双極の理創造   作:シモツキ

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第二百十一話 やり切った、だなんて

 顕人君の意見、顕人君の思いが通る事はない。…それは、初めから分かってた。考えが甘いとか、荒唐無稽過ぎるとかじゃなくて…協会として、今そんな事が出来る訳ないと、分かり切っていたから。顕人君の言っている事は、感情的には正しくても、それだけで上手くいく訳じゃないのが、組織ってものだから。何より…お祖父様は、顕人君一人で説得出来るような相手じゃない。わたしだって、お祖父様の主張に明らかな穴でもない限り、一対一で意見をぶつけ合ったら勝てる気なんてしないんだから。

 それでも顕人君のお願いに応えて、こうやって話す機会を用意してもらったのは、顕人君に…顕人君と同じように力を失った人達への負い目があったからだし、顕人君の本気のお願いを無下にしたくもなかったし…顕人君なら、止めるよりちゃんと気持ちを貫けた方が、駄目だったとしても前に進めると思ったから。そういう人だって、知ってたから。

 だけど、顕人君の「こうだ」としていた思いは、お祖父様に打ち砕かれた。それは、そこまでは、届かないところまでは予想通りで…だけど、こうなるまでは分からなかった。打ち砕かれた顕人君の心が、あんなにも沈んでしまう事は。それを見て、わたしが…凄く凄く、切ない気持ちになる事は。

 

「…綾袮」

 

 話が終わって、最後にお祖父様が気遣いの言葉をかけて、それでわたし達はお祖父様の執務室から出る事になって。だけど出ようとしたところで、わたしはお祖父様に呼び止められる。

 廊下で待ってて。顕人君に視線と頷きでそう伝えたわたしは、顕人君が出て扉が閉まったところで、お祖父様へと向き直る。

 

「全く…意地が悪いな。この程度の結果、予想出来なかった筈もなかろうに」

「ううん、違うよお祖父様。わたしなりに、これが…駄目だって、やらない方がいいって突っ撥ねるよりも、こうする方が顕人君の為になるって、そう思ったからだよ」

「そうか…ならば、良いのだがな…」

 

 そう言ってお祖父様が見るのは、扉の方。でも間違いなく、見ているのは扉じゃなくて、その向こうにいる顕人君の事。

 お祖父様だって、顕人君を嫌ってる訳じゃない。むしろ多分、「礼儀がなっていて、しかも中々気骨もある若者だ」って感じに、評価は高いような気がする。でもあれだけはっきり言ったのは…お祖父様が、そういう立場だから。そしてわたしも…こういう事が、出来るようにならなきゃいけない。

 

「…本当に、大したものだ。自分の利にもならない事を、よくもまあ自らこの場であそこまで言ったものだ。…だが、危ういな」

「危うい…?…って、顕人君が…?」

「そうだ。…綾袮、指導者には『保身』の心が必要となる。その理由は、分かるか?」

 

 それからお祖父様が口にした、危ういという言葉。それへわたしが訊き返すと、次にお祖父様は『保身』の必要性が分かるか、とわたしに訊いてくる。

 保身。普通プラスの意味で使われる事なんてない言葉だし、指導者と保身の組み合わせなんて、一般的には最悪だと思う。…でも、分かるかどうかで言えば…分かる。

 

「部下を守る為、将来の問題に対処する為…だよね?」

「そうだ。だが、それだけではない」

 

 自分の為に、周りを…部下を犠牲にするような保身なんて、良い訳がない。でも、ちゃんとした地位や立場があれば、その権力で部下を理不尽から守る事が出来るし、発言力を持って未来への備えを組織内で進めておくような事だって出来る。必要な『力』を守るって意味での保身は、状況にもよるけど大切な筈で…わたしの答えを聞いたお祖父様は、そうだと一つ頷いてくれた。

 でも、お祖父様は続ける。それだけじゃないんだって、もっと大きい理由があるんだって。

 

