双極の理創造   作:シモツキ

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第六十九話 場違いでも全力で

霊装者同士で模擬戦を行う際、武装は普段通りの物を使う。けれど当然ながら装備をそのまま使ったら毎回怪我人続出が必至な訳で、それを防ぐ為に二つの道具が使われる。

まず一つ目は、模擬戦用の弾丸。これは実体弾武装の弾丸を交換して使う物で、説明は……要らないか、流石に。…で、二つ目が砲口や出力口に取り付ける霊力拡散装置。これは文字通り霊力を拡散させる事で威力を極端に減衰させる器具(武器に合わせて調整しなきゃいけないから、対霊装者用の防御兵装には使えないらしい)で、収束させた霊力を弾丸や刃にする武装はほぼ全てこれで賄える。

…と、こんな感じに安全性も考えてある模擬戦だけど、一つ致命的な問題があった。それは……実体のある武器に霊力を纏わせる類いの武装には、そうした安全装置がないという事。

 

「すぅ、はぁ…すぅ…はぁ…すーぅ…はーぁ……」

「すっごいしっかり深呼吸してるねぇ…そんなに緊張する?」

「そんなに緊張してるから、すっごいしっかり深呼吸してんの…」

 

頑張ろうと心を決めていたって、いざ本番目前となれば緊張するのが人間というもの。ましてやそこに怪我の危険があるというなら、感じる緊張は更に増す。…いや、怪我の危険に関しては普段の魔物討伐の時点である訳だし、危険性ならむしろ模擬戦の方が低いんだけど…相手も状況も魔物戦とは比べものにならないから、ねぇ…。

 

「そんなに緊張しなくても大丈夫だって。あくまでこれは催しなんだからさ」

「そう言われても緊張するもんは緊張するの…で、何か作戦はある?」

「作戦?んー…ガンガンいこうぜ?」

「俺の頭はドラクエのAIじゃないんですが!?ちょ、真面目に訊いてるんだからちゃんと答えてよ!てかまさか…ノープラン!?」

「いやいや、流石にそれはないって。今のは冗談冗談」

 

いつもの事だけど、綾袮さんの冗談は色々と容赦がない。一応今のも好意的に受け取れば、「普段のやり取りをする事で俺の緊張を解してくれようとした」とも思えるけど…それにしたって心臓に悪い。…冗談よりその余裕を少しでもいいから分けてほしいよ、俺は……。

 

「…で、真面目な話をすると…取り敢えずわたしとラフィーネがまず激突する事になるのは十中八九確実で、そうなったら顕人君とフォリンとの撃ち合い又は援護のし合いになるのもほぼ確実。そうなった場合…一応訊くけど、顕人君はフォリンに撃ち合いで勝とうって思ってる?」

「いや、全く。…幾ら俺でも、実力に開きがある事位は分かってるよ?」

「だったら釘を刺しておく必要はなさそうだね。…模擬戦の流れにもよるけど…まず顕人君は、わたしの援護に集中して。わたしはラフィーネの撃破を狙うから」

 

俺が綾袮さんの冗談に戦う前からスタミナを減らされていると、そこで綾袮さんは声のトーンを落として真剣に答えてくれた。それは作戦…と言える程細かいものではなかったけど、しっかり答えてくれればそれだけで心が楽になる。…勿論まだまだ緊張の方が大きいけど。

 

「…フォリンさんが綾袮さんの足止めをして、ラフィーネさんが俺を狙ってくる可能性は?」

「うーん…まあゼロじゃないけど、多分してこないと思うよ?わたしが二人の立場だったら、ある程度顕人君は無視しても大丈夫だろう…って思うし」

「そ、そう…凄く悲しい理由だ…」

「わたしと顕人君じゃ能力に差が開き過ぎてるからね。…でも、不満なら二人に見せつけてあげればいいんだよ。自分を無視したのが間違いだ…って」

「おう…って、そうなったら俺狙われちゃうじゃん…うぅむ、何というジレンマ…」

 

