問題児たちが異世界から来るそうですよ?―笑う自由人―   作:カゲショウ

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シホ「皆様こんにちはー! "ノーネーム"で剣士様のアシスタントのシホでーす!」
ジョン「同じくジョンです!」
シホ「今回も『天野剣士の駄弁りコーナー』を始め――って、あれ? 剣士様は?」
ジョン「そういえば見当たらないな……。どうしたんだろ?」
シホ「私は何も聞いてないよ? ジョンこそ知らないの?」
ジョン「おれも何も聞いてないよ……。」
シホ「なら何処に行ったんだろう……。本編でも出てきてないみたいだし」
ジョン「それをここで言っちゃうの!? というかメタな発言はよしなよ!!」
シホ「メタな発言じゃないよ? 基本此処は自由って耀様から聞いたし全く無関係って訳じゃないもん」
ジョン「何それ初めて聞くんだけど」
シホ「此処のコーナーって本編と無関係なようにみえてそうでもない、いわば影時間? 裏世界? ってやつなんだって」
ジョン「そ、そうだったんだ……」
シホ「とりあえずこの事は一度置いといてとても大変なことに気付いたんだけど」
ジョン「何?」
シホ「剣士様が居ない間のコーナーをどうしよう」
ジョン「……………………………あ」
シホ「私たちが引き継いで、って訳にもいかないよね」
ジョン「まぁ、たぶん……。というか引き継いでも何もできない気がするよ」
シホ「私もそう思う」
ジョン「どうする……?」
シホ「うーん。十六夜様達に頼む……のは無理だよね」
ジョン「普段お世話になってるからこれ以上迷惑かけられないね」
ジン「あれ? 二人ともどうしたの?」
ジョン「あ、ジン。実はちょっとしたトラブルがあってどうしようかって……」
シホ「ジン君こそどうしたの? 最近書庫に籠ってるって聞いてたけど」
ジン「あ、うん。僕も一応コミュニティのリーダーだからね、十六夜さん達みたいに派手に戦えるって訳じゃないからせめて謎解きができるように勉強しないとって」
ジョン「ジン……」
シホ「こんなに立派になって……お母さん嬉しい!」
ジン「同い年だよ!?」
ジョン「シホの冗談だから軽く流しといたほうがいいよ」
ジン「う、うん」
シホ「あ、私良い事思いついた!!」
ジョン「本当に?」
シホ「本当だよ! それで良い事っていうのはジン君の協力が必要なんだけど……引き受けてくれる?」
ジン「状況がいまいち把握できてないけど……良いよ。何をすればいいの?」
シホ「今ジン君が調べてる事をこのコーナーで話すだけの簡単なお仕事だよ。こうして復習することで賢くなるって剣士様が言ってた」
ジョン「おお! コーナーも埋まってジンも復習できる、まさに一石二鳥!」
ジン「確かにいい考えだけど……。後半は本当に剣士さんが言ってたの?」
シホ「うん」
ジョン「ま、まぁとにかくこのコーナーの方針が決まったし本編始めようぜ」
ジン「う、うん、そうだね」
シホ「ではでは次回からは『教えて? ジン=ラッセル!』が始まるよ!」
ジョン「お楽しみに!」


