問題児たちが異世界から来るそうですよ?―笑う自由人―   作:カゲショウ

3 / 22
剣士の口調があまり定まらないです……あと、剣士は少し知識がないところがあります。
読みにくいかもですが、どうかお付き合いください。


02話 烏合のリーダーに会いました

「――の。―まの」

体が揺らされながら誰かが呼ぶ声がする……。

だが残念だったな。ヒーローなら起きていただろうがオレはそんなことじゃ起きないぞ!

「天野、起きて」

「痛っ!」

その声と同時に頭に衝撃が来る。

目を開けると春日部が右の掌をオレの頭に対して縦にした状態で見ていた。

「おはよう、天野」

「おはよう、春日部」

傍から見れば穏やかに挨拶を交わしているようにいるように見えるだろう。

だが、その考えは春日部の右手とオレの頭のこぶを見て思い直してほしい。

「まったく……剣士君はこの世界で死にたいのかしら?」

久遠が腰に手を当てて起きれている。む? もしやオレが話を聞いてないと思っているな?

「ハハハ、そんなわけないだろう?」

「……では黒ウサギが行ったことを説明してください」

「この世界は面白い」

「よく聞いてたじゃねーか」

「だろ?」

「最後だけじゃないですかお馬鹿様!」

バシーーンッ! といういい音とともにオレと逆廻はハリセンで叩かれた。……地味に痛いな。

「要するにあれでしょ? オレたちが持ってる"恩恵"〈ギフト〉を使って『ギフトゲーム』をするけど、相手には十分注意しろってことだろ?」

「微妙にあってることが納得いきませんが……もういいです。では今から黒ウサギの仲間のところにお連れしますね♪」

切り替え早いなこの黒ウサギ……ま、いっか。

こうしてオレたちは黒ウサギの仲間のところへ向かうのであった――

「あ、春日部」

「何?」

「冒険してくる」

「行ってらっしゃい」

――オレ以外の三人が。

 

 

 

□■□■□

 

 

 

剣士が黒ウサギのもとを離れてからすぐ、「ちょっと世界の果てを見てくるぜ!」

と言って十六夜が抜け、現在は飛鳥と耀の二人だけが黒ウサギに付いて行っていた。

そして、大きな建物が見えてくると、黒ウサギは何かを見つけて大きく手を振り始めた。

「ジン坊ちゃーん! 新しい方を連れてきましたよー!」

そう叫ぶと向こうも気が付いたようで、少し黒ウサギたちに近づく。

「お帰り、黒ウサギ。そちらの御ニ方が?」

「はいなこちらの御四人様が――」

黒ウサギがクルリ、とニ人を振り返り、笑顔のまま固まった。

「…………え、あれ?」

黒ウサギは困惑した顔で飛鳥と耀を見る。

「あと二人いませんでしたっけ? ちょっと目つきが悪くて、かなり口が悪くて、全身から"俺問題児"ってオーラを放っている殿方と"俺自由です"って感じでへらへら笑ってた殿方が……」

「ああ、十六夜君たちのこと? 十六夜君なら"ちょっと世界の果てを見てくるぜ!"と言って駆け出していったわ。あっちの方に」

飛鳥はどうでもいいように上空から見えた断崖絶壁を指さす。

「な、なんで止めてくれなかったんですか!」

「"止めてくれるなよ"と言われたもの」

「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!?」

「"黒ウサギには言うなよ"と言われたから」

「嘘です、絶対嘘です! 実は面倒くさかっただけでしょう御二人とも!」

「「うん」」

ガクリ、と黒ウサギが前のめりに倒れる。

「……それで、剣士さんは何処へ?」

「"冒険してくる"としか言わなかったから……」

「なお性質が悪いです!」

さらに前のめりになる黒ウサギ。

そして、何かを思い出したかのようにあせった顔を上げる。

「た、大変です! "世界の果て"にはギフトゲームのため野放しにされている幻獣が……!」

「幻獣?」

「は、はい。ギフトを持った獣を指す言葉で、特に"世界の果て"付近には強力なギフトを持ったものがいます」

「あら、それは残念。もう彼らはゲームオーバー?」

「ゲーム参加前にゲームオーバー? ……斬新?」

「冗談を言っている場合じゃありません!」

ジンは必死に事の重大さを訴えるが、二人は叱られても肩を竦めるだけで反省した様子は窺えない。

黒ウサギはため息を吐きつつ立ち上がった。

「はあ……ジン坊ちゃん。申し訳ありませんが、皆様の御案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」

