「来月末、ね…」
先日刀一郎さんの執務室で、刀一郎さんから直々に言われた調査作戦への参加。それに纏わる話を…具体的に言えば実行日の事を、今日綾袮さんから聞く事となった。
「うん。三月はまだ春への差し掛かりだし、当日富士山に結構強く雪が降った場合は、延期する事になるけどね」
「まあ、それはそうだよね。大雪が降る中での山なんて、それ自体が危険だし」
霊装者は霊力による身体強化が出来るとはいえ、それは雨風や雪の影響を無効化出来るって事じゃない。風が強ければ姿勢は崩れ易くなるし、豪雨や豪雪の中じゃ視界も悪くなるし、当然身体だって冷える。実行が来月末って事は、一刻を争う作戦じゃないんだろうし、だったら不要なリスクは避けるのが当たり前。
そう思って俺が納得していると、綾袮さんはじぃっとこっちを見つめてくる。それはもう、何か言いたい事がありげな顔で。
「えー、っと…何かな…?」
「…ほんとに行く気?気持ち、変わってたりしない?」
何とも言えない気分で何かと訊くと、綾袮さんは言外に否定を望んでいる事が伝わってくる声で返答。…やっぱり、それか……。
「…ごめんね、綾袮さん。気持ちは、変わってない」
「…別に、謝る必要はないよ。顕人君、何か悪い事をした訳じゃないんだし」
「それなら、この任務の事を応援してほしいんだけど…」
「それとこれとは話が別だよ」
そうはいかないよ、とばかりに首を横に振る綾袮さん。普段なら冗談を交えるか、もう少し軽い調子で返してくるところだけど…この話になると、綾袮さんはほんとにふざけない。
今日、たった今しているこれを含めて、この件の話はこれまでに数度してきた。でも結果は平行線で、お互い主張は同じなまま。
「…そんなに危ないの?これまでの任務とは段違いに危険な何かがある、って事なの?」
「それは…具体的には言えないけど、全然危なくない、普段通りの任務だったらわたしは止めないよ」
「…………」
「…分かってる、止めるんだったらちゃんと説明しろ…って事でしょ?…でも……」
「…それは俺…っていうか、一部の人以外には話しちゃいけない…俺だって、それ位は察しが付くよ。それに、そういう事なら綾袮さんを責めもしないし」
互いに相手の考えている事を察して、口にして、それから沈黙。俺は具体的な理由を知りたいけどそれが言えないって事は分かってるし、綾袮さんも具体的な事を言わずに納得させるのは困難だって分かってるから、どうしても話が続かない。
それに凄く、居心地が悪い。普段は何気無く、他愛なく駄弁るような間柄だからこそ、それとは真逆なこの沈黙は辛い。
「…………」
「…………」
「……あー、っと…さ…この任務、ラフィーネさんやフォリンさんも参加する…って事は出来ないかな…?」
「二人が…?」
「うん。自分で言うのは少し悲しいけど…二人がいるなら、少しは俺の事も安心出来るでしょ?」
話が行き詰まってしまった時は、一度方向性を変えてみるのも手。そう考えて俺は二人の同行を提案してみた。ほんと、自分から言うのは悲しいけれど、実力は実力だし、人選としては決して悪くないと思ったから。…でも、綾袮さんは首を横に振る。
「二人にもまだ、快く思わない人がいるから厳しいかな…。普通の任務ならともかく、ほんとにこれは重要な調査だから…」
「そっか…いや、うん。今のは忘れて。そもそもの話として、二人に話さず勝手に決める事自体間違ってたから」
俺自身が提案を取り下げ、そうしてまた沈黙。全然違う話に切り替えて雰囲気を変えるって事も出来なくはないだろうけど、そうしてしまっていいのだろうか。そんな思いがあるから踏ん切りが付かず、かといって良い案なんて思い付かないから、一秒、また一秒と沈黙の時間が過ぎていき……
『……あ』
