問題児たちが異世界から来るそうですよ?―笑う自由人― 作:カゲショウ
どうか、よろしくお願いします。
「単刀直入に言います。もしよろしければ、黒ウサギ共々、私のコミュニティに入りませんか?」
「へ?」
猫と話してるうちに話が佳境に入っていたらしい。
まぁ、オレは話聞いてなかったから春日部と久遠の二人だろうな。
「な、何を言い出すんですガルド=ガスパー!?」
「黙れや、ジン=ラッセル」
机を叩いて激昂したジン君がガルドに文句を言おうとするが、ガルドの剣幕に押されて言葉の続きが出てこない。
子供相手に大人げないなぁ……。
そもそもテメェが名と旗印を新しく改めていれば最低限の人材は残っていたはずだろうが。それを貴様の我が儘で追い込んでおきながら、どの顔で異世界から人材を呼び出した」
「そ……それは」
ジン君が言いよどむ。どうも誇りと仲間を天秤にかけて誇りが勝ったって感じだな。
「何も知らない相手なら騙しとおせるとでも思ったのか? その結果黒ウサギと同じ苦労を背負わせるってんなら……こっちも箱庭の住人として通さなきゃならねえ仁義があるぜ」
ジン君が僅かに怯んだ。その様子にガルドは鼻を鳴らすと話を再開した。
「……で、どうですか? 返事はすぐにとは言いません。コミュニティに属さずとも貴方達には箱庭で三十日の自由が約束されています。一度、自分達を呼び出したコミュニティと私達"フォレス・ガロ"のコミュニティを視察し、十分に検討してから―――」
「結構よ。だってジン君のコミュニティで私は間に合っているもの」
「「は?」」
あ、フラれた。
断られたガルドと俯いていたジン君は思わず声を上げていた。
誘いをばっさりと切り捨てられ、ガルドもジン君も飛鳥の顔をうかがうが、久遠は何事もなかったように紅茶を飲み干すと、春日部に笑顔で話しかける。
「春日部さんは今の話をどう思う?」
「別に、どっちでも。私はこの世界に友達を作りにきただけだもの」
あれ? こっちの世界に来た理由が意外と軽い……。
「あら意外。じゃあ私が友達一号に立候補していいかしら? 私達って正反対だけど、意外に仲良くやっていけそうな気がするの」
久遠は自分の髪を触りながら春日部に聞く……自分で言いながら恥ずかしくなるなよ。
「うん。飛鳥は今までの人たちと違う気がする」
春日部はそれを快く承諾した。よかった、よかった。
「にゃ、にゃー(よかったな、お嬢……お嬢に友達ができて、ワシも涙が出るほど嬉しいわ)」
「良かったな、三毛猫」
「にゃうにゃ(せやな……)」
晴れて友達になった春日部と久遠。それを感慨深げな目で見るオレたち。これがいわゆるハッピーエンドってやつか……。
「理由を聞かせてもらっても……」
ガルドがこのいい雰囲気に水を差す。ちっ、空気が読めない奴だな……。
「私、久遠飛鳥は――裕福だった家も、約束された将来も、おおよそ人が望みうる人生の全てを支払って、この箱庭に来たのよ。それを小さな小さな一地域を支配しているだけの組織の末端として迎え入れてやる、などと慇懃無礼に言われて魅力的に感じるとでも思ったのかしら。」
……本物のお嬢様だったとは。
「で? 剣士君はどうするの?」
「え? オレも?」
まさかの展開だ……。
「……また話を聞いてなかったのかしら」
「いや、話は聞いてたぞ」
三毛猫の話は……な。
「そう……で、どうするのかしら?」
久遠が半眼でこちらを睨みながら、ガルドとジン君は期待した眼差しを向けながらオレの顔を見る。(因みに春日部は無表情のままだった)
ま、答えなんて最初から一つなんだけどな。
「オレは"ノーネーム"に入る約束してるから聞く意味はないだろ」
約束を破るわけにはいかないもんな。
「「「………………は?」」」
この場にいる全員が「何言ってんだこいつ」みたいな顔をしている。
……何故だ?