あら、魔王襲来のお知らせ?
15話 おや、問題児失踪のお知らせです


「十六夜君! 何処にいるの!?」

とある日の朝に飛鳥の声が地下書庫内に響き渡った。その後ろからは耀とリリが着いて来ている。

「……うん? ああ、お嬢様か……――」

何処か慌てている飛鳥とは反対に眠たそうに頭を揺らして今にも二度寝をしようとしながら十六夜は答える。

そんな十六夜の姿をみた飛鳥は十六夜が読み散らかした本を踏み台に側頭部に飛び膝蹴り、別名シャイニングウィザードを繰り出した。

「起きなさい!」

「させるか!」

「グボハァ!?」

飛鳥の放った攻撃を十六夜はあろうことか自分達のコミュニティのリーダーであるジン少年を盾にして防いだ。

寝込みの側頭部を強襲されたジンは三回転半して見事に吹き飛んだ。このことから飛鳥がまったく手加減していなかったことが窺える。

もちろん問題児四人組とは違ってそんなびっくり展開に慣れていないリリは悲鳴を、耀はいつもの抑揚のない声で驚きの声を上げた。

「じ、ジン君がぐるぐる回って吹っ飛びました!? 大丈夫!?」

「…………。側頭部を膝で蹴られて大丈夫な訳ないと思うな」

そう言いつつ耀は吹っ飛んで行ったジンに向かって合掌する。

一方、ジンを吹き飛ばした張本人である飛鳥は全く悪びれた様子もなく、腰に手を当てて二人に向かって叫ぶ。

「十六夜君、ジン君! 緊急事態よ! 二度寝している場合じゃないわ!」

「そうかい。それは嬉しいが、側頭部にシャイニングウィザードは止めとけお嬢様。俺は頑丈だから兎も角、御チビの場合は命に関わ――」

「って僕を盾に使ったのは十六夜さんでしょう!?」

ガバッ!! と本の山から起き上がってまるで自分は何もしていないかのように振る舞う十六夜にツッコむ。どうやら生きていたらしい。

「大丈夫よ。だってほら、生きてるじゃない」

「デットオアアライブ!? というか生きていても致命です!! 飛鳥さんはもう少しオブラートにと黒ウサギからも散々――」

「御チビも五月蠅い」

スコーンッ! と十六夜の投げた本がジンの額にクリティカルヒットし、再び吹っ飛んで失神する。もちろんそんなカオス展開に慣れていないリリは混乱してオロオロとしていた。

「…………それで? 人の快眠を邪魔したんだ。相応のプレゼントがあるんだろうな」

睡眠を邪魔された十六夜は不機嫌なのを隠そうともせず苛立ちのこもった視線を飛鳥に向ける。しかし睡眠を妨害されて不機嫌にならない人は少ないので当たり前だろう。

しかし飛鳥はそんな不機嫌な十六夜を無視して話を進める。

「いいからコレ読みなさい。絶対に喜ぶわよ」

そう言って飛鳥は封?がされた手紙を十六夜に渡す。それを受け取ると封を確認して中身を取り出し読み始める。

「双女神の封?……白夜叉からか? あー何々? 北と東の"階層支配者"による共同祭典――"火龍誕生祭"の招待状?」

「そう。よくわからないけどきっと凄いお祭りだわ。十六夜君もわくわくするでしょ?」

何故か自慢げに語る飛鳥。一方、十六夜は腕をプルプルと震わせて手紙を読みながら叫ぶ。

「おい、ふざけんなよ。こんなことで人の快眠邪魔して側頭部にシャイニングウィザードを決めようとしたのかよ!? それに、なんだよこのラインナップ!? 『北側の鬼種や精霊達が作り出した美術工芸品の展覧会および批評会に加え、様々な"主催者"がギフトゲームを開催。メインは"フロアマスター"が主催する大祭を予定しております』だと!? クソが!少し面白そうじゃねえか、行ってみようかなオイ♪」