そんな中で、不意に…ではなく設定した通りの時間で、回していた電子レンジが温め終了の音を鳴らした。…何ともまあ、沈黙に横槍を入れるかのような感じで。
「……出さないの…?入れてたの、お持ちだよね…?」
「あ、う、うん。出すよ…?」
空気が空気な故に取り出して良いものかと迷っていた俺だけど、綾袮さんに言われてそさくさと電子レンジをオープン。…因みに今は、ご飯の準備中だったのだ。
「あっつつ…ふぃぃ、やっぱミトン嵌めて持つべきだったか……」
「はは…にしても、まだあったんだねお餅…」
「まぁ、ね。頻繁に食べたら飽きるよな、って事で間隔開けてたら、まだ消費し切らず残ってる…って訳ですよ…」
「うん、知ってる…」
持った数秒後から一気に伝わってくる熱に若干焦りながら、食卓まで餅と湯の入った丼を持っていった俺。それを見ながら綾袮さんは苦笑いし、俺も肩を竦めて苦笑いを返す。
これは実家からの帰りに沢山貰った餅の、その残党。後少しとはいえ、もう三月が迫ってる訳で…春まで持ち越しなんて事だけは回避したい。…餅だけに。
「…上手くはないけど、嫌いじゃないかなそういうの」
「じ、地の文でさらーっとやったギャグには触れなくて良いよ…」
「でも、ギャグに反応がないのは辛いでしょ?」
「それはそうだけども…」
さっきの音で雰囲気が途切れたからか、綾袮さんが交える軽い冗談。先程は迷っていた俺だけど、いざ変わってしまうと気が楽なもので、ちょっぴりだけど内心安堵。でもこのままだと、これまで同様有耶無耶になって終わりそうだなとも思っていて……
「…そういえば、さ」
いつの間にか丼の中の餅を覗いていた綾袮さんは、ぽつりと独り言のように呟く。
「顕人君の両親にわたしとおとー様で霊装者の事を話した時、おかーさんもおとーさんも割とすんなり受け入れてくれたよね」
「え?…あぁ、うん…うん?すんなりだったっけ?俺的には、結構困惑とか動揺をしてたと思うけど…」
「それはそうだよ。わたしだっておかー様が実は並行世界からやって来たとか、おとー様がわたしの知らない所で巨大ロボットのパイロットをしてるとか言われたら、すぐには飲み込めないもん」
始まったのは、脈絡のない急な話。綾袮さんの例えも少し謎だけど…平たく言えば、家族という身近な存在に想像も付かない要素があれば、誰だって驚くって事だろう。付け加えるなら、霊装者という特別な存在である自分でもきっと驚くんだから、普通の人間である俺の両親は尚更驚くに決まってる…って辺りだろうか。
「それにね、全く信じてくれない…っていうか、実際に霊装者の力を見ても信じられない人だっているんだよ。それに関しては、霊装者だらけの環境で育ってるわたしより、顕人君の方が理解出来るんじゃないかな」
「…そうだね。あんまりにも自分の中にある考えや価値観と離れ過ぎてると、実際見ても信じられないし…信じたくないって気持ちも生まれるんだろうね。何か悪い事をした人に対して、それは誤解だろう、真実だとしてもやむを得ない事情があったんだろう…って考えるみたいに」
「飲み込めない物を納得したり、信じたくないものを受け入れたりするのって辛いもんね。…だから、自分や家族が霊装者として生きる事を頑として拒否する人もいるらしいんだ。危険な事を家族にさせるってだけでも嫌なのに、ましてやそんな訳の分からない事柄で家族が危険な目に遭って堪るか…って」
続く綾袮さんの言葉は、途中から「らしい」という表現に変わる。けど、それはそうだろう。幾ら立場ある人間で、実力も十分過ぎる程あるとしても、綾袮さんは俺と同い年の女の子。そんな子が説明に来たって冗談だと思うのが普通だろうし、恐らく基本は成人している協会の人間が行っている筈。
それ位の想像は、俺にも付く。けど根本的な事が一つ分からない。
「…綾袮さん。どうして急に、こんな話を?」
