月桂樹の花を捧ぐ   作:時雨オオカミ

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タイムリミット

「泪、あなた大丈夫? アタシの家に泊まらせてあげましょうか?また顔腫らして…… まったく」

「大丈夫、だよ…… ぼくがお母さんにそっくりなのがいけないだけだから。髪も短くしてスカートも履けないけど、不自由はしてないんだ」

「だからアタシから通報するって言ってるのに。家族でも訴えることくらい多分できるわよ?」

「ううん、大丈夫。大丈夫だから、それより新作ゲームの話でもしない?」

「いいけど…… そういえばこの間アレが発売日だったわね! もちろん手に入れてるわよ!」

「わあ、すごいな…… ぼく発売日行けなかったよ。すっごく並んでたらしいし」

「予約してないからよ。一台で協力プレイもできるからうちに来なさいよ! ついでに着せ替え人形になってくれたら嬉しいわよ」

「もう、仕方ないな……」

「存分に着飾らせてちょうだいね」

「…… うん」

 本当は、もっと女の子らしい格好をしてみたかった。

 だから彼女には感謝している。でも、そんな彼女が変わってしまったのはぼくのせい。

 

 でも、こんな環境に放り込まれて少し感謝してもいる。

 〝 帰りたくない 〟だなんて、みんなの前では口が裂けても言えない秘密だ。

 

 

「ふあ……」

 

 シンプルな目覚まし時計の音。時刻は7時半。

 本当は2台使って7時にも目覚ましをセットしていたはずだけど、どうやら2度寝してしまったらしい。

 そのせいかな、眠りが浅くて懐かしい夢を見た気がする。

 8時になる前に早く支度しないと……

 

 先に手ぐしで髪を整え、クローゼットから用意されている着替えを取り出す。下の収納スペースからバスタオルを取り出して片手間にラズベリーの精油をアロマポットにセット。アロマを焚いてからお風呂場へ。

 昨日研究教室で見つけた〝 月桂樹 〟ブランドの中にあったラズベリーシャンプーを持ってきていたので、それを使う。

 ぼくは果物系ならラズベリーの香りが好きだな。ハーブならスタンダードなラベンダーが好きだけど。

 

 ラズベリーの香りの元である〝 ラズベリーケトン 〟はダイエット効果で有名なカプサイシンの3倍程の脂肪分解力があり、肥満防止にもなるうえ美白効果まである女性の味方だ。

 ラズベリーの香りによって食欲を抑制し、空腹感も満たしてくれる。ダイエットのお供に是非お勧めしたい食品だ。

 

 寝間着代わりの服はまだ用意していないので昨日着ていた制服を脱ぎ、洗濯カゴへ。

 初日に確認したことだけど、この寮には湯船がない。

 シャワーのみがそこにあるので持参したシャンプーとリンスを用意してお湯を出す。

 10分くらいでささっとお風呂から上がって着替え、髪を軽く乾かして歯磨き…… と、途中でモノクマーズの放送も入りつつ支度を終える。

 8時も過ぎたので食堂が開いているはずだ。行こう。

 

「あ、おはよう香月さん」

「えっ、あ…… おはよう白銀さん」

 

 扉を開けるとちょうど彼女も出てきたところだったみたいだ。

 ふわりと香ってくるのは昨日渡したライムの爽やかな香り。本当に使ってくれたみたいだ。長い髪がさらさらと動くたびにしつこくない程度の香りがふわふわと漂ってくる。

 

「あ、気づいた? これいいね。今度から定期的に使わせてもらいたいな。もらうだけは不公平だし、今度なにか埋め合わせさせてもらうから」

「ええ? そんなことしなくてもあげるけど……」

「香月さん…… タダって言葉は地味に恐怖なんだよ。だからなにかしら払わせて」

「わ、分かった」

 

 そう言われてしまったら了承するしかないな。

 

「香月さんもいい香りだね。なに使ってるの? フルーツ系?」

「あ、うん。ラズベリーので……」

 

 しばらく雑談をしながら歩いていくと、学園内に入ってすぐ最原くんと赤松さんに会う。

 

「あ、おはよう2人とも!」

「おはよう」

「おはよう、赤松さん。最原くん」

「おはよう、2人は探索?」

「うん、そんなところだよ!」

 