「いいか綾袮。保身とはつまり、立ち止まる事。今の自分を、これから進む道を見直す事。過ぎた保身は瞳を曇らせるが…そうでなければ振り返り、自らを確かめる力となるのだ」

「そっか…そう、だよね。保身って、自分に目が向いている状態なんだから…」

「その通りだ。そして、保身のない状態とは即ち、ある意味で自分の見えていない、外に目がいき過ぎた状態。故に、保身無き者は……止まらない」

 

 自分を見つめる機会、見つめ直せる機会。保身はそれを生み出す力があって、だからそれがないと立ち止まれない…見つめ直す事も出来ない状態になっちゃうんだって、お祖父様は言う。

 確かにそうだと思う。言われて気付いたけど、自信があり過ぎたり、何かを盲信してる人が暴走し易いのも、これと同じ理由だと思う。だって迷いなく何かを信じてる人は、保身なんて不安からくる行動をする必要がないんだから。

 そして、今お祖父様がこの「保身」の話をしたのは、きっと……

 

「…お祖父様は、顕人君も、そういうタイプだって…全く保身を考えない人だから、逆に危うい…って言いたいの…?」

「少なくとも、人並みに保身の視点がある者ならば、こんな事はまずしない。行動力や、その根源となる意思の強さは長所だが、夏の一件といいこれといい…どうも彼は、信念の為なら危険や無茶を厭わないきらいがあるように、私にら見える。…これが杞憂ならば、良いのだが…な」

 

 私も心配性になったものだ。…そう言って、お祖父様は言葉を締め括った。

 今の話は、お祖父様の推測であって、動かぬ証拠…みたいなものは何もない。でもお祖父様の言う事には、納得出来る部分もあるし説得力もあったから、わたしはお祖父様に頷いた。

 行動力も底力もあって、意外と頼もしいのが今の顕人君。そう思うわたしの気持ちは、顕人君が力を失った今でも変わらなくて…でも、危なっかしいのも本当の事。…だから、わたしが支えてあげなきゃって思う。だってわたしは、顕人君の師匠で、これまでにも色んな事を一緒にしてきて、これからもそうしたいって思ってる……

 

(……あ、あれ…?これって……)

 

……何だろう。これを、今のわたしにとって顕人君はどういう存在として呼べば良いのかを、何故かわたしは分からなかった。

 大切な相手だとは思ってる。信頼もしてるし、勿論友情だってある。だけど、これだって言葉、しっくりする言葉はどうしてか中々出てこなくて…でも、別に良いよね。だって大事なのは、言葉じゃなくて、形じゃなくて、思いだもん。顕人君を支えてあげたいって思いには…変わらないんだから。

 

 

 

 

 重要な選択や判断には、それ相応の理由がある。組織における選択は、いつも全体への影響や、組織全体から見た最善が選ばれる。それは少し考えれば分かる、当たり前の事で、俺も分かっていた筈の事で……だけど俺は見落としていた。なのに俺は、気付いていなかった。俺が掲げていた主張、そこに存在する欠点に。

 呼ばれた綾袮が出てくるまでの間、ずっと俺はその事ばかりを考えていた。どうして気付けなかったのか。もしもっと前の段階で気が付いていたら、こうはならなかったんじゃないのか。そんな後悔が、こんな簡単な事で終わってしまった無念さとやるせなさが、何とも俺の心を巡り…そうして綾袮は、執務室の中から出てきた。

 

「お待たせ、顕人君。…それじゃあ、帰ろっか」

「…だね……」

 

 落ち着いた綾袮の声に頷き、今は廊下を歩き始めている。過ぎた事は仕方ない、や、喉元過ぎれは熱さ忘れる、なんて言葉もあるけど…今の俺は、そんな楽観的には考えられない。

 

「その…さ。顕人君は、十分頑張ってたと思うよ?普通だったら、もっと早くおじー様の気迫で上手く言えなくなっちゃってると思うもん」

「…そうかな?」

「そうだよ。わたしだって、二人が話してる間は緊張したもん。わたし、特に言う事もやる事もないのに」

「そっか…。…悪いね、気を遣わせちゃって…」

 