「お餅を見てたら、思い出したんだ。…それでね、顕人君。わたしは凄いって思ったんだ。顕人君の両親の事を」
「…比較的すんなり受け入れられたから?」
「うん。受け入れてくれたのも、それからの言葉も…顕人君の両親には、はっきりとした意思があった。…きっと、これまで顕人君にしてきた事に自信があって、顕人君の事を信じてるんだよ。だから落ち着いていられたんだと、わたしは思う」
くるりと身体の向きを変えて、俺と向き合う綾袮さん。その目も声も真剣で…伝わってくる。お世辞でも建前でもなく、本当に綾袮さんは俺の両親を凄いと思ってくれてるんだと。
「…はは…面と向かってそんな事言われると、照れ臭いな……」
「胸を張りなよ、素敵なおかーさんとおとーさんなんだから。…わたしには、まだまだそんな事出来ないかな……」
「え……?」
親の事を称賛されたら、なんて返すのが正解なんだろうか。照れ臭くて頬を書きながら俺がそんな事を思っていると、小さく零れた綾袮さんの言葉。その言葉に俺が驚く中、綾袮さんはこっちを見たまま自嘲気味に笑う。
「わたしね、顕人君の事は信用してるよ。顕人君はどんどん強くなっていくし、ちょっとずつだけど頼もしくもなってるし、調子に乗って油断するようなタイプじゃないって事も分かってるもん。…だけどやっぱり、顕人君の両親みたいには送り出せない。不安な気持ちばっかりが勝っちゃう」
「…綾袮さん……」
表情は柔らかいけれど、声音から感じる思いは真剣そのもの。俺を信用してくれてるんだって事、それでも不安なんだって事、その両方の気持ちがひしひしと伝わってきて、俺は返す言葉に詰まる。そんな綾袮さんへ、なんて声を返せばいいのか分からなくて、これだって言葉も出てこない。
「当然と言えば、当然なんだけどさ。顕人君といた時間も、教えてきた事の量も、自分が歩んできた時間の長さも、全部違うんだから。…けど、結局それって言い訳だから…わたし、こういう事にはあんまり向いてないのかな…」
「…それは…そんな事ないよ、綾袮さん。俺はそれを、言い訳だなんて思わないし…俺が強くなれたのは、綾袮さんのおかげだよ。綾袮さんが教えてきてくれたから、俺は強くなれたんだ」
普段の綾袮さんからは程遠い、気弱な言葉。自信に欠けた、ただの女の子の様な思い。
痛感する。どれだけ綾袮さんが、俺を気にかけてくれているのかを。だからこそ申し訳なくて、そんな自信のない綾袮さんでいてほしくなくて、俺は抱いた思いそのままに話す。俺の思っている事、感じている事を真っ直ぐに伝える。
そうだ、間違いない。原動力は理想の世界への憧れで、俺を強くしてくれてるのは綾袮さんだけじゃないけど…綾袮さんがいなかったら、絶対に今の俺はない。全然違う俺になっていたか、もしかしたら既に終わっていたか…どちらにせよ、今の俺を作り上げている柱の一つは、綾袮さんなんだ。
「…ごめんね、気を遣わせちゃって……」
「そんなの、お互い様だよ。綾袮さんだって、これまでに何度も気を遣ってくれたんだから」
「…じゃあ、さ…もう一度、もう一度だけ考えてみて。さんかするか、どうかの事を」
「……綾袮さん、俺は…」
「分かってる。…だけど、お願い。無理に止めたりはしないし、それは間違ってるって理解してるから…考えるだけは、してみて…」
俺の心はもう決まっている。でも、俺は綾袮さんの思いを振り解けない。ここまで俺の事を思ってくれる綾袮さんの思いは、出来る事なら裏切りたくない。それに綾袮さんの言葉には、胸の前で右手を握る綾袮さんの姿には、切実な感情が籠っていて……だから俺は、頷いた。一度固めた思いを崩して、もう一度組み立て直す事を約束する。
(…なんか、複雑な気持ちだな……)
これまで俺は、とにかく強くなろうと思っていた。とにかく突き進んできて、その結果真実を都合の良い嘘へと捻じ曲げたり、本来霊装者としてすべき事を放棄したりする事もあったけど、俺なりに前へと進んできた。成長してきたと、思った。
