問題児たちが異世界から来るそうですよ?―笑う自由人―   作:カゲショウ

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とりあえず話を二つに分けました。
…………前書きで書くことがなくなってきました。


05話 和装ロリに出会いました 前編

"サウザンドアイズ"へ向かう途中の道でオレ達四人は滅多に見られないほど満開の桜を見上げていた。因みにジン君は一足早くコミュニティに帰って行った。

「桜の木……ではないわよね? 花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないもの」

「いや、まだ初夏になったばかりだぞ。気合の入った桜が残っていてもおかしくないだろ」

「……? 今は秋だったと思うけど」

「春日部こそ何言ってるんだ? 今は春のはずだぞ」

「…………」

何故だ……何故春日部はそんな可愛そう物を見る目でオレを見るんだ!

そんなことを言い合っているオレ達に黒ウサギは笑いながら説明をする。

「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ」

「へぇ?パラレルワールドってやつか?」

「近しいですね。正しくは立体交差並行世界論というものなのですけども……今からコレの説明を始めますと一日二日では説明しきれないので、またの機会ということに」

なんか難しそうな話をし始めてしまった。唯一解ったことと言えばオレ達が違う世界の住人だということぐらいだな。

曖昧に話を濁して振り返る黒ウサギ。どうやら目的の店に着いたらしい。その商店の旗には青い生地に互いが向かい合う二人の女神像が記されていてるが多分あれが"サウザンドアイズ"の旗なのだろう。

「よし。帰るか」

クルッ(オレが方向転換する音)

「させない」

ガッ(春日部がオレの左肩を掴む音)

「「…………」」

「諦めなさい剣士君」

久遠の一言で全てを諦めることにした。

「……ヘイ、ミス春日部。なぜオレの肩をまだ掴んでいるんだい?」

「放したらまた逃げ出すから」

「オーケー。理由は解った。なら何故オレの肩に指が食い込む位の勢いで掴んでるんだ?」

「放したらまた逃げ出すから」

「……今日はいい天気ですね」

「放したらまた逃げ出すから」

「RPGの村人かよ!?」

あ、この世界に来て初めてツッコミした気がする。

そして店の前では、看板を下げる割烹着の女性店員の姿に黒ウサギは慌ててストップをかけようと手を伸ばす。

「まっ――」

「待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません」

厳しいなこの店員。この容赦のなさはまるで久遠のようだ。

「なんて商売っ気の無い店なのかしら」

「ま、全くです! 閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!」

「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」

「そうだぞ、五分前行動は団体行動の基本だからな」

「出禁!? これだけで出禁とか御客様舐めすぎでございますよ! それに剣士さんはどうしてそちらの味方をするのですか!?」

「行かずに済むのならオレは喜んで敵になろう!」

あ、なんかオレかっこいいことと言ったな。

「天野?」グググッ(オレの肩をさらに強く掴む音)

「店員さん、話し合いをしようじゃないか」

「調子のいい人ね」

左肩が潰されそうなのに敵も味方も関係ないからな。うん。

「まぁ、"箱庭の貴族"であるウサギのお客様を無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」

「……う」

一転して黙り込んだ黒ウサギだが、逆廻が何の躊躇いもなく名乗った。

「俺達は"ノーネーム"ってコミュニティなんだが」

「ほほう。ではどこの"ノーネーム"様でしょう。よかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」

あ、この店員オレ達"ノーネーム"だから入店させない気だな。何となく雰囲気でわかる。

黒ウサギは心の底から悔しそうな顔をして、小声で呟いた。

「その……あの……私たちに、旗はありま――」

その瞬間、目の前を白い何かが通り過ぎて行った。

「いぃぃぃやほおぉぉぉぉ!久しぶりだ黒ウサギイィィィ!」

「きゃあーーーー…………!」

そして遠くなる黒ウサギの悲鳴と共にその白い何かは水路に落ちていった。

それを、オレ達は目を丸くし、店員は頭を抱えていた。

「……おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか? なら俺も別バージョンで是非」

「ありません」

「なんなら有料でも」

「やりません」

「店員さんバージョンは?」

「ありません!」

怒られた……。

「し、白夜叉様!? どうして貴女がこんな下層に!?」

「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろに! フフ、フホホフホホ! やっぱりウサギは触り心地が違うのう! ほれ、ここが良いかここが良いか!」

