問題児たちが異世界から来るそうですよ?―笑う自由人―   作:カゲショウ

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シホ「シホです!」
ジョン「ジョンです!」
ジン「ジンです」
シホ「三人!」
ジョン「合わせて!」
ジン「え!? あ、合わせて!?」
シホ「もぉ~ジン君、剣士様親衛隊でしょ? しっかりしてよね」
ジン「初耳だし入った覚えもないよ!?」
ジョン「ノリでやったけどおれも入った記憶ないな」
シホ「私も創設した記憶はないよ」
ジン「架空の部隊に入れようとしてたの!?」
シホ「でも、名前は出せないコードネームY.F〈イエロー・フォックス〉さんがメンバー集め始めてるよ?」
ジン「どうしてかな? 凄く頼りになる仲間の顔が思い浮かんだよ……」
ジョン「それより『教えて? ジン=ラッセル!』のコーナー始めようよ」
シホ「それじゃあ今回は"階層支配者〈フロアマスター〉"の説明よろしくね♪」
ジン「う、うん……。頑張るよ」
ジョン「ジン、頑張れ」
ジン「えっと、階層支配者っていうのは箱庭の秩序と下層のコミュニティの成長を促すために設けられた制度の事なんだ」
シホ「え? 階層支配者って役職じゃないの?」
ジン「認識としては間違ってないよ。階層支配者になった人はたくさんの役割を課せられるんだ。主に土地の分割や譲渡、コミュニティが上位の階層に移転できるかどうかを試す試練としてギフトゲームを行ったり……」
ジョン「うわー、大変そうだなあ……」
ジン「そうだね。因みに白夜叉様も一応階層支配者なんだよ」
シホ「あ、それなら楽そうだね。白夜叉様よく遊んでるの見かけるし」
ジョン「だな。なんだそこまで大変そうじゃないじゃん」
ジン「……二人とも、それを人前で絶対に言わないでね?」
シホジョン「「はーい」」
ジン「二人とも剣士さんに似てきたなぁ……」
シホ「ジン君。続き早く早くっ」
ジン「一応白夜叉様とその他の階層支配者の皆様の名誉のために言っとくけど、階層支配者には秩序を乱す天災……つまり魔王が現れた時は下層のコミュニティを守るために率先して戦う義務があるんだよ」
シホ「え? そうなの?」
ジン「そうだよ。寧ろ階層支配者は遊んでる余裕なんて普通は無いんだよ? 白夜叉様が遊んでられるのはそれだけ白夜叉様が強くて、白夜叉様の支配地域が平和だって事なんだ」
ジョン「白夜叉様って実は凄いんだ……」
シホ「階層支配者って何か見返りとかないの? 流石にこれだけ大変なのにノーリターンってわけじゃないでしょ」
ジン「そうだね、階層支配者にはちゃんと見返りはあるよ。それが膨大な権力と"主催者権限〈ホストマスター〉"って呼ばれる最上位特権を得られるんだ。だから階層支配者はどんなに大変でも辞めたいとは思わないんじゃないかな?」
シホ「ほほー……。つまりやっぱり生きとし生けるものは他人より優位な立場に立っていたいという事だね」
ジン「今日の結論を何でそんな最悪な感じにまとめたの!?」
ジョン「あ、そろそろ本編が始まるから終わらないと」
ジン「こんな最悪な終わり方するの!?」
シホ「細かい事は気にしない! それじゃ今回はここまで」
ジョン「次回は…………どうする?」
シホ「そうだね……。ジン君、何か今勉強してる事とかある?」
ジン「え? そうだなぁ…………。グリム童話のハーメルンの笛吹の話とかどうかな?」
ジョン「あ、それ聞いてみたい」
シホ「じゃあそれに決定! という事で次回はそれをお送りしまーす」
ジョン「それでは本編をどうぞ」


17話 おや、フラグ建設のお知らせです

四人は素っ頓狂な声を上げた。

それもそのはずだ。あれだけ遠いと言われた北側に着いたと言われれば誰だってそうなるだろう。

しかしそこは最強の問題児達。疑問より好奇心を優先し期待を胸に店の外へ飛び出す。

その瞬間熱風が三人の頬を撫でる。

高台に建つ"サウザンドアイズ"の支店からは街の一帯が展望できた。しかし見える景色は彼等のよく知る街ではなかった。

飛鳥は大きく息を呑み、胸を躍らせるように感嘆の声を上げた。

「赤壁と炎と…………ガラスの街…………!?」

東と北を遮る赤い境界壁。彫刻の街と言っても過言ではない程眼下に広がる街は芸術性に溢れており、遠目からでも分かるほど色彩鮮やかなカットガラスで飾られた歩廊に飛鳥は瞳を輝かせる。

