問題児たちが異世界から来るそうですよ?―笑う自由人― 作:カゲショウ
ジン「えっと、よろしくお願いします」
剣士「どうやらゲストの皆さんはオレに自己紹介されるのが嫌な様ですがします。第五回のゲストは我らが"ノーネーム"のリーダーでちびっこで若干頼りなさげなジン=ラッセル君です」
ジン「この紹介から僕がリーダーであるかどうか凄く心配になってきました」
剣士「やっぱり最終的に必要なのは自信だと思うんだ(キリッ)」
ジン「自信……ですか……。確かにそうですね。何事も自信が持てなかったら上手くいきませんからね」
剣士「う、うん。そうだね。そこまで理解できるなんてジン君はエライナー」
ジン「ご指導ありがとうございます」ペコリ
剣士「そういえばジン君って黒ウサギと仲良いよね。何か秘訣でもあるの?」
ジン「秘訣なんてないですよ。それに黒ウサギにはとてもお世話になっていますので僕たちが負担を減らせるように努力しているところです」
剣士「へ、へー。それじゃああの無駄にエロい格好に下心とかはないと」
ジン「はい。下心を持って黒ウサギと接するなんて黒ウサギに対して失礼ですから」
剣士「すいませーん、ツッコミ役一名お願いしまーす!」
ジン「ど、どうしたんですか!?」
剣士「ジン君純粋すぎるだろ! 此処はボケとツッコミの応酬する場所なんだよ! もう一つ言わせてもらうとすいませんでした!!」
ジン「え? え?」
剣士「君はこれからジン=ラッセルではなくキリスト亜種と名乗りなさい」
ジン「それは名前じゃないですよね!?」
剣士「そう! オレはそんなツッコミが欲しかったんだ!」
ジン「そ、そうなんですか」
剣士「これでジン君も一つ大人の階段を登ったな……」
ジン「は、はぁ……」
剣士「それでは今回はこのくらいにしておこうか」
ジン「もうすぐ本編が始まりますね」
剣士「次回のゲストはラブリーエンジェルリリちゃんですやっほーい!」
ジン「きゅ、急にテンション上がりましたね……」
剣士「当たり前だ。リリちゃんだぞ? テンション上がるに決まってるだろ?」
ジン「そ、そうなんですか……」
剣士「それじゃ、本編の方をどうぞ!」
暗闇が支配する部屋で機材の明かりだけが淡く光を放っていた。
目の前は良く見えない。自分が今どこに立っているのかもよく解らない。
ポタポタと水が落ちる音がした。
直ぐ近くだ。何処だろう? 水を止めないと……。
一歩踏み出す。ビチャッという音がしたので二歩目を踏み出さずに止まる。
下を見る。黒くて良く見えない。
しゃがんでその液体に触れてみる。ヌルッとした。
何だろう? そう思って触れた手を顔の前に持っていく。
薄明りに照らし出されたそれは赤黒い色をしていて鉄くさかった。
当たりを見回してみる。この液体が漏れ出してるところを探そうと思った。
「ひっ……!」
だが、それは地獄絵図を示す道標でしかなかった。
薄明りで照らされた室内をよく見ると何かが重なって山を形成していた。液体もそこから流れている。
何か、という表現でごまかせるものではない。
死体の山だった。
死体が重なり合って山を形成し、そこから赤黒い液体――恐らくは血液だろう――が大量に流れていた。
「あ……ああ……」
あまりに残酷な光景に思わず顔を両手で覆う。頬がヌルッと液体で染まる。
「ああ……あぁあああああああああああああ!!」
そして思い出す。これを作ったのは自分だと。
□■□■□
目の前に倒れている虎の怪物――ガルド=ガスパーを見る。
全身から白銀の十字剣が生えているように突き刺さり血が流れ出している。
「……」
何だろうな、この気持ち。
仕方なかった。こうしないと三人が危険だった。だけど殺す必要があったのか? もしかしたらガルドを助けられる方法があったんじゃないか?