セクハラ親父のごとく黒ウサギの体を触りまくる白髪少女。その顔は満面の笑みで幸せを強く主張していた。

「し、白夜叉様! ちょ、ちょっと離れてください!」

白夜叉と呼ばれた少女……いや、幼女? は無理やり引き剥がされ、頭を掴み店に向かって投げつけた。

「ナイススロー」

縦回転でこっちに来る少女は、そのまま逆廻の方に飛んでいき――

「天野! シュートッ!」

「ゴバァ!」

――オレに向かって蹴られた。

それを見たオレは……。

「任せろ!」

春日部の手を振りほどいてゴールキーパーよろしく正面から受け止めた。

「逆廻……ナイスシュート」

「お前こそナイスセーブだぜ」

そしてオレと逆廻は一緒にワールドカップを目指す約束を――

「お、おんし! 初対面の美少女をボールみたいに蹴るとは何様だ!」

せずに白髪幼女に逆廻が怒られていた。

「十六夜様だぜ。以後よろしく和装ロリ」

が、特に悪びれた様子もなく言う。こいつ少し礼儀とか謝罪の心を習ったほうがいいんじゃないだろうか?

「で? あなたはいつまで抱きしめてるつもりかしら?」

「え? ああ、そういえば忘れてた……」

因みに白髪幼女は正面からオレと抱き合う形になっており顔だけは逆廻の方に向けている。

「すいませんね、忘れてて」

「いや、おんしの腕の中は気持ちよかったのでかまわんぞ」

特に怒った様子もなく、オレの腕から離れる白髪幼女。そして、春日部がオレの袖を少し引っ張る。

「天野はロリコン?」

「? 何だそれ」

聞いたことがない言葉だ。

「あなた……知らないの?」

久遠が驚いたような顔をしながら言う。もしかして皆知ってる言葉なの?

「知らないけど……もしかして知ってないとやばいこと?」

「そういうことはないけれど……」

久遠が何かを言いにくそうに顔を伏せる。その代わりに逆廻がいい笑顔で答えた。

「ロリコンってのは年の離れた幼女を恋愛対象や性的対象として見てる奴のことだ」

「春日部! オレはロリコンじゃない!」

不本意極まりない。

「貴女はこの店の人?」

久遠が話を変えるために白髪幼女に話しかける。

「おお、そうだとも。この"サウザンドアイズ"の幹部様で白夜叉様だよご令嬢。仕事の依頼ならおんしのその年齢のわりに発育がいい胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」

この幼女は変態なのだろうか?

「オーナー。それでは売り上げが伸びません。ボスが怒ります」

どこまでも冷たい人だなぁ……同じ割烹着ならリリちゃんの方がまだ愛想がよかったな。

「っと。それよりも」

オレは手になるべく柔らかい素材のタオルを出して、白髪幼女の頭に乗せた。

「む。なんじゃ?」

「ヤっさん濡れたままだからよく拭かないとだめだろ」

そう言いながらオレはヤっさんの頭を軽く拭いていく。

「ほぅ……おんし中々優しいのぉ」

「ハハッ。それはどうも、ヤっさん」

「ところでその"ヤっさん"と言うのは私のことか?」

「"白夜叉"って長いからね」

「人の名前に文句を言うか……まぁよかろう」

そう言いながらもオレに頭を拭かれ続けるヤっさん。こうしてみると本当に幼女に見えるけどこの人は本当に此処の幹部なのだろうか?