昼間だというのに黄昏を思わせる色味を放っているのは街の装飾だけではなく、境界壁の影に重なる場所を朱色の暖かな光で照らす巨大なペンダントランプが数多く点在している為だ。

二本の足で歩くキャンドルスタンドが街中を闊歩している様子を見て、飛鳥だけではなく十六夜も喜びの声を上げた。

「へぇ……! 九八〇〇〇〇㎞も離れているだけあって、東とは随分と文化様式が違うんだな。歩くキャンドルスタンドなんて奇抜なもの、実際に見る日が来るとは思わなかったぜ」

「ふふ。しかし違うのは文化だけではないぞ。其処の外門から外に出た世界は真っ白な雪原でな。それを箱庭の都市の大結界と灯火で、常秋の様相を保っているのだ」

白夜叉が自慢げに小さな胸を張り、十六夜は眼下の街に目を向けながら頷く。

そんな二人をよそに飛鳥は、美麗な街並みを指して熱っぽく訴える。

「今すぐ降りましょう! あの歩廊に行ってみたいわ! いいでしょう白夜叉?」

今までの凛としたお嬢様の雰囲気は消え去り、瞳を輝かせて楽しそうに声を弾ませている飛鳥はまるで子供のようだった。

白夜叉はそんな飛鳥の様子に満足したように頷くと着物の袖をゴソゴソと探り、一枚のチラシを飛鳥たちに見せる。

「ああ、構わんよ。続きは夜にでもしよう。暇があればこのギフトゲームにも参加していけ」

そう言われて白夜叉が差し出したチラシを覗き込む。

 

「見ィつけた――――のですよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

ズドォン!! と、ドップラー効果の効いた絶叫と共に、まるで爆撃の様な着地。

何処からともなく全力跳躍し、彼等の目の前に現れたのは問題児達の同士、黒ウサギ。

「ふ、ふふ、フフフフ…………! ようぉぉぉやく見つけたのですよ、問題児様方…………!」

怒りのため本来黒いはずの彼女の髪は緋色に変わっており、怒り狂ったその姿は仁王をを連想させた。

危険を感じ取った問題児の中で、真っ先に動いたのはやはり十六夜だった。

「逃げるぞッ!!」

「逃がすかッ!!」

「え、ちょっと!?」

十六夜は隣にいた飛鳥を抱きかかえ迷わず展望台から飛び降りる。耀は一瞬遅れて旋風を巻き上げて空中に逃げようとするが、そのタイムラグと相手が悪かった。

怒りの化身と化した黒ウサギは十六夜達に逃げられたと即座に判断すると、標的を耀に切り替え、大ジャンプで耀のブーツを握りしめる。

「わ、わわ、……!」

「耀さん、捕まえたのです!! もう逃がしません!!!」

どこかぶっ壊れ気味に笑う黒ウサギは耀を胸に引き寄せ、耳元で囁く。

「後デタップリ御説教タイムナノデスヨ。フフフ、御覚悟シテクダサイネ♪」

「りょ、了解……」

反論を良しとしないカタコトの声に、流石の耀も怯えながら頷く。今日の黒ウサギは普段よりバイオレンスだと野生の直感が見抜いたのだろう。着地した黒ウサギは、乱暴に白夜叉に向かって耀を投げつける。三回転半して吹っ飛んだ耀と白夜叉は悲鳴を上げた。

「きゃ!」

「ゴボハァ! お、おいコラ黒ウサギ! 最近のおんしは些か礼儀を欠いておらんか!? コレでも私は東のフロアマスター――――!」

「耀さんの事をお願い致します! 黒ウサギは他の問題児様を捕まえに参りますので!」

白夜叉の言葉に聞く耳を持たない黒ウサギに、白夜叉は勢いに負けて頷く。

「ぬっ…………そ、そうか。良く分からんが頑張れ黒ウサギ」

「はい!」

展望台からジャンプする黒ウサギ。

黒ウサギと十六夜達の追いかけっこという名のゲームは、後半戦にもつれ込むのだった。

 

 

 

■□■□■

 

 

 

