親父とお袋が亡くなって、それから俺は緋奈と二人きりの生活だった。初めはあまりにも違和感があって、喪失感もあって、自分の家なのに落ち着けないと感じる事が多々あった。けど人間大概の事にはいつか慣れてしまうもので、それから年単位の時間が過ぎた今は二人がいない状態が普通になっていた。
だが、今の俺はまた少しだけ違和感を覚えている。落ち着かないとまでは言わないが…普通からは、ほんの少しだけズレてるような感覚がある。
「んん?…っかしいなぁ、コードはちゃんと繋がってるし、故障でもしたのか…?」
「どしたのお兄ちゃん」
「扇風機が点かねぇ。緋奈、何か知らないか?」
「うーん……わたしも知らない…って、タップの方が抜けてるじゃん……」
「おおぅ、そっちが繋がってなかったのかよ……」
夏休みも段々残りが少なくなってきて、ちょっぴり気落ちする今日この頃。電源ボタンを押したのにうんともすんとも言わない扇風機に首を傾げていると、原因は故障でも停電でも(他の家電は動いてるからその可能性は端からゼロだが)なく、単なる俺のうっかりだという事が判明した。……偶にあるよな、こういう事って。
「もう、しっかりしてよお兄ちゃん。…もしや夏バテ?」
「バテてねぇよ、安心しろ。…バテそうな位毎日暑いから家にばっかいるけどな」
「うん、知ってる」
「だよな…」
何を誇らしげに…とでも言うかと思ったら、突っ込むでも呆れるでもなくただ冷静に頷かれてしまった。……う、うんそれはともかくほんと現代の夏は暑いよな!何かと快適な時代だが、暑さに関しちゃ生まれ変わる前の方がマシだった気がするねっ!
「でも夏バテでぼーっとしてるとかじゃないなら、ほんとにただ気付かなかっただけ?」
「まぁ、シンプルに言えばそうなる」
「…理由もなくそれなら、それはそれでちょっと残念な感じだよお兄ちゃん……」
「言うな妹よ……けど、理由っつーか何つーか…頭をよぎってた事はあるな」
「……それってもしや、妃乃さんがいない事?」
外れていたタップ側のコンセントを挿し込み、改めて扇風機を点けたところで考えていた事に触れる俺。それは何の気なしに言った事だが…一発で内容を緋奈に当てられ、俺は軽く驚きを覚える。
予め言われていた通り、現在家に妃乃はいない。そして同居人である妃乃がいない事が、僅かながら俺に違和感を生じさせていた。
「…緋奈、いつの間に読心術を……」
「いやいやそんな大層なものじゃないよ。もしかしたらそうかなーって思ったものを言っただけだからね?」
「そうか…いやそれでもいい勘してると思うけどな」
心を読んで言い当てたなら間違いなく凄いが、勘で当たったならそれはそれで凄い事。…が、当の緋奈は興味無さ気で、俺の顔を覗き込むようにして追求してくる。
「……まさかお兄ちゃん、妃乃さんがいなくて寂しいとか、妃乃さんがいないと生活に身が入らないとかじゃないよね?」
「は?…いや別にそんなんじゃないっての……ただちょっと『あー、いないんだよなー』って思った位だ。緋奈だってそれは思ってるだろ?」
「うん、それはそうだね。毎日何かしらて話をしてる人がいないんだもん」
「そうそうそういうこった…お兄ちゃんへ変な疑いをかけるんじゃありません」
「はーい。まぁ、それならわたしも安心かな」
「安心……?」
勘違いなのか何なのか、とにかく間違った疑念をすぐに正すと、緋奈の方もぱっと納得してくれてその話は完結。…緋奈は俺がふしだらな人間にならないよう心配してくれてるのかねぇ…。
