双極の理創造   作:シモツキ

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第二十五話 上位存在の影

霊装者に復帰して、リメイクされた武装を受理して……それから、そこそこの時間が過ぎた。

生活自体は、時宮の件を除けば主だった変わりはなく、緋奈は平穏無事な生活を過ごせていた。俺も俺で重傷を負ったり過酷な任務をやらされる事もなく、平穏無事とまでは言わずともまぁ一応それまでの生活を続けられていたと言える。…俺と緋奈の状況を考えれば、これは十分ありがたいよな。

 

「帰ったぞー」

「はいはいお帰りなさい」

「……時宮、そこは『お帰りなさい。お風呂にする?ご飯にする?それとも…「ぶっ殺すわよ?」あ、すいません」

「ったく…調子乗ってるとほんとに痛い目に遭わせるからね?」

「恐ろしいご令嬢様だな…」

 

現代日本は平和なおかげが子供が冗談感覚で『殺す』なんていう訳だが……時宮の場合、立場&実力が立場&実力過ぎてあんまり冗談に聞こえない。…まぁ、痛い目ってのはともかく殺すってのは流石に冗談だろうし、そういう冗談を言われる程度には友人として信用されてると思うか…シェアハウスでもないのに友人と同居してるってのもアレなものだが。

 

「特別な間柄でもない異性にそういう事言う悠弥の方がずっと恐ろしいわよ。…まさか私が女らしくないって思ってるとかじゃないでしょうね?」

「そういう事じゃねぇよ…後、ある意味この状況は十分特別な間柄だろ」

「いやそれはそうだけど…あーあ、ほんと変なのの担当になっちゃったわね…」

「本人の前で言うなっての。てか、御道の方も同居状態らしいな」

 

俺も御道も同居生活となったのはまぁまぁ前だった訳だが…お互いそれを知ったのはなんと数日前の事だった。…と、言うのも協会の二大トップである時宮家と宮空家はそれぞれがもう一方が暴走しない様にするストッパーの役割を担っており、状況にもよるが何でもかんでも協力&情報交換してる訳じゃないかららしい。……そういう体制をとってるのは理解出来るが、俺や御道にとっちゃ厄介なだけの要素になり兼ねないんだよなぁ…。

 

「あっちは大丈夫なのかしらね。綾袮は言うまでもないし、顕人の方も真人間っぽいとはいえ少し前まで普通の生活してた訳でしょ?…ちゃんとした生活送れてるのかしら…」

「学校での様子を見る限り問題なさそうだけどな。…御道は宮空に四六時中振り回されてそうな気はするが…」

「綾袮は常識がない訳じゃないし大丈夫よ、多分だけど。……それより、不純な関係になってなきゃいいんだけど…」

「…と、無意識にそういう事への興味を口にしてしまう時宮だった」

「なっ……ち、違うわよ馬鹿!私は綾袮を心配してるだけだっての!ふざけないでよね!」

「へいへい。…まぁそれも問題ないだろ。御道がそんな事出来る度胸を持った人間だとは思えん」

 

御道の恋愛観について何か知ってる訳じゃないが…きっとあいつは奥手かヘタレだろう。というかむしろ、積極的だったらなんかキャラ的に嫌だ。

 

「友達に酷い事言うのね…まぁそれはそれとして、ちょっと話いいかしら?」

「既にちょっと話してると思うんだけど?」

「今のどうでもいい話とは別の話をしたいって事よ」

「だろうな…世間話か?それとも…」

「それとも、の方よ」

「はいよ、じゃあ先に俺の部屋に行っててくれ」

 

なんの話だと聞いた訳でも言った訳でもないが、顔付きと声音だけでお互い相手が言ってるのは霊装者関連の事だと察して一度話を打ち切った。話をする場所を俺の部屋に指定したのは…勿論、緋奈に聞かれない為。

まず洗面所で手洗いうがい、続いてトイレに寄ってその後に自分の部屋へと入る俺。先に入っていた時宮は、壁に背を預けて立っていた。

 

「……うん、絵になるな」

「…は?」

「なんでもねぇよ。で、なんでそこで格好つけてるんだ?」

「別に、何となくこうしてるだけよ。…一昨日の戦いの事、覚えてる?」

 

俺がベットに腰かけたところで時宮は話を始める。

一昨日、俺達は発見した魔物と一戦交えていた。その魔物はまた緋奈を狙って現れた個体なのか、偶々なのかは分からないが…災いの種は早めに摘んでおくに限る、という事でそいつはきっちり撃破した。…が、それが何だと言うのだろうか。

