コードフリート -桜の艦隊-   作:神倉棐

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第肆話 目が覚めたら平成だった件について

第六駆逐隊入港後に御国夏海が鎮守府内にある医務室に救急搬送された後、彼女達の提督でありこの佐世保鎮守府の主である七海の判断により艦隊帰還前の鎮守府に居た者(帰還した第六駆逐隊と妖精さん達)には一先ず箝口令が敷かれそして今、その鎮守府の一室である提督の執務室には七海と今回の件の発端となった響の2人が居た。

 

「さて……、じゃあ説明をして貰えるかな響。今回の件について」

「勿論、嘘偽りなく言うよ。『帝桜に誓って』」

「……そう、分かりました」

 

響が口にした『帝桜に誓って』の『帝桜』という言葉は彼女達が掲げるとある1枚の艦隊旗を示す。かつて彼女達帝国海軍の支柱であり数多くの将兵から信頼と忠誠を受けていた人物が掲げていた『奇跡』の御旗、故にそれは彼女に、彼女達にとって最大の誇りであり、希望であり、そして何よりも大切な絆の証である。

そしてそれは響とて例外ではない。かつて響は他の松型駆逐艦4隻と海防護衛艦4隻と共に第二次大戦後、復興の為の資金繰りの困難に直面した政府に大半の装備が取り外された状態で旧ソビエト連邦に売却されている。その際その中でソ連まで回航された彼女は船員達の願いによってかつて御国艦隊に所属した証でもある駆逐艦用の艦隊旗を掲げたまま回航され、そしてそれはソ連に引き渡された後もソ連海軍の配慮もあって彼女が標的艦として沈むその瞬間までそのマストに翻り後に碇と共に日本へと返還されている。そんな過去もあって彼女、響にとってその旗に誓うという言葉は何よりも重い意味持った。

 

「単独直入に言うよ、彼は『御国(みくに) 夏海(なつみ)』海軍中将だ」

「…………………はい?」

「彼は75年前に私達再編第二艦隊と特別編成艦隊を率い連合国海軍と戦い乗艦だった大和と共にアメリカ艦隊(エセックス)と刺し違えて沈んで逝った第2艦隊司令官長官、司令のご先祖様である御国(みくに) 夏海(なつみ)長官その人だよ」

「………………」

 

だが、だからと言って彼女が言った事実をすぐに受け止められるとは限らない。寧ろその内容からしてそれを一発で信じるような人物はまともではない。だからこそ一度その言葉を正しく理解する為にそこで七海の動きが止まった。普段は身に染み付いた礼儀正しく名家の御令嬢の名に恥じぬ丁寧な所作に中性ではあるがどちらかと言えば女性的な顔立ちでありながら凛と少し冷たさを感じさせる容貌でありその美貌から軍内外での人気は高く同性からも高い支持を受ける彼女だが、今はやや鋭めな目(尊敬する人物の血を引いているのを自覚出来る嬉しさもあるが若干彼女のコンプレックスでもある)を見開き、何時もなら軍帽の下にあって見えないがまるでレーダーアンテナの様にくるくる回ったりぴょんぴょん跳ねたりと表情より遥かに感情表現が矢鱈豊かな1本のアンテナ(アホ毛)、もとい対空レーダーもが天に向かって直立したまま固まっている。つまり今彼女はそれだけ驚いていると言う事だった。

 

「……それは確実なのよね?もしそれがそうだったとしたら私だけじゃ手に負えない大問題になるのだけれど……」

「勿論自信を持って彼は長官なのだと私は言える。若い頃……と言っても既に30歳位だったけど出会った事があるから」

「そう……でもそれだけじゃ確証には至らない。夏海さんの写真なんて何故か殆ど残ってない、辛うじて残ってるのは士官学校卒業時や太平洋作戦直前に撮ったと思われる聯合艦隊総司令部メンバーの集合写真や天一号作戦前の1枚、それも白黒写真しか無い。……曾祖母様か祖母様の遺品を整理したら家族写真の一枚二枚が見つかるかも知れないけど管理はお父さんとお母さんがしてるし従伯叔父さんの遺品(三笠長剣と甲種三笠短剣)とかの殆どは日天神社に奉納されてるから簡単には確認出来ないし……」

 