「ともかく、休みだからって注意力散漫になってちゃ駄目だよ?今のは外れてたパターンだから良かったけど、外してたつもりが繋がってるままだった…ってパターンは何かと危険なんだから」
「分ぁってるっての。てか、緋奈は何様のつもりだー?」
「ひぁっ、ちょっ…ひゃめてよお兄ひゃぁん……」
俺よりしっかり者の緋奈は、こうして俺に注意してくる事も多い。大概は緋奈の言っている通りで、時には自分自身「何やってんだ、俺…」と思う事もあるからそのまま受け入れているが……妙な勘違いされた事もあって、今日の俺は反撃してやりたい気持ちになった。で、その気持ちのまま俺は緋奈の両頬をぐにぐにと引っ張ってみる。
「おぉ、昔と変わらず柔らかい…」
「ひゃから、止めれって〜…!」
「いいや、止めないねっ!」
「なんれ!?」
反撃半分楽しさ半分できっぱりと拒否し、頬弄りを続ける俺。緋奈も緋奈で止めろとは言うものの本気の拒絶をしてこないものだから、余計に止めてやろうという気持ちが生まれてこない。その結果柔らかさだけでなく表情や反応にも楽しみを覚えてしまった俺は、結構な時間続けてしまい……
「うぅぅ…頬が変な感じする……」
「す、すまん緋奈……」
…気付けば緋奈の頬は両方真っ赤になってしまっていた。……何やってんだ俺ぇ…。
「昔も時々お兄ちゃんにはこんな悪戯されたけど、この歳になってまた…しかもかなりがっつりやられるなんて……」
「マジですまん……予想以上に楽しかったもので、つい……」
「…妹で遊ぶのが……?」
「ま、間違ってはいないがその言い方は止めい……」
頬を押さえて座り込む緋奈に対し、俺は謝罪をしたり言い訳したり。一回冷やす物でも持ってこようかと思ったが…流石にそこまでのレベルじゃないってか、それは過剰な対応だよな…?
「むぅぅ……」
「…怒ってるか?」
「……ちょっとだけ」
「そうか…なら、お詫びに何かさせてくれ。或いは何かしてくれても構わない」
経緯や内容はどうあれ、俺は兄としてしょうもない事をしてしまった。ならば何かしらの詫びをするのが責任だろうと、真面目な顔で緋奈へと提案。するも緋奈はきょとんとした表情になって、それから俺に訊いてくる。
「…何か、って…?」
「何でもいいってこった」
「…ほんとに何でも……?」
「あぁ。不可能な事とか法に反する事とかは流石に考えさせてもらうけどな」
「あ、考えてはくれるんだ…それは妹として嬉しいような、むしろ不安になるような……」
九割冗談で言った発言に何とも言えない風な表情を浮かべた後、頬から手を離して考え込む緋奈。それに黙って待っていると、十秒前後考えた緋奈が、おずおずとした様子で口を開いた。
「…じゃあ、やられた分をやり返させてもらおうかな…」
「えぇ、と…まぁやるのは構わないが……俺の頬なんか触って楽しいか…?」
「ふふっ、お兄ちゃん…わたしはやり返すとは言ったけど、全く同じ事をするとは言ってないよ?」
にやりと悪そうな笑みを見せて、緋奈は目で「まさか拒否はしないよね?」と問い質してくる。…若干不安を感じないでもないが……言った以上は、拒否なんて出来ないよなぁ…。
…なんて訳で頷いた結果……俺はぺたぺたと身体を触られ始めた。
「うわ、思ったより恥ずかしいなこれ…」
「…わたしの気持ち、分かった?」
「あ、はい…ほんと反省します……」
左手首の辺りから肘、二の腕と緋奈の両手が登ってくる。頬程ではないものの緋奈は指や手の平も柔らかく、触り(触られ)心地は決して悪くないんだが……妹に触診の如く触られるというシチュエーションが、何とも気恥ずかしくてそれどころじゃない。
(…ってかこれ、緋奈も緋奈で恥ずかしいんじゃねぇの……?)