 

「二日前の事位覚えてるさ。で?」

「あの時、最後仕留め損ないそうになったでしょ?…私はずっとそれが引っかかってるのよ」

「あー…そういや確か、最初の時もトドメさせてなかったな。時宮って詰めが甘いタイプなんだな」

「な訳ないでしょうが!勝手な事言うんじゃないわよ!」

「え、えぇー……勝手も何も、事実を言っただけだろ…」

 

確かにちょっと煽りを含めはしたが……今のは流石に理不尽過ぎる。詰めが甘いんじゃなかったら何で仕留め損ないかける羽目になるんだよ…と言いたい俺だったが、時宮に制されて一先ず閉口。

 

「話を聞きなさいまずは。…私は確実に仕留めた筈なのに、ここ最近で二度も殺しきれない事態が発生した。しかもちょっと協会に確認してみたら、私と同じ様な事があったって報告が何件かあったのよ。それに…緋奈ちゃんが襲われた時の魔物も、貴方はしっかり倒したつもりだったんでしょ?…これは明らかに変よ」

「変、ねぇ……普通に考えたらそりゃ単なる練度不足だろ。少なくとも俺はまともに戦ったのなんて十数年ぶりだったんだ、戦いの勘が鈍っててもおかしくねぇよ」

 

短絡的に物事を考えるのは良くないが、何でもかんでも深い理由を求めていたらそれはキリがない。有り体な答えだが肝心なのはバランスであり、その観点から俺はその事を単純に考えるべきだと思ったが…どうも時宮はそうじゃないらしい。

 

「練度不足なら、突然仕留め損なう事態が何件も発生するのはおかしいでしょ。そりゃ、貴方はそうなのかもしれないけど…私は断じて違うわ。それに練度が不足していようといまいと急所を貫けば死ぬ事には変わりない筈よ、違う?」

「……なら時宮は、仕留め損なったのは霊装者側のミスじゃなくて他に理由がある、って言いたいのか?」

 

俺の問いに、ゆっくりと頷いた時宮。…やっぱそうなのか…正直時宮が自分のミスを認めたくないだけな気もするが……一先ずは乗ってみるとするか。俺だって確たる証拠があって練度不足を唱えてる訳じゃないしな。

 

「…だったら、時宮の考えを聞こうじゃないか。一体時宮はどういう理由でもって仕留め損ないが発生してるんだと思ってるんだ?」

「そ、それは……」

「それは?」

「…………私達には思いも寄らない理由によって、とか…」

「……つまり、まだ霊装者側のミスじゃないってところまでしか考えてないと?」

「そ…そうよ!そこから先に進めなかったから悠弥に話を聞こうと思ったのよ!悪い!?」

「わ、悪くない悪くない。だから落ち着け時宮…」

 

少し前に、時宮は非の打ち所がない完璧人間なんじゃないかと思った俺だが……こうして一緒に暮らしている事で、弱点…というか欠点も多少見えてきた。その内の一つとして、どうも時宮はプライドだとか自尊心だとかが常人に比べ、些か以上に高い(強い)らしい。人の上に立つ人間としては、低い(弱い)よりかはそっちの方がまだいい訳だが…それでも欠点は欠点。ぶっちゃけ日々顔を合わせる身としては面倒な欠点なものの、それでも時宮が完璧人間ではなく完璧っぽい人間だと分かっただけでも精神衛生上宜しいのである。

 

「ふん。そっから先も推測を立てられてたら貴方じゃなくてお祖父様やお母様達に話してるわよ」

「そうですかい…一応確認なんだが、あくまでミスが原因ではないって前提で話を進めるんだな?」

「そうよ、どう考えたってミスで片付けられる事態じゃないもの」

「ふーむ、ならそうだな…狙った部位が急所じゃなかったとかか?」

「それもミスでしょ……きちんと急所を狙った上で仕留め損なってるから、それもないわ」

「それなら、本当は仕留められてて、仕留め損なったと思った個体はすり替わる様に出てきた別個体とか……」

「…それ、本気で言ってる?」

「だよな……」

 

取り敢えず思い付いたから言うだけ言ってみたが……倒した個体と同種の魔物が、倒した個体とほぼ同じだけの傷を負った状態で、霊装者の探知を上手く逃れながら、気付かれない様に倒した個体と上手くすり替わる…なんて非現実的にも程がある。それと比べれば時宮の意見は十分現実的だし、そもそもの話としてそんな事をしても魔物サイドには全くメリットがない(瀕死の時に現れるなんて愚の骨頂で、すり替わる為だけに瀕死状態になったとしたら最早意味が分からない)んだからあり得る訳がない。…我ながら、なんでこんなの取り敢えずで言ったんだろうな…。