七海は思わず頭を抱えてしまった。さっき言った通りだがもし響達が拾って来た【来訪者】である青年が自分の先祖である例のあの人だった場合、この件は士官学校を出て2年程度の僅か24歳の彼女には荷が重過ぎる問題である。それは彼が本来あの海戦、坊ノ岬沖海戦にて大和と共に沈んだ筈の死人である事以上に今の戦後の彼は『戦犯』となっているからだ。

 

 

戦前、日米講話が成立する1ヶ月前の10月中頃に中立国であったスイスを通じて陸海軍上層部の一部と政府はアメリカとの講和条約締結に向けての話し合いを続けていた。その中で日本はアメリカから掲示される条件、連合国(アメリカ)主体の民主化及び大日本帝国軍の解体再編と終戦後50年間の連合国駐屯部隊(在日米軍)の日本所有基地使用許可と言う事実上の降伏に近い条件の9割を飲むがその中のひとつ、戦後ハワイにて行われる極東軍事裁判にて裁かれる容疑者引き渡しリストには当時大日本帝国に於いて唯一主権を持つ昭和天皇の名前と天一号作戦により坊ノ岬沖で戦死した御国夏海の名前が明記されていたのだ。無論、これはあくまで講和であって敗戦ではない事から国主である天皇や国民意志の代表者である首相でも軍を実際に統括する陸海軍大臣でもなければ大本営の参謀総長でも軍令部総長でもない今はただの一将官(中将)であり最早英霊となってしまった英雄である男を犯罪者にする訳にはいかない政府や軍部からは引き渡しにおけるリストからの削除・撤回を求め日米間の話し合いは平行線を辿る事となる。

が、10月下旬に米国が支援していた中国国民党が中国共産党に押され更にソビエトによるロシア侵攻が目前に迫る事が判明した事により米国が折れ譲歩案が日本側へと提出される事となった。

その内容は、

 

『日本帝国における国主、天皇に対する戦争責任は今後一切責任を問わず他国にも問わせない事とする

但し、大日本帝国海軍海軍中将である御国夏海に対する戦争責任及び戦争犯罪については一切の反論を許さず、その身柄の引き渡し及びこの断罪は断固として実行されるべきものとし以上の要件が認められぬ場合はこの譲歩案は撤回される。尚、海軍中将御国夏海に対し掲示される罪状は以下の4つである。

 

1つ、日米開戦前からハワイ真珠湾への奇襲攻撃等の対米作戦の準備を進めていた事

2つ、ハワイ真珠湾攻撃の際にオワフ島の市街地への無差別爆撃を指示した事

3つ、1942年から1945年10月現在まで国際条約にて攻撃を禁じられた非武装の民間船及び避難船、病院船を無警告で撃沈した事

4つ、米軍の投降者や民間人を一方的かつ無差別に虐殺した事

 

以上』

 

と言うものだった。だがどう読み取っても明らかに冤罪であるこの要求に政府と海軍、そして更にあの海軍嫌いである筈の陸軍までもが反対しこの要項の更なる撤回を求めたが数多もの艦艇や航空機、将兵を御国に水面の底に引きずり込まれ更には大西洋艦隊の回航直前であったパナマ運河と完成間近だった原子爆弾のあった原爆工場と完成し輸送中であった重巡洋艦までもを破壊・撃沈されたアメリカも舐めさせられ続けた辛酸と屈辱、恨みから撤回を認めず再び両者譲らずの平行線を通り越し御破算となる一歩手前の一触即発の事態にまで発展し掛けるがそれもアメリカが切り出した1枚の札により日本側は口を噤まざるはえないものとなる。アメリカは未だ南方海域、レイテ島・ルソン島・フィリピン等の多くの島嶼(とうしょ)に取り残され立て篭り、懸命に戦い生き残っている陸軍将兵約50万の生命を日本側の目の前にチラつかせてきたのだ。

 

 

沖縄を、陸軍三二軍を、その生命を持って日本を救った戦神たるたった1人の軍人の男の成した数多もの奇跡を、そしてその名誉を取るか

 

それとも

 

祖国から遥か遠く、彼方にある南の島嶼にて生命を賭けて生き残ろうと祖国に帰ろうと諦めずに戦い続けている50万もの人命を取るか

 

 