「やっぱり天野はロリコ――」

「いや、違うから」

「というよりそのタオルは何処から出したのかしら……」

人の親切心をなんと心得ているんだ。

「うう……まさか私まで濡れる事になるなんて」

ずぶ濡れの黒ウサギが現れた。

「黒ウサギにはタオルは出さないのかしら?」

「最初に湖に放り出した恨みがあるから断る」

「それもそうね」

ヤっさんは店先で黒ウサギ達を見回してにやりと笑った。

「ふふん。お前達が黒ウサギの新しい同士か。異世界の人間が私の元に来たという事は……遂に黒ウサギが私のペットに」

「なりません! どういう起承転結があってそんなことになるんですか!」

ウサ耳を逆立てて黒ウサギが怒る。あんまり怖くないけど。

「まぁ、冗談はさておき話があるのじゃろ。話があるなら店内で聞こう」

さっきのエロ親父紛いの光景を見た後じゃ何処まで本気かわからないが、ヤっさんは笑って店へ招く。

「よろしいのですか? 彼らは旗も持たない"ノーネーム"のはず。規定では」

「"ノーネーム"だとわかっていながら名を尋ねる、性悪店員に対する侘びだ。身元は私が保証するし、ボスに睨まれても私が責任を取る。いいから入れてやれ」

少し拗ねるような顔をする店員。まぁ、店員にしてみればルールを守っただけなのだから気を悪くするのは仕方がない事か。

店員の睨みを受けながらヤっさん以下四名が入っていく。

「……あなたは入らないのですか?」

「できることなら帰りたい」

「天野、行くよ」

「結局こうなるけどね……」

「……ゆっくりしていってください」

こうしてオレは春日部に襟首を引きずられながら入店した。

それにしても最後の店員さんの顔、少し笑ってたような……ま、いっか。

 

 

「生憎と店は閉めてしまったのでな。私の私室で勘弁してくれ」

オレ達が通されたのは白夜叉の私室だった。

和風の部屋作りで香のような物が焚かれており、風と共にオレ達の鼻をくすぐる。

個室と言うにはやや広い和室の上座に腰を下ろしたヤっさんは、大きく背伸びをしてからオレ達に向き直った。

「もう一度自己紹介しておこうかの。私は四桁の外門、三三四五外門に本拠を構える"サウザンドアイズ"幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ」

「はいはい、お世話になっております本当に」

うわ、凄い投げやりな反応だ……。

その隣で春日部が小首を傾げて問う。

「その外門、って何?」

「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心に近く、同時に強力な力を持つ者達が住んでいるのです。箱庭の都市は上層から下層まで七つの支配層に分かれており、それに伴ってそれぞれを区切る門には数字が与えられています。ちなみに、白夜叉様がおっしゃった三三四五外門などの四桁の外門ともなれば、名のある修羅神仏が割拠する人外魔境と言っても過言ではありません」

黒ウサギは紙に上空から見た箱庭の略図を描いてオレ達に見せた。それを見た春日部が感想を言う。

「……超巨大タマネギ?」

「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」

「そうだな。どちらかといえばバームクーヘンだ」

三人がそれぞれの意見を口に出す。が、オレは三人に聞かなければならないことができた。

「バームクーヘンって何?」

「「「…………」」」

場の空気が凍りついた。もしかしたら世間的には一般的なものだったかもしれない……。

「剣士君、喫茶店に入ってからずっと思ってたけど……あなたどんな生活してきたの?」

「もしかして家がすごく貧しかったとか?」

「それでも仲のいい奴とかから話位は聞いたことがあるはずだろ」

何か逆廻まで心配(?)してきたのが逆につらい……。

「おんしらやめてやれ。本気で泣きそうだぞ……」

ヤっさんの静止もありオレの生活の謎については聞かない方向になった。ヤっさん、マジ感謝です……。

「おんしらはうまいこと例えるが、私はバームクーヘンに一票だ。その例えなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番皮の薄い部分にあたるな。更に説明するなら、東西南北の四つの区切りの東側にあたり、外門のすぐ外は"世界の果て"と向かい合う場所になる。あそこはコミュニティに属してはいないものの、強力なギフトを持ったもの達が住んでおるぞ――その水樹の持ち主などな」