なのに、綾袮さんを不安にさせてしまっている。望んだ事をしてきたのに、望んでない事が生まれてしまった。世の中思い通りにならないのが普通で、好ましい事だけが起こるなんてあり得ないのは分かり切っていたけれど……それでもやっぱり、複雑だ。
「…………」
「…………」
気持ちはともかくとして、話は付いた。取り敢えず妥協点には辿り着けた。でもだからって、即座にいつも通りに戻れる訳じゃない。むしろなまじ話が付いてしまったが為に、本日三度目となる沈黙が訪れ……るかと、思いきや。
「顕人さん、見つかりましたよ」
「見つけ出すのに苦労した。顕人は感謝するべき」
滑らかに扉が開かれ、姿を現わすロサイアーズ姉妹の二人。何を言っているのかというと、二人は夕飯作りの為に中断していた探し物を引き受けてくれていた。で、それが見つかったらしい。
「あ…っと、うん…。ありがとね、二人共…」
「……?どうかした?」
「いや、別に…。じゃ、じゃあ二人も来たし、ご飯にしようか…」
「そ、そうだね。いやぁ、お腹空いたなー…!」
俺も綾袮さんもついついぎこちない反応になってしまうけど、気不味い空気を霧散させてくれたって意味じゃグットタイミング。変に詮索をされない為に俺が一度台所に引っ込み、綾袮さんも自分の席に着いた事で、二人も若干気になってそうな表情をしつつもそれぞれの席へ。
さっき綾袮さんに言った事は嘘じゃない。ちゃんと、もう一度考えてみるつもりだ。そしてその上で出した答えなら、それがどちらであろうとも、綾袮さんならきっと分かってくれる筈。それはそう、信じたい。…そう思いながら、俺は別のお餅をレンジで温めるのだっ……
「…顕人、お餅硬くなってる」
「あー…これは、水自体が温くなっちゃってますね……」
「…おおぅ……」
……当たり前だけど、冷えちゃ不味い食べ物を用意したら、すぐに食べなきゃ駄目だよね…。
*
人間誰しも、休息は必要。それも空き時間での小休憩ではなく、心穏やかに過ごすちゃんとした休みがなくちゃ、気付かぬ内に溜まっていく疲労という負債を返済出来ない。って訳で俺が自室のベットに寝転がり、何をするでもなくのーんびりとしていると、妃乃が部屋にやってきた。
「聞いたわよ?「早めのパブロン?」…うん、シンプルに何?」
「いや、なんとなく言っただけだけど……」
何と訊かれたって困る。だってふざけただけなんだから。…って訳で俺はボケを重ねる事はせず、今度はこっちから問いかける。
「で、何の話だ?」
「……貴方が最近、精力的に鍛錬してるって話よ。後、さっきのは『聞いた』じゃなくて『効いた』だからね?」
「あ、お、おう…(細かいとこ突っ込んでくるな…)」
軽く呆れた顔をしながら答える妃乃。誰から聞いたのかは分からないが…基本的に鍛錬は双統殿内でしてるんだから、まぁその事が妃乃の耳に入るのは別段不思議な事でもない。
「調子はどう?少しは上達してる?」
「ま、ぼちぼちだな。…まさか、それを言う為に来たのか?」
「まさか。晶仔博士からの伝言よ。装備に関して何か要望があれば、可能な限り応える…だって」
「装備の要望、か…。…妃乃、ってか協会的にそれはいいのか?組織な以上、あんま個々人で独自の装備使われるのは好ましくないだろ?」
「まぁね。けど悠舎、どこかの部隊で活動する気なんてないでしょ?」
「ああ、そういう……」
組織ってのは、纏まった数を力にするもの。特に戦闘を生業とする組織は統率を重視する訳で、一人一人が個性を出す事とは相性が悪い筈。…そう、俺は思った訳だが…今妃乃が言った通り、俺は殆ど組織として動いていない。立場的にも特殊な訳で、だから園咲さんもそういう話を持ちかけてきたんだろう。現に同じ立場の御道はよくお世話になってるみたいだし。