「わ、わかった。黒ウサギはどうする?」

「問題児を捕まえに参ります。事のついでに――"箱庭の貴族"と謳われるこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやりますっ!」

悲しみから立ち直った黒ウサギは怒りのオーラを全身から噴出させ、黒か青かわからない髪(黒ウサギなので恐らく黒)を淡い緋色に染めていく。

外門めがけて空中高く跳び上がった黒ウサギは外門の脇にあった彫像を次々と駆け上がり、柱に水平に張り付く。

「一刻程で戻ります! 皆さんはゆっくりと箱庭ライフをご堪能ございませ!」

黒ウサギは、淡い緋色の髪を靡かせ踏みしめた門柱に亀裂を入れる。全力で跳躍した黒ウサギは弾丸のように飛び去り、あっという間に三人の視界から消え去っていった。

巻き上がる風に髪の毛を押さえていた飛鳥が呟く。

「…………箱庭の兎は随分早く跳べるのね。素直に感心するわ」

「ウサギたちは箱庭の創始者の眷属。力もそうですが、様々なギフトの他に特殊な権限も持ち合わせた貴種です。彼女なら余程の幻獣と出くわさない限り大丈夫だと思うのですが……」

飛鳥は「そう」と呟き、心配そうにしているジンに向き直った。

「黒ウサギも堪能くださいと言っていたし、御言葉に甘えて先に箱庭に入るとしましょう。エスコートは貴方がしてくださるのかしら?」

「え、あ、はい。コミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします。御二人の名前は?」

「久遠飛鳥よ。そこで猫を抱き抱えているのが」

「春日部耀」

ジンが礼儀正しく自己紹介し、飛鳥、耀、もそれに倣う。

「さ、それじゃあ箱庭に入りましょう。まずはそうね。軽い食事でもしながら話を聞かせてくれると嬉しいわ」

飛鳥がジンの手を引いて外門をくぐり、耀はそれについていく。

「あ、やっほー久遠、春日部」

「あ、ジン君だ」

「「「……」」」

外門をくぐるとそこには傍らに桶を乗せた台車を押している狐耳が生えた少女を置いた剣士がいた。

 

 

「何で此処に剣士君がいるのかしら……?」

さっきまで黙ってたと思えばいきなり『あなたはいらない』発言ですか?

「酷いなぁ、久遠」

「酷いも何も、あなたh冒険に出かけたんじゃなかったの?」

「飽きたからやめた」

「飽きたって……はぁ……」

今思ったけど久遠って、オレと会話するたびにため息ついてるような気がする。

幸せが逃げるぞ?

「え、えっと……リリ? こちらの男性は?」

「あ、えっと、さっきまで迷子になってた天野剣士さん……ですよね?」

「うん。初めましてジン君。つい先ほどこの娘に保護されました天野剣士です。よろしくな」

「え? あ、はい……」

ジン君が何かを疑うような目をしてオレを見る。

あ、ジン君はまだオレがどんな立場か言ってなかったな。

「ちなみに黒ウサギからこの世界に呼び出された人の一人だからそんなに警戒しなくてもいいよ」

「あ、そうなんですか。僕はコミュニティーのリーダーをしていますジン=ラッセルです」

ぺこりと頭を下げるジン君。さすがリーダー。礼儀正しい。

「では、天野さん。私は失礼しますね」

「あ、うん気を付けてね」

そう言ってリリちゃんの頭を撫でる。リリちゃんは気持ちよさそうに目を細めて、頭から手を放すと少し残念そうにしながら「では」と言って台車を押して町のほうへと消えて行った。

「剣士君、あなた馴染みすぎじゃないかしら……」

「そうか? 普通だろ」

「…………はぁ」

久遠は本当に幸せを手放すのが好きだなぁ……そんなんじゃ彼氏なんてできな「何かしら?」いえ、なんでもナイデスヨ?