究極の二択に日本側は暫しの沈黙の後、一度相手に譲歩させた以上それ以上の譲歩は望めぬ事を理解した彼らは涙を飲み握り締めたその掌から血が零れ落ちようともたった1人の男の名誉ではなく50万もの国民の生命を救う事を選び、そしてその日から約1ヶ月後の1945年12月8日。奇しくも太平洋戦争が真珠湾攻撃により幕を開けた丁度その5年後のハワイ本島真珠湾(パール・ハーバー)、その日その場所にて日米講和条約は締結され5年に及ぶ世界を巻き込んだ大戦は幕を閉じた。

そして故御国海軍中将を中心に数人はハワイにて開かれた極東軍事裁判にて有罪判決を受け銃殺刑により処刑、靖國神社へ戦没者として英霊として合祀される事も冥福を祈る筈の戦没者慰霊碑に名を刻む事すら許されぬ世界平和を乱した世紀の大罪人、『戦犯』としてその歴史に名前を刻まれる事になる。だから唯一御国の名を入れずほぼ無名のまま日天神社に奉納した彼最大の遺品である三笠長剣と甲種三笠短剣の2つだって見逃されているがかなりアウトに近いグレーだったりする。

が、その歴史の裏の話も今になって問題となっていた。そう、昔彼と供に祖国を守る為に戦い沈んだ艦娘達とそれに触発された最初からその訳は理性では理解していたが納得は出来ていなかったかつての部下達であり現在存命であった各界の重鎮達の存在である。そんな事情を僅かながらに知っている終戦後最後まで生き抜いた艦艇達や涙を飲んだ上層部はともかく事情を詳しくは知らない部下達や途中で沈んでしまった艦艇の艦娘からすればそんな事知った事ではない、しかもそれを更に煽るように世間には御国夏海を貶す存在(アンチ)が一定数存在する事や戦場での事実でなく事実無根の嘘の話まで出回っている事から彼女達が現れて直ぐの戦線が切迫していた黎明期は我慢していたようだがなんとか本土防衛網の敷き直しが終了した最近は今は少ないが艦娘側からの協力が必要最低限以外は非協力的になってきたり提督に転属願を出し指揮下から離脱し横須賀鎮守府に来たりする艦娘も後を立たなくなってきている。そしてそれが集まってできた艦隊こそが聯合艦隊総司令長官預かり(・・・)の『特別編成第二艦隊』であり『亡桜の艦隊(ロスト=カローラス・フリート)』である。しかもこの艦隊は所詮聯合艦隊総司令長官の預かりものであり指揮下にある訳ではない為、実質彼女達を指揮する者は居らず現在は艦隊旗艦を務める大和が指揮官代理として艦隊を纏めている(手綱を握っている)状態であり、そうする事で漸く軍統合司令本部は日本の戦力を掌握できているのが現状である。

がそれが今彼が生き返ったと広まれば日本、いや世界がどうなるか………下手を打てば人だけでなく日本各地にある鎮守府や警備府、要塞港に所属する艦娘のそのほぼ9割が彼の元に馳せ参じ、ついでとばかりに内乱や反乱が1つや2つ勃発してもおかしくはない。それだけ今の現状は彼女達にとって不満や反感を募らせてしまう状態なのだ。

 

コンコン、とそこで思考の海に浸かっていた執務室に扉をノックする音が響き渡り顔を上げた2人の前の開いた扉の先には白衣を着た工作艦 明石(あかし)が立っていた。

 

「……入って」

「失礼します。提督、少しお話がありまして……」

「如何したの明石?今ここに来たって事は彼の手当てが終わったって事なのだろうけど」

「はい、その報告について来たんですが不可思議な事に着ていた軍服は帝国海軍時代の第2種軍装の本物(・・)でしかも残っていた破損箇所、恐らく何らかの破片が直撃ないし掠ったのだと思いますがその規模と身体に残っていた怪我の大きさが一致しません(・・・・・・)。また出血は確認出来ますがその血糊の下にある筈の傷の7割が修復、塞がっている場所もありまるで死なない(・・・・)程度に(・・・)身体が勝手に(・・・・・・)修復された(・・・・・)ような感じなのです」

 

