双極の理創造   作:シモツキ

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第百十二話 片付けながら、話してみて

言うまでもないとは思うが、俺は邪魔になる物を軽く退かした後に篠夜をベットまで運んだ。幸いだったのはベットまでもがごちゃごちゃではなかった事で、幸いじゃなかったのは寝かした直後に篠夜が目を覚ました事。そのせいで、俺は寝ている少女の前で身を屈めている男という、即通報されてもおかしくない状態を見られてしまった。…そりゃああったさ、一波乱が。

で、今はと言うと……経緯を理解した(思い出した)篠夜と共に、部屋の中の整理をしている。

 

「これ、明らかにラックのキャパ超えた量を置いてたろ…取り敢えず置けるからいいや、みたいな仕舞い方してたろ…だから倒れるんだよ……」

「うぐっ…そ、それ位分かってるわよ…」

「じゃ、倒れる危険性を正しく認識した上で、放置してたと?」

「それは……」

 

倒れたラックを戻し、種類ごとに仕舞い直しながらぶつくさと言う俺。状況が状況だからか、篠夜は特に言い返さない。

 

「違うのか?」

「…ち、違う…っていうかなんていうか…」

「なんていうか?」

「う…あの……」

「篠夜さーん?」

「……う、うぅ…あぁはいそうですよ!何も考えず、まぁいっか程度に置いておいた結果このような事態を引き起こしてしまいました!ほらこれで満足でしょ!」

「うむ、満足だ」

「くっ……こんな奴に部屋見られて、その上何も言い返せないなんて…!」

 

悔しそうにぷるぷると震える篠夜を見て、何だかとっても良い気分だった。はっはっは、俺ってやっぱ捻くれてんなぁ。

 

「篠夜って、妃乃と波長合いそうだよな。アクティブじゃなくてパッシブ的な意味で」

「何よパッシブ的に波長合いそうって…よいしょ、っと」

「…それはそこに置かない方がいいと思うぞ?動線的に邪魔になるだろ」

「…ご指摘どーも……」

 

ラックを移動させようとしていた篠夜に指摘すると、篠夜は口を尖らせながらも改めて位置変更。幾つものラック、それにまだ多くが散らかっている様々なパッケージを見ながら、俺はここへ入った時からずっと思っている事を口にした。

 

「……女子って、もっとこう部屋を華やかに彩るもんじゃねぇよ?」

「……っ…」

 

ゲームを中心に、アニメのブルーレイやらドラマCD、その他諸々が大量にあるのがこの部屋の内装。当然ゲームのハードも色々と置いてあり、何ならパソコンすらも複数台あるんだが…その一方で、明るい色の壁紙だとか大きなクローゼットとか、女性っぽさを感じさせるものが殆どない。

 

「……悪い?」

「うん?いや、別に悪かないと思うが…」

「本当に?」

「俺が嘘吐くとでも?」

「割と嘘吐きそうなんだけど。これまであたしを散々馬鹿にしてきたし」

「それはまぁ…否定出来ないな……」

 

否定の意図を込めた疑問形をぶつけた結果真顔で返され、次なる言葉が出なくなってしまった俺。…うん、まぁ…篠夜視点でこれまでの事を振り返ると、そう思うのも無理はないわな…はは……。

 

「…こほん。だが少なくとも、これは嘘じゃねぇよ。てか、この際言っとくが俺は相手を不快にさせたいとか、馬鹿にしたい意図で嘘吐いたりはしないからな。敵に対する心理戦…とかならまだしも、誰がそんな陰湿な事するかよ」

「…それが信条、って訳…?」

「信条って言えるほどのものかは分からねぇが…ま、そうだな。断言するぜ、篠夜。俺が嘘を吐くとすれば、それは何かを守る時、相手を悲しませたくない時、そして……」

「…そして……?」

「……嘘を交えて弄ったら面白くなりそうだなぁ、って思った時だけだっ!」

「だけだっ!…じゃないわよ!何まともそうな事二つ並べた上で言ってる訳!?あんたってほんと碌な生産してないわね!」

「え、部屋の片付け手伝ってくれてる相手にそれ言う?」

「うっ…ぐぐぐぐぐぅ……!」

 