心の中でそんな声が何度も何度も響く。
三人を守れたという達成感と、ガルドを助けられなかったという後悔が渦巻く。
「あー……。重いな、これは……」
自分で背負うと決めたこの罪は覚悟しても重く心にのしかかる。
「剣士!」
後ろから慌てた様子で声を掛けられる。春日部だ。
後ろからはジン君、久遠、そしてゲームが終了したから入れるようになったからか黒ウサギと逆廻が続いて部屋に入ってくる。
予想道理といえばそうなのだが、久遠と春日部は不機嫌そうにしている。ちょっと意外だったのは久遠が不機嫌そうにしているだけだということだろうか。
「皆さんおそろいでどうしたんですか?」
「貴方がゲームをクリアしたんじゃない。功労者を祝いに来てあげたのよ」
腰に手を当てて少し威張ったように久遠が告げる。その行動に思わず唖然としてしまう。何故って? そんなの久遠のことだから抜け駆けしたことに文句でも言うかと思ったからだよ。
「おいおいお嬢様、随分と驚かれてるみたいだがどうすんだよ」
「そこまで驚くことかしら?」
「まぁ、今までの飛鳥と剣士のことを思い出すと無理もないと思うけど」
「そこまで酷かったかしら……」
何も言わず三人のやり取りを見つめる。そして思った。これで良かった、と。
三人がわいわいと当事者そっちのけで『久遠飛鳥の剣士への態度反省会』が開かれている最中、黒ウサギが春日部の手元を見て「おや?」と首を傾げる。
「耀さん。今耀さんが持っているのは何ですか?」
「これ? 一応指定武具みたいなんだけど……」
春日部がそういうと黒ウサギはさらに首を傾げた。
「ではガルドを倒したのは耀さん?」
「ううん。剣士だよ」
「???」
さらに首を傾げる黒ウサギ。頑張れ、あとちょっとで百八十度だぞ!
「しかし指定武具は春日部さんが持っていたのでしょう? なら剣士さんがガルドを倒すことは不可能なのでは?」
黒ウサギの疑問は当然のことだな。もし春日部が指定武具を持った状態でオレがガルドを倒したとなると"契約書類"に書かれていたことが破られたことになる。
だが実際オレはガルドを倒した。指定武具を春日部が持ったままだ、不思議に思わない方がおかしい。
「てぇことだ。この駄ウサギのために説明してやってくれ」
逆廻が自分は分かってるからという体をして言う。本当ならここでお前も解ってないだろと言うべきなんだろうが言わない。だって逆廻は頭の回転早いから本当にわかってそうだしな。
「しょうがない、駄ウサギのために説明してやるか」
「御二人とも駄ウサギと言い過ぎです!」
実際駄ウサギじゃん。
真実を告げられ憤慨している黒ウサギを放置して説明をすることにした。
「まず、そこに転がってる剣だが……オレが"解析眼"を使って得た情報をもとに"創造者"で作ったものだ。だから春日部が持っているのとまったく同じものになっている」
「……確かに傷の入り方とかまで瓜二つだな」
「それで何故オレがガルドを倒せたか。それは"誤認"を利用したんだ」
逆廻以外の四人は頭にクエスチョンマークを浮かべている。対照的に逆廻は「へぇ……」と理解したようだ。……ほんとにコイツ頭の回転早すぎだろ。
「すいません、もう少し分かりやすくお願いします」
ジン君が申し訳なさそうに言う。良いんだよジン君。あんな説明で理解できるのはそこにいる頭脳派バトルジャンキー位だから。
「そうだな……。例えば全てがまったく同じ二枚の絵があるとするだろ? そのうちの片方を言い当てるゲームをするとする。でも二枚の絵はすべてが一緒だからどっちかを言い当てるなんて無理だ。確率は二分の一、そこを利用したんだ」
「つまり指定武具をまちがえるようにさせたってことですか?」
「うーん……大体そんな感じだけど少し違う」
「つまり天野が言いたいのは二枚の同じ絵を選ぶ時に一瞬でもこっちが本物だと思う時があるだろ? 今回のゲームで言うと同じ剣を何本も作ることによって箱庭の中枢に一瞬でも"これが本物"と誤認させることによって攻撃できるようにした……まぁこんなもんか?」