明石からの報告・説明に聞いていた七海と響は再び考え込む。先程からの話と合わせて何処か作為めいたものを感じる。妖精さん達が招いた【観測者(ゲイザー)】と言う平行世界からの【来訪者(ビジター)】達や【来訪者】が語ったとされる別の歴史(・・・・)から照らし合わされ浮上した過去にも在たとされる未来の分岐をズラした【特異点】と呼ばれる存在は一定年齢(20代前後の全盛期)まで肉体が若返っていたと言う証言もあるらしい(国家特A級機密だったりそもそも記録が無いのもあり今の彼女では触れられない為あくまで噂でしかない)が流石に死人が蘇ったと言う事はない。過去の死者が生き返るなんて世界に喧嘩を売ってる(妖精さんの謎能力が既に喧嘩売ってるのは気にしない)としか思えず、見方によればそれは何処かの聖書にある救世主降臨の再現そのものである。

 

「あと……」

「……まだあるの?」

 

既にその事態の重さに十二分に頭が痛くなってきていた七海に追い討ちを掛けるように明石は言いずらそうにではあるが更に口を開いた。

 

「はい、ですが……その一応カルテと報告書を作る一貫に血液型検査のついででDNA検査もしてみたんですが七海提督とあの青年のDNA遺伝子情報型には所々、と言うかかなり類似する点が多くてですね。恐らく七海提督の血縁関係者……つまり御国一族の誰かだと思うんですけど……それも結構近い」

 

そしてその言葉は彼女の今後についての行動に関して決断させる事になる。もう明らかにこれは彼女の手には負えない、しかも下手に外部、軍にも世間にも漏らせない最重要案件であると。

 

「…………もうお父さんとお母さん(御国本家)に判断を仰ぐしかないなぁ……大淀、特別秘匿(私の家限定の)回線は用意出来る?直ぐに」

 

七海はため息を吐きながら執務机にある電話の受話器を手に取りまだ発令室にいるであろう大淀に電話を掛ける、提督の突然の要求に驚いた大淀だったがすぐさま盗聴等の防諜対策が一番高く施された妖精さん特製の特殊な回線を執務机の電話に繋いだ。

 

「もしもし、お父さん?」

『七海か?突然どうした、軍の第1級秘匿回線なんか使って何があった?』

「……私の手には負えない事が起きて」

『ふむ……、こちらにも情報は入ってきているが【来訪者】の件か?何があった?』

「…………【来訪者】の正体が御国夏海中将本人の可能性が高いの」

『……はっ?』

「だから今回の【来訪者】が私達からすれば御先祖様である御国夏海中将な可能性が高いの!」

『……えっ、はぁっ⁈』

「本当、私の艦隊の指揮下にいる響の証言とDNA検査からほぼそれは確実、後は本人から話を聞けば本当に本人かは分かるだろうからこれから確定かどうかは決まるけど」

『…………』

「だからこれからどうすべきか相談しようと思って電話を掛けたんだけど……どうすればいい?」

『……ともかくこの後の予定は全てキャンセルして分家の当主や関係者を集めて会議を開く、今は取り敢えず軍への報告はできるだけ先延ばしにして情報が漏れないよう気を付けろ。夜にはまた連絡する』

「分かった」

『……頼むぞ、根回し無しにこの情報が下手に漏れれば日本が終わりかねん』

 

そうして電話は切れる。この後七海は更に鎮守府全体に厳重な箝口令が敷き直され、彼女も響と明石を連れて直接この件の中心人物である青年の状況を確認する為医務室へと向かいそしてこの後思いにも寄らぬ予想外の出来事に遭遇する事となった。

 

 

 ❀ ✿ ✾ ✿ ❀ 

 

 

「えーと……、大丈夫かね?君?」

「うっ、はいっ、ぐすっ、大丈夫、です、ぐすっ」

 

銀髪の少女が漸く落ち着き冷静さを取り戻したのは彼女が俺に飛び込んでからおよそ十数分後の事だった。

 

「ぐすっ……、司令このまま自分で身を起こしているのは辛いと思うから、少しベッドを起こすね」

「あ、ああ、ありがとう……」

 

先程から俺の事を『司令』呼びをしている銀髪の少女が気を利かせるようにベッド下にあったハンドルを回す事で傾斜を調節してくれる。確かに楽にはなったが一体彼女は誰なのだろうか?ただ何処かで見た事のあるような気もする。