さっきとは逆の立場…とは言っても、兄が妹の頬を引っ張るのと妹が兄の腕をぺたぺた触るのでは、後者の方が恥ずかしい筈。ましてやふざけてる雰囲気がない分余計に恥ずいんじゃ…と思って緋奈の顔を見た俺だが、いまいちそんな様子が緋奈からは見受けられない。…楽しんでは、いるようだが……。
「…にしても、お兄ちゃんっていい具合に身体引き締まってるよね…海水浴行った時も言ったけど……」
「まぁ、な。これがいい具合なのかどうかは知らないが」
「わたし的に、って事だよ。…そういえば、お父さんもこんな感じだったよね…」
「あー……」
静かに、思いを馳せるように呟いた緋奈の言葉で、俺もふと親父の姿を思い出す。
親父はアスリートでも肉体労働系の職に就いていた訳でもなかったが、学生の頃からやっていたらしいスポーツを趣味として続けていて、それなりにしっかりとした身体付きをしていた。…けど、そうか……今は親父の身長にもかなり近付いたし、自分じゃ分からねぇが顔や声も昔より親父っぽくなってるんだろうな……。
「……お父さん…」
「…………」
「…………」
「……って待て待て…暗くなってどうすんだ緋奈。思い出すや否や俺等が落ち込んでたら、親父やお袋まで落ち込んじまうだろ」
「…そう、だね……うん、今はそういう事がしたかった訳じゃないもんね」
「お、おう…そういうこった…(俺はこういう事をさせたかった訳でもないんだけどな…)」
急にしんみりしてしまった空気を搔き消し、緋奈の視線を過去から今へと引き戻す。その結果緋奈から俺がこういう事を望んだかのような言い方をされてしまったが、まぁ別に誰かが聞いている訳でもないから適当に返答。…望んでねぇよな、落ち込んでる俺達を何も出来ずに見てるだけなんて。
(どうせ取り戻せない過去なら、落ち込むんじゃなく、幸せな日々を過ごせたと懐かしむ方がいい。…そうだろ?親父、お袋)
今という時間へ緋奈を引き戻しておきながらも、俺はその後ももう少しだけ過去へ思いと言葉を向ける。だが一つ言い訳させてもらえるのなら、俺は暗い気持ちで過去を見ている訳じゃない。俺にとってそれは楽しかった事、幸せだったと思える事で、その思い出は今も俺の中で温もりと共に在り続けて……
「…はぁ…腕もだけど、お腹とか胸板も、ほんとにお兄ちゃんは素敵……」
「……え、っと…緋奈さん…?」
「…………あ…」
……数十秒か、長くても数分程度そんな事を思っていた俺。その間俺は全体的に鈍感状態になっていて……気付けば腕を触っていた筈の緋奈の手が、俺の胸元へと添えられていた。幸いというか何というか、流石に服を捲られてるなんてトンデモ展開にはなってなかったが……それでも明らかにヤバい気がする。俺が今来てるの、薄手の服だし。
「……ぇ、あ、えと…違っ、これは……」
「いや、緋奈?ちょっと落ち着……」
「…う、ううううぅぅぅぅぅぅっ……!」
「はぁぁ!?ちょっ…緋奈!?」
はっとした顔で硬直した後、目の前でみるみる内に緋奈の顔が赤くなっていく。そして俺が言い切るよりも早く、真っ赤になった緋奈は何やら呻きっぽい声と共に猛スピードでリビングを走り去っていってしまった。…それはもう、とんでもない勢いで。
「……家の中であんな全力疾走する事あるかよ普通…」
家具や壁にぶち当たりそうになりながらも出ていった緋奈に、俺はもう唖然の感情しか出てこない。突っ込むとこそこかよ…って気がしないでもないが……俺も最初に出てくる言葉が大分ズレてしまう位には、状況やされていた事に驚いているのだった。
*
「……うぅ、む…」
深夜。冷房のおかげで蒸し暑さとは無縁な自室のベットで横になっていた俺は、目を閉じたまま考え事をしていた。