逆廻の説明に四人がまた驚愕の表情を浮かべてオレを見る。
「あなたは本当に剣士?」
まさか存在を疑われるとは思わなかったよ。
でも、正直逆廻が言ったことで全てあってる。だけど正直これは賭けだったし、なにより無茶苦茶のゴリ押しなので次は使えないだろう。
「ま、確かにあの天野がここまで考えられるなんて疑いたくなるが残念ながらコイツは天野だ」
「お前らオレをバカにしすぎだろ」
オレだって中学校卒業程度の頭脳はあるんだぞ。高校生だけど。
「そういえば」
ヤハハと笑ってる逆廻が急に笑いを止めてオレの耳元に口を近づけ囁くように言った。
「このゲームは"面白かった"か?」
「………………いや。全然」
だろうな、と言って顔を放す逆廻。その目はオレの考えてることを全て見透かしてる様に見えた。
「お前が今回のことをどういう風にとらえてるかは分からねぇ。だがな、結局は裁かれる運命にあったんだ。そんなに重く受け止めなくてもいいんだぜ」
そしてヤハハと笑う逆廻。…………まったく、コイツは本当に頭が良いな。
確かに逆廻の言う通り、オレは今回のことを少々重く受け止めている。これはあくまでもゲームだ。敵キャラを倒したという認識の方がこの箱庭では常識的かもしれない。その方が気が楽だし、苦労なんてしなくて済む。だけど――
「悪いな。その考えはオレにはできない」
『あの日』に知った命の儚さと重さ。だからオレは誰に何と言われようともこの考え方を変えないし、変えたくない。
あぁ、そういえばやることがあったけ……。日が暮れる前に終わらせとくか。
体を反転させて扉に向かう。しかし久遠に引き止められる。
「何処に行くつもりかしら? 剣士君」
「…………"ノーネーム"だよ。早く帰ってリリちゃん達と遊ぶんだ」
オレの返しに久遠はため息を吐いて何かを言おうとする。しかしそれは逆廻に遮られてしまった。
「そんじゃ俺達はやることやって帰るとするか、御チビ」
「ちょ、ちょっと」
「え? あ、はい」
……ありがとな、逆廻。
心の中でお礼を言ってオレは部屋を出た。
□■□■□
「……十六夜君、どういうつもりかしら?」
剣士が出て行った後、ジンと共に"フォレス・ガロ"の解散令を出したり旗印の返還などをした後の帰り道、飛鳥が唐突に十六夜に問いかけた。
「主語がないと何のことかわからないぜ? お嬢様」
肩を竦めてバカにしたように言う十六夜。それにさらに飛鳥は少しむっとする。
「さっきの剣士君のことよ。本来ならばあの場にはゲームをクリアした剣士君も居るべきではなっかたかしら?」
「あー、確かにその方がもっと拍が付いたかもしんねぇな」
ガルドを倒したプレイヤーが"ジン=ラッセルの率いるノーネーム"に所属しているとなれば"打倒魔王"を掲げるコミュニティとして名が売れるし、その数が多ければ多いほど"強いプレイヤーが複数いる"という認識が生まれ"打倒魔王"により速く近づける。
しかし十六夜は飛鳥の引き留めを邪魔し、剣士を一人で行かせた。それが飛鳥には疑問だった。
「二人の会話を聞いてたけど"裁かれる"とか"重く受け止めなくていい"ってどういうこと?」
「聞いてたのかよ。春日部の前じゃ内緒話もできねぇな」
ヤハハと愉快に笑う十六夜。そして暫く笑った後、黒ウサギの方を向く。
「なぁ黒ウサギ。さっきのゲームで形式上は天野はガルドを倒したってなってるがやっぱアイツは死んだのか?」
「ええ。恐らくガルドは死亡し、この箱庭にはもう居ないと思います。それこそ何か特別なギフトでもない限りは」
「っと、まぁこういうことだ」
四人の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
「あのね十六夜君。さっきの剣士君もそうだったけどもっとわかりやすい説明はできないの?」
ジト目で飛鳥が十六夜を睨む。その隣では耀がうんうんと頷いている。
「分かりやすい説明も何も、今のが全てだぜ?」
「えっと、つまり剣士さんはガルド=ガスパーを倒したことに何か思うことがあるということですか?」