「天野」

春日部がオレの前に立って名前を呼ぶ。にしても本当にその猫とべったりだな春日部は。

「何だ?」

「冒険、楽しかった?」

「もちろん」

「そう。よかったね」

春日部が薄く笑う。何だ、笑うことできるじゃん。

「あの、何処かの店に行きませんか? 段取りは黒ウサギに任せていたので……よかったらお好きな店を選んでください」

ジン君のこの言葉でオレたちは手近にあった『六本傷』の旗を掲げている店に入った。

 

 

「いらっしゃいませー。御注文はどうしますか?」

それぞれ頼むものが決まったので店員を呼ぶと、猫耳をはやした店員が笑顔で出てきた。

にしても今日は獣耳との遭遇率が高いなぁ……。

「えっと、紅茶二つと緑茶に……剣士君は何にするの?」

久遠がメニューを開いてオレに聞く。そういえばオレだけ決めてなかったな。

「じゃ、水」

「……本当にそれでいいの?」

「久遠、水を侮ってはいけないんだぜ?」

実際、水だけで一か月は過ごせた時期があったからな。

「……水を一つ。あと軽食にこれとこれに……」

「にゃー(ネコマンマを)!」

「はいはーい。ティーセット三つと水とネコマンマですね~」

「「「え?」」」

春日部以外の三人が「ん?」と首を傾げる。まぁ、注文内容と面子考えればネコマンマは誰が注文したかわかるけど……。

すると春日部は驚いたような顔をして猫耳店員に聞いた。

「三毛猫の言葉、わかるの?」

「そりゃわかりますよー私は猫族なんですから。お歳の割に随分と綺麗な毛並みの旦那さんですし、ここはちょっぴりサービスさせてもらいますよー」

「にゃ、にゃうにゃーにゃー(ねーちゃんも可愛い猫耳に鉤尻尾やな。今度機会があったら甘ガミしに行くわ)」

「やだもーお客さんお上手なんだから」

「箱庭ってすごいね。私以外にも三毛猫の言葉がわかる人がいたよ」

三毛猫を抱き抱えて春日部が言う。というか君も解るんですね。

「ちょ、ちょっと待って。あなたもしかして猫と会話できるの!?」

久遠も驚いた。そりゃそうか人間は普通は会話できないからな。

「もしかして猫意外にも意思疎通は可能ですか?」

ジン君が聞く。というかできるよね? 何かそんな気がする。

「うん。生きているなら誰とでも話はできる」

やっぱりね(笑)

「じゃあそこに飛び交う野鳥とも会話が?」

「うん、きっと出来る? ええと、鳥で試したことがあるのは雀や鷺や不如帰ぐらいだけどペンギンがいけたからきっと大丈夫」

「「ペンギンッ!?」」

あ、何か少し春日部のギフトが羨ましくなってきた。

「う、うん。水族館で知り合った。他にもイルカ達とも友達」

…………水族館って何だろう。

「会話の幅が凄いですね。でも、全ての種と会話が可能なら心強いギフトですね。この箱庭において幻獣との言葉の壁と言うのはとても大きいですから」

「そうなんだ」

「一部の猫族や黒ウサギのような神仏の眷属として言語中枢を与えられていれば意思疎通は可能ですけど、幻獣達はそれそのものが独立した種の一つです。同一種か相応のギフトがなければ意思疎通は難しいと言うのが一般です。箱庭の創始者の眷属に当たる黒ウサギでも全ての種とコミュニケーションをとることはできないはずです」

「つまり、春日部のギフトは素敵ギフトってわけか」

「素敵って……まぁそうね。春日部さんには素敵な力があるのね。羨ましいわ」

久遠が羨ましそうに呟くのに、褒められた春日部は困ったように頭を掻いている。

「久遠さんは……」

「飛鳥でいいわ。よろしくね春日部さん」

「う、うん。飛鳥はどんな力を持っているの?」

「私? 私の力は……まあ、酷いものよ」

「おや? 誰かと思えば東区画の最底辺コミュ二ティ、"名無しの権兵衛"のリーダー、ジン君じゃないですか。今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないんですか?」

