「ねえ、泪。もしオーディションで選ばれたらどうしたい?」
「どうもしないよ。というか、ぼくは断ったって言ったよね?」
幸那は左手に持ったペンを顎に当てながら、そのノートをぼくに見せた。
「アタシはね、トリックスターをやってみたいわ! 今まで、主人公が男の子ばっかりだからライバルは同性ばかりで、女のトリックスターってなかなかいないじゃない。だから、色々小細工したりとか…… 面白そうじゃない!」
「不謹慎だよ幸那。それ、人の死を弄びたいって言ってるのと同じだろ?」
ぼくは右手に持ったサンドイッチを口に含む。
お嬢様すぎてお弁当が作れない彼女が、一生懸命作ってきたものだ。どんな味でも顔をしかめず食べきれる自信はある。
中身はスタンダードなハムと、レタスとそれにチーズ。失敗するはずがないラインナップだ。
ぼくは平然とそれを食べながら、そっと水筒を手に取った。
×××
真宮寺くんと別れた後、ぼくはまず寄宿舎らしき場所に入ってみた。建物に書かれた〝 Dormitory 〟の文字を見るに、ぼくたちの寮で間違い無いようだ。
中は二階建てのアパートのようになっていて、左右の階段で上がれるようになっている。表札の写真を見る限り、左側が男子。右側が女子なんだけど…… ぼくの部屋が玄関に入って正面の位置にあるのはどういうことだろうか。
「わあ!?」
いきなり正面から光が充てられ、眩しくなって声をあげた。
咄嗟に顔を守りその間から僅かに覗くと、いつの間にか無駄に元気なモノクマーズがぼくの前に立っていた。
「僕っ娘だからよ!」
「僕っ娘って需要のわりに貴重やんなあ。ワイらもそう簡単には手放せへんのですわ」
「死んでも手放さねーぜ!」
「愛って、深いわね…… !」
「愛なの?」
「……」
彼らは口々に喋りながら現れ、黄色いの…… モノスケだっけ? がなにかを懐にしまうのが見えた。隠したものがなんだったのかは分からない。
「えーとね、一人だけ真ん中なのが気になるんでしょ? でもね、特別扱いってわけじゃないんだよ」
「17人だと奇数やろ? あぶれる人がどーしても出てくるもんなんや」
「企画外のことするとロクなことになんねーぜぇぇぇ!」
「……」
「でも安心してちょうだい! ちゃーんと、キサマラ全員部屋の大きさは同じだから!」
「モノダムみてーにいじめられてーなら増築してやってもいいけどなー!」
「あかん! そないな金のかかることする暇ないわボケ!」
「……」
モノスケからなにかを受け取ったモノキッドがそれをかざす。
手鏡を光に反射させてモノダムの顔面に当てるという地味な嫌がらせをしているようだ。
さっきの光はこれだったのかな? 小学生かよ。
いや、精神年齢的にはそのくらいなのかな。こいつらは一体なんなんだろうな。
「そういうことよ! なにかあったらアタイ達に言ってね!」
「いきなりは心臓に悪いな……」
ぼくはチラッとだけ自室らしき場所を覗き、外に出る。
次に学園の側に寄ったぼくは、そっとその扉のノブに手をかけた。
「開かない……」
しかし、扉はびくともしない。鍵がかかっているみたいだ。
えっと、これがゲームにする予定だとすると…… 外にいる人物全員に話しかけないといけないとか?
探索の漏れがあると先に進めないとか、そういう感じだろうか?
「左右に道が分かれてるのかな」
さて、どっちに行こうかな?