「…………いないか?」

「ええ、多分。だけどこんなに早く追いつかれるなんて思わなかったわ……」

「黒ウサギを焚き付ける餌としては、冗談でも効果抜群だったってことだな」

安全を確認した飛鳥は靡かせるようにステップを踏み振り返る。

「さ、それじゃ散策を開始しましょう。エスコートはお願いできるのかしら、十六夜君?」

飛鳥の言葉に一瞬驚いた顔をする十六夜だが、すぐに唇の端を釣り上げて笑う。

「へぇ? 見るからに野蛮で強暴そうだと思われていたはずだけどな?」

「あら? 細かいことを気にしていては、素敵な紳士になれなくてよ?」

クスクスと互いをからかいあって笑う二人。飛鳥は普段剣士に頭を悩まされているので、仲間とこうして笑う事に少しばかり新鮮なものを感じていた。

問題児同士、なんだかんだで息が合っているのだろう。

十六夜は肩を竦ませて飛鳥の隣に立つ。

「それでは僭越ながら、エスコートの真似事でもさせてもらいますよお嬢様。――そうだなあ。まずはこの赤い歩廊を散歩かな。商店街のようだし、ご当地品や限定ものを物色して回るのも観光の醍醐味って奴だ」

「そう。物好きな十六夜君がそういうなら、そうなのでしょう」

「そうだとも。お嬢様も女ならショッピングは好きだろ?」

「…………さあ? 好きかもしれないし、そうじゃないかもしれないわ」

飛鳥の表情に一瞬、陰が差す。

もちろんその表情の変化を見逃す十六夜ではないのだが、飛鳥に手を引かれて質問する機会を逃す。

「さ、行きましょ。あの歩くキャンドルスタンドも、店で売っているかもしれないわ」

「そうだな。…………お嬢様が欲しいなら、その辺のを一体ぐらい盗ってもいいが?」

「あら、そんなのダメよ。ルール違反だわ」

飛鳥は左右に首を振った後、今までの中で最高に悪戯っぽい笑みを浮かべる。

「どうしても欲しい物は――――ギフトゲームに挑んで勝つ。それが箱庭のルールでしょう?」

「ハハッ、そりゃそうだ」

にこやかに箱庭における絶対遵守のルールを語る飛鳥に、哄笑を向ける十六夜。

十六夜と飛鳥の性格はどこか似たところがある。

片や世界に極上の快楽を求める快楽主義者。片やつまらなかった人生に刺激を求めるお嬢様。

求める方法は違えど、この世界に来た目的が似ている二人は気が合うところが多々あるのだろう。少なくとも飛鳥は剣士といる時よりも楽しそうな表情を十六夜に向けていた。

そんな事を知ってか知らずか、二人は嬉々とした表情で朱色に染まったガラスの歩廊を散策するのだった。

 

 

「前々から思っていたけれど…………十六夜君はどうしてそんなに博学なの?」

飛鳥のこの問いは、十六夜がとある彫像に使用されているテクタイト結晶の解説を飛鳥に事に起因する。

問題児の中でも頭何個も抜けて十六夜の知識は豊富で、剣士からは知識がある分理屈で丸めこめないのでやっかいと言われた事がある程だ。……そのすぐ後に剣士は耀にそもそも剣士は小学生レベルの頭脳しかないと言われていた。

「そうでもないさ。博学というよりは雑学程度だ。…………お、歩くキャンドル発見!」

二足歩行で歩くキャンドルスタンドを見つけた十六夜は、飛鳥を置いて軽快に走って行く。

飛鳥はその背中を慌てて追いかける。歩くキャンドルスタンドも美術展の作品らしく、首……と言っていいのかは分からないが"ウィル・オ・ウィスプ"という看板を下げていた。

「二足歩行のキャンドルスタンドに浮かぶランタン…………ならカボチャのお化けはいないのかしら? ハロなんとかっていうお祭りに出てくる妖怪なのだけど、十六夜君は知ってる?」

「んあ?」

突然の飛鳥の言葉に、十六夜は足を止めて眼を丸くする。

「おいおい、箱入りが過ぎるぜお嬢様。カボチャの怪物って、ジャック・オー・ランタンの事だろ? 今時ハロウィンぐらい知っておけよ――――と、そうか。お嬢様は戦後間もない時代から来たんだっけ?」

半身だけ振り返って質問する十六夜。

飛鳥が過ごしていた時代はハロウィンという文化はあまり認知されておらず、知識に差があるのは仕方のない事だ。

飛鳥にとって、逆廻十六夜は未来人だ。

海外との交友が確立され、情報を入手する手段が豊富な時代から来た十六夜の知識は本人が言うように雑学程度しか知らないものもあれば、かなり専門的な知識もある。それも知りたいと思えば情報はそこら辺に転がっているようなものだったので情報には事欠かなかった。

