双極の理創造   作:シモツキ

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第四十七話 どう動くべきか

妃乃の謎の視線被害を、本人の口から聞いてから数日。あれ以降妃乃の視線へ対する認識は少し変わったようだが……まだ、警察への連絡はしていなかった。

 

「ちょっとスーパー行ってくるわ。何か買ってきてほしいものある?」

「え、妃乃の奢り?」

「違うけど?」

「じゃあいいや、車には気を付けるんだぞ〜」

「私は小学校低学年か…はいはい行ってきます」

 

買い物に出る妃乃に対し、これでもかという程気の無い声音で送り出す俺。前は「何なのよその態度は…」みたいな反応を見せていた妃乃も、今はもう慣れた様子だった。…なら今度は逆に滅茶苦茶勢いのある返答でもしてやろうかな…。

 

(…普通はこうも視線を感じたらビビって外には出たがらないだろうに…流石は時宮家のご子息だよなぁ……)

 

我ながら何か皮肉っぽくなってしまったが、これに関して俺は本当に凄いと思っている。…動じなかった事で然るべき対処を行うのが遅れた結果、取り返しのつかない事に…みたいな展開になる可能性も否定し切れないから大手を振って評価出来る事じゃないが、まぁ凄いものは凄いんだよ。

 

「…それはともかく、俺はどうしたものか…」

 

読んでいた漫画をテーブルに置き、考える。俺が取れる行動といえば妃乃に付いていてやる、俺が警察に通報する、犯人探しに駆り出す…と色々あるが、どれがベストなのかは中々答えが出せない。妃乃と話をした時点じゃ通報が一番いいと思っていたが……そのすぐ後に犯人を取り逃がしてしまった事で、警察に頼ればそれで解決するのかと思うようになった。

大前提として、あの時妃乃を見ていた奴が普通の人間なら、俺が角に行くまでの間で逃げたり隠れたりするのは不可能と見て間違いない。にも関わらずいなかったという事はつまり前提が間違っていたという事で、そうなると見ていた奴は何者なんだという話になる。普通の人間じゃないのか、霊長類ヒト科ではないのか……或いは、端から『視線』なんてなかったのか。

 

「…どれも厄介過ぎて考えたくねぇなぁおい……」

 

面倒な事はやりたくない俺(普通は誰でもやりたくないか…)だが、じゃあ考えないでおくか…とはいかない。だから頭をかきつつ悩んでいると…リビングへ緋奈がやってきた。

 

「ふぁぁ……」

「…昼寝してたのか?」

「うん、ちょっとね…」

 

口に手を当て欠伸をしながら入ってきた緋奈は、その仕草通りまだ眠そうだった。…うむ、今日も我が妹は可愛いな。

 

「…妃乃さんは?」

「買い物。何か用事あったのか?」

「ううん、聞いただけ。静かだから出かけたのかなって」

 

緋奈は俺が使っている物とは別のソファに座り、ぐぐっと身体を伸ばしている。確かに俺も考え事して殆ど動いてなかったし、緋奈も寝起きとなりゃそら静かだわな。…今日は気候もいいし、悩みがなきゃ俺も昼寝したかったぜ…。

 

「…………」

「…………」

 

数十秒程ソファでぽけーっとした後、片方だけ作った髪の毛の房を弄り始める緋奈。妃乃もツインテールで時々やってる髪の毛弄りに、一体何の意味があるのか俺にはよく分からないが…まぁ女子は気になるんだろう。髪は女の命、なんて言葉もあるし。

それはそうと、ふと俺は考える。緋奈にこの件を話すべきか否か、と。これが魔物や霊装者絡みの事なら考えるまでもなく話さないが、今回の件はそうとは限らない上に緋奈も何かしら被害を被る可能性がある。……何せ緋奈も可愛いからな!妃乃へ怪しい視線を送ってる奴が劣情によるものなら、緋奈だって安全とは言い切れないからな!