とそこで1度思考をリセットし一先ず事態を把握する為に入り口にてずっと此方を見て立っていた2人の女性、白衣を着た桃色の髪をした女性と海軍第2種軍装にそっくりな白い軍服を着た黒髪の女性へと目を向ける。女性が軍服を着ている事に強く疑問を感じない訳ではないが一先ず現状で1番情報を握っているであろう彼女へと声を掛けた。

 

「ところで今の現状の説明を頼みたいんだが……」

「え、あ、はい。分かりました。えっと………まず初めに確認したいのですが貴方のお名前は……」

「夏海。御国 夏海という者だ。海軍中将で特別編成第二艦隊の司令長官をしてい……いや、いた(・・)者だな」

「やっぱり……え?いた(・・)ですか?」

「ああ、軍機で詳しくは話せないが……な」

 

艦隊を構成する艦艇のその9割を喪ったのだ、そんな指揮官が何時までも司令官としていられる訳がない。もしそうでなくとも壊滅した艦隊は最早艦隊ではなく司令官というものも意味を成さないのだから似たようなものだろう。

俺の答えに驚いた様子を見せた彼女──階級章や肩章から中佐であり右肩から吊るしている飾緒からして誰かの副官であろうと思うが階級章と飾緒にあんなデザインのものがあったのかと疑問に思う──だったがそれを聞いて何処か深刻そうな覚悟を決めたような顔をして俺の目を見る。

 

「えっと、あの……にわかに信じられないでしょうが、色々と説明しなくてはならない事がありますので(いち)から話しますね」

 

彼女は俺の前まで進み出てくると今俺が1番欲している現状について話し出した。

 

「まず、今の年号は昭和20年の1945年8月15日ではなくその75年後の2020年4月7日、平成32年です」

「平成……」

「そして今世界の海は『深海棲艦(しんかいせいかん)』と呼ばれる正体不明である謎の存在に支配され全ての大陸、島嶼が孤立を余儀無くされています」

「深海棲……艦?」

「こちらは言葉で説明するよりも直接見て頂いた方が早いですね。明石、パソコンの画面に資料を出してくれる?出来れば分かりやすい物を」

「はい、分かりました。では此方を……先の海戦時に偵察中だった機体が撮影に成功した航空偵察写真です、異様に黒い装甲を持った戦艦と空母、そしてこちらに映った艦橋と思われる場所に立つそれぞれの女性型制御中枢体に対し海軍が名付けた識別名称は『戦艦ル級』と『空母ヲ級』となります」

 

明石と呼ばれた桃色の髪の女性がパソコンの画面を此方に向けそこに映る2隻の軍艦と2人の女性の姿を見せる。

そこに映っていたのは70年位前、いわゆる前世に己もまた「提督」として艦隊を運営していたオンラインゲーム『艦隊これくしょん(艦これ)』に出てくる筈の敵役の姿そのままだった。

 

「…………」

 

そしてその時俺の顔は一体どんな表情をしていたのだろうか?笑っていたのか、あんぐりと口を開けて驚いていたのか、それとも特に変わらない無表情だったのか……おそらく司令官として感情を表情に出さない習慣と麻酔のせいでそれ程表情筋が仕事していない事も相まって後者であるとは思うものの自信はない。

強いて呟けた言葉はただひとつ、

 

「…………なんでさ」

 

ただそれだけである。

 

 

 

 

拝啓、転生させて頂いた八百万の主神 天照大御神様。死んだ筈がいつの間にか世は昭和から平成になっていてどうやら今度の戦いは人が相手じゃなく深海棲艦が相手らしいですがこれは罰ですか?説明して下さいお願いにします、本当にマジで。

 

 

夏海はあまりの状況の変化に天を仰ぐしかなかった。

 




付箋メモ
▪︎名前:御国(みくに) 七海(ななみ)
▪︎所属:日本海軍/階級:特務中佐
▪︎年齢:24歳
▪︎誕生日:1996年12月5日
▪︎身長:167㎝/体重:59㎏
▪︎特技:体を動かす事、お菓子作り
▪︎好きなモノ:読書、艦娘、家族、御国 夏海
▪︎嫌いなモノ:軍過激派、ブラック提督
▪︎見た目:
【挿絵表示】

▪︎備考:御国グループ御令嬢であり海軍士官学校第3期特殊艦隊指揮官養成科卒業生、2つ上の兄が海軍内部に居る

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