そっから一応俺の考え方を話しつつ篠夜を弄り、且つ状況を引っ張り出して反論を封殺。いやぁ、ほんとに今日は楽しいなぁ。はっはっは。

 

「…いいわよ、こうなったら部屋が元通りになるまで働かせてやるんだから……」

「うん、それ口に出したらアウトだよな。てか、元通りにしたらまた倒壊の危険があるぞ?」

「うっさいわね、そういう意味での元通りじゃない事位察しなさいよ」

「へいへい、心中お察しします」

「ちょっと、それじゃあたしが何か不幸に遭ったみたいになるじゃない…って、実際そうだった……」

 

あんまり整理中らしくない会話を交わしながら、部屋の片付けは進む。数の多さは厄介だが、幸いなのは殆どが重い物じゃない事。一つ一つで体力を持っていかれずに済むというのは、片付ける上で地味にありがたい。

 

(…にしても、そこそこ普通に話せるようになったなぁ……)

 

そうしている内に、ふと俺は思った。初めの頃…ってか初めて会った時の篠夜は本当に、これ以上ない位拒絶していた。今も毎回嫌がられるし、今回もハプニングがなきゃ部屋の中はまるで分からなかった訳だが、それでも今は『俺』という特定個人に対して、意識を向けて感情をぶつけている。物理的には見ていても、心は一切俺を見ていないあの時に比べれば、本当にこれは大きな進歩。無愛想で捻くれてる者同士だったからか、偶然何度も遭遇したからかは知らないが、とにかく普通に話せるようになったのは悪い気分じゃ……

 

「……否定は、しないのね。あたしの生活に対して」

 

…そんな事を思う中、不意に篠夜は言った。静かな、けれど様々な感情が籠っているように聞こえる声で。

 

「…急に、どうしたんだよ」

「急じゃないわ。ずっと思ってて、でも結局サブカル趣味に関しては何も言わなかったから気になっただけ」

 

手にしていたパッケージを置いて振り向くと、篠夜は作業を続けながら言っていた。…雑談のつもりなのか、別に何か理由があるのかは分からないが…ならばと俺も、パッケージを再び手にする。

 

「…言ってほしかったのか?」

「別に……」

 

別に、と言いつつも篠夜の声に覇気はない。…言われたくはなかったんだろうな、最初に否定しないのかって言ったんだから。……否定されると、思ったんだろうな。

 

「…そりゃ、驚きはしたさ。てか、パッケージが本だったとしてもぬいぐるみだったとしても、この量が散らかってたら誰だって驚く」

「それは普段からじゃないし…」

「分かってる。…否定、された事あるのか?」

 

一瞬迷ったが、俺は訊いた。もしかしたらそうなのかもしれないと思いながら。

訊きはしたが、返答がなくてもそれはそれでいいと思っていた。あったとして、そんなの気楽に話せる事じゃねぇだろうから。そして篠夜は黙り込み、やっぱりそうなのかと思いつつ話を切り替えようと俺は考え……そこで篠夜は、声を発した。

 

「…あるわよ、何度も。どうせ外に出ないなら、もっと為になる事をやったらどうだって。外にも出ずにこういう事ばっかりしてたら、段々おかしくなるぞって。……あたしだって、好きで外に出ない訳じゃないのに…事情分かってる癖に……」

「…そっか……」

 

不快さに声を荒げる事も、強く吐き捨てる事もなく、篠夜は淡々と話した。だがそれは、軽く話しているようには微塵も感じられなかった。声は大きくなくとも、そこに対する悲しさや虚しさは、生半可な怒鳴り声なんかよりもずっと強く籠っていたのだから。

 

「……なんて、こんなのあんたに話したって気不味くなるだけよね」

「いや…気不味い云々はともかく、俺は別に……」

「いいから、フォローしてくれなくても。言っておいてなんだけど、今のは与太話とでも思って気にしないで。そもそもサブカル趣味を否定する人なんて珍しくもないんだから、こんなのよくある普通の話……」