「どうしたんだよ。話は決まったじゃないか」
一向に話が進みそうにないので会話を促してみる。その言葉に、久遠がいち早く現実に戻ってきた。
「剣士君、"約束"とはどういうことなの? 私たちはこの場で初めてジン君たちのコミュニティの話をしてたはずよ?」
久遠の言葉にジン君と春日部が首を縦に振っている。……説明しないとダメか。
「じゃあ久遠、今から説明するがツッコミは話が終わった後な」
「わかってるわよ」
「それじゃ、ガルドさんもお聞きください。剣士の冒険~迷子の森散策~」
「迷子になるくらいなら行かなければいいのに」
ツッコミは後からと言ってたのに……
□■□■□
「……迷った」
春日部に別れを告げてからはや数分、オレは森の中を彷徨っていた。
当てもなく森を移動していたのが仇となり現在進行形で迷子という存在になっていた。
「まさかこのまま遭難して飢え死に……はないか。しばらくすれば黒ウサギが捜索するだろうし」
それを抜かしたとしてもオレは飲まず食わずで二週間はいけるけどな。
「でもなぁ……あれ、残り二日位になると喋れない位きついんだよなぁ……」
正直あまりやりたくない。つまりこれは黒ウサギが来なかった場合の最終手段になるわけだ。
……ぶつくさ言ってる場合じゃないか。
「とりあえず人を探してみよう。そこから町か村にでも案内してもらえばいいし」
やることは決まった。後は会えることを祈って行動するだけだ。
自分を信じて明日を信じて頑張るか!
「せーの……どんっ!」
そしてオレはその場から思い切り駆けだした。
「……オレは何てバカなんだ」
あれから数分、木に両手をついて先ほどの自分の行動を悔やんでいた。
何故、悔やんでいるかって? そんなの…………元来た道も忘れたからに決まってるだろ!
でもそう長く落ち込んでられないか……。
復活まで、3、2、1……
「よぉ、兄ちゃん」
カウント終了と同時に肩に手を置かれた。……あれ? 似たようなことがついさっき会ったような……ま、いいか。
とりあえず、肩に手を置いた奴の顔でも見るか。
「持ってる金全部置いてけや」
まさか、ガラの悪い男どもに囲まれていたとは思わなかったよ。
つか、金持ってないし。ここは誤魔化すとするか。
「すいません、此処の近くに町とかありますか?」
なるべく警戒心も敵意も見せず、へらへらと笑ういつもの顔で尋ねる。
「町? んなもん、此処からあの方角にまっすぐ進めばあるだろうが」
「あ、そうなんですか。ありがとうございます。では」
「おう。気をつけろよ――じゃねだろ、ゴラ!」
ちっ! 後ちょっとだったのに……。
「いいから、金全部置いてけってんだよ!」
ボスと思われる男の怒声で周りの男どもが一斉に武器を構える。おぉ、怖い怖い。
「金って言われても、持ってないから無理だ」
「なら、身ぐるみ全部置いてけや」
いきなり服全部脱げって……もしかして変態?
「嫌ですよ。変態の手籠めにされたくないですから」
「ンなこたしねーよ! いいから金目のモン全部置いてけ!」
「だが、断る!」
「このガキ……ッ!」
おやおや、目の前の変態(笑)が顔を真っ赤にして怒ってる。ハハハ、見てるだけで面白いな。
と、まぁ、おふざけも体外にしてそろそろ真面目に取り合ってやるか。
「なぁ、おっさんたち。オレとギフトゲームをしないか?」
「あ? ギフトゲームだと?」
「そうだ。おっさんたちが勝てばオレは身ぐるみ全部置いてく。オレが勝ったら見逃す……どうだ? 悪い条件じゃないだろ?」
「何だと……」
やはり、まだ釣れないか……後一押しだな。
「そっちは複数人、こっちは一人なんだ。条件がいいのはそっちだろ?」
「てめぇ……俺たちをなめてんのか?」
お、頭に血が上ってきたな……あと少し……。
「もしかして……負けるのが怖いのか?」
「ッ! 上等じゃねぇか……」
かかった。
「では、ギアスロールを確認してください」
わざと仰々しく振る舞い、相手の集中を乱す。
そして、オレはギアスロールに必要事項を書き込んでいく。
『ギフトゲーム名:"集団リンチ"
プレイヤー一覧:天野剣士
盗賊
クリア条件:相手を死亡以外で戦闘不能にする
敗北条件:死亡以外で戦闘不能になる
宣誓 "盗賊"印』
ま、この勝負は相手がよほどでない限り負けないけどね。
「それじゃ、始めるか」
「「「ウォオオオオ!!」」」
むさい男が一斉に寄ってくる図……気持ち悪いな。