(あれは事故なの、か……)
あれから暫くした後戻ってきた緋奈に、俺は謝られた。謝った上で、緋奈はあれを忘れてほしいと言った。…まぁ、そりゃそうだろうなというのがその時俺が思った事。
(緋奈にゃ悪いが…忘れられないよなぁ……)
あれは事故と形容していいのか…?…というのはさておき、流石に妹からがっつりボディタッチなんかされたら忘れられる訳がない。仲良し兄妹だからセーフ!…と言いたいところだが、そうすると関係性が色々不味い事になりそうな気がする。…それに、もしあれが緋奈の心に渦巻いているものの片鱗だとしたら……そう思うと、忘れるどころかむしろ気が気でない。
「…ほんとはまだ、思い詰めてんのか……?」
そう呟きながら、ゆっくりと目を開ける。夜通し考えるつもりじゃないが…この心境じゃ眠気も起こらない。
両親が死んだのは、もう何年も前の事。二度目の人生である俺じゃなくてもそれ位経てば完全に吹っ切れるだろうし、じゃなきゃ普通の生活なんて出来やしない。…だが、人には個人差がある。表面的には吹っ切れてても、ずっと心の奥底では引きずったままな人だって、世の中にはきっといる。そして、緋奈がそういう人ではないなんて保証は……どこにもない。何せ緋奈は、あの時の緋奈は……放っておいたら心が潰れてしまいそうな程、精神的に弱っていたんだから。
「…………」
気になってしょうがない。不安が頭と心から拭えない。だから俺は考える。俺はどうしたらいいのか。何をするべきなのか。緋奈は、二人の死をまだ引きずったままなのか。考えて、考えて、考えて……俺はベットから起き上がる。
「…ただ考えてたって、分かる訳ねぇよな……」
寝冷え防止の為のタオルケットを退かし、ベットから降りた俺は扉の前へ。どうも緋奈の事になると俺は心配性だな…と内心自分に呆れつつも、廊下へと出て目的地へ向かう。
「……あー、緋奈ー?」
目的地である緋奈の部屋…の前に到着した俺は、緋奈を呼びつつ扉をノック。……が、返事はない。
(…そりゃそうだよなぁ…深夜なんだから……)
気になってここまで来た俺だが、流石に寝てる緋奈を起こして訊こうとまでは思わない。俺もそこまで無神経な人間じゃない。…という事で俺は肩を竦めながら諦め、明日改めて訊こうと思いつつふとドアノブに手を伸ばし……
「…おおぅ……」
…扉が開いてしまった。っていうか、開けてしまった。ノブを回すどころか、半開き状態にまで持っていってしまった。
(……そんなに訊きたかったのか、そんなに訊きたかったのか俺はぁぁぁぁ…!)
自分で自分に呆れる俺。実際のところで言うと、開くかな〜…と思った位の、本当に何となく感覚で捻ったら開いちゃったというだけの話。そして他の家庭は知らないが、千嵜家では寝る時部屋の鍵を締める習慣が基本ない為、ぶつちゃけ開いてしまうのもおかしくはない。
…………。
「……うん、やっぱめっちゃ訊きたいみたいだわ、俺…」
……訂正します。何となく、出来心で開いただけとか言いましたが、やっぱり物凄く訊きたかったのかもしれません。
「はぁ…こりゃちょっと深夜のテンションも関係してるな…これ以上馬鹿な事する前に、さっさと寝……」
「…んっ……」
「……!?」
自省しつつ半開きの扉を閉めようとした瞬間、部屋の中から聞こえた緋奈の息遣い。それにびくりと肩が震え、俺はその場で固まるが……その後反応は何もない。で、恐る恐る中を覗いて見ると…どうやら起きた訳ではないようだった。
(び、ビビったぁ……)
ほっとして胸を撫で下ろしつつ、もう一度俺は緋奈を見やる。薄手のパジャマを着て、僅かに身体を丸めて寝ている緋奈の姿を。