「…他人にどうこう言われる筋合いはねぇよな。趣味なんだから」

 

一度言葉を切って、俺が短い言葉で返して、それから篠夜は急に話を変えようとした。俺ではなく、篠夜の方が。…だから俺は、その言葉を遮った。こんな見え見えの『平気そうなフリ』なんて、そうかそうかと軽い感じて受け流せる訳がない。

 

「俺は否定しねぇよ、篠夜。どんな趣味でどんな理由だろうが構わねぇ。てか、普通そうだろ。誰がどこで何をしようが勝手で、それで利益得るのも後悔するのも自分の責任だ。勿論他人に迷惑かける事は本人の自由って訳にもいかないが……そうじゃないなら、余計なお世話だっつーのって話じゃねぇか」

「…あたしは、余計なお世話だとまでは思ってないけど……」

「そうか?けどどっちにしろ、例え相手の為を思っていても、相手の意思を無視してるなら、それはそいつの単なるエゴだ。考えの押し付けだ。…そうだろ?篠夜」

 

振り向いて、こちらに背を向けたままの篠夜に向けて、俺は言った。今の篠夜を、肯定した。まずは俺の言葉で。それからは篠夜が俺に教えてくれた、篠夜の言葉で。

 

「…よく、そんな堂々と言えるわね…あんたが思ってるのとは全然違うかもしれないのに…」

「そん時はそん時だ。自分が思ってるのとは…なんて言い出したらどれだけ説明されてもキリがねぇし、だったらその時思った事を口にした方が良いって俺は思ってんだよ。…後になってからあの時こう思ってたなんて言っても、大抵は今更の話になっちまうんだからな。それに……」

「…それに?」

「俺は言いたいから言っただけ、それ以上でも以下でもねぇよ」

 

確かに篠夜の言う通り、早計の可能性はある。篠夜とは別に長い付き合いでも交流が深い訳でもないんだから、決め付けるにゃ早過ぎるって意見はその通り。だがここは戦場じゃねぇ。一つのミスが死に繋がるような場でもなければ…正解も間違いもはっきりしないものが無数にあるのが人間関係ってもの。なら、結局は……自分の思う通りにやるのが一番だよな。…まぁ最も、つい最近思う通りにやり過ぎた結果後悔する羽目になったんだが…。

 

「…………」

「ま、気に食わなかったり取るに足らないと思ったりしたんだったら、すぐに忘れてくれて構わねぇよ。それこそ与太話だとでも判断してな」

「……なら、一つ訊かせてよ…あんたはあたしを、どう思ってんの…?」

「ん?どうって、だから……」

「否定しないってのは、否定を選んでないってだけで、何を選んだか言った訳じゃないでしょ?…あたしが訊いてるのは、その何を選んだかよ…」

 

別に俺は恩を売るつもりでもなければ、望まれてもいない掘り下げを勝手にするつもりでもない。だからいつも通りに軽い調子で言葉を締め括ると……篠夜は俺に、俺の思いを訊いてきた。いつの間にか手を止めて、真剣さが伝わる声で。…どう思ってる、か…当たり障りのない言葉なら浮かぶし、それを言えば丸く収まるんだろうが……真剣に思いを訊いている相手に、そんな答え方は…したくないよな。

 

「…ま、正直に言えばもうちょっと鍛えた方が良いんじゃねぇの?…とは思ってるな。もう少し身体が出来てりゃ倒れてきてもぶっ倒れる事はなかっただろうし、そうじゃなかった結果が俺含めてこうなってるんだろ?」

「うぅっ……あたしから訊いたとはいえ、その通りとはいえ…ほんとにあんたって容赦ないわね…。…いいわよ、あたしだってそれに関してはちゃんと反省してるし、身体にだって思うところは……」

「けど、それを含めても篠夜がやりたいようにするのが一番だって思ってる。…折角生きてるんだから、これが自分なんだって胸を張ろうぜ?その方が絶対、楽しいし幸せも感じられるんだからよ」

 