評価を取るか、安全を取るか。普段の俺ならまあまず後者だけど、流石に無視しても大丈夫程度に思われるのは不服だし、だからと言って狙われたいかと言われればそんな思いはまるでない。そんなちょっと我が儘とも言える二者択一に頭を悩ませていると…司会による入場のアナウンスが控え室に入った。

 

「っと、時間だね。…もし何かあっても、その時責任があるのは無理に呼んだわたしの方。だから、それは気にしなくていいからね」

「……なら、責任を取らなきゃ不味いような何かがないよう頑張るよ。やれる限りは、ね」

 

アナウンスに従い控え室を出る直前、振り返った綾袮さんは穏やかな顔でそう言ってくれた。…そんな事を言われたら、周りの評価だとか危険性だとか関係無しに頑張ろうって思えてくる。だって、優しさには真摯に応えたくなるものだから。

そうして、俺と綾袮さんは多くの人が注目する中ロサイアーズ姉妹と相対し……模擬戦が、始まった。

 

 

 

 

実体刃のナイフと拳銃を使うラフィーネさんは、小型武器の強みである身軽さ、取り回しの良さを活かして素早く斬り込んでいく戦闘スタイル。そのラフィーネさんに合わせるフォリンさんが主に扱うのは大型のライフルで、高い制圧力によって援護や追撃を仕掛けていく。それが三度の模擬戦で見た二人の動きで……その動きは、この第四試合でも変わらない。

 

「てぇぇぇぇいッ!」

「ふ……ッ!」

 

綾袮さんの大太刀と、ラフィーネさんのナイフが激突する。武器そのものの重量と、両手持ちと方手持ちの差で一瞬を経てすぐに綾袮さんが押し込む形になるも、逆にラフィーネさんはその力で身体を回転させつつ拳銃を発砲。近距離から放たれた弾丸を綾袮さんは身を捻る事で避け、同時に霊力の翼を叩き付ける。

 

「ここだ…!」

「そうはいきません…!」

 

叩き付けを避ける為後方へ跳んだラフィーネさんに向けて、俺はライフルを連射。大きく後退するのを阻止して綾袮さんの追撃を助ける意図での射撃だったけど…当の綾袮さんは、フォリンさんからの射撃で回避行動を余儀なくされていた。

 

(しまった…ここは綾袮さんが動き易いようフォリンさんに牽制をかけるべきだった…!)

 

多少後ろに下がられても綾袮さんなら十分追撃出来るのだから、必要性の低い『相手の邪魔』より『相手の邪魔の邪魔』をするべきだった。けれど、それを気付くのがやってしまった後では遅過ぎる。そしてそれを後悔するのもまた、後の祭り。

 

「っとと…気にしないでいいよ顕人君!それより集中集中!」

 

飛び上がる事で避けた綾袮さんは、俺に声をかけつつフォリンさんへ強襲…と見せかけてラフィーネさんに突撃。綾袮さんとフォリンさんの間に割って入ろうとしていたラフィーネさんは、綾袮さんの動きに一瞬目を見開くも、すぐに拳銃を構えて迎撃行動に移る。…そうだ、今は気にしてる場合なんかじゃない…今するのは反省まで、俺は後悔していられる程余裕のある人間じゃないんだから…!

 

「当たらなくったっていい…少しでも妨害になれば…!」

 

手持ちのライフルはラフィーネさんに向けたまま、それまで使っていなかった砲を左側一門のみ稼働。気取られないようギリギリまで砲身は動かさず、チャージ完了と同時に跳ね上げフォリンさんへと光芒を放つ。……が、フォリンさんはそれに対してサイドステップをかけただけ。ラフィーネさんへ火力支援を行いながら最小限の動きだけで避けた彼女は、誇張なしに気にも留めていない様子だった。

 

「……っ…だったら…!…って、落ち着け俺…熱くなるな、綾袮さんの指示を思い出せ…!」

 

その反応に負けるものかと右の砲も動かしかけた俺は、寸前のところで自分が本来の目的を見失いかけている事に気付く。…それと同時に、俺とフォリンさんの間にある、精神面の実力差も。

フォリンさんは…いや、俺以外の三人は、多分熱くなってなんかいない。熱くなっているとしても、それは心だけで、頭は常に勝利への筋道構築とその修正をし続けている。…俺だけが、思考を精神に振り回されている。それが、三人と俺との圧倒的差の一つ。能力とか、知識だけじゃない、経験の差。

 

(…なら、どうする?すぐには埋められない差があって、それがこの模擬戦にも影響してるってなったら、どうするのがベスト?)