 地下への階段がある方から並んでやってきた2人と挨拶を交わして、向かう場所は同じなので仲間に加わる。

 赤松さんからは白銀さんからと同じくシャンプーについての質問。 互いの研究教室の内装と道具について話し合ったりして、充実した時間を過ごすことができた。

 話しているうちにいつの間にか赤松さんの演奏を聴きに行く約束をしていたが、些細なことだと思う。コミュ力高いなあ。

 

「あ、おはよう星くん!」

「赤松か……」

 

 星くんも関わらないほうがいいと言いつつ食堂には来てくれるんだよな。協調性が高い。

 ぼく、白銀さんたちがいなかったらみんなを避けて食堂にこっそり来ていたかもしれない。だって、コロシアイなんて怖いし。

 ぼくが独りだったなら、勝手に押し潰されて自殺しちゃってたとか…… いや、そんな勇気なんてないか。

 

「…… おはようさん」

「うん、おはよう!」

 

 クールに帽子を下げて去り際に言う星くんに、赤松さんも嬉しそうだ。向かう場所は一緒なんだけどさ。

 

「おはよう、朝食はできてるわよ」

 

 食堂の扉を開けると、すぐそばに控えた東条さんからの出迎えがあった。席にはほかほかの朝食が用意されている。

 いつの間にリサーチしたのか、昨日座った席にそれぞれ和風、洋風で食事が分かれていた。ぼくの席にはフレンチトーストとスープが用意されている。

 確かに洋風の朝食を摂ることが多いのでこちらのほうが馴染み深いな。それだってフレンチトーストなんて凝ったものじゃなくて、サンドイッチやトーストなんかの簡単なものだけど。

 白銀さんは和風。正面に座った天海くんはぼくと同じ洋風の食事だ。

 超高校級の冒険家というくらいだから、各国のいろんな食事を経験してたりするのかな?

 白銀さんの和風の食事はご飯と卵焼き、それにワカメの味噌汁だ。

 

「おーし! 全員揃ったな! それじゃあ席に着け!」

 

 全員集まったところで百田くんが席から立ち上がり、号令をかける。

 まあ既にみんな座ってるから問題ないんだけど……

 

「なんで百田ちゃんが仕切ってるの?」

「進むなら誰でもいいよ。早くして」

 

 王馬くんが苦言を零したけど、春川さんがそれを切り捨てる。

 仕切る人がいるならそれはそれで早くまとまるから、ぼくも文句はない。

 リーダー気質で自ら先導する人って貴重だからな……

 そういう人がいないとギスギスしたりするし。

 

「昨日は赤松が号令だっただろ? 次の号令は最原だ。頼むぞ」

「あ、うん…… ええと、昨日と同じでいいんだよな。東条さん、朝食のメニューをよろしく」

「ええ、今日は皆の好みに配慮して和食、洋食を分けているわ。和食は白米と卵焼き、ワカメの味噌汁。洋食はフレンチトーストとサラダ、コンソメスープよ。違うものを食べたいときは事前に言えばそうするつもりだから、気軽に言ってちょうだい」

「ありがとう、東条さん。えっと、それじゃあ、いただきます」

 

 いただきます。

 

「ちょーっと待ったー!」

「さすが斬美だねー!すっごく美味しいよー!」

「こんなところで和食が食べられると思っていませんでした。すごくありがたいです」

 

 途中でモノクマが乱入してきたが、みんなはことごとく無視していく。食事の邪魔なんかされたらせっかくの美味しいご飯が台無しだ。

 どうせこの和気藹々とした空間を壊しに来たんだろう。

 

「え? あれ、気にしなくていいの? それともモノクマが見えてるのってゴン太だけなの?」

「ボクも見えてますよ」

「意図的に無視してるに決まっとるわい……」

「気にしてもいいことはないからネ」

 

 みんな、モノクマに危害さえ加えなければなにもされないと思ってるんだろう。実際、モノクマは校則違反でもしないと直接的な危害を加えてくることがないはずだ。多分…… 。

 

「ムッキー! もういい、せっかくちゃんと告知してやろうと思ったのに、オマエラはなにも知らないうちに死にたいんだね! ならボクはなにも言いません! 精々残り3日間平和に生きてればいいだろー!」

「ん、待ってください。今聞き捨てならないことを言わなかったっすか?」

 

 ええ…… なんか無視できないようなこと言ってきたよ…… 卑怯じゃないか。

 

 

 

 

 

ー!!