篠夜に言った通り、口にした言葉通り、俺は思うようにしたいように言い切った。それが、そっちの方が楽しいじゃねぇかって。正しいだとか、意味があるだとかじゃねぇんだよな。人生ってのは。例え他人からどう思われようと、結果思い通りの場所には辿り付かなくても、最後に胸を張れりゃ…って……

 

(…いや、何を堂々と言ってんだろうな、俺は。……結局、これが俺の人生だって思えなかったから、普通の家庭で普通に過ごせていたらって思いが胸にあったから、俺はあの時違う人生を望んだってのに……)

 

悲しい、とも虚しい、とも違う、自分でも何と言えばいいのか分からない思いがその時俺の心に浮かんだ。…そうなんだよな…今はどうあれ、今の人生の大元は……後ろ向きの思い、だったんだよな…。

 

「……ちょっと、急に黙り込んでどうしたのよ」

「…何でもねぇよ。で…満足か?」

「……そうね、あんたの気持ちは分かったわ。だから……」

 

篠夜の言葉に意識を引き戻され、俺も話を元に戻した。元々は篠夜からの質問であって、間違ってもこれは俺の自分語りとかじゃない。

答えに思うところはあったのか、篠夜はどう思ったのか。それは分からない。だが、篠夜は一拍置いた後に頷き、こちらを振り返って……言った。

 

「今度、棚買いに行くの手伝いなさいよ」

 

…………。

 

……………………。

 

……うん?棚買いに行くのを手伝いなさい?…え、っと…篠夜は、何言ってんの…?

 

「…あっ、聞き間違いか。すまん篠夜、もっかい言ってくれ」

「…棚買いに行くのを手伝ってほしいんだけど」

(おおぅ、聞き間違いじゃなかったぜオイ……)

 

一回で聞き取りなさいよ、と言いたげな目で見てくる篠夜。だが待ってほしい、これは俺のせいじゃない。絶対俺のせいではない。

 

「棚買いにって…えぇぇ、何故……?」

「何故って、じゃあ今ある棚だけで仕舞えっての?」

「断捨離という選択肢は…」

「ないわ」

 

さも当然かのように言ってくる篠夜だが、明らかにこれは当然の流れじゃない。ってか……

 

「ならネット通販使えよ…むしろ何故この部屋の主が自ら行こうとする……」

「いいでしょ別に、てかこういうのは実物見て決める方が失敗しないし」

「いいでしょも何も、その場合俺同行する事になるんですけど…荷物持ちも十中八九させられるんですけど……」

「なら、ここであの借りを返すって事で。…まさか、断ったりはしないわよね?」

「し、篠夜お前……」

 

悪どいというか何というか、振り返って以降の篠夜は完全にいつもの調子に戻っていた。いつも通りの、生意気で小賢しい捻くれ娘に。

 

「……はぁ…分ぁったよ。へいへい行くよ行きますよ行かせて頂きますよーだ」

「何その変な三段活用みたいなの…いや形変わり過ぎて三段活用っぽくすらないか…」

「んなとこ深掘りせんでええわ…で、いつ行くつもりなんだ?」

「それはあんたが決めてくれていいわ。あんたにも予定があるでしょうし」

「じゃ、32年後とかで……」

「え、馬鹿なの?」

「…………」

 

……という訳で、俺は篠夜と一緒に棚を買いに行く事になってしまった。俺に拒否権はないのである。…因みに、行く日程は来週末で決定した。

 

「…バックれないでよ?」

「流石にそんな事はしねぇよ…仮に行けなくなっても、その場合はきちんと連絡を……って、連絡手段ねぇじゃん…」

「……何それ、遠回しにあたしの携帯の番号とかアドレスを手に入れようとしてる訳?」

「違ぇよ…そんな嫌がられる事確実な真似なんてしねぇっての」

「…………」

「…篠夜?」

 

それから連絡手段やら何やらの話をする中、急に黙り込んだ篠夜。何だと思って俺が呼ぶと……篠夜は携帯をポケットから取り出す。

 

「…携帯出しなさいよ」

「え…な、何故に…?」

「何故にって…万が一の事があるから、その時用に交換位したって良いって言ってんのよ…!この流れで分からない訳…!?」

「あ、お、おうすまん……」

 

いきなり怒り出した篠夜の雰囲気に押されて、俺も自分の携帯を手に。そしてそのまま、俺達はお互いに連絡手段を得るのだった。…察しが悪いだけでなんでこんな強く言われんの…?

