ブラック鎮守府提督のthe unsung war   作:spring snow

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 正直軍隊というのはどこかしらで非情にならねばならない時があります。ブラック鎮守府もそういった背景で生まれてもおかしくないのではと思い、この作品を描いていきます。
 十話前後で完結させる予定の作品なので、何となく読んでいただければ幸いです。


第一話

 提督という人間は実に難しい職業である。

 数年前に突如として現れた深海棲艦によって世界の制海権は、人間の手から深海棲艦に奪われた。以来、人類は臥薪嘗胆を決意し、深海棲艦への有効な攻撃手段を探っていた。

 当時、人類が使っていた通常の火薬では深海棲艦にはまるで太刀打ちができず、核兵器を使った攻撃すらも行われたがまるで効果がなかった。これは単純に彼らの装甲が堅いというレベルではなく、攻撃を当てても即座に回復をしてしまうために有効な攻撃にならなかったのだ。

 これでは勝ち目がない。そう人類があきらめかけていたときに発見されたのが艦娘という存在であった。彼女らはどこからか唐突に現れ、人類と協力を宣言し、深海棲艦打倒を掲げたのだ。当初は半信半疑であった人類であったが、彼女らが一方的に深海棲艦を屠る様を見て誰もがその実力を認めるまでになった。

 しかし、彼女らには彼女らなりの問題があった。それは「提督」と呼ばれる人材の欠損である。この存在は人類から選ばれる必要があり、対局を見据えながら深海棲艦を撃滅することを目的としている。人類なら誰でもいいというわけではなく、妖精と呼ばれる艦娘たちをサポートする不思議な生物に好かれる能力が何よりも重要であった。

 そこで軍部は急遽全国の国民にこれらの適性を確認し、提督としての適正のある人物を洗い出した。

 こうして選ばれた人間は軍の士官学校で教育を受けた後に提督として艦娘たちの指揮を執ることになる。

 

 この物語はこうして選ばれた提督のうちの一人の物語である。

 

 

 

 

 

 

 冬が終わり春の訪れを感じる桜の季節。

 舞鶴鎮守府は美しい桜を満開にさせて春の訪れを祝っているかのようである。その桜の元では何人もの少女たちが談笑し合い、外から見た限りではとても微笑ましい光景である。

 しかし、この鎮守府という設備は深海棲艦撃滅を行うべく作られた人類の反抗拠点であり、戦場の最前線といえる地でもある。

 彼女らは艦娘であり兵器だ。内に秘めている殺伐とした現状はこの光景からは想像できないであろう。

 

 そんな彼女らを窓から見つめている人物がいる。

 伊藤一仁中将である。彼は提督と呼ばれる人物で、二四歳という若さながらもその重要性から中将という将官の地位に就いている人物だ。

 しかし、若く提督の適性があるだけではない。彼は軍人としても大変優秀な人物でどんなときでも冷静沈着であり、提督としての適性がなくても軍人として大成したであろうと言われるほどの人材であった。

 

「各艦娘の戦闘記録を持ってきたわ」

 

 やってきたのは秘書官の叢雲だ。

 

「ありがとう。そこに置いておいてくれ」

 

 彼はそう言って、彼女らを見続ける。

 

「何、あんたあの子たちを見て何考えてんの? 変なこと企んでるんじゃないでしょうね!」

 

「違うよ。昨日のことでな」

 

「昨日……」

 

 叢雲は昨日あったことをありありと思い出すことができる。

 

 あれは演習を行ったときのことだ。彼女らが同じ艦隊内にいて別の鎮守府の艦隊と訓練を行った際に彼女らは指示と違う動きをし、結果惨敗を喫したのだ。

 無論、彼女らは反省をしていたのだが、帰ってきた彼女らに対し、提督は怒鳴りつけたばかりではなく、今後の訓練メニューを大幅に増やすほどの厳罰に処したのだ。そのあまりにも厳しすぎる対応に艦娘内からも疑問の声は上がったが彼はそれを頑として受け入れはしなかった。

 

「あれから変わりはないか?」

 

「ええ。特に文句は言わずに訓練はこなしているわ」

 

「良いか、俺がそう言っていたことは誰にも言うな」

 

「分かってるって」

 

 叢雲はいつものことだと言った。この提督は不思議なことに艦娘に対し根は優しいことにもかかわらず、叢雲以外にそれを見せようとしないのだ。むしろ外見は冷たく当たり、彼の評価を下げる原因にもなっている。

 

「あんた、その性格どうにかしないと本当に問題になるわよ」

 

「……」

 

 叢雲の忠告を聞こえなかったのか聞く気がないのか、無言を貫いたまま彼女らを見続けている。

 しかし、その瞳は冷たいものではなく、愛娘を見るような父親の目であった。

 

「全く素直じゃないんだから」

 

 

 

 

 伊藤は自分自身に課せられた任務に対して考え続けていた。

 任務は日本の海上交通路を確保すべく、フィリピン周辺の制海権を取り戻すことである。しかもこれには条件があり日本の資源が持つのが後一年ほどしかないため、それ以降は戦闘が不可能になると言うことであった。つまりタイムリミットは一年。さらに悪いことに、これには大きな困難が予測されていた。

 決死の偵察の結果判明した敵勢力として、フィリピンには飛行場姫が確認されておりその周囲には強力な深海棲艦の艦隊が配備されていることが確認された。

 そこで大本営としては各鎮守府の艦隊を終結させ、これを撃滅する任務を担うこととなった。とは言っても各鎮守府ごとに任務は違い、ここ舞鶴鎮守府はこの飛行場姫本体の撃滅を担当している。

 他の鎮守府の艦隊がやってくれるのはその周囲に配備された本当に強力な部隊のみであり、舞鶴鎮守府が担当する敵は生半可な数でない上練度もそれなりに高い敵であった。

 伊藤はそれらの状況を冷静に分析し何度も机上演習を重ねたが、勝てる可能性のある手は一つしかなかった。

 

 それは囮艦隊に敵周囲の艦船をおびき出させている間に本隊が敵の飛行場姫を撃滅する。

 

 しかし、これには大きな問題点がある。囮艦隊はほぼ生還率はゼロであると言うことであった。軍人の上官であるなら部下の命を守ることは絶対である。しかし、これ以外に勝率はない。しかも日本の命運をかけた戦いである。

 彼にできることにはその囮艦隊に編入する予定の艦娘たちに様々な知識、技術をたたき込み、1%でも生存率を上げることだけであった。

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