「ノリノリね」

十六夜は身体を撓らせて飛び起きると、近くに脱ぎ捨てていた学ランを颯爽と着込んで先程までの眠気を吹き飛ばして"火竜誕生祭"に行く支度をする。

肝を冷やしながらその光景を見ていたリリは血相を変えてまで十六夜たちを呼び止める。

「ままま、ま、待ってください! 北側に行くにしてもせめて黒ウサギのお姉ちゃんに相談してから…………ほ、ほら! ジン君も起きて! 皆さんが北側に行っちゃうよ!?」

「……北? ……北側だって!?」

失神していたジンが「北側に行く」という単語に反応してガバッと起き上がる。

こんなに早く立ち直るところを見ると見た目に反してジンはタフな体をしているらしい。

「ちょ、ちょっと待って下さい! 北側に行くって、本当ですか!?」

「ああ。そうだが?」

「何処にそんな蓄えがあると思ってるんですか!? 此処から境界壁までどれだけあると思っているんです!? リリも、大祭の事は皆さんには秘密にと――」

「「「秘密?」」」

三人がそう聞き返したところでジンは自分の失態に気が付き固まってしまう。

しかし時はすでに遅し。邪悪な笑みと怒りのオーラを放つ飛鳥、耀、十六夜の問題児三人組がジンの眼前にいた。

「…………そっか。こんな面白そうなお祭りを秘密にされてたんだ、私達。ぐすん」

「コミュニティを盛り上げようと毎日毎日頑張ってるのに、とっても残念だわ。ぐすん」

「毎日ギフトゲームをしてコミュニティの為に頑張ってるてのにな。ぐすん」

「ここらで一つ、黒ウサギ達に痛い目を見てもらうのも大事かもしれないな。ぐすん」

かなり芝居がかかった泣きまねの裏側でニコォリと物騒に笑う問題児。『ニッコリ』ではなく、『ニコォリ』だ。

そんな隠す気もない悪意にジンと傍にいたリリはだらだらと冷や汗が流れ落ちる。

と、ここで飛鳥がふと思い出したように十六夜に問いかける。

「そういえば剣士君は此処にいないのかしら?」

「天野か? 残念ながら見かけてないな」

そう言って耀に視線を向けるが知らないと言うように首を横に振る。

「飛鳥の部屋に行く前に軽くお腹に入れとこうと思って剣士の部屋に行ったけど誰もいなかったよ」

「何で食べ物を求めて剣士君の部屋に行ったかは聞かないけど……それだと妙な話ね」

「どうして?」

「剣士様は基本的に朝早く起きられる方ではないので、耀様より早く起きる事は少ないんです」

耀の疑問にリリが答える。因みに問題児四人組はだいたい十六夜、耀、飛鳥、剣士の順で起床する。

中でも十六夜は一日寝ない事があったり、反対に剣士は一日中寝たりする事がある。

つまり飛鳥が言っている妙な話というのは一番起床時間が遅い剣士がすでに起きているという事を指す。

「…………剣士居ないけど、どうする?」

耀が二人に問いかける。二人は暫く思考を巡らせて結論を同時に出す。

「「おいて行こう」」

因みにしばらく思考を巡らせたと言ってもその間数秒である。しかも飛鳥にいたってはとてもいい笑顔のオプション付きだ。

「お、御二人ともここは剣士さんを探しましょうよ! 仲間でしょう!?」

そんな二人に反論する。しかし二人はやれやれといった体で肩を竦める。

「ジン君、よく聞きなさい」

「は、はい」

急に真剣な顔になる飛鳥にジンは動揺してしまう。

「剣士君をおいていくのは私達だって本当に心苦しいわ」

「でも即決でしたよね!?」

「黙りなさい」

「っ!!」

飛鳥の一括でピンッと背筋が伸びて気をつけの態勢になってしまう。

別に飛鳥がギフトを使ったわけではないのだが、その気迫でジンを黙らせたのだ。そしてジンはこの瞬間に理解した。剣士が飛鳥に逆らえないのはこれがあるからなのだと……。

「……こほん。それで私だっておいていくのはどうかと思うわ。決して面倒くさいとか思っていないわ。でもね………………見つからないものはしょうがないじゃない」

「ま、そういう事だ。御チビ」

「っ!! っっ!!」

探してないじゃないですか! ジンは言いたくても飛鳥の気迫が恐ろしくて言えなかった。リリもこの空気の中発言できるわけもなく、ただオロオロとしている事しかできなかった。

かくして、哀れな少年ジン=ラッセルは三人に問答無用に拉致され、東と北の境界壁を目指すのだった。

 

 

「く、黒ウサギのお姉ちゃぁぁぁぁぁん! 大変――――!」

「リリ!? どうしたのですか!?」

黒ウサギがレティシアと共に農園区の状況を確認していると、本拠に続く道の向こうからリリが叫びながら二人の元へ走ってきた。

その顔は今にも泣きそうだった。

「じ、実は飛鳥様が十六夜様と耀様を連れて…………あ、こ、これ、手紙!」

パタパタと二尾をせわしなく動かしながら、リリは手に持っていた手紙を黒ウサギに渡した。

『黒ウサギへ。

北側の四〇〇〇〇〇〇外門と東側の三九九九九九九外門で開催する祭典に参加してきます。貴女も後から必ず来ること。あ、あとレティシアもね。ついでに剣士君を見かけたら連れて来て頂戴。

それと、私達に祭りの事を意図的に黙っていた罰として、今日中に私達を捕まえられなかった場合"三人ともコミュニティを脱退します。"死ぬ気で探してね。応援しているわ。

P/S ジン君は案内役に連れて行きます』

「………………」

「………………?」

「――――!?」

たっぷり黙り込む事三十秒。手紙を読み、頭の中で反芻し――理解する。

黒ウサギは体全身をワナワナと震わせながら、悲鳴のような、怒声のような声を上げた。

「な、――――……何を言ちゃってんですかあの問題児様方ああああ――――!!!」

黒ウサギは今日も世界屈指の最強問題児集団に苦労するのだった。

 

 

 

□■□■□

 

 

 

その後のレティシアと黒ウサギの行動は迅速だった。

手紙を確認した後、農園跡地から本拠に戻り二人は十六夜達がコミュニティの領地内にいないのか確認。しかし見当たらず、最後に宝物庫の鍵を持って降りた黒ウサギは、豪奢な扉と結界を解除して勢いよく中に入る。重鈍とした音と共に開いた宝物庫の中は伽藍としており、ほとんどが空洞状態だ。