 

「ったく…無意味なメッセージとか来ても返信しないから」

「いや無意味なメッセージとか送らねぇし…てかそもそも、俺基本自分から雑談持ちかけるタイプじゃねぇよ」

「あぁ、それは確かにそうかもね。あんた社交性低そうだし」

「…篠夜、俺これまでにも社交性低いって言われた事はあったが…今日が一番ショック受けなかったわ」

「ちょっ、何よそれ!あたしがあんたより社交性低いって言いたい訳!?」

「うん?俺はショック受けたとしか言ってないが?」

「な……ッ!?あ、あんたねぇ…!」

 

見事に引っかかって顔を赤くする篠夜を尻目に、俺は涼しい顔でまた片付けへ。何というか、篠夜は他人を煽る割にいまいち煽り耐性がなってない。初対面の時の拒絶モードなら、何言っても淡々と返しそうなものだが……落差、激しいなぁ…。

 

「…ふん、まぁいいわよ。別に社交性高いとは思ってないし…」

「そっかそっか、じゃあ俺と同じだな」

「……うん、今日から社交性を養う訓練始めよ…」

「そんな思いっ切り暗い顔する程嫌なのかよ!…くそう、やり返しやがったな……」

 

だが、油断すると手痛い反撃を受けてしまう。要するに俺の篠夜の会話は、雑談なんかじゃない。隙を見て、相手の精神状態を推測して、鋭い弄りや毒舌を叩き込む『勝負』なのだ。……って、何言ってんだろうな俺…。

そんなこんなで十数分後。やっと部屋の片付けが終わり、俺はふぅ…と溜め息を吐く。

 

「取り敢えず何とかなった…今後はちゃんと仕舞えよ?後、仕舞えてない分はまた崩さないよう気を付けろよ?」

「分かってるわよそれ位……それとその、迷惑かけたわね…」

「そう思うなら、ほんとに気を付けてくれよ?後、換気もちゃんした方が良いからな?」

「…あんた、性格の割にそこら辺細かいのね……」

「まぁな」

 

軽く首を回した後、立ち上がる俺。片付けによって大分部屋の中はすっきりしたが…やっぱそもそも、この部屋物が多いんだよな…勿論それは個人の自由だが。

 

「じゃ、片付けも済んだし俺は帰るぞ」

「はいはい。…あ、待った」

「……?」

 

俺が出ていこうとすると、篠夜はぱたぱたと小走りで俺を追い抜き廊下と繋がる扉を軽くオープン。そこできょろきょろと廊下を見回した後、こちらを振り返って言った。

 

「今なら良いわよ、誰もいないから」

「…俺が部屋にいたって知られる事すら嫌なのかよ……」

「嫌っていうか…あんただって、あたしの部屋に暫くいたって知られるのはあんま気分良くないでしょ」

「そうか?俺は別にどうでもいいがな」

 

変な奴って思われるのは慣れっこだからなぁ、と思いながら俺は廊下へ。ふぅ、思ったより長くなったなぁ…。

 

「…どうでもいい、か…あたしもそれ位呑気に構えられたら、楽なのかもね……」

「ん?なんか言ったか?」

「何でもないわ。…来週、遅れないでよ?」

「分かってるよ。じゃ、また来週な」

 

念押しの言葉を受けながら、俺は部屋を後にした。その時、篠夜はもう部屋を見られたって事もあってかこれまでよりもほんの少し身体を外に出していて……そういう変化は悪くねぇな、と何となく感じる俺だった。

 

(……って、よく考えたら俺…妹でも同居人でもない異性の部屋に、二人っきりで暫くいた事になるのか…あー……そりゃ篠夜だって周りの目気にするよな。それが理由なのかは知らねぇけど)

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