ジンがそう言うと十六夜は「よくできました」と大袈裟に言うと説明を始める。
「アイツはどうやらガルドを倒した……というより殺したことを悔やんでるらしくてな。優しい十六夜様が慰めてやったってことだ」
何故か威張って言う十六夜。それに飛鳥たちは未だに疑問顔だった。
「殺したって……何か大袈裟すぎじゃないかしら?」
「そうですね。この箱庭には命を落としかねないものや命を懸けたギフトゲームは多数存在しますからそこまで重く受け止める必要はありません」
飛鳥と黒ウサギが言うと、十六夜は「そうは言ったんだがな」と言って肩を竦める。
「でももしかしたら剣士の過去に何かあったことが理由かもしれないし、これ以上の詮索はやめとこう」
耀の言葉に飛鳥と十六夜はそれぞれ頷く。
それぞれ違う世界から来た四人だが、誰が決めたわけでもないが四人の過去はそれぞれ詮索しないようにしている。それが四人のためでもあるし、何よりコミュニティのためでもある。
「そんじゃさっさと帰るとしますか」
「そうね」
「うん」
逆廻を先頭に三人が歩き出す。少し遅れて黒ウサギとジンがついてくる。
「黒ウサギ」
「何ですか? ジン坊ちゃん」
「良い人たちだね。十六夜さんたちは」
「YES♪招待して正解でした」
「あれ? 剣士様は一緒じゃないんですか?」
"ノーネーム"に帰り着いた十六夜達を出迎えたリリの第一声がこれだった。
「剣士なら先に帰ったはずだけど」
「あ、はい。確かに一度帰ってきましたが"白い花を貰えるかな?"とおっしゃったので花を渡すとまた出て行かれました」
リリの説明を聞いた十六夜は「いや、流石にやりすぎだろ」と言って頭を掻いた。
「白い花ですか……。どうしたんでしょうね?」
しかし十六夜以外は剣士の目的に気付いておらず、顔を見合わせていた。
「剣士君のことだから昨日みたいに迷子になってる可能性もあるわね」
「でも一度此処まで戻ってきたなら迷子になってるとは思えないけど……」
「黒ウサギが探してきたほうが良いでしょうか?」
「あ、それなら私が行きます」
リリが言うと黒ウサギが驚いた顔をする。
「実は今日のお夕飯の材料で少し足りないものがあってちょうど町まで出るところだったんです。だからそのついでに剣士様を探してきます」
「でももう外は暗いですから黒ウサギが言った方が安全です」
「大丈夫だよ黒ウサギのお姉ちゃん。ただ買い出しに行くだけだから直ぐ帰ってくるし」
「でも流石に暗い道を子供一人で歩かせるわけには……」
リリを一人で行かせまいとする黒ウサギにジンが穏やかな口調で言う。
「良いんじゃないかな? 黒ウサギ」
「で、ですがジン坊ちゃん!」
「今日は黒ウサギも審判を頑張って疲れてるみたいだし休むことが必要だよ。それにリリは年長組でも一番しっかりしてるからきっと大丈夫だよ」
ジンの言葉に「うぅ……」と唸りながら暫く黒ウサギが唸ると、意を決したようにリリを見る。
「分かりました。それじゃあお願いしますね」
「はい! 行ってきます!」
元気よく言うと、リリは二つの尻尾を振りながら屋敷を出て行った。
「じゃ、俺達は天野たちが帰ってくるまでゆっくり休ませてもらうか」
「うん。壁に叩きつけられたから背中痛いし、超疲れた」
「私も疲れたわ。主に剣士君のせいだけれど」
問題児三人もそれぞれ思い思いのことを始める。それを見た黒ウサギはチームワーク的なものを心配になった。
「えっと……うん、これだけあれば大丈夫かな」
買い物袋を覗き込みながら満足げに頷くリリ。
辺りが殆ど夜の闇に包まれた頃、もう一つの仕事を果たすべく歩き始める。
「剣士様どこにいったんだろう?」
テクテクと小さい歩幅で、それでも早足で歩く。剣士とは出会ってから日こそ浅いが大切なコミュニティの一員だ。帰りが遅ければ心配になる。
「"フォレス・ガロ"にいるかな?」
ふとそんなことを思い足を九十度反転させて再び歩き出す。