 

「…ってか、そう考えると悠長に構えてる場合じゃねぇだろほんと…」

「……?悠長にって、何を?」

「それはだな…緋奈、最近誰かの視線を感じたりしてないか?」

「視線?うーん…」

 

今回の件による被害が妃乃一人じゃ完結しないのかもしれないと気付いた俺は、それで緋奈へと話す事を決定。とはいえいきなり本題に入っても分かり辛いだろうと思い、軽い前置き…というか質問を入れる。

 

「……これもしかして、怪談話の導入だったりする?」

「だったりしないぞ?」

「だよね。視線なんて感じてないよ?」

「そうか…これは兄として喜ぶべきか、それとも憤慨するべきか…」

「何が?」

「…実はな、妃乃がちょっと面倒事を抱えてるんだよ」

 

何で妃乃を付け回してる奴が緋奈には興味を示してないのかはちょっと気になるが…それを考えると時間がかかりそうなので一先ず保留。正体を探ろうとした行動は霊装者の力が関係している性質上突っ込まれると厄介だからそこだけぼかし、それ以外を順を追って話していく。

 

「…とまぁ、こんな感じだ。一言で言っちまうなら『視線を感じる』って事だが…分かったか?」

「う、うん……それってつまり、ストーカー…だよね…?」

「かもな。犯人の動機は分からんが、何れにせよ妃乃からしたら迷惑千万ってやつだ」

「…妃乃さん、今買い物に行ったんだよね?大丈夫かな…?」

「それは心配しなくていいと思うぞ?妃乃は強…こほん、気を付けて人通りの多い道を選んでるだろうし」

 

危うく「強い」と言ってしまいそうになった俺は何とか言い切るのを防ぎ、代わりとしてそれっぽい事を適当に口にする。…が、言いかけた事についてはともかく『人通りの多い道を選んでる』というだけで緋奈が安心する筈はない。

 

「それは幾ら何でも甘いよ。人通りの多い道って言ったって必ずしも人がいるとは限らないし、人通りがあれば絶対安全って訳でもないんだよ?」

「そ、そうだな…(適当に言ったのが仇になった……)」

「…ちょっとして、お兄ちゃんも妃乃さんも危機管理能力低いの?」

「か、かもしれない…(隠し事のせいで言い返せない…辛い…)」

 

緋奈は俺も妃乃も「視線?んーまあ、見られてるだけならいっか」位に考えてるとでも思ったのか、凄く注意してきた。好き勝手言われるのは妹と言えどむっとするが、霊装者関連の事を隠した結果がこれなんだから仕方ない。後、妃乃に関してはほんとに甘く見てる節があるからガツンと言ってやってほしい。

 

「もう…それで、結論はわたしも気を付けろ、って事なの?」

「あ、あぁ…もし視線を感じるような事があったら、勘違いかもとか思わず言えよ?」

「それはお兄ちゃんに?それとも警察に?」

「お兄ちゃんに」

「…お兄ちゃんに言ってなんとかなるの?」

「うっ……」

 

その瞬間、緋奈の言葉はザクリと俺の心に刺さった。多分緋奈に悪意はないんだろうが…悪意がなくたって刺さるものは刺さるのである。

 

「あ…気を落としちゃったならごめんね?でもほら、お兄ちゃんだって暇じゃないし、仮に不審者見つけられても逮捕や立件はお兄ちゃん無理でしょ?」

「…大丈夫だぞ、緋奈…逮捕や立件が出来ずとも、俺は不審者をフルボッコにするだけの力はある…」

「フルボッコにしたら傷害罪か暴行罪に問われるよ!?過剰防衛って知ってる!?」

「過剰?…緋奈に邪な視線を向けるような奴は、万死に値する!」

「その言い方だとGNバズーカで蒸発させそうだね!街中で使ったらスローネルート確定だよ!?」

「お、おう…がっつりパロに突っ込んでくるんだな…」

 

俺が精神的なダメージを受けて変な発言をしたせいか、よく分からない流れになってしまった。えーとなんだっけ…そうだ、話の続き話の続き……。

 