 

「真面目に考えなさいよね」

「別にふざけて言った訳じゃねぇよ…てか、俺は曲がりなりにも話に付き合ってやってる側だからな?」

「この話は悠弥にも関わる話でしょうが」

「いやそうだが…」

 

と、本題からは若干離れる会話も混ぜつつ原因を考える俺達。だが既に数日以上は考えていた筈の時宮は勿論、俺もそんなぽんぽんと次々意見を出せる訳もなく、凡そ十数分で会議は行き詰まってしまう。

 

「幾つか思い付いたものを上げてみた訳だが…どれもピンとこないな」

「そうね…もっと情報がなきゃ推理もしようが無い、って事かしら…」

「情報ったって、全部の魔物でこの事例が起きてない以上上手く集める事も出来ないだろ。確認するにも倒す段階までいかねぇとだし、起きる個体と起きない個体の差は何かとかも分かってないんだよなぁ…」

「前大戦を生き抜いた霊装者としての知識とか、経験が成せる発想とかはないの?」

「都合良くそんなの求めるなよ…けどまぁ、こういう時すべき事は一つあるぜ?」

「と、言うと?」

「三人寄れば文殊の知恵、って奴だよ」

 

情報や考える頭の質が足りていないなら、考える人数を増やしてしまえばいい。脳を直結させる訳じゃない以上根本的な質の問題は解決出来ずとも、人が増えればその分『閃き』の確率は増えるし、複数人の考えが上手く組み合わさる事で質を補える可能性は十分にある。そういう事を、俺は前世で学んだ。それが所謂三人寄れば〜…って事なのだろう。

そういう事で携帯を取り出し、とある人物に電話。するとその相手は俺の頼みを快諾してくれて…数十分後、我が家へとやってきた。

 

「へー、ここが悠弥君の家なんだ。お邪魔してまーす」

 

────宮空という、呼んでもいないクラスメイトを連れて。

 

「…なんで連れてきたの?」

「いや、何も考えず何しに出掛けるか伝えたら、わたしも行きたいとか言い出して…」

「ちょっと、本人の目の前で『面倒な奴が来ちゃったよ…』的会話をするのは止めようよ。そういうのはシンプルに傷付いちゃうよ?」

「だって俺、真面目な話がしたくて御道を呼んだから…」

「え、早くもわたし真面目な話が出来ない奴って思われてる?顕人君はともかく、悠弥君にまで?」

 

二人、溜め息を吐く俺と御道。かなり酷い事を言ってる訳だが…こういう事に関しては宮空の自業自得である。俺が無愛想だとか不真面目だとか思われても仕方ないのと同じだよな。

 

「はぁ……目的分かってて来たなら、ちゃんと会議に参加してくれよ?」

「分かってるって。わたし、これでも空気読む事は出来るんだよ?」

「…そうなの?」

「あー…まぁ、人並みには読めるのかも。俺の知ってる範囲ではね」

「そうね、綾袮は一応常識ある上でふざけてる子だもの。…だから尚更たちが悪いんだけど…」

 

あんまり宮空が空気読んでる気はしないが…俺より人となりを知っている御道や時宮がそういうのならまぁ多分そうなんだろう。…と、いう事で二人を加えて会議を再開する。

 

「さて、そんじゃ意見頼んだ」

「まさかの丸投げ!?……えーと…意見の前に、ちょっと来るまでに思った質問してもOK?」

「駄目だって言った場合は?」

「時宮さん、OK?」

「えぇ、答えられる事ならなんでもOKよ」

「あ、そういう事になるのね…」

 

流石御道だ、俺の扱いをよく分かってるぜ!……なんかほんとに俺に話が振られなくなりそうだし、何より宮空からの「人に文句言っておいて早速ふざけるんだ、ふぅん…」って視線が怖いから俺も真面目にやるか…。

 

「じゃ……電話では仕留め損なったって言ってたけど、それは文字通り仕留め損なったって捉え方で合ってる?」

「…文字通りじゃない仕留め損なった、なんてある?」

「実際にはそもそも仕留められるだけの傷を与えられてなかったとか、倒したには倒してたけど蘇生した事で仕留め損なったみたいな状況になってた…みたいな展開ないのかって事」