 励ましてくれる綾袮。それはありがたいし、綾袮の言う通り善戦出来てたって事なら、少しは救われるけど…ならいっか、った思える程俺は楽天家じゃない。

 善戦じゃ、駄目なんだ。これは試合ではなく、駆け引きだった以上、こっちの主張を通せるか、ある程度納得出来る妥協案が生まれるか位にまで至らないと、意味がない。やるだけやったんだから満足…とは、思えない。

 それに俺は、死力を尽くしてそれでも届かなかったって訳じゃない。浅はか故に届かなかったのが現実で…それが情けないし、不甲斐ない。何やってるんだ俺は、って気分がずっと胸を渦巻いている。

 

「気なんて、そんな……」

「…いや、こっちこそごめん。こう言われたら、そりゃそうなるよね……」

 

 気を遣わせてごめん。…これを沈んだトーンで言えば、そんな事ない…って、社交辞令ではなく本当に心配や罪悪感から相手に言わせてしまうに決まってる。そこからすぐに明るい話題へ切り替えせるならまだしも、それも出来ないのにただ心配や罪悪感を、更なる気を遣わせてしまうんじゃ、お互い損しかない。互いに、「相手に悪かったな…」って気持ちしか湧いてこない。

 でも、それなら気持ちを切り替えられるのかといえば…それも、出来ない。外面を取り繕う事位は出来るけど…そんな空元気、綾袮ならきっとすぐ見抜く。

 

「……後悔、してない?」

 

 空気の沈黙が暫く続き、それから不意に綾袮は言う。はっきりと問い掛けるというよりも、静かにぽつりと呟くように。

 

(…後悔、か……)

 

 何に対してかなんて、訊くまでもない。この状況で、こんな結果になれば、後悔してるんじゃないかと思うのも当然の事。だけど……

 

「…ううん。大丈夫、後悔なんてしてないから」

「…本当に?」

「本当に。何もせず、仕方ないって諦める…俺が後悔するとしたら、それはそうしていた時だよ」

 

 俺は答える。不安そうな、申し訳なさそうな綾袮に向けて、俺の思いをはっきりと。

 これは嘘でも、建前でもない。間違いなく、何もしなかった時こそ俺は後悔していただろうし…こうして行動しなければ、分からなかったものも沢山ある。無謀でも、自分の印象を悪くする可能性が高くても、抱いたこの思いを貫く。それはきっと無駄じゃないし…俺が俺である為に、憧れた先へ向かう為に、必要な事でもあったと思う。

 だから、こうした事に後悔はない。だけど…やっぱり、やっぱりやるせない。こんな結果になってしまった事が、この程度で終わってしまった自分自身が。

 

(ああ、そうだ。後悔なんかない。でも…満足も、していない。こんなんで満足なんか…出来るもんか)

 

 これが、今の俺の意思。こんな不甲斐ない結果で、それで止まれる訳がないという、俺の結論。

 だけど、これじゃあただの思いだけ。今もう一度チャンスを得たとしても、結果は変わらない。視野の狭さ、想定の甘さを反省して出直してきても…結局きっと、どこかで躓く。何故ならそこには、地力の差があるから。俺の主張通りにした結果生まれる理不尽、それに気が付けなかった事…それは地力の差が生んだ、結果の一端でしかないんだ。

……でも、それならばどうする?地力の差は、一朝一夕で埋まるものじゃない。数多くの経験、時間でしか埋められない。けど、だとしたらそれはいつになる?どれだけの経験を、月日を重ねれば…俺は俺の意思を、最後まで貫けるのだろうか。

 

「…ね、顕人君。今日は疲れただろうし、出前とか仕出しとかにしない?それか、デリバリーとかさ」

「え?…あぁ、そうだね…後それ、多分全部同じ意味だからね…?」

 