「…こほん。別に俺も放っといていいとは思ってないんだ。だからあったらあったって知る為に緋奈には教えてほしい、そういう事だよ」

「そういう事なら、文句はないけど…でも、そのストーカーって一体誰なんだろう…」

「同じ学校の奴か、近所に住んでる奴か…まぁ実際に見ない限りは何とも言えないな。このご時世どこで誰が知るかなんて分からん訳だし」

「妙に歳食ってる感ある発言するね…」

「気にすんな。…基本は妃乃の問題だが、緋奈も注意しておけよ?」

 

途中ちょっと上から目線になったり俺の精神に言葉のナイフをブッ刺してきたりした緋奈だったが、最後の言葉には何も言わずに首肯してくれた。ただ見てくるだけの相手じゃ注意も何も…って話だろうに、それでもしっかりと首を振ってくれた。…守ってやらなきゃな、緋奈の日常は。

 

「…よし、話は終わったからもういいぞ」

「あ、うん。…けどそう言われても、別に何かする訳じゃないんだけどね」

「じゃ、マッサージでもしてくれや」

「えー、やだ」

「じゃ、マッサージさせてくれや」

「どこも凝ってないんで結構です」

「ちぇ、ノリ悪いなぁ」

「ノリが良いじゃなくて都合が良いでしょ、この流れでマッサージなんてさせたら…」

 

生まれてこの方ずっと妹をやってるからか、本当に緋奈は俺をあしらうのが上手だった。あんまりこういう反応ばっかりだと少し味気ないが…そこはまぁ妃乃を弄るなり御道と駄弁るなりすれば補給出来るしな。後緋奈もネタによってはさっきみたいにビビットな返しをしてくれるし。

 

「…さて、そろそろ妃乃も帰ってくるかねぇ」

「そろそろ帰ってくるの?」

「いや知らん、適当に言ってみただけだ」

「なんでそんな事適当に言うの……ところでお兄ちゃん、どうしてちょっと前から妃乃さんを名前呼びするようになったの?」

「ん?……あー…そうか、話してなかったのか…」

 

交友関係の狭い俺はまず会話中に妃乃の名前を出す事自体が限られた面子と話す時だけで、その限られた面子の殆どは俺が呼び方を変えた際にその場にいたから失念していたが……緋奈には全くその事を話していなかった。…しくった…。

 

「話してなかったって…何?まさか関係が進展したの…?」

「いやいやまさか。(霊装者的に)苗字呼びは不自然って言われただけだ」

「不自然?…あ、同居人として?」

「そうそう、同居人(である妃乃と俺が所属してる組織)的に」

「そういう事だったんだ…」

 

一人納得する緋奈に、俺はうんうんと頷く。…ほら、俺嘘は言ってないし。ただちょっと言葉の一部を心の声に変換しただけだし。

 

「…でも、それ差し引いても始めて妃乃さんが来た時より仲良くなってるよね」

「そうか?…まぁ、そうかもしれんが…それを言うなら緋奈だってそうじゃないのか?」

「わたしと妃乃さんは同性だもん。お兄ちゃんとは条件が違うよ」

「同性だろうが異性だろうがきっかけさえあればそこから仲良くなる事に差はないだろ。恋愛云々言うなら同性愛だって立派な愛の形だしな」

「…お兄ちゃんはそっちの人?」

「さぁな。恋なんてした事のない俺には分からん」

 

自分が男女どちらが好きかなんて、実際にそういう感情を抱くまでは分からないし、毎回同一の性の相手を好きになるかどうかも分からない。恋愛なんて感情的なものなんだから、そもそも考えてどうこうなんて……って、なんだこの流れは…。

 

「うーん…」

「…緋奈、恋バナを否定する気はねぇし、女子はそういう話が好きだってのは分かってるが…こういう話はあんまり根拠も無しには言うな。俺はいいが妃乃はそれ聞いて不愉快に思うかもしれないんだからよ」