…… よし、こういうときは左からかな。
左に進むと道は曲がって校舎の裏側へと続いていくようだった。瓦礫があるが、前のところとは違って通れそうだ。
その途中、校舎の中へ続くだろう位置に木製のテラスを見つける。
そして、そこにいたのはキョロキョロと辺りを見回す白髪を肩の下で二つに結んだ女の子だった。ツンデレじゃない大人しいイメージのツインテール。
また、格好が際どくてとても目立つ。
褐色肌に良く似合う真っ白なビキニスタイルに、黄色のロングパーカー。首元には貝殻のネックレスかな? 手足に揃いのブレスレットとアンクレットをつけている。
腰元にはペンか筆のようなものをつけている。見た目からして随分とエキゾチックな子だ。
さて、才能はなんだろう?
芸術家、書道家、踊り子…… そんなところかな。
「こんにちは、きみも超高校級の生徒?」
「やっはー! お前もそうなのかー? アンジーもねー、気がついたらここにいたんだよー! でも大丈夫。神さまが今も見守ってくれてるからねー。安心安全ー!」
これは…… なかなか強烈な子だ。ぐいぐい来る子は苦手だけど、でも嫌いにはなれなさそう。
なんだろう、電波系? でも話はきちんと通じてるし…… 南国のような、暖かい潮の香りがする。悪い子ではないかな。
「ぼくは超高校級のアロマセラピスト。香月泪だよ。よろしくね」
イメージはアルストロメリアかな。花言葉はエキゾチックに未来への憧れ。西洋の花言葉では友情や献身的な愛。ぴったりだ。
クローバーもいいけれど、ぼくとしてはそっちの方が似合うと感じる。
端末に伸びる手を降ろし、相手の目を見る。今度は失礼のないように、後から誕生日は調べるんだ。
「こちらは夜長アンジーだよー! 超高校級の美術部なのだー!」
「美術部か」
確かに、個性的な作品ができそう…… というか、芸術家って変わった人が多いイメージだから違和感ないな。
「そう、信心深いんだね。きみの出身地の神さまが見守ってくれてるんだ?」
「神さまは一人しかいないんだぞー? アンジーの島の神さまがいつも隣にいてくれるんだー。神さまに体を貸すとねー、すごーい作品がいっばいできるんだよー。にゃはははー! 神ってるでしょー!」
あ、一神教なのかな…… それは悪いことをした。
あんまり深く突っ込まないようにしておこう。
「あ、そうだー! 泪ー、綺麗な水があるところ知らないかー?」
「水?」
「そう、水ー! 神さまがねー、清らかな水で手を洗いなさいって言ってるんだー!」
よく見れば、彼女の手は少し汚れているようだった。
どこかで汚してしまったのかもしれない。それを洗いたいのかな。
さっき行った寮なら洗い場くらいあるだろう。
「泉みたいなのはないのかー?」
人工物っぽいのはお気に召さないらしい。
「えっと、ぼくが最初に目覚めた植物園なら…… 探せば泉くらいあるかもしれないね。真ん中の鳥かごには彫像と水辺もあったよ」
「彫像ー?」
あ、これは気を惹かれたかな?
場所を教えて元気に去っていく彼女を見送る。
ここで初めてモノパッドを開いて誕生日を調べてみれば、4月18日。
やはりアルストロメリアが誕生花だ。
アンジーさんがいなくなってから校舎に続く扉を開けてみようとするが、やっぱり開かない。
仕方ないと諦めて道なりに進んでみることにした。
林やら瓦礫やらを眺めながら進んでいくと、ちょうど校舎の真後ろだろうか?
そのくらいの位置に、煉瓦造りの苔や蔦で覆われた建物を発見した。
扉に手をかけると、こちらはあっさりと開いてくれて拍子抜けしてしまった。
「わあ!」
「うわぁ!?」
待って待って、なんでこんなに怖そうな人が!?
ぶ、ぶつかってしまった。怒られる? 怒鳴られる?