「あぁ…経験と感覚から言って、仕留められるだけの傷は確かに与えていたわ。で、蘇生も無いんじゃないかしら」

「俺も同意見だ。…てか、御道は今まで仕留め損ないがなかったのか?」

「それは…どうなんだろ?」

『へ?』

 

何の気なしに訊いた質問だったが…御道が心当たりの無さそうな回答をした事で俺、それに時宮も疑問符を浮かべる。ど、どうなんだろって……

 

「…まさか、これまでずっとトドメは宮空に任せていたのか?」

「いや、そんな事はないよ?確かに援護に徹する事はそこそこあるけど、俺がトドメ刺した事も結構あるし」

「ならどうなんだろって事はないだろ。仕留められてたら死ぬ、仕留められてなかったらまだ動いてるっつー単純な話だぞ?」

「そりゃそうなんだろうけど…うーん……」

「あーそっか。顕人君は基本オーバーキルだもんね。それなら分からないよ」

 

イマイチ釈然としない御道の言葉に、俺と時宮はさっぱりだったが……宮空だけは理解した様子でうんうんと頷いていた。だがそんな姿を見せられたってこっち二人は分かる訳がない。え、何?オーバーキル?

 

「…オーバーキルって…まさか毎回ズタボロになるまで斬り刻んだりしてるのか…?」

「いや違うよ!?そんな猟奇的な事するか!ってか俺メインは射撃だし!」

「猟奇的って言うか、基本高火力叩きつけて勝ってるんだよね顕人君って。要はわたしや妃乃みたいに狙い定めた一撃で、ってタイプじゃないんだよ」

「そういう事だったのね。仕留めきれないよりはいいと思うけど、現実じゃオーバーキルなんて単なる無駄なんだから気を付けた方がいいと思うわよ?」

「ですよね…ってか考えてみたら、この中で霊装者としての経歴浅いの俺だけじゃん…肩身狭いなぁ…」

「別にこの場じゃ気にする必要もないと思うけどな。で、今さっきの質問で何か分かったか?」

 

若干逸れてしまっていたが…元々は仕留め方の話題ではない。時宮の返答で何か掴めてると楽なんだが……。

 

「うーん……ぶっちゃけ質問した部分が足りないピースだった訳じゃなくて、単に気になっただけだからなぁ…でも、確かに仕留められるだけの傷を与えていたなら、それは仕留められてたんじゃない?」

「…それは言葉遊び開始の合図かなにかか?」

「別に?まぁちょっと格好付けたのは否定しないけど…手練れがそう言うなら、仕留められるだけの攻撃が通った後に何かが起こった、或いはそのタイミングで何かが起こる様に仕組まれてたんだろう…って言いたかった訳よ」

「へぇ…貴方って結構頭回るのね。すぐおふざけに走ろうとする誰かさん達とは大違いだわ」

「…言われてるぞ、宮空」

「え、言われてるのは悠弥君でしょ?」

「誰かさん『達』って言ったでしょうが…」

 

ギロリ、と睨まれた俺と宮空だが……肩をすくめて『なんの事やら』アピール。一対一だと謝りたくもなるが…仲間がいれば怖くない!……なんてな。

 

「はいはい。…けどさ、今の発言って結局何が分かった訳ではないよね?」

「ま、そうだね。俺が言ったのは所詮前提を固めただけだよ」

「それでも意見無しよりはずっといいさ。…しかし何か、なぁ…」

 

何か、○、X…何かを考える上で分からない部分へ、それ等の記号を代入するのはよくある事で、分からない部分が多い時には必須レベルでもあるが……代入したところで判明した訳じゃないんだから、結局はその分からない部分をはっきりさせなきゃいけない。これが数学の問題なら、きちんと手順を踏めば分かるんだろうが…現実は解ける事前提の問題ばっかりじゃないんだよな。

 

「わたし思ったんだけど、武器側の問題…って事は無いかな?最近誰かが手当たり次第に細工した、とかなら常に仕留め損ねる訳じゃない事も説明つくよ?」

「細工、ねぇ…量産品ならともかく、私の天之瓊矛や貴女の天之尾羽張にまで出来るかしら?それに、細工されてたなら使ってるうちに違和感の一つでも感じる筈じゃない?」

「あ、そっか……」

「…そういやさっき蘇生ってのもない、って言ったけど…そういうもんなの?蘇生魔法を付加されてたとか、ある程度余裕がある状態でなら即死級の怪我を負っても辛うじて耐えきれる力を持ってるとかは定番な気がするんだけど…」