じゃ、時間かけるのももったいないし、一気に終わらせるか。
そういって、パチンッと指を鳴らす。すると盗賊の頭に顔サイズの岩が落ちてきた。
「ガ……ハッ……」
うめき声を漏らして全員倒れる。やっぱりね、オレが勝った。
「じゃあね、おっさんたち。道教えてくれてありがとう」
それだけ言い残してオレはおっさんが言った方角へ走り出した。
「……迷った」
まさかの迷子リターンズ。
だが、今度は場所が違う。今度はおっさんから教えてもらった町(建物)の中だった。
「もしかしたら、オレは方向音痴なのか?」
だが、オレはここで大切なことを思い出す。
「そういえは、目的地決めてなかったから迷子じゃないじゃん」
なら、迷子リターンズじゃないな。
「そうとわかれば恐れるものは何もないな」
あるとすれば、黒ウサギたちの捜索がないことだな。
「……先に黒ウサギたちの情報を聞き出すか」
そう思って、辺りを見回す。すると、奥から子供たちが桶を持って歩いているのが見えた。
…………聞くついでに助けるか。
オレは、子供たちに小走りで駆け寄った。
「おーい君たちー」
オレの呼びかけに子供たちが驚いたような顔をしてこちらを見る。というかこの子たちも獣耳が……。
「なんでしょうか?」
子供たちの中で一番年上に見える狐耳をした娘が応えた。が、その眼には少しばかり警戒心があった。まぁ、初対面だからしょうがないか。
「えっと、聞きたいことがあるんだけど……いいかな?」
できるだけ優しい声音で敵意を和らげる。実際敵じゃないし。
「えっと……何が聞きたいんですか?」
少し首を傾げながら聞き返してくる。どうやら話は聞いてくれるみたいだな。
「ここら辺にウサミミ生やして、なんかエロいかっこうしてるお姉さん知らない?」
ちなみにこれも嘘じゃない。ただ、黒ウサギの特徴を絞ったらこうなっただけだ。
「あ、黒ウサギのお姉ちゃんのことですか」
「うん。そうだよ」
どうやらあれだけで伝わるらしい。
……子供たちにもそう思われてるってことか。
「もしかして、黒ウサギのお姉ちゃんが呼びに行った新しい人ですか?」
少し目をキラキラさせてこちらを見る。よく見ると後ろの子供たちもキラキラと興奮したような目で見ていた。
「うん。だけど、ちょっとはぐれちゃって……何処にいるか知らないかな?」
「うーん……黒ウサギのお姉ちゃんの場所は知らないけど外でジン君が待ってると思います」
「ジン君?」
もしかしてここに入る前にちらりと見えたあの少年のことだろうか。
「はい。私たちのコミュニティのリーダーでなんです。黒ウサギのお姉ちゃんは私たちをお世話してくれてるんです」
「へぇー」
黒ウサギ、実は人望が厚いのか……。
「うんしょ……」
後ろの女の子が桶を持ち直す。そういえば重そうにしてるな……どれ、情報をくれたお礼に手伝ってやるか。
「ごめんな、そんな重いもの持たせたまんまで」
「い、いえ! 慣れてるので大丈夫です!」
「そうは言ってもな……よし、じゃあ、これに乗せるといいよ」
そう言ってオレは足元に荷物を運ぶための台車を出す。
「え? あれ?」
子供たちが今まで見当たらなかった台車があるのをみて、目を白黒していた。
まぁ、無理もないか。本当に何もなかったんだから《・・・・・・・・・・・・・》。
「ほら、これにその桶を置いて運ぶといいよ」
「え? でも……」
「いいから、いいから。これはオレがコミュニティの仲間になった証としてくれるかな?」
「え? じゃあ、入ってくれるんですか!」
二つの尻尾を嬉しそうに振りながら訪ねてくる狐ちゃん(仮)……全力で振ってる尻尾が可愛いな。
「ああ、約束するさ」
狐ちゃん(仮)の頭に手を乗せて優しく撫でながら言う。
「あ、ありがとうございます!」
□■□■□
「――というわけなんだ」
「で、その後すぐ私たちが入ってきたと……」
「正解」
「……頭痛くなってきた」
どうやら、久遠はオレと話すと幸せが逃げるか頭痛が起こるらしい……難儀な体質だな。
「あ、あの、皆様……」
「黙りなさい」
何かを言いかけたガルドの口が勢いよくガチンッと閉じられた。よかったな、舌は噛んでないみたいだぞ。
「貴方からはまだまだ聞き出さなければいけないことがあるのだもの。貴方はそこに座って私たちの質問に答え続けなさい」
久遠の言葉にガルドは椅子に罅を入れる勢いで座る。
……さっきから様子がおかしいな。久遠の仕業か?