 

 

 

 

 

「やいやい! お父ちゃんを無視するな!」

「無視してもいいのはモノダムだけだぜぇ!」

「ワイらはキサマラを無視することもできるんやけどな」

「無視はよくないわ。それがイジメに繋がるのよ!」

 

 既にイジメは発生してるじゃないか、なんて思ったが口には出さなかった。敵ながらモノダムがあまりにも可哀想だ。決して助けはしないが。

 

「もう、オマエラがあまりにも死に急ぐからビックリしちゃったよ。ちゃんと学園長の話は聞くように!」

「それで? 話ってなんだよ」

 

 最原くんが怒ったように言う。

 驚いた。てっきり彼はこういうとき黙って聞いてる側だと思っていたから。

 モノクマはそんな彼にニヤニヤと笑いながら注目するようにも丸っこい手を掲げる。

 

「オマエラがあまりにもわちゃわちゃしてつまんないからボク考えました。一体なにが足りないのかと……」

 

 元々いい予感はしなかったが、それがますます加速したように思う。

 ぼくは他のみんなと一緒にさっさとフレンチトーストを食べきってしまう。きっとこのあと、食べる気なんてとてもしなくなってしまうだろうから。

 随所随所で止まってしまいそうになる手を動かして行儀の悪さも気にせず食べきってしまうと、モノクマは赤い目を光らせて爪を見せつけるように宣言した。

 

「閉鎖空間を用意し、疑心暗鬼になるような動機も用意した…… 本来ならコロシアイが起きても不思議ではありません。でも周りがあまりにも充実していると人はダラダラと環境に適応して生き抜いてしまうのです…… そこで、ボクは〆切を設けました!」

 

 環境への適応は初代でも言ってたな。

なにもしなくとも生きていける環境が揃っていたら、それはそれは楽に生きることができるだろう。ニートの大量発生待った無しだ。

 

「それ、タイムリミットってことっすか?」

「その通り!」

 

 天海くんの指摘に嬉しそうな声をあげたモノクマは腕を組んで偉そうに胸を張った。

 モノクマーズたちはそんなモノクマを一生懸命すごく見せようと紙吹雪をしてみたり口笛を吹こうとして失敗したりしている。

 正直鬱陶しい。

 

「3日後の夜時間までに殺人が発生しない場合、オマエラを校則違反と見なして人型殺人兵器、通称エグイサルでコロシアイに参加させられた生徒全員を皆殺しにします! そこのところよろしく!」

「み、皆殺しぃ…… !?」

「ぶさげるな! んなもん納得できるわけねーだろーが!」

 

 びっくりして顔を青くする入間さんに、席を立って怒鳴りつける百田くん。モノクマはそんな百田くんを見てはあはあと興奮しながら 「いいの?喧嘩売っちゃう? エグイサルの初披露しちゃう?」 と脅している。

 

「百田君落ち着いて、喧嘩なんて売ったらあいつらの思い通りだ」

「だけどな…… っ、いや、すまねえ。血が上っちまった」

 

 そんな中、冷静にモノクマを見つめ返した最原くんが百田くんの裾を引き、再び席に座らせることに成功した。

 

「人を閉じ込めてコロシアイを強要しているわりに、随分急いでるんだな」

「そうそう、まるで人目が入ること前提みたいだよねー。オレたちの慌てた姿でも見たいの? それとも裏で賭けでもしてるとかー?」

 

 最原くん、王馬くんが畳み掛けるように追求していくが、モノクマはどこ吹く風。

 

「まあいいよ? 信じないなら信じないで。だってまだ誰1人として犠牲になってないもんね。生贄か見せしめの1人や2人欲しいところだけど…… 早々に人数が減っても面白くないもんね、うぷぷぷ」

 

 見せしめは…… なしか?