「…………」
別にやましい気持ちがあった訳じゃない。断じてそういう訳じゃないが……数十秒後、俺は緋奈の前に居た。俺より人間が出来ていて、料理を除けばこれといった欠点らしい欠点のない、自分の妹の寝ている前に。
(…これ、状況的には襲いに来たと思われても仕方ねぇよな…はは、実妹にそれは洒落にならん……)
寝息を立てる緋奈のパジャマの襟からはうなじや鎖骨が見えているし、若干ながら捲れてお腹も見えている。緋奈は妃乃程メリハリのある身体付きじゃないが…それでも、兄の贔屓目を差し引いたとしても、十分可愛く魅力のある女子なんだろう。こんな事考えたら両親から怒られそうな気がするが、魅力的だと俺は思う。
だが、そうじゃない。そう思う気持ちがあるのは確かだが……俺が緋奈を大切に思うのは、緋奈に女性としての魅力があるからじゃ…絶対にない。
「……これまで通り、俺はずっといてやるからな。緋奈」
片膝を折って姿勢を低くし、右手で緋奈の頭を撫でる。緋奈を起こさないよう、優しくゆっくりと。
これは俺の勘違いかもしれない。俺が思っているより、緋奈はずっと強いのかもしれない。…けど、それならそれでいい。緋奈が前を向けているのなら、それだけで俺は安心だから。
「けど、何かあったら相談してくれよ?…お兄ちゃんに、さ」
俺は緋奈の力になる。いつだって、何だって、幾らだって。俺にとっては、それ位緋奈が大切だから。…そう心の中で緋奈へと告げて、俺は立ち上がる。さて、ここにいるのがバレると不味いし、さっさと退散するとするか…。
「すぅ…すぅ……」
「…………」
「…すぅ…んっ……」
「…………」
……と、思ったが…目の前にいるのは、気持ち良さそうに熟睡している、可愛い可愛い妹の緋奈。その緋奈を前にして、さっさと出ていくだけでいいのか?……否、答えは断じて……否だッ!
(ちょっとだけならセーフ…阿呆な事はしないで、ただもうちょっと撫でるだけなら、どう考えたって余裕でセー──)
「…んんっ…ふぁ、ぁ……あぇ…?」
「!?」
──緋奈が起きた。まさかのタイミングで起きた。俺がもう一度屈んで頭を撫でようとした瞬間、欠伸と同時に薄っすらと目を開き……目が合ってしまった。…で、俺はどうしたかって?ははっ、そんなの……フルスピードで部屋から出たに決まってるじゃねぇか!
「……あ、あっぶねぇぇ……!」
日中の緋奈を超える速度で、霊力による身体強化も行使しての、全力全開逃走。その上で扉を閉める際には細心の注意を払い、出来る限り音が出ないよう気を付けた後扉を背にして小声で叫ぶ。…ばっちり目合ってたぞおい…けどまだセーフだ、まだこれなら誤魔化せる……!
「…っと、まだ安心していい状況じゃねぇ…撤退するなら無駄なく即座にが鉄則だ…!」
それから俺は自室まで戻り、さっさとちゃっちゃと床に就く。驚いた事もあって全然寝られる感じはなかったが、とにかく寝る事にした。理由は単純。俺が寝ている…少なくとも部屋で横になってるという状況が必要だったから。
そして翌日。危惧した通りに緋奈は昨日部屋に来たかと訊いてきたが、それを俺はしらばっくれる事で来ていないという嘘の結論に誘導し……
「……ねぇお兄ちゃん、さっきも訊いたけどほんとに来てない?」
「来てない来てない。もう全く全然これっぽっちも来てないな」
「ほんとに?」
「ほんとだほんと。お兄ちゃんを信じなさい」
「うーん…じゃあ、やっぱりわたしの勘違いだったのかなぁ…」
「寝惚けて勘違いする程緋奈の頭の中はお兄ちゃんで一杯だったって事だろ。いやー、兄冥利に尽きるなぁ」
こーんな感じに、無事誤魔化す事に成功するのだった。……罪悪感は…まぁ、ない事もない。