白夜叉は薄く笑って黒ウサギの持つ水樹の苗に視線を向ける。ヤっさんが指すのは逆廻が叩きのめした蛇神のことだろう。

「して、一体誰が、どのようなゲームで勝ったのだ? 知恵比べか? 勇気を試したのか?」

「いえいえ。この水樹は十六夜さんがここに来る前に、蛇神様を素手で叩きのめしてきたのですよ」

逆廻よ、お前は素手で神を倒したのか……お前も相当な『規格外』だな……。

「なんと!? クリアではなく直接的に倒したとはな!? ではその童は神格持ちの神童か?」

「いえ、黒ウサギはそう思えません。神格なら一目見れば分かるはずですし」

「む、それもそうか。しかし神格を倒すには同じ神格を持つか、互いの種族によほど崩れたパワーバランスがある時だけのはず。種族の力でいうなら蛇と人ではドングリの背比べだぞ」

つまり逆廻がいれば一対一の戦いで負けることはほとんどないってことか。

「白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったのですか?」

「知り合いも何も、あれに神格を与えたのはこの私だぞ。もう何百年も前の話だがの」

小さな(というか限りなく無に近い)胸を張り、カカと豪快にヤっさんが笑う。

「へぇ? じゃあオマエはあのヘビより強いのか?」

「ふふん、当然だ。私は東側の"階層支配者"だぞ。この東側の四桁以下にあるコミュニティでは並ぶ者がいない、最強の主催者なのだからの」

あ、この流れはヤっさんに喧嘩売る流れだ。あーあ。巻き込まれずに帰って寝たいな……。

「そう……ふふ。ではつまり、貴女のゲームをクリア出来れば、私達のコミュニティは東側で最強のコミュニティという事になるのかしら?」

「無論、そうなるのう」

「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた」

たぶんそれは好戦派のお前らだけであって、非戦派のオレにとっては景気の悪い話だろう。

第一勝てるわけがない。逆廻の軽いとはいえ蹴りを喰らってもピンピンしてるヤっさんは冗談抜きで久遠や春日部、それに逆廻も勝てないだろ……。

ま、お前らだったら……な。

「抜け目ない童達だ。依頼しておきながら、私にギフトゲームで挑むと?」

「え?ちょ、ちょっと御三人様!?」

「よいよ黒ウサギ。私も遊び相手には常に飢えている。だが、おんしは私に挑まないのか?」

そう言ってオレを見る。

正直参加したくない。だけど春日部がこっちを『参加するよね?』みたいな顔で見てくるから断りにくい……。

だがそこで諦めるオレじゃない! スキル発動! "言霊使い〈ことばマスター〉"!

「勝ちの見えてる戦いなんて面白くないからね。オレは参加しないよ」

どうだ! 嘘を言わず参加したくない意思を告げるテクニック! 我ながら素晴らしい言い訳だ。

「へぇ、逃げるのかチキン野郎」

……今の言葉カチンッときたな。

「逆廻、お前は勘違いをしてないか?」

「……どういうことだ」

逆廻が目を細めて威嚇するようにオレを見る。が、そんなのは今のオレには何の脅しにもならない。

 

「オレの勝ちがわかってる勝負なんて面白くもなんともないってことだ」

 

「な……っ!?」

「ほう……」

黒ウサギが絶句し、ヤっさんが興味深そうにこちらを見る。他の三人は面白いものを見たという顔をしていた。

そして勝てると言い切ったオレは正気に戻って激しく後悔していた。

「ヤハハハハ! ホントに面白いな、お前は!」

逆廻が声を上げて笑う。畜生、挑発に乗せられた……ッ!

「では、楽しみにしてるとするかの」

できれば忘れてください。

「そうそう、ゲームの前に確認しておく事がある」

「なんだ?」

ヤっさんは着物の裾から"サウザンドアイズ"の旗印――向かい合う双女神の紋が入ったカードを取り出し、表情を壮絶な笑みに変えて言った。

「おんしらが望むのは"挑戦"か――もしくは、"決闘"か?」

その瞬間、オレ達の視界が爆発的に変化し、脳裏を様々な情景が過ぎた。

黄金色の穂波が揺れる草原、白い地平線を覗く丘、森林の湖畔。

その果てでオレ達が投げ出されたのは、白い雪原と湖畔――そして、水平に太陽が廻る世界だった。




次回は耀のギフトゲームです。
さてさて、剣士はどうなるのか。楽しみにしていてください。
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