長要因にわたし達が関係していない(わたし達の存在自体は影響してるのかもしれないけど)というのも姉として寂しい気持ちになる。でも勿論成長した事を喜ぶ気持ちもわたしの中にはある訳で…だから、この気持ちはぐるぐるしたまま。……なんて、思ってたけど…

 

「……ねぇ、お姉ちゃん」

「どしたの?ネプギア」

「えっとね、その…」

「……?」

 

自然と国毎の小さな塊になって歩く中、おずおずと話しかけてきたネプギア。ネプギアはわたしより背が高いのに、まるで上目遣いをしているかの様な雰囲気でわたしを見てきている。

 

「…今からわたしの言う事を聞いても、笑ったり馬鹿にしたりしない?」

「え?…うん、笑わないよ。別に面白い話とかじゃないんだよね?」

「そ、それは勿論だよ…それじゃあ、言うね…?」

 

一体何を話したいのかは分からないけど…ちゃんと聞いてほしいって思いを感じ取ったわたしは、ネプギアの顔を見てこくんと首を振る。するとネプギアはちょっと安心した様な顔を浮かべて……意を決したように、言った。

 

「…わたし、お姉ちゃんを助け出してから色々考えてたの。いっぱいお姉ちゃんとやりたい事があったの。でも、お姉ちゃん入院しててあんまり自由が利かなかったでしょ?……だから…今日これからだけでもいいから、わたしに付き合ってほしいな、なんて…」

「ネプギア……」

「む、無理にとは言わないよ?お姉ちゃんだってやりたい事があるだろうし、嫌なら嫌って言ってくれても…」

「そんなの…そんなのいいに決まってるじゃん!」

「わわっ!?お、お姉ちゃん!?」

 

少し恥ずかしそうに、ちょっぴり心配そうに。そんなわたしの機嫌を伺うかのような言葉を受けたわたしは…ネプギアの『わたしと一緒にいたい」って気持ちを聞いたわたしは、感極まってネプギアを抱き締める。

 

「ネプギアにそんな事言ってもらえるなんて、お姉ちゃん凄く嬉しいよ!っていうかそういう事考えてたならもっと早く言ってくれればよかったのに!ネプギアの為ならわたし、病室抜け出す位余裕だよ?」

「そ、それは駄目だよお姉ちゃん…でも、いいんだね?…よかったぁ……」

「さっきのわたしへ頼んでる時の顔もだったけど…安心してる今の顔も可愛い!我が妹ながら凄く凄く可愛い!ネプとギアの間に可愛い、って入れたい位可愛い!

「そ、そんな大きな声で変な事言わないでよ!?は、恥ずかしいよ…」

「恥ずかしいなんて事はないよ!わたしは世界の中心でネプギア可愛いって叫べるね!」

「わたしそんな事されたら恥ずかしくて人前出られなくなっちゃうよ!?というか今の時点で皆からの視線受けて十分恥ずかしいんだよ!?は、離れてよぉ!」

「やだ!ネタ的にはわたしの部屋に着くまで、真面目に言えば後五分位はこうしていたい!」

「長いよ!?この体勢五分は地味に長いよ!?も、もう!お姉ちゃんの馬鹿ぁ!」

 

すりすりとネプギアに頬擦りするわたしと、顔を真っ赤にしてわたわたするネプギア。そんなネプギアもやっぱり可愛くて、それにまたこうして姉妹仲良く出来る事も嬉しくて、ほんとにわたしは五分位抱き締め続けたい気持ちになる。…というか、するつもり。

ついさっき、わたしの心には複雑な気持ちがあった。姉としての喜びと、姉としての寂しさが混じった何とも言えない気持ちがあった。でも、今はもうそんな気持ちなんてない。だって、このやり取りの中で気付く事が出来たから。わたしより真面目そうだけど気が弱くて、一見それなりに大人そうだけどまだまだ甘えん坊なネプギアは、わたしのよく知ってるネプギアは消えちゃった訳じゃないんだって。成長して、普段は出てこなくなっただけで今もネプギアの中にはいるんだって。

 

「ネプギア大好き!これからは前みたいに…ううん、前以上にいっぱい一緒にいてあげるからね!」

 

わたしのよく知るネプギアと、わたしの知らないネプギア。その両方がわたしの目の前にいるんだから、寂しく思う必要なんてない。それが分かったわたしは、その気持ちからくる笑顔をネプギアに見せて…より一層、ぎゅーっとネプギアを抱き締めた。

 

 

……って、これだとなんかギャルゲのラストシーンみたいだね。この場合ネプギアがヒロインなのかな?それとも…ヒロインは、わたしかな?




今回のパロディ解説

・イリゼ、頑張ります!
アイドルマスターシリーズの登場キャラの一人、島村卯月の代名詞的台詞のパロディ。頑張る、頑張ると自分に言い聞かせる様に呟くイリゼ…病んでますねこれは……。

・メキシカンジョーク
生徒会の一存シリーズの主人公、杉崎鍵の台詞(冗談)の一つの事。実際メキシカンジョークってあるのでしょうか?アメリカンとかロシアンはそこそこ聞きますが…。

・収納上手・力の書
モンスターハンターシリーズに登場する、アイテムボックスの拡張アイテムの一つ。結局の所詰め込むのが一番…強引な手法ですが、その通りだと私は思います。

・ポジティブ解放
アトリエシリーズの主人公の一人、ソフィー・ノイエンミュラーのスキルの一つの事。ネプテューヌとソフィーは気も合いそうですし、習得出来るのかもしれません。

・「〜〜世界の中心〜〜叫べるね!」
小説及びドラマ作品、世界の中心で、愛を叫ぶのパロディ。姉妹であるが故にスキンシップが過激(?)なネプテューヌ。さてイリゼとノワールはどうするのでしょうね。
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