「ガルド=ガスパー……?」
ジン君は突然のことに口を挟めずに、ガルドは完全にパニックに陥っていた。
「お、お客さん! 当店で揉め事は控えて」
ガルドの様子に驚いた猫耳の店員が急いで駆け寄る。
「ちょうどいいわ。猫耳の店員さんも第三者として話を聞いてくれないかしら。たぶん、面白い話が聞けると思うわ」
面白い話……ねぇ……。
「ねぇジン君。コミュニティの旗印を賭けるギフトゲームなんてそんなに頻繁に行われるものなのかしら?」
「い、いえ。そんなことはありません。旗印を賭ける事はコミュニティの存続を賭ける事ですからかなりのレアケースです」
「そうよね。それを強制できるからこそ魔王は恐れられる。だったら、なぜあなたはそんな勝負を相手に強制できたのかしら?」
「ほ、方法は様々だ。一番簡単なのは、相手のコミュニティの女子供を攫って脅迫すること。コレに動じない相手は後回しにして、徐々に他のコミュニティを取り込んだ後、ゲームに乗らざるを得ない状況に圧迫していった」
「なるほど。けど、そんな方法じゃ、組織への忠誠なんて望めないわね。どうやって従順に働かせているのかしら?」
「各コミュニティから、数人ずつ子供を人質に取ってある」
人質……ずいぶんと腐ったことしてるんだな。
ピクリと久遠の片眉が動き、コミュニティに無関心な春日部でさえ不快そうに目を細める。
「それで、その子供たちは何処に幽閉されているの?」
「もう殺した」
その瞬間、オレはガルドを殴りたい衝動に駆られたが何とか抑えこむ。
「始めてガキ共を連れてきた日、泣き声が頭に来て思わず殺した。それ以降は自重しようと思っていたが、父が恋しい母が愛しいと泣くのでやっぱりイライラして殺した。それ以降、連れてきたガキは全部まとめてその日のうちに始末することにした。けど身内のコミュニティの仲間を殺せば組織に亀裂が入る。始末したガキの遺体は証拠が残らないように腹心の部下が食
「黙れ」
ガチン! と先ほど以上の勢いでガルドの口が閉じられた。
「素晴らしいわ。ここまで絵に描いたような外道とはそうそう出会えなくてよ。さすがは人外魔郷の箱庭の世界といったところかしら……ねえジン君?」
久遠に冷ややかな視線と凄みを増した声を向けられ、ジンは慌てて否定する。
「彼のような悪党は箱庭でもそうそういません」
むしろたくさんいた方がおかしい。
「そう? それは残念。それよりジン君。箱庭も法を犯せば裁くようだが、この件は裁けるのかしら?」
「難しいです。吸収したコミュニティから人質を取ったり、身内の仲間を殺すのはもちろん違法ですが……裁かれるまでに彼が箱庭の外に逃げ出してしまえば、それまでです」
「そう。なら仕方がないわ」
パチンと久遠が指を鳴らす。それが合図だったのか、ガルドを縛り付けていた力は霧散し、自由が戻ったガルドはテーブルを砕いて立ち上がった。
「こ……この小娘ガァァァァァ!!」
雄叫びとともにガルドの姿は虎の姿へ変わった。
「テメェ、どういうつもりか知らねえが……俺の上に誰が居るかわかってんだろうなぁ!? 箱庭第六六六外門を守る魔王が俺の後見人だぞ!! 俺に喧嘩を売るってことはその魔王にも喧嘩を売るってことだ! その意味が――」
「黙りなさい。私の話はまだ終わってないわ」
またガルドは勢いよく黙る。だが、ガルドは丸太のように太くなった腕を振り上げて久遠に襲い掛かった。
……………………そんなことさせないけどな。
「ッ!?」
ガルドが動きを止める。いや、正確に言えば何かに引っ張られるように止まった。
何故なら、彼の腕が地面と鎖で繋がっているからだ。
「……これは剣士君がやったのかしら?」
「ハハッ、どうだろうね」
何もしていないかのように肩をすくめて言う。
「それにしても好都合ね。ジン君の目標である"打倒魔王"に一歩近づけるなんて……そうでしょ、ジン君?」
久遠の言葉にジンは大きく息を呑んだ。魔王の名が出たときは恐怖に負けそうになったが、目標を久遠に問われて我に返る。
「……はい。僕達の最終目標は、魔王を倒して僕らの誇りと仲間達を取り戻すこと。いまさらそんな脅しには屈しません」
「そういうこと。つまり貴方には破滅以外のどんな道も残されていないのよ」
「く……くそ……っ!」
ガルドは悔しそうに拳を下ろす。それと同時に鎖が霧散して消え去る。
「だけどね。私は貴方のコミュニティが瓦解する程度の事では満足できないの。貴方のような外道はずたぼろになって己の罪を後悔しながら罰せられるべきよ」
このお嬢様はきっとSなのだろう。じゃなかったらここまでえげつないことは言わない。
「そこで皆に提案なのだけれど」
久遠の言葉に頷いていたジンや店員達は、顔を見合わせて首を傾げる。
久遠はガルドに視線を向け、不敵な笑みを浮かべて言った。
「私たちとギフトゲームをしましょう。貴方の"フォレス・ガロ"存続と"ノーネーム"の誇りと魂を賭けて、ね」
本当にこの人は恐いな……。
ちょっと長くなりました。
剣士のギフトがなんなのかわかりましたか?
ヒントは召喚系ではありませんよ?
次は、あの和装ロリの話です。