 

ナイフと拳銃による機敏な攻撃を長大な大太刀で捌いていく綾袮さん。大太刀の斬撃や刺突をナイフで凌ぐラフィーネさん。微塵も慌てず常に最適な射撃を行い続けるフォリンさん。その三者に、何もかも劣っている俺が、それでも何とかしなきゃとなったら、どうすればいいか。どうすれば、今の俺という存在に意味を持たせられるか。……そうやって考えて、俺が思い付くのはやっぱり一つ。

 

(…まだまだだなぁ、俺は…でも、これが俺の長所である事は変わりない。変わりないんだから……)

 

姉妹が意識しているのは綾袮さんで、綾袮さんはさっきの一件からも分かる通り、多少俺がヘマをしても持ち堪えてくれる。…ならば、俺が多少無茶をしても…きっとそれに合わせてくれる。これは何とも自分に都合のいい考えだけど…もし綾袮さんが俺の評価向上の為呼んでくれたなら、俺が今からする動きも織り込み済みな筈。確証はないけど……綾袮さんが信じられるような人である事は、確信出来る。

 

「…だから、俺は……!」

 

援護を行っていたライフルを下げ、前へ跳ぶ。綾袮さんとラフィーネさんが斬り結ぶ地点へと向かいながら、二門の砲へエネルギーをドライブ。一発分だとか、数発分だとかではなく、砲の許容限界値を叩き出さんとばかりに霊力を注ぎ込んでいく。そして……

 

「──綾袮さんッ!飛んでッ!」

「……!オッケー…見せてあげなよ、顕人君!二人に…皆に!」

「おうッ!」

 

声を張ると同時に床を踏み締め、二門の砲を正面へ。そこで、俺の言葉で、砲から漏れ出る蒼い光で俺が全力の一撃を放つと悟った二人は、俺を注視するけど……もう、遅い。

 

「駆け…抜けろおおぉぉぉぉおおおおおおッ!!」

『……──ッ!?』

 

叫びと共に放つ、全力の光芒。通常の砲撃とはスケールの違う光の柱は空気を裂き、空中だったら体勢を維持出来ない程の勢いを持ってラフィーネさんへと襲いかかる。

とはいえラフィーネさんは格上の相手。驚いてこそいるけれどしっかりと反応をして、先に飛んだ綾袮さんの後を追うように宙へと飛び上がる。……俺の、期待した通りに。

 

「こ、こんな奥の手があったとは…しかし所詮はただの砲撃、射線にさえいなければ……」

「まだ、まだぁぁぁぁぁぁッ!」

「な……ッ!?」

 

ラフィーネさんの飛び上がりに合わせ、俺へとライフルの銃口を向けてきたフォリンさん。けれどその銃口から俺へ向けて弾丸が放たれる事はない。何故なら……放つよりも先に、光芒の腹がフォリンさんへと迫るのだから。

推進器の噴射で身体を回して、照射したままの霊力ビームを近付けていく。……有り体に言えば、それは薙ぎ払い砲撃。この砲を使い始めた当初から考えていて、でも当初は薙ぎ払いが出来る程の時間照射を持続させる事が出来なくて、出来るようになったのもつい最近な大技。まだまだ荒削りで、途切れかけたり反動で身体がブレたりと安定はしないけど……これは間違いなく、フォリンさんに届く……ッ!