何故剣士が白い花を欲したのかリリは分からなかった。だから剣士を見つけたら聞いてみよう、そう思って歩みをさらに速くする。
暫く歩くと町並から店が少なくなり、塀に囲まれた道が多くなってきた。
町明かりが少なくなってきたこの場所は薄暗く、リリは少し怖くなった。いくら年長組でしっかりしていると言われてもやはりまだ子供なのだ。知らない場所はまだ少しばかり怖いものがある。
「は、早く見つけなきゃ」
買い物袋をギュっと胸に抱えて歩く。尻尾はピンと上に向かって立っていた。
「け、剣士様ー。居ますかー」
震えた声で剣士を呼ぶ。しかし返事は返ってこず、ただ暗闇のなかに消えていくだけだった。
「うぅ……。見つからないよ……」
剣士が見つからない不安感と暗闇の中に一人でいるという孤独感でリリは段々と心細くなってきた。
もしかしてもう帰ってるのかな? そう思い帰ろうとすると、暗闇が続く道の一か所だけ薄明りが灯っているのに気付く。それはよく見ると微かに揺れ動いていた。
何だろう。そう思ってリリは恐る恐る灯りに近づく。心臓が緊張でドクンドクンと大きく、そしてゆっくりと鼓動する。
一歩、また一歩と灯りとの距離が縮まっていく。どうか剣士様でありますように、とリリは強く祈る。
そして曲がり角まで来ると一度止まり呼吸を整える。そして「よしっ」っと小さく呟いて一気に覗き込む。
「何してるの?」
「ひゃわっ!?」
突然声を掛けられて驚いて尻餅をついてしまうリリ。
「大丈夫?」
「はい、大丈夫で――って、剣士様!?」
リリが顔を上げると右手にランプ、左手に紙袋を持った剣士が立っていた。
「あれ? リリちゃんじゃん。どうしたの? こんな所で」
紙袋を地面に置いて手を差し伸べる剣士。リリはその手を少々躊躇いながらとり、立ちあがる。
「えっと、お夕飯の買い出しをした後に剣士様の捜索をしてました」
「あ、もう捜索がかかるような時間だったのか。……黒ウサギ怒ってた?」
「いえ。心配はしてましたがあんまり怒ってはなかったです」
「そうなんだ。…………ということはお嬢様あたりから何か言われるな(ボソッ)」
言葉の最後に剣士が何か言ったがリリには聞こえなかった。
「あ、そういえば剣士様。お花はお役に立ちましたか?」
「うん。綺麗な花をありがとう。おかげで綺麗に仕上がりそうだよ」
そう言ってリリの頭を優しく撫でる。リリは一瞬ビックリするもすぐに嬉しそうに頬を緩ませる。
「お役に立てて良かったです! そういえばあのお花は何に使われたんですか?」
剣士にあったら聞こうと思っていた事を問いかけると「あぁ……うん」と若干言いにくそうにした後、リリの頭から手を放し足元に置いていた紙袋を手にする。
「もうすぐできるからリリちゃんもついておいで」
それだけ言うと剣士は歩き出してしまった。それを慌ててリリが追いかける。
「ど、何処に行くんですか?」
「……ガルドのお墓だよ」
剣士に連れられてやってきたのは"フォレス・ガロ"の本拠の一角。そこには白い綺麗な石碑が一つ立っていた。
近づいてよく見るとリリが剣士に渡した白い花が添えてあり、石碑の中央には『ガルド=ガスパー』と彫られていた。
「剣士様……これは?」
「ガルドのお墓。即席だからあんまり華やかじゃないけどね」
ハハハと笑って石碑の前に座り込み紙袋の中からお酒を取り出し、花の隣に置く。
そして静かに手を合わせて合掌する。
「剣士様……」
リリには今日剣士に何があったのかわからないし、考えも読めない。だけど、それでも石碑に合掌する剣士の背中は責任と後悔を背負ってるように見える。
「リリちゃん」
手を合わせたまま静かに剣士が口を開く。
「死んでもいい人間なんてこの世界……他の世界にもだけど居ないんだよ」
ゆっくりと静かに語る剣士。リリはそれを黙って聞いていた。
「でも生あるものは必ず死が訪れる。絶対抗えない自然の掟だね。だけど死んだらそのままにしておくのは可哀そうだ」
手を離し、箱庭の空を見上げる。
「死んだのが良い奴でも、外道な奴でも、ちゃんと見送ってやらないと淋しいよ」