 それならいいんだけど。

 

「信じるものは救われるんだよー? ボクはオマエラがどう出るか、楽しみに見守ってることにするよ。じゃあね〜!」

「あ、待ってよお父ちゃんー!」

「キサマラ全員が死んだらとってもグロいわ。それなら2人が死んだほうがずっとマシよね!」

「損得勘定はしっかりしといたほうがいいで」

「ヘルイェー! 今から3日後が楽しみだぜ!」

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「モノクマーズはもう既に皆殺しにする気のようですね」

「お祈りしよー、そしたらきっとみんな一緒にいられるよー」

「あの世でですか!?」

 

 既に死ぬこと前提かよ……

 いやいや、逆に考えれば絶対に殺しはしないって言ってるようなものだから彼女は安全と思えるか?

 

「あんなの嘘に決まっとるじゃろう……」

「え、エグイサルってあの機械だよな…… オレ様なら……」

「ちょっと入間ちゃん、なにか生き残る案があるならはっきり言ってくれる?」

「は、はあ!? 誰がテメーらなんかのためにそんなことするんだよ!精々3日の間に童貞処女卒業の相手でも考えてろ! どうせそういう経験は皆無なんだろ?」

「それより…… 地味に打開策を考えたほうがいいと思うよ」

 

 入間さんならなんとかできそうだけど、性格がああじゃな……

 

「あれは殺人を誘発するための嘘、とも考えられるヨ」

「そ、それで殺されたらどうするんだよ! オレ様が死んだら人類最悪の損失だぞ!」

「だから対策を考えるんだろうが!」

「…… はあ、これじゃあ見事にモノクマの思うツボだな」

「あいつは和やかな雰囲気をぶち壊したかっただけだと思うけど」

「みんながどうしたいかはよく話し合って決めてちょうだい。私はそれに従うだけよ」

 

 他のみんなは大分混乱しているけれど、星くん、春川さん、東条さんあたりは冷静だな。落ち着いている。

 案の定朝食会はぶち壊しになったから、モノクマの思う通りといえばそうだけどさ。

 

「無視だ無視! なにか行動を起こすようならこっちでも対抗すりゃあいいだろ!」

「で、でも、人の力じゃ兵器なんかに勝てないよ?」

「こういうときこそゴン太の出番だよね。うん、みんなを守るためなら頑張るよ!」

「…… 機械相手なんかに私の手が通用するかどうかは分かりませんが…… やってみる価値はありますよね」

「うんうん、2人の活躍を神様も見守ってるよー」

「神風とか、吹かせてくれないんだね……」

 

 このままじゃゴン太くんと茶柱さんか物理的に神風になりかねないから止めないと……

 

「と、とにかく対策はよく考えるようにすれば……」

「対策か…… そうだな、それなら…… 俺を殺せばいい」

「えっ」

 

 ぼくは遮るように言われた星くんの言葉に驚愕して、そのまま口を閉じた。

 

「星君、それはどういうことっすか?」

「おいおい、冗談じゃねぇぞ」

「そのままだ。俺は元々囚人だったんだ…… 今更生きる理由も持ち合わせてねぇ。俺はより多くの未来ある人間が生き残るために必要な提案ををしているだけだぜ」

「そんなのダメだよ! まだ皆殺しが確定したわけじゃないんだし、そんなこと言っちゃダメだって!」

 

 赤松さんの言う通り、確定したわけではない。

 限りなく確定に近いが、それで殺せと言われてもな。

 そもそも殺しが起きたら学級裁判が起きてクロは処刑される。

 最初の1人が自殺でもない限り犠牲になるのは2人なんだ。彼1人が死を受け入れていたとしても、意味がない。

 もしかしたら、最初の犠牲者が自殺でおしおきが行われなかったら…… そうしたら企画倒れを起こして今ぼくがいるダンガンロンパの回が流れなくなるかもしれないが……

 

 

―― チュートリアルのはずなのにおしおきのないダンガンロンパなんてつまんないだろ? …… だから

 

 

「いっ、た」

「香月さん、どうしたの?大丈夫?」

「う、うん…… なんだろう…… なんか既視感が……」

「また地味に顔色が悪くなってるし、あとでゆっくり休んだほうがいいよ」

「う、うん…… そうする」

 

 なにか、他にも忘れていることがあるのだろうか。

 頭が痛い……

 