「因みに顕人君、その定番ってどの定番?」

「……サブカル業界です…」

 

宮空に指摘された御道は、若干躊躇った後にそう答えた。…案の定というか、何というか…何ともまぁ、一般人的回答だった。

 

「残念だが、そりゃないな。魔人級以上ならともかく、ただの魔物が蘇生能力だの何だのを持っていたらこっちはたまったもんじゃねぇよ」

「……魔人?…って、魔物の上位存在…的な?」

「…その反応じゃ、魔人については知らないみたいだな…時宮、ほんと担当間違えたんじゃないのか?」

「そうね、顕人は気になった事を積極的に訊いた方がいいわよ。この様子だと、綾袮は他にも色々と教えてなさそうだし」

「はは、そうするよ……で、その魔人ってのは具体的に何なの?」

 

てへ、と舌を出してる宮空に呆れつつ、魔人についてを考える。説明に関しちゃ時宮がやるのが一番だとは思うが…知識が乏しい御道に対しては、人から聞いた知識が中心の俺の方が伝わり易いか。

 

「魔人っつーのは、人と遜色ない知性、独自の固有能力、そしてそれ抜きにも普通の魔物以上の戦闘能力を持つ個体の総称なんだよ。ま、同じ魔人でも特に強い個体や逆に名前負けする様な個体もいるんだがな」

「へぇ……魔人っていう位だし、どれも人型なの?」

「いや、人型以外もいるぞ?人型の魔物ってのはほぼいねぇから、割合的にはずっと多いけどよ」

「…じゃあ…綾袮さん、俺達が今まで倒してきた個体の中に魔人は……」

「いないね。魔人は早くても数ヶ月、普通なら数年に一度位しか起こらない災害みたいなものだもん。顕人君といる時に魔人を発見したら、わたしは顕人君を即逃すね」

「…もし綾袮さん一人だったら?」

「その時は取り敢えず戦ってみるよ。平均的な魔人なら、全身全霊で戦えば勝ち目はあるし」

 

今度は胸を張る宮空。それに俺は「いや魔人は一人で立ち向かう相手じゃねぇだろ…」と言おうと思ったが、ふと隣を見ると時宮は「まぁ、そうよね」みたいな表情を浮かべていた。……この二人は、もしや俺が思ってる以上に強いのか…?

 

「…ま、そういうのが魔人って奴だ。分かったか?」

「一応はね。…そうなると、倒してきた魔物がそういう能力持ってたって線は無くなるか……」

「もし実際に魔人だったら、その可能性は高かっただろうな」

「でも仕留め損なったのはどれも魔物だった。……あ、ついでに一つ言っておくと、魔人は魔物を配下として率いてる事もあるのよ。群れの長みたいにね」

「あ、じゃあ魔人の影響…というか指揮を受けるって事もあるのかな?」

「それはあるな……ん?」

 

高い知性を持つ魔人は当然として、魔物の方も本能的に強い者に従いたくなるのか、魔人が中心となった群れは別段あり得ない事ではない。それはともかくとして……御道の言葉を聞いた瞬間、俺の中で『影響』『受ける』という二つの単語が引っかかった。…なんだ?なんで俺はこれが引っかかったんだ?影響、受ける…影響…受ける……受けるのは、影響するのは…()()()()なのか…?

 

「…なぁ、時宮…一つ訊いてもいいか?」

「いいけど…何よ?」

「ちょっと、案外御道の考えは当たらずとも遠からずだったのかもしれないと思ってな…」

「…どういう事?」

「要は考え方の問題だよ。俺達は無意識に、能力があったとしてもそれは個々に有しているものだって考えていたが…そうじゃない可能性もあるんじゃないか?」

「……まさか…」

「あぁ。まさかとは思うが……ひょっとしたら、この件は魔人級が関わってるんじゃないのか?」

 

俺の言葉の意味を察し、目を見開く時宮。それを見た俺は、未だ理解しきってない様子の御道と宮空へ視線を移し……

 

「……魔物は能力を持ってたんじゃなくて、付加されたんだよ。どういう能力かまでは分からねぇが…致命傷を避ける様な能力を持つ魔人に、それこそ魔法をかけられるが如く能力を与えられた。…俺の仮説は、そういう事だ」

 

初めは霊装者側の問題だと思っていた俺。だが……仮説を思い付いた時にはもう、俺の考えはがらりと変わっていたのだった。

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