「折角の機会だし、近い内に一度出向いたら?貴方だって、装備が良くなるに越した事はないでしょ?」
「つっても、現状特に不満とかはないからなぁ…。近接戦の武器なんて、ぶっちゃけ強度さえあれば良いし」
「…ま、その気持ちは分かるけどね。シンプルイズベスト…じゃないけど、色々弄り過ぎると信頼性は落ちていくものだし」
基本大槍一本で戦う妃乃なだけあって、意見は俺と同じな様子。というか俺と違って拳銃すら基本使わない(斬撃飛ばしたりはするが)辺り、俺以上に単純さを突き止めていると言っても過言じゃない。…まあその分、その槍捌きは相当奥が深いんだが、な。
「…あ、いや…でも、そうだな……」
「…急に何よ?」
「俺じゃなくて、緋奈のなら…って思ってな。勿論緋奈が戦う事にならないのが一番だし、その為の力でもあるが…避けてるだけじゃ、届かないものもあるからな」
「へぇ、緋奈ちゃんの…ね。あくまで悠耶への話だしそこは要相談だろうけど、良いんじゃない?…あ、でも……」
「…でも?」
「やる以上は使っての感想…っていうかデータが欲しいでしょうし、極力使わないように…っていうスタンスは、あんまり合わないかもしれないわね……」
「あー…どうしたもんかねぇ…」
言われてみればその通り。こっちが金を払って依頼するとかならともかく、向こうも意図があって持ちかけてくれた話な以上はあまり好き勝手な事は言えない。勿論それを俺が使って感想を伝える、って事なら納得はしてもらえるだろうが、それじゃあ緋奈用の調整にならない。ふー、む……。
「…まあ、取り敢えず行ってみなさいよ。どうするにせよ、昌仔博士と打ち合わせしなきゃいけないんだから」
「んまぁ、それもそうか…。じゃ、一先ずそうしますかね」
「いつ行くかは教えなさいよ?私から連絡しておくから」
「へーい」
いつ行こうかねとか、まあでも早い内の方がいいよな…とか思いながら、妃乃の言葉に答える俺。まあ何にせよ、これで会話の目的は済んだ訳だが…まだ、妃乃に部屋を出ていく素振りはない。
「…まだ、何か…?」
「…いや、別に」
「なら何故…。…あれか?自分の部屋より俺の部屋の方が居心地が良いってか?」
「そ、そんな訳ないでしょ!失礼ね!」
「え、失礼なの…?ってか、そうじゃないなら……」
冗談とはいえ、失礼だなんて言われてしまえば俺も困惑。というか、本当に何故部屋に残っているのだろうか。
…と、そんな思考を始めたところで、俺は思い出す。御道と綾袮の模擬戦訓練に遭遇した際、綾袮としたあるやり取りの事を。妃乃は賑やかさの権化と言っても過言ではない綾袮と、十年を優に超える幼馴染み関係を続けているのだという事実を。…あー、こりゃやっぱり……
「…構ってちゃん、かぁ……」
「へっ?…何がよ…」
「いや、なんつーか…感覚が庶民派だったり、ジャンクフードが好きだったり、中々良い感じのキャラしてるよなぁほんと……」
「だ、だから何が?何の話してるのよ?ねぇ…?」
何故か部屋に居座られるとなるとこっちも居心地が悪いが、それが構ってちゃんな性格によるものだと考えれば可愛いもの。というか、普段はどっちかって言うと大人ぶるタイプな妃乃が実は構ってちゃんだったんだと思うと、何だか凄く愛らしい存在に思えてくる。何を言っているのか分からない、って感じの反応も、多分構ってちゃんと言われて恥ずかしくなったからだろう。
愉快な結論に行き着いた俺は、ふぃー…とベット寝転がる。妃乃は何やら困惑を増していたが、まぁその内また向こうから話を振ってくるだろうと思い、俺は再び自室でゆっくりとし始めるのだった。
……因みにその後、俺は妃乃から「いい加減いつ行くか言いなさいよ!?」…と怒られてしまった。…あ、だから出ていかなかったのね……。