そんな中、黒ウサギは辛うじで真ん中にちょこんと置かれた袋に飛びつく。

それを追うレティシアと、同じく捜索を終えたリリ率いる年長組の子供達も宝物庫の中に入ってくる。

「食堂にはいなかったよ!」

「大広間、個室、貴賓室全部見てきた!」

「世界の真理も見てきた!」

「貯水池の付近にもいないっ!」

「お腹すいた!」

「それはまた後でな。…………そして誰だこの短時間で何かを悟った奴は」

しかしレティシアのその問いかけに答える者はおらず、レティシア短くため息をついて黒ウサギに向き直る。

「それで、金庫はどうだ?」

「コミュニティのお金に手を付けた形跡はありません。しかし皆さんの自腹で境界壁まで向かえるはずがございません! うまくすれば外門付近で捕まえることが可能です!」

自分達に勝機が見えたのか意気込む黒ウサギ。しかしレティシアの表情は依然として暗いままだ。

「しかし剣士のギフトだったら金貨を作る事など造作もないだろう? もしそうされたら今頃北側に行ってる可能性だってあるな……」

「それは恐らくないでしょう。以前剣士さんに似たような事を聞いたところ"そんなことしたら貨幣の流通がおかしくなって経済が破綻するからしないよ"とおっしゃってました」

「しかし剣士もこのコミュニティの問題児の一角で言い方は悪いが頭が少し足りていない所が多々見られる。十六夜達に丸め込まれるという事もあり得るのでは?」

「そ、それは……」

レティシアの指摘に言いよどむ黒ウサギ。どうやら心当たりがあるらしい。

しかし少し悪くなった空気を打破するかの如くリリが二尾をパタパタと振りながら説明を加える。

「で、でも剣士様は現在行方不明で飛鳥様達とは一緒に居ないんです。飛鳥様達も居場所を知らなかったようなので恐らく大丈夫だと……」

「あ、確かに手紙にもそのようなことが書かれてますね」

「ふむ、なら安心……か?」

「ですね♪」

「なら黒ウサギは先に外門へ急げ。万一捕まえられずとも、"箱庭の貴族"であるお前なら境界門の起動に金はかからない。私は"サウザンドアイズ"の支店へ行く。招待状を出したのが白夜叉ならば、無償で北の境界壁まで送り届ける可能性があるからな」

黒ウサギとレティシアはお互いの行動を確認し合って頷く。

特に黒ウサギの瞳には、かつてない程の怒りの火花が散っており今ならばその怒りの炎でお湯が沸かせそうだ。

「あの問題児様方……! 今度という今度は絶対に! 絶対に許さないのですよ――ッ!!」

怒りのオーラで髪を淡い緋色で染め上げ、本拠の外に出るや否や、土埃を巻き上げて境界門へ向けて爆走を開始する。

「……さて、私達も剣士をたたき起こして"サウザンドアイズ"に急ぐとしようか」

「え?」

「ん?」

レティシアの言葉に驚くリリ。そしてそんな反応をされて頭に疑問符を浮かべるレティシア。

暫くお互い首を傾げた後にリリが遠慮がちにレティシアに問いかける。

「えっと、だから剣士様は……」

「自分の部屋以外の所で寝てるんだろう? "ノーネーム"の敷地は広いからな、行方不明とはよく言ったものだ」

「いえ、そうではなく……。本当に朝から姿を見てないんです。先ほども他の子達と敷地全体を探したのですが見当たらなかったんです」

「本当だよレティシア様。多分敷地内にはいないと思うよ?」

「おれも今日は朝早く起きてたけど剣士さんの姿は見なかったよ」

シホとジョンがそう言うと他の子供達も剣士を見ていないと言い出す。

衝撃の事実を知り、レティシアは数秒固まった後に、額に指を当てて深い溜息を吐いた。

「まったく、剣士は十六夜達とは別の問題を起こしてくれる……」

「あ、あははは……」

リリはその言葉に苦笑を浮かべることしかできなかった。




はいどうも。かなり間を開けての更新になりました、カゲショウです。
今回はまさかの剣士が行方不明という事もあり、ずっと三人称視点でした。しかもそれだったら原作丸パクリじゃん、という事もあり所々改変したためかなり難航してしまいました。
しかも最初は中々進まなかったのに中盤になると予想以上に筆が進むという怪現象がおきて予定していた場面より短い所で切ってしまいました♪
こんなのが後数話続きますが、剣士が出てきてからは全力で面白くしようと思いますのでご了承ください。



あ、あとお気に入り百件超えました。皆様本当にありがとうございます。
これを励みにこれからも頑張りたいと思います。
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