 思考にばかり意識が向いていた俺は、気付けばもう外にいた。…流石に少し危ないから、一旦この思考は置いておこう。ここまでは屋内だったから何とかなったけど、ここからは周りに迷惑をかけてしまう事もあり得るんだから。

 そう考え直しながら、俺は綾袮の言葉に首肯。実際緊張しっ放しで今の俺には疲労感があるし、注文で済ませられるならそっちの方がありがたい。

 

「じゃあハイターツとか、チュウモンスルトモッテキテクレールとか?」

「うん、前者はともかく後者は最早ボケが軽く飽和しちゃってるから…。…ほんと、大丈夫だからね綾袮。そりゃ、ショックもあるけど…だからって別に、塞ぎ込んだりしないって」

 

 何となく感じた、普段とは違う冗談の気配。そしてそれが俺への気遣い、気持ちを明るくさせようとしてくれてる綾袮の思いからくるものだって分かったから、一度綾袮の方を振り向いて言う。

 建前でも取り繕いでもなく、本当に塞ぎ込んだりはしていない。勿論気落ちはしたけど、今もまだ好転はしてないけど、立ち止まっちゃいない。立ち止まってなんか、いられるもんか。

 

「…それなら、良いんだけど…ね」

 

 同じく立ち止まり、俺の目を見て聞いていた綾袮は、そんな言葉を俺に返した。そこにはどこか、含み…というか、「本当にそうなら」…って思いも籠っているように感じたけど…それは仕方ない事だ。逆の立場なら、俺だって同じような事を思う。

 さっぱり諦めてしまえば、やるだけの事をしたって思えば、綾袮を心配させる事もないだろう。楽だろうし、そうしたって別に間違っちゃいないと思う。だけど…そうだ、俺の思いは変わっちゃいない。このまま、何もせずに終わったりなんて…絶対に、しない。

 

(…でも、どうする。そもそも、そもそもの話として…主張して、提言して、それで終わりか…?確かに俺に出来るのはそこまでかもしれない、けど……)

 

 それから暫くして、俺と綾袮は家に到着。帰るまでにラフィーネ達へ電話を掛けて、何が良いか聞いて、出前の注文はもうしておいたから、後は届けられるのを家で待つだけ。そういう状態になったから、俺の頭には再びこれまでの思考が流れ始め…そんな中で、持ったままだった携帯が何かの通知の音を奏でる。

 

「ん?一体誰からのメッセージ……」

 

 無視する理由もなく、何気なく画面を見やる俺。けど表示された相手を見て、俺の中に緊張が走る。

 念の為、こっちの設定じゃ仮の名前にしてあるけど…それは、ゼリアさんからのもの。もっと言えば、ゼリアさんを介したウェインさんからのメッセージ。

 

「……?顕人さん、入らないんですか?」

「へっ?…あ…ご、ごめん…」

 

 思わずその場で止まってしまった俺だけど、今俺がいるのは丁度リビングと廊下の境。どう考えたって邪魔になる位置で…背後、即ち廊下の方からフォリンの声が聞こえた事で、俺ははっと我に返る。

 

「…顕人、何か面白いものでも見つけたの?」

「あぁいや、単に来てたメッセージを確認…って、何姉妹揃って何食わぬ顔で画面覗き込もうとしてきてんの…!」

 

 どれどれ…とばかりに平然と見ようとしてくる二人から逃げつつ、俺は反省する。邪魔になる場所に突っ立っていた事も、不用心だった事も…何だかんだ好奇心は強い方(だと思う)な二人のいる前で、「あれ?」と思われるような行動をとってしまった事も。いやほんと、迂闊だった…。

 

(油断も隙もないな…流石ロサイアーズ姉妹…)

 

 多分大丈夫だとは思うけど、この流れで部屋を出て行ったら変に思われるかもしれない。そう考えて俺は食卓の方の席に座り、姉妹が見にこないのを確認してから送られてきたメッセージを開く。

 