「ご、ごめんなさいごめんなさい! お願いだから食べないで! ぼくはっ」
「女の子じゃない」と口に出したとき、その人から優しい森の香りがすることに気がついた。
すっかりと青ざめて、あの人に対するように怯えてしまったがこの人は〝 違う 〟と分かる。趣味の悪い他人の香水の匂いもしない。大きいけれど、動作も荒々しいけれど、この人は悪い人なんかじゃないはずだ。香りが、そう言っている。
ここでは男の振りをしなくても大丈夫。だってゲームにする予定なんだろうし、CEROが上がるような展開はないはずだ。
ちょっと悪い夢を思い出しただけ。今まで気にならなかったはずなのに、なんでだろう……
大丈夫、大丈夫、落ち着けぼく。
ぶつかったその人は申し訳なさそうな顔をして、ぼくを慰めようとしたらしい右手を彷徨わせて躊躇いを見せていた。
あまりに怯えているものだから、下手に自分が手を出していいのか分からなかったんだろう。
「あ、ご、ごめんなさい。その、怯えちゃって……」
「ううん、ゴン太こそごめんなさい! え、えっと、大丈夫? こんなの紳士じゃないよね…… ど、どこか怪我はない!? ゴン太、大きいからすぐ怖がらせちゃって……」
「うん、もう大丈夫だよ。ありがとう、ゴン太くん…… でいいのかな」
申し訳ないくらい恐縮してしまっている。
その大きな体を縮こませてゴン太くんはぼくの体の心配をしてくれた。
うん、大自然の香りがするだけはある。森林系の香りがする人は皆優しいんだ。
「あ、そうだった! 紳士なら先に自己紹介するものだよね。えっと、名前は獄原ゴン太で…… 超高校級の昆虫博士なんだ! それと、夢は紳士になることなんだよ! ゴン太は本当の紳士になりたいんだ! あれ、でもさっき女の子じゃないって言ってたっけ…… ?」
なんていい人なんだろう。
この人に怯えちゃったぼくが恥ずかしい。
「ぼくは超高校級のアロマセラピスト。香月泪だよ。さっきはごめんね、ゴン太くん。あと、さっきは否定したけどぼくの性別はちゃんと女だからね」
「そうなんだ! ごめん! ゴン太が聞き間違えしちゃったんだね!」
「えっと……」
あまり深く突っ込まれたくはないし、別にいいかな。
「そうだ! アロマセラピスト…… ってどんな才能なの? ゴン太は馬鹿だから…… 分からないんだ」
ああ、見るからに野生児っぽいというか、まるでターザンでも見ているような気分になってくるからね。知らなくて当然か。
「えっと…… ゴン太くんは森の香りって好きかな?」
「うん、好きだよ!」
「その香りって、木の種類によっても違うって思わない?」
「うーん、確かにいる場所によって少し違うかもしれない?」
あんまり気にしたことがなかったのかな。
彼にはスノーフレークの可憐な花が良く似合う気がする。それと、雄大な森全体。
「森の香りって落ち着くでしょ? 草花や木の香りは人の心を落ち着かせたり、元気にしたりすることができるんだ。ぼくは、そんな香りを混ぜたりして、もっともっと良い香りにすることができるんだよ。で、その香りを使って人を癒すことをアロマセラピーって言うんだ。それを仕事にできるからぼくはアロマセラピストなんだよ」
まだぼく自身実感はないけれど……
「ええ! すごいね! 匂いってそんなことができるんだ!」
「うん、ぼくはそんな香りが好きだからね…… きみも、好きだから昆虫博士なんでしょ?」
好きこそ物の上手なれタイプの才能と、その逆の才能もダンガンロンパにはあるよね。自分は好きでないのに才能があるから縛られている人とか。
歴代でもなんらかの片鱗を残しながら登場したり、模倣されているラスボスなんかがその代表だよね。あの人、なんでも分析できてしまうからなにもかもに飽きているんだし。
「うん! ゴン太は虫さんとお話しもできるんだよ! 森で迷子になって10年暮らしてたから、いろんなことを覚えたんだ!」
10年!?
狼に育てられた少女みたいな感じかな?