春日部と久遠がそんな会話をしていると二メートル超えてそうな大柄な体つきをしてピチピチのタキシードを着た男に声を掛けられた。

……見た瞬間吹き出しそうになったのは秘密である。

「僕等のコミュニティはノーネームです。"フォレス・ガロ"のガルド=ガスパー」

ジン君はガルドと呼んだ男をにらみつける。が、男はその視線を気にせずにオレたちのテーブルの空席に腰を下ろした。……一人で二人分くらい場所とってるな。

「黙れ、この名無しめ。聞けば新しい人員を呼び寄せたらしいじゃないか。コミュニティの誇りである名と旗印を奪われてよくも未練がましくコミュニティを存続させるなどできたものだ。そう思わないかい? お嬢様方に、紳士様」

「失礼ですけど、同席を求めるならばまず氏名を名乗った後に一言添えるのが礼儀ではないかしら?」

おおぅ。このお嬢様は本当に初対面の人に高圧的だな。初対面の人には愛想よくと親に習わなかったのか? 因みにオレは学んでない。

「おっと失礼。私は箱庭上層に陣取るコミュニティ六百六十六の獣の傘下である

「烏合の衆の」コミュニティのリーダーをしている……ってマテやゴラァ!!誰が烏合の衆だ小僧オォ!」

「ぶふっ!」

烏合の衆のコミュニティリーダーで、少し笑ってしまった。

あと、久藤さん。そんな風にきっつい視線を送られると心が持たないのでやめてください。

「これは失礼しました。実はこちらのジン君が喋りたがらない箱庭のことについて教えて差し上げようかと」

ガルドはジン君を睨みつけた後、すぐに冷静になって話を再開した。

「ガルド! それ以上口にしたら」

「口を慎めや小僧。過去の栄華に縋る亡霊風情が。自分のコミュニティがどういう状況におかれてんのか理解できてんのかい?」

「ハイ、ちょっとストップ」

二人を久遠が言葉が遮った。……いつから久藤は司会進行役になったんだ?

「ねえ、ジン君。ガルドさんが指摘しているジン君のコミュニティが置かれている状況というものを説明していただける?」

おいおい、久遠。お前はどっちの味方だよ? ほら、ジン君が睨まれて黙ってるじゃないか。……だからといってこっちを睨むのもやめてもらえませんか? つか、さっきからオレ喋ってないよね? 何でわかるの?

「貴方は自分のことをコミュニティのリーダーと名乗ったわ。なら黒ウサギと同様に、新たな同士として呼び出した私たちにコミュニティとはどういうものかを説明する義務があるはずよ。違うかしら?」

「いや、そんなのその場のノリでい「何か言った?」何でもないですお嬢様」

……箱庭に来てから一日も経ってないのにもう上下関係ができた。

その光景を見ていたガルドが急に口を挟んできた。

「レディに紳士様、貴方達の言うとおりだ。コミュニティの長として新たな同士に箱庭の世界のルールを教えるのは当然の義務。しかし、先ほども言ったように、彼はそれをしたがらないでしょう。よろしければフォレス・ガロのリーダーであるこの私がコミュニティの重要性と小僧ではなくジン=ラッセル率いるノーネームの

コミュニティを客観的に説明させていただきますが」

久遠は一度ジン君を見るがジン君は俯いて黙り込んだままだった。

「頼みたくないけどお願いするわ」

凄く嫌々した表情で言う久遠。だから、聞かなくても良かったのに……。

じゃ、オレは猫と遊んでるか。

「にゃー(小僧、ワシと話でもするか)?」

「そうだね、話が長くなりそうだから話そうぜ」

「にゃにゃー(なんや、あんたもワシの言葉がわかるんか)」

「ハハッ! ただの勘だ」

「……にゃ、にゃにゃー(……あんた、面白いやっちゃなー)」

「逆廻程じゃねーよ」

「…………天野、凄い」




前よりフリーダムになりました剣士君。
因みに次回、剣士のギフトを出す予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。