あの幻聴が聞こえてくるまでは……。
頭空っぽにして気楽にどうぞ
俺は普通の高校生”のはずだった”。
周囲にやたらとトリックを使った殺人事件や月一くらいで銀行強盗が発生するが、それは俺とは何も関係がないはずだ。
さらに言えば幼馴染に高校生探偵がいたり、探偵の父親を持つ娘がいたりするがそれは俺とは直接的な関係はない。
そいつらと旅行に行ったり出かけたりすると呪われたかのように事件が発生するのは俺とは何も関係が……ないといいなぁ。
俺の頭じゃ事件の捜査なんてことはできるはずもなく、高校生探偵の後ろでもう一人の幼馴染と一緒におろおろしているうちにその探偵が鮮やかに事件を解決していくのをただ見ているだけの傍観者というか目撃者の立場だった。
それがどうしてこんなことになったのか。
たまたま行った喫茶店で事件が起こり、いつものようにさくさく初動捜査を済ませいつものようにやってくる目暮警部に報告して事情聴取を済ませたあとに俺にこう聞くところまでが毎度毎度の流れというかお約束になっている。
「なぁ、いつものようになにか思いつかないか?」
「毎度毎度このムチャぶりってどうなん?」
例の高校生探偵で俺の幼馴染の一人である工藤新一が俺に尋ねてくる。
俺の何倍も頭が切れてスパスパ事件を解決していく新一が俺に事件の手がかりを求めるのにはもちろん理由がある。
事件のヒントになるようなことや証拠のありかなんかを俺が新一に教えているからだ。
新一やもう一人の探偵の娘である毛利蘭には勘としか説明していないが、実態はそんなものではない。
勘であればどれだけよかったことか……。
あ、来た……。
\ウゥウ――!ウゥウ――!ウゥウ――!/
ネネネネェェェクストコナンズヒーントゥ!!!
『喫煙席』
これが原因である。
こんなの誰にも話せるわけねぇだろうが!
大体コナンってなんだよ!!
ヒントじゃなくて答え教えろや!!
そうすれば俺だって高校生探偵に……やっぱやりたくねえや。幻聴を頼りに犯人を捜すとか怖くてできねえし理論立てて説明することなんてできない。
というか幻聴が当たってる保証なんてない。どんな天才だって間違えることがある。幻聴が間違えるってなかなかのパワーワードだと思うけどとにかく探偵役なんて無理無理。
ちなみに俺の予想だとこの幻聴は亡くなったコナン・ドイルの幽霊が難解な事件のヒントを霊感があって相性のいい人間に対してささやいてるというちょっとホラーな推論を立ててみた。
…
……
………
…………ねえよ。
どんだけはっちゃけてるんだよコナン・ドイル!!
そもそもイギリス人なのに日本語でヒント出してるじゃねえか!!
てか俺霊感なんてかけらもねえよ!!!
肝試しとか幽霊より虫のほうが怖いし、肩が重くなるとか金縛りとか一切経験ねえし訳アリ物件でも安いからラッキーくらいの感覚だよ!!!
なんでこんな幻聴が聞こえるようになったんだ……。新一に聞かせてやれよ、わざわざ俺を通す必要ないだろうが。
「おい、ぼーっとして何か気になることでも見つけたのか?」
「ん、ああ、喫煙席がちょっとな」
毎回毎回こうやって推理は新一に丸投げしてるわけである。
新一はちょっとしたきっかけでもあれば事件解決までの道のりは早い。
たぶん俺がヒントを教えなくても事件を解決できるだろう。
「喫煙席……そうか、そういうことだったのか」
ほらね。
「犯人が分かりましたよ目暮警部」
「本当かね工藤君!」
あとは見ながら感心してるだけでこの事件は解決っと。
事件も解決し事情聴取に付き合わされた帰り道。俺は新一に気になることを聞いてみた。
「なあ新一? 『コナン』って聞いてコナン・ドイル以外に何か思いつくか?」
「なんだよ突然に……んー、俺の思いつく限りではホームズの生みの親であるアーサー・コナン・ドイルしか出てこねえなぁ」
「だよなぁ……そのコナン・ドイルって日本語話せると思うか?」
「どうだろうなぁ、ある程度日本に対して関心はあったようだけど日本語を話すことができるほど精通していたかどうかは怪しいな。たぶん話せなかったと思うぜ」
「だよなぁ」
どうやらこの謎は迷宮入りやむ無しかもしれない。
ネクストコナンズヒントが面白くて書いてしまった。
たぶん続きません。