なのにここまで普通に話せるのもすごい。10年ってことは、こちらに戻ってきてからそんなに経ってないはずだよね。
常識もあるし、真摯に謝るし、本人は馬鹿だとか言ってるけど、実は結構頭良いのかな。
「紳士になりたいのは、えっとなんでか訊いてもいいかな?」
「森の家族に立派になったのを見てもらいたいんだ!」
「そっか、すごいな」
人間にとっての紳士が動物にとってどう映るかは知らないけど、ゴン太くんの努力は報われてほしいな。
家族が大好きなのは良いことだよ。ちょっと羨ましいかも。
スノーフレークの花言葉は純粋やら純潔やら、この人にぴったりなものだな。
若干汚れてるぼくには「うおっ、まぶしっ!」って感じ。
「あ、そうだ、ゴン太くん。この裏の…… ずっと先に行った階段の下に植物園があるんだ。きみにはそっちの方が気になるんじゃないかな?」
「本当!? ゴン太、さっきからずっと虫さんを探してるんだけど、全然見つからないんだよ。そこならいるかもしれないよね! ありがとう香月さん! 行ってみるね!」
ゴン太くんはそう言って、ぼくの手を取るとぶんぶんと上下に振り、すぐに走り去ってしまった。
彼が本物の紳士になる日はわりと遠いかもしれない。
でもちょこっと癒された。怯えてしまったのが本当に申し訳ない。
「ここは、裏庭…… ?」
モノパッドのマップには裏庭と記されている。
あと、ゴン太くんのプロフィールを確認してみるとやはり誕生日は1月23日。スノーフレークが誕生花だ。
それと、バナナ嫌いなんだ…… いや、バナナが好きそうっていうのはターザンっぽい見た目による偏見か。
第一印象で人を判断してはいけないよね。
ぼくはその場でしばらく探索し、大きなマンホールやら、何に使うか分からない機械やら、暗号みたいな「ろは ふたご」という文字を見つけたりしていた。
結構時間が経った頃、もう一度マップを調べてみたら外にあった人物を表す黄色い点が増えていることに気がついた。
これは、もしかしたらもしかするのかな?
ぼくはすぐその場を後にして、校舎の玄関へと向かった。
そして、そこにいたのは男女の二人組。五匹のクマ…… モノクマーズをことごとく無視しながら、壁の向こう側に向かって助けを叫ぶエネルギッシュな女の子と、それを焦ってあわあわしている男の子だ。
暫くしてモノクマーズがいなくなると、二人は何事かを会話して歩き出す。
ずっと校舎の中にいたからか、外に出られる希望を持った瞬間に打ち砕かれたのだろう。まあ、気持ちは分からないでもない。
気がついたらゲーム会場に放り込まれていて、さらにその記憶処理がされていない状態だったぼくも絶望はしたかな。多分。
それより諦観の方が優っていた気がするけれど。
「あれ、もう校舎に入れるようになったのかな?」
そう言って、二人の前に姿を現わす。
「もうって、どういうこと?」
女の子の方が首を傾げてぼくに質問する。
なのでぼくは 「さっきまでは鍵がかかっていたんだ」 と返した。
「僕達の方も玄関に行く道に鉄格子が降りてて入れなかったんだけど…… 今さっき開いたんだよ」
「なんでだろうね?」
「またあのクマが関係してるんじゃないかな? ほら、全員に自己紹介するようにって言ってたし! …… あ、紹介してなかったね。私の名前は赤松楓。超高校級のピアニストなんだ!」
「えっと、僕は最原終一…… です。一応超高校級の探偵ってことになっています」
「もう、また一応って言ってる!」
「ご、ゴメン……」
金髪の女の子の方が赤松さん。ヘアピンが音符の形してるし、ピアニストなのはすごく納得する。こうやってぼくが顔を出す前は吹奏楽部かなって思っていたけれど、当たらずも遠からずって感じかな。
特筆すべきことは…… リュックを背負っているくらいかな。