対して飛鳥は、戦後間もないため情報網も確立されておらず一つの事を調べるのにも時間がかかる程だった。なので豊富な知識を持っている十六夜は、飛鳥の目には博学多才な少年に映るのだろう。

そんな十六夜の視線から、飛鳥は事情を察する。

「そう…………十六夜君の時代には、もうハロウィンは珍しいものではないのね」

「まあな。お嬢様はハロウィンみたいなお祭りが好きなのか?」

「好きという程のものじゃないわ。ただ幼い頃に小耳に挟んだ時は……とても素敵な催しものだと思ったの」

飛鳥は空を仰ぎ、遠い場所を見るように瞳を細くさせる。

口元には、自嘲の笑みがあった。

「私が居た場所は、本当につまらない場所だったわ」

そう語る飛鳥の顔に陰が落ちる。

「財閥の令嬢なんて言えば聞こえはいいかもしれないけど……肝心の両親はもう居ないし、人心を操る力なんて持って生まれたせいで、隔離のような形で寮制の学校に閉じ込められていたもの」

「…………へえ? それはお嬢様らしくねえな。さっさと抜け出せばよかったじゃねえか」

「そう、それよ。あの手紙が来なかったら、帰省に乗じて出ていくつもりだったの。行き先は……そうね。終戦のお祝いに、さっき話していたハロウィンでも経験しに行っていたわ」

歩廊の真ん中でおどけて笑う飛鳥。十六夜はその瞳に、哀愁の様なものを感じていた。

飛鳥の鬱屈とした生活の裏には、外の世界や文化に対する強い憧れがあったのだろう。

「"Trick or Treat!!"――このフレーズ、とても可愛らしくて素敵じゃない? 私も仮装をして、大人達に苦笑いされながらお菓子を貰いたかったわ」

「大きなカボチャの被りながら?」

「そうそう! ああだけど、そうね今の私なら魔女でもいいわ。似合うと思わない?」

「そうだな。天野辺りははまり役とか言いそうだな」

そう相槌を打つ十六夜。飛鳥はくるりとスカートを大きく靡かせ、一回転する。

その仕草は普段の落ち着いた彼女よりも、ずっと少女らしいものに見えた。

「私……箱庭に来て本当に良かったわ。こんなに素敵な場所に来る事が出来たんだもの。噂のハロウィンを経験する事は出来なかったけど……実家で飼い殺しにされる人生なんかよりも、よっぽど明日に期待を持てるもの」

「……そうかい。そりゃ何よりだな」

くるりくるりと歩廊の真ん中で廻る彼女を、十六夜は静かに見つめていた。

クルリクルリ――ステップを踏んで、ターンターン。飛鳥は飛び込むように十六夜の顔を覗き込んだ。その表情に陰は無い。何時もの小憎たらしく、悪戯っぽい笑みを向ける。

「さ、それじゃあ行きましょうか。一か所にずっといたら黒ウサギに見つかるもの」

「ん、そうだな。それはそうなんだが……なあ、お嬢様」

「何?」

「俺と手を組んでみないか?」

十六夜の突然の勧誘にえ? と呆ける飛鳥。しかし十六夜は気にせず言葉を続ける。

「契約内容は至ってシンプルだ。俺とお嬢様で春日部や天野、"ノーネーム"の奴らやこの箱庭に住まう修羅神仏全員を巻き込んで、俺達の……いや、俺達でハロウィンをやる。それだけだ」