 

「フォリン…!」

「っと、そうはさせないよ…ッ!」

 

俺の一撃が自分に対するものではないと気付いたラフィーネさんは、この時初めて明確な敵意を持って俺を睨む。けど、その彼女へ向けて綾袮さんが飛び蹴り。横槍を入れられたラフィーネさんは俺の砲撃を止める事が出来ず…最終的に光芒は、フォリンさんを捉える直前まで彼女に追い縋った。……そう、直前までは。

 

「…どうやら、私達は貴方の力を見誤っていたようですね……」

 

意表を突いた薙ぎ払い。並みの射撃とはレベルが違う、俺の全力。でもそれは所詮、姉妹を驚かせる程度の攻撃。つまり、ラフィーネさん同様フォリンさんにとっても回避不可能な程の脅威ではなくて…光芒が迫った次の瞬間には、跳躍による回避と同時に俺への反撃が飛んできた。

殺傷性を削いだ模擬戦用弾頭とはいえ、当たれば少なからず痛い…というか被弾認定で当たりどころによっては戦闘不能扱いされてしまう。だから俺は飛んだフォリンさんを追う事を諦め、照射を止めて横へと跳躍。一瞬前まで俺のいた位置を弾丸が駆け抜けていき、それが丁度胴体…肺か心臓辺りを通っているのに気付いて戦慄する。

 

「あっぶな…いぃぃッ!?」

「少しだけ耐えて下さいラフィーネ。その間に私が、彼を片付けます…!」

 

ギリギリでも回避は回避。そう安堵しかけていたところへ次々と撃ち込まれ、数秒前とは立場が逆転。何とか反撃を狙っていくも、回避に精一杯でこちらから放った射撃は明後日の方向に行くばかり。流石にある程度の方向は合っているけど…散発的且つ惜しくもない射撃なんて、何の脅威にもなりはしない。…けど……

 

「だったら…もう一度本気を見せて、顕人君ッ!わたしも、全力でいくからッ!」

「……っ!了…解ッ!」

 

綾袮さんの声が聞こえた瞬間、俺は回避から突撃に転じた。拳銃を引き抜き、十八番(と勝手に思っている)の四門スタイルに移行。フォリンさん目掛けて推進器を吹かし、四門纏めて乱射をかける。

俺がその一言で突撃に転じたのは、迷わず俺の言葉に従ってくれた綾袮さんへのお返し。信じた分、信じさせてあげようというただそれだけの事。

 

「うおぉぉぉぉぉぉッ!」

「それが本気と言うのなら…!」

 

全神経をフル稼働させて近付く俺。対するフォリンさんは俺と同様に拳銃を引き抜き、けど俺とは違ってライフルは下ろし拳銃一丁のみで迎撃の射撃を仕掛ける。

そうして乱射しながら突撃をかけた俺と、その場で発砲を続けたフォリンさん。どんどん距離が縮まり、遂に俺と彼女がすれ違った時……展開していた二門の砲には、模擬戦弾による被弾の跡が残っていた。

 

「これであの砲撃は使えませんね…そしてその拳銃も…!」

「しまっ……!」

 

これまでの訓練の賜物か、すれ違った俺は即座に振り向くも…それに合わせて放たれた一発により、拳銃も被弾…つまり使用不能認定へと追い込まれる。

対してフォリンさんはといえば、こちらの攻撃が掠りともしていない。奇策がなければこんなものだと言わんばかりの、純然たる実力差の結果。更にそこからフォリンさんは拳銃を俺の頭へと向け……その瞬間、それまで聞こえていたものとは違う金属音が響いた。

 

「……っ…!」

「……!ラフィーネ…!」

 

俺とフォリンさんの間へ割って入るように飛んできたラフィーネさん。その姿にフォリンさんが驚きを見せ、俺は好機だと思ってそこから後退。下がりつつもラフィーネさんを見ると…彼女の持つナイフの刃が、根元から折られていた。

 

「さっきの音は、あれだったのか…」

「ご苦労様、顕人君。大ダメージは与えられなかったけど…取り敢えず一つ、武器は潰したよ」

「…ごめん、俺は四門中三門やられた…」

「顕人君が撃破されてないなら大丈夫。流れは、わたし達に来てるから」

 