それと、探偵さん。今までも探偵は何回か出てきたけれど、一度も黒幕側になったことがないんだよね。今のところ一番信用できるかもしれないな。
帽子を被っていて、学ランっぽいような普通の制服を着ている。ちょっと気弱そうだけれど、赤松さんが明るくて引っ張っていくタイプみたいだから、相性は良いんじゃないかな。
「ぼくは超高校級のアロマセラピスト。香月泪だよ。よろしくね、赤松さん、最原くん」
「アロマセラピストか……」
「あ、私知ってるよ! 確か、発表した香りのブレンドが大当たりして…… 一気に有名になって、シャンプーやリンスはたまた香水なんかの自分のブランドがあるんだって! 私も〝 月桂樹 〟のブランドが好きなんだ!」
へえ、ぼくの評判そんなことになってるんだ。
身に覚えがなさすぎるし、解説してもらえて助かったよ。
あまりボロは出したくないしさ。
「へえ、やっぱり赤松さんも女の子だね」
「それ、どういう意味?」
「さっきからずっとおじさんみたいな反応してるじゃないか……」
「最原くん!」
仲良いなあ。
「ああ、そこまで有名になってたんだ…… ぼくの香りを好きになってくれて光栄だよ。赤松さんは優しく包み込むような…… お日様みたいな香りがするよ」
「えっ! そ、そんなに匂うかな…… !?」
「ああ、そういうことじゃなくて…… ぼくは人の性格や雰囲気を香りで表しているだけだよ。別に本当に匂いを嗅いでいるわけじゃない。それはさすがに失礼だしね」
ハナニラに、マリーゴールドか。これは彼女には言えないなあ…… 「悲しい別れ」 と 「絶望」 だなんて。
未来がなんとなく分かってしまうようだ。
い、いや、あまり深く考えないようにしよう。もしかしたら、花言葉以外になにか理由があるかもしれないし。
でもなあ、愛情深くて包み込むような香り…… なんだけれど、麻薬じみてて吸いすぎるとむせそうな感じがするんだよ。
本人は悪い人じゃなさそうだし、用法用量をお護りくださいってところなのかな。
「最原くんは夜のもの静かな雰囲気かな。甘酸っぱくて優しいオレンジの香りで、頭の中にスッと入ってくるような感じがする…… あ、精神集中と良い安眠効果のあるブレンドができそう……」
最原くんは、なんというか…… 夜の静けさもそうだけれど、ちょっと冷たい感じもする。秋とか、冬の空気感というか、クールな感じなのだろうか…… ? ちょっと違う気もするけど、的確な言葉が出てこないな。
あ、そうか〝月〟かな? 見えなくてもずっとそこにいて、安心もするし、ちょっと怖くも感じる。夜のイメージそのものみたいなんだ。
こちらを見つめる月明かりの下にはなにもかも見透かされてしまいそうな…… まさに探偵ってことだね。
ぼくがそうやって考えていると間にも、赤松さんの表情はどんどん明るくなっていく。
「すごいよ最原くん! 最原くんブレンドができちゃうって!」
「えっと…… 良かったら、赤松さんのも作ろうか? 明るく前向きにさせるような…… そんな香りができそうだ。研究教室が開いたらさっそく取りかかれると思うよ」
赤松さんはキラキラとした笑顔で、最原くんの手を取りながらピョンピョンと飛び跳ねた。
「わあ! 最原くん、最原くん! こんな可愛い子に手作りのアロマを使ってもらえるんだよ! ここは喜ぶところだよ!」
「かわっ、可愛い……」
「ほら、赤松さん。そういうところがおじさんみたいって言ってるんだよ」
女の人に褒められるのは慣れていない。
すぐに照れてしまう…… 男の人には褒められてもあまり嬉しくないが、今はもう素直に受け取れるようになった。
それに、最原くんはあまり男らしい感じがしないから、とても話しやすい。
百田くんや真宮寺くんと気楽に話せていたのはなんでだったんだろう…… ?