十六夜の語る契約の中身。それは二人――恐らく"ノーネーム"は強制参加――でハロウィンをやろうというものだった。

その内容に少々面喰いつつも飛鳥は十六夜に聞き返す。

「そ、それは随分大事になりそうだけれど…………要はハロウィンのギフトゲームを主催する、という事?」

「ああ。箱庭で過ごす以上、やっぱり"主催者〈ホスト〉"は経験しないとな」

十六夜の言葉に、飛鳥はパァッと瞳を輝かせる。両手を合わせて感嘆の声を上げた。

「素晴らしい提案ね! スケールが大きくって……何より楽しそうだわ!!」

「なら、俺と手を組んでくれるって事で受け取ってもいいのか?」

「もちろんよ!」

「なら俺達が"主催者"するギフトゲームはハロウィンで予約しておこうぜ。じゃないとどっかの天野が勝手に何かを始めそうだ」

「そうね。もしそんな事したらハロウィンのゲームの時酷使してあげるわよ」

「ヤハハ! 相変わらず天野には手厳しいな、お嬢様」

二人は可笑しそうに笑いあう。

まるで悪戯を考えた子供のように、周りから見れば仲睦まじく遊ぶ少年と少女のようだ。

「とはいえ、今はまだ無理だけどな。まずは色々なギフトゲームに勝たないと」

「もちろん。こんなに大きなお祭りなんだもの。凄いギフトが貰えるゲームがあるはずよ」

「YES! 祭典では創作系のギフトを競い合う二大ギフトゲームが進行中なのですよ!」

「創作系? 何か作るの?」

「はいな。耀さんの持つ"生命の目録"のように人造・霊造・神造・星造を問わず、様々な創作系ギフトを持つもの達が参加できるギフトゲームなのでございます♪」

「へえ? よく分からんが、凄いギフトが貰えるのか?」

「それはもう! 新たにフロアマスターとなったサンドラ様から直々に恩恵を与えられるとなれば、よっぽどのものでございますよ!」

「そう。なら春日部さんに連絡して出場してもらおうかな。伝言お願いね、黒ウサギ」

「YES! 任されたのですよ♪ それではそれでは御二人様! 今から向かうので黒ウサギ二オトナシク捕マッテクレマスヨネ?」

壮絶な笑顔で問う黒ウサギ。二人は即答した。

「「断る!」」

瞬間、十六夜は地面にクレーターをつくる勢いでスタートダッシュ。飛鳥は反対方向に逃げるが、そらから現れたレティシアに捕まってしまう。

「きゃ!」

「フフ。観念してもらうぞ飛鳥」

黒い翼を畳み、微笑しながらブラブラと抱きつくレティシア。

飛鳥は仕方なさそうに降参の意味を込めて両手を上げる。最後に十六夜に向かって叫ぶ。

「十六夜君! 貴方が最後の一人よ! 簡単に捕まったら許さないわ!」

「了解! 任せとけお嬢様!」

ヤハハハハハハ! そう叫びながら赤窓の歩廊を走り抜ける。しかし"箱庭の貴族"と呼ばれる黒ウサギも負けじと並みの神仏ですら持て余す身体能力を発揮して追いかける。

「逃がさないのですッ! 今日という今日は堪忍袋が爆発しました! 捕まえたら黒ウサギの素敵な説教を長々と聞かせて差し上げるのですよーッ!!」

「ハッ! それは素敵な申し出だ! 帝釈天の眷属のご説法、聞かせたいのなら捕まえてみろ!」

十六夜は更に加速する。直線に逃げるのを止めて、建造物を蹴り上がる様に跳躍して上り、尖塔群の頭部に躍り出る。黒ウサギも壁を垂直に走って追いつく。

騒ぎを聞きつけたギャラリーの一人が、黒ウサギを指さして叫んだ。

「アレを見ろ! ウサギだ! "月の兎"が誰かと戦っているぞ!」

「"箱庭の貴族"がこんな最下層に!?」

「あれ、逆廻と黒ウサギじゃん。何してるんだ? こんなところで」

「何してるの? 早く行くわよ」

「まさかサンドラ様の就任式の為にわざわざ上層から祝いに来たのか!?」

観衆の様々な声を無視して黒ウサギも屋根に上った。

十六夜と黒ウサギは激しく睨み合いながら距離をとる。

そしていくつかの言葉を交わす。それはゲームに勝った方が互いに一回分の首輪を賭けれるというものだった。

物騒に笑う十六夜の眼には先ほどまでの遊び心は見当たらず、真剣なものに変わっていた。

互いの自由を賭けた、対等な勝負。それを望まれては全力で挑まざるを得ない。

問題児と黒ウサギの追いかけっこは、最終ラウンドを迎えようとしていた。




どうも、かなりお久しぶりのカゲショウです。
今回も今回ながら原作の文章ばっかりになってしまいました。
どれもこれもどっかに行ってしまった剣士が悪い! そしてそれを考えた作者が悪い! あ、結局自分が悪いんですね。

さて、今回はサブタイに『フラグ』という言葉が出てきました通り、これを機に飛鳥→十六夜でも書きたいなぁって思ってます。できるかは別の話ですが。
それとこの『フラグ』、実はもう一つ別の意味があるのですがお気づきになりましたでしょうか? 答えは教えません。でも、すぐにわかると思います。

予告です。地の文が剣士に戻るのは後少なくても二話後ぐらいになりそうです。
それでは次回も駄文にどうかお付き合いください。
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