立ち上がってリリの方を向く。その顔は何時ものヘラヘラとした笑みだったが、どことなく優しさが滲み出ていた。
「このことを覚えておいてね」
ポンっとリリの頭に手を置く。
「は、はい!」
元気よく返事をすると「よろしい!」と言って頭に置いてた手を放し、リリの目の前に差し出す。
「"サウザンドアイズ"の寄ってから帰ろうか。ご飯は我慢してもらうことになるけど、ビックリして尻餅をついちゃうリリちゃんを一人で返すのは危ないしね」
「うぅ……それは忘れてください……」
若干顔を赤くしながら遠慮がちに剣士の手を握る。それに満足げに笑うと二人はガルドの墓の前から立ち去った。
「ガルド、オレはもう誰も殺さない。絶対に……な(ボソッ)」
小さく、しかし確かに心からの言葉で剣士は誓った。もう二度とあんな思いをしないように……。
□■□■□
「テンちゃんやっほー!」
「おや、貴方ですか。帰ってください」
さっそく追い返されそうになって涙でそう。泣かないけど。
「け、剣士様! 元気出してください!」
横で手を繋いでるラブリーエンジェルリリちゃんが励ましてくれる。ヤバイ、テンション、上がって、
「キタァアアアアアアアアアアア!!」
「近所迷惑になりますので奇声を上げないでください」
怒られた。というか蔑んだ目で睨まれた。
「はぁ……それで? 何かご用でしょうか? 貴方のお仲間なら中に入っていますが」
「あれ、あいつ等来てんの? なんで?」
素直にそう返すとテンちゃんが驚いた表情になった後、「ああ、だから居なかったんですね」と一人で自己完結していた。
「ねぇテンちゃん、何であいつ等来てるの?」
「御気になさらず。それで、オーナーにご用でしょうか? 現在オーナーは取り込み中で少々待ってもらうことになりますが」
「随分な対応だなおい。……まぁいいや。待たせてもらうよ。それなりに大事な要件だし」
「そうですか。なら中でお待ちください。変態が店の前で小さい女の子といると店の評判が落ちかねないので」
遠まわしに見せかけて実はストレートで罵倒するスキルを持っているとは思わなかったよ。だがその程度ではオレの心を完全に折るまでには至らないな!
心の中で言ってて悲しくなってきた気持ちを振り払い、リリちゃんの手を引いて店の中に入る。
テンちゃんの後をついて行ってると一間だけ随分と賑やかな声が聞こえてきた。
『そうだぜお嬢様。この美脚は既に俺のものだ』
『そうですそうですこの脚はもう黙らっしゃいッ!!!』
『よかろう、ならば黒ウサギの脚を言い値で』
『売・り・ま・せ・ん! あーもう、真面目なお話をしに来たのですからいい加減にして下さい! 黒ウサギも本気で怒りますよ!』
…………黒ウサギ達かよ。
「変なお客さんも居るものですね。芸人ですかね?」
「貴方のコミュニティの仲間ですよ」
はいそうです。あそこでコントを繰り広げてるのはオレのコミュニティの仲間です。すみません。
「良いかいリリちゃん。あんな人に育ったら駄目だからね?」
「あ、あははは……」
流石のリリちゃんでも苦笑するレベルとは……あいつ等反面教師やれるんじゃね?
「反面教師なら貴方が一番お似合いかと」
「心の中を読むんじゃありません」
何でわかるんだろう。不思議でたまらない。
『あっはははははは! え、何? "ノーネーム"っていう芸人コミュニティなの君ら。もしそうならまとめて"ペルセウス"に来いってマジで。道楽には好きなだけ金をかけるのが性分だからね。生涯面倒見るよ? 勿論、その美脚は僕のベッドで毎晩好きなだけ開かせてもらうけど』
「ん?」
『何故箱庭に住む人は人の心を読めるのか』を考えていると聞きなれない男の声が聞こえてきた。
文章長くてすみません。内容メチャクチャですみません。中途半端に終わってすみません。
ですがやっとvsペルセウスに入りました。これからリリと店員さんと白夜叉の出番が増える予定ですがいかんせん口調が難しくて困ってます(特に白夜叉)。
次回はペルセウスの決闘前らへんまでかな?更新は遅くなりそうです。