若干雑に着地した俺の隣へ、翼をはためかせた綾袮さんが舞い降りる。俺と違って、綾袮さんはまだ無傷。…確かに綾袮さんの言う通り、俺はライフルが残っただけでも十分なように思える。何せ支援だけならライフル一丁でもある程度は出来るし、切り札の全力砲撃ももう冷静に対処される事間違いなしなのだから。

 

「…すみません、折角ラフィーネが彼女の相手をしていてくれたのに…」

「…気にしなくていい。わたしが後少し持ち堪えていれば、フォリンなら出来ていた」

 

傍らに綾袮さんがいるからか、姉妹も体勢を整えるだけで即座の攻撃は仕掛けてこない。…けれど、綾袮さんが隣にいても今は感じる。はっきりと俺が『敵』と認識されている事を。

 

「…まだ、余力はある?ルールに則って倒すなら、手なんか抜いていられない。持てる手段を全て使う位じゃないと、勝つのは……」

「……ラフィーネ。確かに全力を出さずに勝てる相手でない事は同意です。でも、それは危険が…」

「…………」

 

それから暫く(いっても数十秒程だけど)、睨み合いが続く。向こうは何かやり取りをしているようで、まだ攻めてくる様子はなく、こちらもこちらでまだ相手が二人共十分な体力を残している事が分かっているから、安易に攻め込んだりはしない。だからこそ睨み合いが続き……それは、唐突に終わりを迎える。

 

「……分かった。なら…フォリンに任せる」

「えぇ。では…綾袮さん、顕人さん」

『……?』

「…私達は、棄権します」

『え……?』

 

拳銃をしまって左手を軽く上げ、俺達だけじゃなく司会や刀一郎さん達にも聞こえる声(大きくはないものの、はっきりとした声だった)で宣言を発するフォリンさん。彼女が口にしたのは棄権という言葉。それはつまり……自分達の敗北を認める事。俺達に、価値を譲るという事。

 

「い、いや…え……?」

「流石は綾袮さん…いえ、宮空家の綾袮様。私もラフィーネも感服しました。それに、顕人さんもあの攻撃には驚かされました」

「でしょ?…ってストップストップ!棄権って…また二人共余力あるんじゃないの?というかあるよね?」

「えぇ。ですがこれで四戦目ですし、ここから余力ゼロになるまで戦うのは、例え模擬戦と言えど危険な怪我をする可能性があると思いまして……駄目、でしょうか?」

「あ、あぁ…確かにそれは一理あるね。擦り傷位ならともかく、ここで大きい怪我するのは色々と不味いし……分かった、わたしはその棄権を受け入れるよ。顕人君はどうする?」

「俺?俺は、まぁ…綾袮さんがそういうなら文句はないよ。状況把握に関しても、一番劣ってるのは俺だろうし」

 

突然の棄権宣言に俺も綾袮さんも驚いたものの、理由自体は納得出来るもの。加えて言えばこれは模擬戦で、しかもこちらが勝ちになるなら何ら不満を持つ点はない。…これでどこまで俺の評価に影響を与えられたかは分からないけどさ。

 

「ふむ…ならば模擬戦はこれで終いとしよう。全四戦に参加した者達よ。貴君等の勇姿は勝敗に関わらず、しかと我が目で見させてもらったぞ。貴君等が、そしてこれを見ていた多くの霊装者が、向上心を持ち一層の鍛錬に励む事を、私も宮空の党首として期待している」

 

それから司会の人が終了の合図をかけ、刀一郎さんが締め括って模擬戦は終わりを迎えるのだった。

元から「勉強になる」と言われてはいたけれど、まさか模擬戦を見る側からする側になるとは思っていなかったし、俺にとってこれは初めての『対人戦』だった。こういう形で同じ霊装者と戦う事になるというのは、予想外だった(模擬戦じゃない本当の戦いなんてあっても困るから、初めてが模擬戦なのは幸いだけど)。でも勉強になったのは確かな事で、そこはやはり綾袮さんに感謝しなきゃいけないと思う。……まぁ、これに感謝するのと無茶振りに対しては別の話だけど、ね。

 

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