百田くんみたいなぐいぐいあちらのペースに乗せてくるような人や、ゴン太くんのような精神が大人らしくない人はあまり気にせず喋れて良いと思うけど…… そっか、あちらのペースに乗せられれば結構気にせず話せるのかな。
仲良くなれば、もう少しすらすら話せるんだけど……
「喜んでもらえて、なによりだよ。ぼくも外の皆とは全員挨拶したし、中に入ることにするよ」
「…… 全員に挨拶したの?」
「? そうだよ」
最原くんはなにごとか考えこむと、すっと顔を上げた。
「僕達も中の人には全員挨拶したんだけど、中の人達は皆既に挨拶しているような雰囲気だったんだ。もしかしたら、外と中…… それぞれで全員挨拶したから扉が開いたんじゃないかと思って」
「そっか、それはありえそうだね! さすが最原くん、超高校級の探偵だね! 私には思いもしなかった見方だよ。だから自信持ってもいいんだよ?」
「…… ありがとう」
赤松さんの反応からして最原くんは探偵としての自分に自信がないんだね。
ぼくが〝 全員挨拶しないと扉が開かない 〟と思っていたのはあくまでメタ推理だし、見事だと思う。普通は気づかないはずだ。
「仲が良いんだね」
「そうかな? 同じ教室の隣り合ったロッカーにいたんだけど、出会って二時間も経ってないと思うよ?」
「うん……」
いや、既に親友の域まで行っているようにしか見えないし、見ようによってはカップルみたいなのにね。
「ということは、外にいた人も中にいた人に全員挨拶しないといけないのかな」
「そうかもしれないね」
「あ、じゃあ私達が外で会った人にそれを伝えておくよ! そうしたらなにか進展があるかもしれないってことだよね!」
「じゃあぼくは中の人に伝えようかな」
二人と話し合ってから別れ、扉の中に向かう。
「やあ、さっきぶりだネ」
「ああ、真宮寺くんもこっちに来たんだね……」
彼を横目に見ながらマップを見る。
次は左右、どちらへ行こうか…… よし、決めた。調べる場所が少なそうな右からだ。
ぼくは尚も話しかけてくる真宮寺くんをスルーしながら、左手で髪を耳にかけるように掬い上げると頬をかいた。
「……」
最初はぼく含めて16人だと思っていたけど、寄宿舎は17人分の部屋があったし、モノクマーズもそう言っていた。
モノパッドの黄色い点を数えても、ぼく合わせて17人いるみたいだ。
今までのダンガンロンパは16人ずつだったはずなのにね…… ダンガンロンパスタッフによる新しい試みなのかな?
僅かな不安を胸に、ぼくは教室Aの扉を開けた。
マサキさんよりイラストをいただきました!
私もお話させていただいて完成しているので、これが香月泪のイメージイラスト決定稿となります!
マサキさん、ありがとうございました!
「硝子細工の鳥かご」の初自己紹介にてもいただいたイラストを使用しています!
2018.3.10 イメージイラストをver.2に変更いたしました!
【挿絵表示】
本編で出しませんでしたが赤松さんの誕生日は3月26日。最原くんは9月7日で誕生花はクロユリです。
・冒頭
こんな感じでちょくちょく前の話が出てきます。
まえがきにしないのは、まえがき・あとがきを見ない設定にしている人がいるかもしれないからです。
つまり、必要な描写なのです。
・感想欄
推理はご自由に。
展開を当てられてもプロットは変えないので、ご安心を。
ただ予想や推理があっても返信ではあまり触れないと思います。ご了承くださいませ。
・あらすじの変更
なにかに気づいた方は胸に秘めるか、直接メッセージにて解答をお願いします。
推理する楽しみを残したいため、感想欄では指摘しないようお願い致します。