「あ、いや…別にわたしは恋バナが好きで言ってたわけじゃ…」

「そうなのか?…じゃ、なんでだよ?まさか俺と妃乃が仲睦まじく見えたなんて事はないよな?」

「それは……ただ事実にちょっと触れただけだよ。それ以上でもそれ以下でもなくて」

「…なら、いいか。すまん、俺が考え過ぎだった」

 

考えてみれば、今のやり取りは半分位流れでなってしまったようなもの。それで緋奈を責めるのはお門違いだろうと思い、俺はそれ以上は言わなかった。それに、いつの間にか呼び方が変わってて仲も最初より良くなってるってなりゃ、気になるのも分からん話じゃないしな。

 

(…ま、緋奈に話した事を伝えるのも含めてもう一度話してみるか)

 

話すのは勿論関係性の話ではなく、視線の事。結局俺がどうするにせよ、当事者である妃乃が乗り気じゃなかったり妃乃の意向に沿えていなかったりしたらどんな行動も上手くいく訳がないんだから、まずは妃乃の考えをどうにかしなきゃいけない。その上で相談を持ちかけられたら聞くし、逆にもう妃乃側でちゃんとした対応を考えているなら出しゃばらずにいるし……何にせよ、これからの事は妃乃次第だよな。

そう決めた俺は、一応考えはまとまったという事で置いた漫画を手に取り、読むのを再開するのだった。

 

 

 

 

前に一度、私は悠弥から庶民的だと言われた事がある。その時は私が一枚上手だったから『そんな事はない』という結論になったけど……

 

「……私、確かに庶民的になってるかも…」

 

…買い物袋の中身は、それを否定するには些か以上に『普通』だった。

 

「環境が人に与える影響って、計り知れないわね…」

 

庶民的である事が嫌な訳じゃない。料理にしても何にしても高級なものは高品質というだけじゃなく、往々にして必要でもない要素を入れたりそこを凝ったりした結果高級になっているんだから、むしろ庶民的なものこそ合理的とも言える。…とはいえ十数年過ごしてきて身に付いたものが、たった一年強で変化してそれに慣れるっていうのは何か、ね…。

 

「……うん、次の料理当番の時には高級食材を使う事にしよっと。えぇそう、私は品格ある時宮家の娘なんだから」

 

手に持つ買い物袋から顔を上げて、私はぐっと拳を握り締める。この時の私は、自分でもよく分からない意志でもってそんな事を考えているのだった。……自炊の時点で品格も何もって事に気付けていない辺り、私の感覚の庶民化は着々と進んでいる。

 

「…それはそうと、警察ねぇ……」

 

ぼーっとしていても間違わないような見知った道を一人で歩く時は、思考が捗る。…と、言うよりやる事がないから自然と考え事をしちゃうもので、今は悠弥の忠告が頭に浮かんできていた。

この件は適切な機関に任せる方がいいというのは分かる。どちらが真っ当な事を言っているかと言われればそれはきっと悠弥の方で、警察に頼んでいる間の任務は考慮してもらえるだろうけど…どうしても私は、この件を重くは受け止められていないせいで乗り気になれなかった。…そういう部分も含めて、悠弥は「軽視してる」って私に言ったんでしょうね…。

 

「…あ、そうだ。うちの諜報部隊に犯人を探らせれば頼りになるし霊装者である事を隠す必要もない…って、そんな事したらむしろ協会内で心配されて動き辛くなるわね…」

 

幾ら地位や権限があろうと、直属の部隊でもなければ秘密裏に動かす事は困難だし、知られてしまえば立場的に厳重警備を敷かれてしまうかもしれない。そうなれば霊装者の事を知っている分、警察以上に隠れて動く事なんて出来なくなってしまう。…それじゃ本末転倒よね…後部隊の私的利用だし。

 

「……やっぱり、今回は大人しく任せた方がいいのかしら…」

 

何か良い手がある中で動き辛くなる手段を選ぶのは嫌だけど、他にこれと言って手が無いのならそれはもう仕方のない事。そして仕方のない事だって思えば選べる気がしてくるのが人間ってものよね。