「とにかく! 今は誰も犠牲にならない方法を考えようよ!」

「また地下に挑むなら私は降りるけど」

「いや、そうは言ってないよ…… 他にもなにかないか学園を探索してみようってことだよ!」

「まだボクたちも探索しきってませんしね……」

「各地にある不思議なオブジェクトも地味に気になるよね……」

「まあいい、俺のはあくまで提案でしかねぇからな…… 好きにしろ」

 

 星くんはそのまま食堂から出て行ってしまった。

 食事は終わっているようなので、これ以上なにか言われたくなかったのだろう。

 自室か、地下のゲームルームにでも行くのだろうな。

 

「ったく、案の定揉め事が起こっちまったな」

「まあ、わざとぶち壊しに来たみたいだし仕方ないよねー。こうなることは分かってたよ。それより探索するんじゃないの? そこのところなにも考えてないの? 百田ちゃん」

「うるせぇ! とにかく、全員で散って探索するしかないだろ」

「待って、探索もしないといけないけど…… 食堂に2人か、3人残っていてほしいんだけど……」

 

 百田くんの提案に最原くんが待ったをかけて周りを見渡す。

 

「凶器の保管場所にしてる以上、見張りは必要だと思う」

 

 それもそうだと話がまとまり、今度は見張りを決めることにする。

 これに全力で手を挙げたのは夢野さん。それに東条さんと真宮寺くん。

 

「私は食器の片付けがあるからそのまま残らせてもらいたいの」

「うちは合法的にサボ…… 探索には向かんからのう」

「僕は他に候補がいなければ…… ってところかな」

「あ! 私夢野さんに色々お話聴きたいです!」

「じゃあ…… 真宮寺は別にいいんだな?」

「構わないヨ」

 

 見張りは夢野さん、茶柱さん、東条さんの女子3人か。

 

「ならそれでいいな。休憩したい連中は食堂で交代すればいい。東条、夕飯は何時だ?」

 

 百田くんが尋ねると東条さんは時計をチラリと見て言う。

 

「午後7時にするわ」

「ならその時間まで自由行動しつつ探索だねー。東条ちゃん、オレはオムライス食べたい」

「オムライスいいっすね」

「あ、私も食べたいな!」

 

 オムライスか…… いいな。

 

「えっと、ぼくも」

「斬美のふわとろオムライスー!」

「嫌いな奴はいねーだろ!」

「あ、でもソースはケチャップとデミグラス選べるようにしとかないと戦争が起こりそうだよねー」

「そ、そうかもね……」

「承知したわ」

 

 確かに、どっちが好き? と言われたら二手に分かれそうだ。こういうのは問題が起こらないように最初から分けておいたほうがいい。

 

「それじゃあこれで解散ですね」

「キーボ、テメーオレ様の研究教室まで来やがれ!」

「えっ、なんでボクなんですか!?」

「いいから来い!」

 

 入間さんは早足でキーボくんのアンテナっぽいアホ毛を引っ張って去って行く。

 キーボくんも引き抜かれては堪らないと思ったのか、文句を言いつつ大人しく付いて行った。

 入間さんは少し怯えている節があるので、殺しに走るとは思えないキーボくんを連れて行ったのだろう。多分。

 

 それじゃあぼくは…… 植物園だよな。

 奥にあった、ぼくが初めて目覚めた棺。あれの周辺はあまり見て回っていない。

 まだ抜け道がどこかにあるならば、未探索の植物園内にあるだろう。

 途中研究教室に寄って雨漏りの水を捨てて、探索に行こう。

 

「あ、やっぱり香月さんは植物園?」

「そ、そうだね……」

「なら一緒に行くっすか」

 

 やっぱりそうなるんだね……

 なぜだかあの〝 棺 〟は見られたくない…… 自分1人で見る分には忌避感なんてないんだけど…… でも探索は必要だし、気は進まないが行かないとな。

 

 あの棺のことを思うだけで頭がまだ、痛い。

 

 

 

 

 




・朝食
 白銀さんはショウガ湯が好物だったので和風。天海くんは洋物好きらしいので洋風です。

・オムライス
 作者はケチャップ派。オムライッスって言わせたかった(未遂)

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