「…………」

「顕人くーん、注文したのってそろそろだっけ?」

「……うん?…あー…っと、そうだね。うちから店まではそんなに離れてもないし、頼んだ時間よりちょっと早く来るって事も十分あり得……おっと、噂をすれば…」

 

 正にドンピシャと言うべきか、俺が話している最中に鳴った家のチャイム。玄関に出て代金を支払い、受け取ったものを食卓へと運んで、飲み物を用意し俺達はすぐに夕飯タイムへ。

 

「ん、やっぱり天ぷらは良い。この食感は、食べていて楽しい」

「ですね。他の揚げ物とはまた違う、独特の良さがありますよね、天ぷらって」

「あー、それは分かるかな。…にしても改めて見ると…ほんと二人も、お箸使うの上手くなったよねぇ。顕人君もそう思わない?」

「…確かに。まぁ…こっちに住み始めてから、二人も毎日使ってる訳だもんね」

 

 そんな事を話しながら、各々注文した丼を食べ進める。思い返せば、初めてこの四人での食事を取った時も、場所は違えどこんな感じだった。あれからほんとに長い時間が経って、色々変わったんだなと思うと…しみじみとした気持ちになる。

 

「…それで、本日顕人さんは何をしに双統殿へ?」

「おー、某バラエティ番組みたいな言い方だねぇ」

「…まあ、ちょっと…直談判を、ね」

「直談判?…給料の交渉?」

「い、いやそういうのじゃなくて……」

 

 今日してきた事は、大っぴらに話すような事じゃない。それに結局当たって砕け散った、相手に綻びを突かれる形となったのが今日の俺で、語るのも恥ずかしい話。

 でも、相手はラフィーネさんとフォリンさん。この二人が気になるというのであれば、話しても良いんじゃないだろうか。けど、話した内容全てを語るのは、何か不味かったりするのかもしれない。二人の視線を受ける中、俺はそんな事を考えていて……けれどその内に、俺が判断するよりも早く、二人は言った。

 

「…やっぱりいい」

「え?」

「そうですね。どうも込み入った話のようですし、訊くのは止めておこうと思います」

「…いいの?」

「うん。顕人を困らせたくはない」

 

 こくり、と俺の言葉に頷く二人。続く言葉がない事から推測したのか、それとも迷っている事が表情に出てしまったのか、何れにせよ俺は気を遣われてしまった。…帰りにゃ綾袮に気を遣わせて、今は二人に気を遣わせて…なーにやってんだかな、俺は…。

 

「…ごめん。それと…ありがと、二人共」

 

 再びの気遣い。刀一郎さんが最後にかけてくれたのも含めれば今日三度目の、更に刀一郎さんと話す前にした綾袮とのやり取りも含めれば四度目の、気遣いの言葉。でも、さっきと同じ轍は踏まない。ただ空気が重くなるだけの結果を招かないよう、俺は謝罪だけじゃなく、続けて感謝の言葉も伝えた。

 その甲斐あって、二人は微笑みと共にまた揃って頷いてくれた。空気も殆ど重くならず…ただ一個あるとすれば、この時二人が見せてくれた微笑みが、多分俺がする微笑みなんかよりも大人っぽかった事だけは、年上としてちょっとばかし悔しかった。

 

「ふー…出前で丼もの、ってのも中々悪くないもんだなぁ……」

 

 そうして数十分後。食べ終え、食器を軽く洗い、後は回収を待つだけという状態になった事で、俺は一度自分の部屋へ。椅子に座り、その椅子にかなり深く身体を預け、その格好でまた携帯を見る。そこに表示された、受信したメッセージの内容を。

 

「…………」

 

 別に、そんな驚きの内容や、複雑な話が書かれている訳じゃない。むしろ、内容そのものは至ってシンプル。流し読みでも、何ら問題なく理解出来るような単純な事。

 ゼリアさんより送られてきた、ゼリアさんを介してウェインさんから届けられた、俺へのメッセージ。それは、そこに書かれていたのは……再びの、俺へ対する招待だった。

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