…と、私が自分で自分を納得させにかかっていたところ、曲がり角から女性が一人歩いてくる。

 

「…………」

「…………」

 

世の中の大半の人がそうであるように、私も前から人が歩いてきても道路が狭いとかじゃない限り特に反応したりはしない。すれ違う人全員と話してたらキリがないんだからそれは当然の事で、何も思う事なくすれ違う筈だったんだけど……何故かその人は私の前に来て止まった。

 

「…………」

「……はい?」

 

女性は私と同じか少し年上位…つまりは恐らく同年代の人。けれど私はこの女性に見覚えなんてないし、見覚えないんだから知り合いって可能性も低い。…まぁ、一度会話した程度の協会や学校の誰かとかだったら『覚えてない知り合い』になるのかもしれないけど…。

 

「…………」

(…え、何この人。シンプルに怖いんだけど…)

 

怖さというのは、簡単に分けると二つある。相手の事が分かるからこそ、危険だって理解出来るからこそ抱く怖さと、相手の事が分からないからこそ、どれ程の存在なのか理解出来ないからこそ抱く怖さのその二つ。…で、今抱いていたのは後者だった。……これはまともに取り合わず帰った方が良さそうね。君子危うきに近寄らず、って言うし。

 

「…あー…すいません、私急いでいるので」

 

相手が誰か分からず、向こうからアクションを起こす事もないなら私にはどうしようもない。これもまた『仕方のない事』だと自分自身に言って、私はその人の横を通り過ぎ……

 

「──平穏に暮らしたいのであれば、こそこそ嗅ぎ回るのは止めておく事だな。もし素直に従うのであれば、こちらとて無益な事はせん。だが続け、周囲に協力を仰ぐのであれば…それ相応の覚悟をしてもらう」

「な……ッ!?」

 

身体の向きを女性に合わせながら、私は跳び退く。女性から脅威や敵意は感じられない。けれど…彼女の言った言葉は、私と悠弥しか知らない筈の事だった。にも関わらずこれを知っているという事は……この女性が私の捜索していた対象、或いはそれに関わる存在と見て間違いない。

 

「……貴女、何者よ…!」

「…………」

「また黙って…!」

「……あ、あれ?…うち、どうしてここに…?」

「……は…?」

 

再び口を閉ざした女性に対し、私は相手がこちら側の存在ならばと天之瓊矛を抜こうとして……そこで突然人が変わったかのように首を傾げながら歩き出す女性に唖然とした。

少し離れた場所にいる私に気付かず、不思議そうな顔をして歩いていく女性。その姿は、どう見ても普通の人間だった。

 

「……どういう、事…?」

 

想像を大きく超えてきたその行動に、私は驚きを隠せない。そしてまず、それが演技なのではないかと考えた。私を油断させて奇襲する為の、或いは私が戸惑っている間に離脱する為の演技ではないかと。

でも、そこで私は思い出した。つい最近、とてもよく似た出来事があった事を。

 

(……っ…そういえば…この人も、さっきまで目の焦点が合ってなかった気が…)

 

相対していた時は気にも留めていなかったけど、今考えてみると女性は私の方を向いてはいても、私を『見て』はいなかったように思える。そしてそれは…それを含めて、つい先日捜索の途中に会ったクラスメイトの状態と共通していた。クラスで耳にした、あの件と同じ状態だった。…偶然というのは、多くはないけどあり得るもの。けど、それは最初にのみ言える事で…偶然が二回以上起こったら、それは偶然の一言で片付けていい話じゃなくなる。偶然じゃなくて、必然の可能性を考えなくちゃいけなくなる。

 

「…まさか…あの人だけじゃなく、例の一件全てに魔人が関わってるって事……?」

 

私が考えている間も女性は歩き続け、気付けば距離はかなり離れていた。けど、今の私に追おうとするつもりはない。それよりもまずは一から見直し、今後の動きを考えなければ……今は安直に動くより、しっかりと考える事こそが大事だと、この時の私は思った。

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