月桂樹の花を捧ぐ   作:時雨オオカミ

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2章学級裁判― 白刃戦トライアル ―

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「その意見はムシできないよ!」

 

 

 

―反論ショーダウン 開始―

 

 

 言い方の問題じゃないな。

 ちゃんと彼には伝えないと。そして、この事実はみんなに周知してもらって、議論を進めるのが1番だ。

 些細な勘違いが議論の停滞を引き起こすのなら、それは未然に防がないといけない。

 

「だって、あんなに血がたくさん出てたんだよ! なのに、どうして出血が少なかったと言うの?」

 

 ケチャップなんだよなあ……

 

「それとも、なにか理由があるの?」

 

 でも、ゴン太くんは素直な人だから話せば分かってくれるだろう。

 他の人の反論を捌くよりはずっとマシなはずだよ。

 前の裁判ではぼくが反論する側だつわたから、実質これが初反論ショーダウン…… といったところかな。ゲーム的には。

 けどこれは現実。

 …… 口、回るかな。

 

「ゴン太くんは、あの背中の広範囲に広がっていた赤い跡のことを言ってるんだよね」

 

 確かめるように彼へ言葉を投げかける。

 

 

 

― 発展 ―

 

 

「そうだよ! あんなに血が広がってたのに、血が少ししか出てないとか、狭い範囲にしかついてないなんておかしいよ! それとも、あれは別のなにかなの? ゴン太バカだから教えてくれないと分からないよ!」

 

 ああ、ここまで反論してきて察してくれたのか。

 ぼくや、それに天海くんや最原くんがさっきの〝 出た血が少ない 〟ことを主張しているという意味が。そう見えないけどなにか理由がある。頭を固くせずにそう推測することができるのだから、やっぱりゴン太くんは彼が言うほどバカなんかじゃない。

 

「香りは全てを表していたよ。だって、あれの大半は〝 ケチャップ 〟なんだから…… それはぼくの才能が証明する!」

 

 宣言して周知させる。

 ぼくの才能、アロマセラピストは嗅覚が非常に良くなるものでもあったから。それはみんなも知っている通りだ。

 

「ケチャ…… え、ケチャップ? それ本当?」

「すごい! ゴン太が嘘を疑うなんて! 香月ちゃん快挙だよ!」

「信じられないのも無理ないかもしれないっすね。近くで見れば血とは違う乾きかたをしてるんすけど、検死までしてるのは最原くんと、それを見てた俺らだけっすから」

 

 ケチャップだと分かるほど近くで見た人は少数。

 その他の人は会話を耳に入れた感じだと現場の周りや、夢野さんの研究教室やらに行っていたようだ。

 そちらに重要な証拠があったとは、とても思えないけど。

 

「夢野さんの背中にケチャップがついていた理由は香月さんが詳しいよね。きっと僕から説明するより、本人から説明してもらったほうが説得力があるだろうし、お願いするよ」

 

 最原くんの言葉に頷き、口を開く。

 自分の身に起きたこと。殺人未遂の直前に見た光景。そして、水中脱出マジックのトリックまで全てを。

 

 

「まず、ぼくが彼女を発見したときのことから話すね」

「おう、そうだ。なんでテメーは体育館に行ったんだ?」

 

 ああ、そこからか。

 

「ぼくはみんなが王馬くんを追って出て行ったあと、夢野さんに本番をしっかり見てほしいと言われて自分の研究教室に行ったんだ。掃除したかったからね。今思えば、ぼくも見ておけばよかったと…… 思うんだけど」

 

 あらすじは大切だ。

 この時点で体育館に残っていたのは、アンジーさんの証言通りなら彼女と、真宮寺くん、そして夢野さんの3人だけだったはずだ。

 

「さっき王馬くんが言ってたように、彼が研究教室に隠れてて…… ぼくも油断してたから持ち歩いてた動機ビデオを盗まれちゃったんだよね。だからぼくも追いかけることになった。学園のほうに向かってたから、そっちにぼくも向かって…… 途中で赤松さんと話した」

「さっき、言ったよね。王馬くんを目撃したって。その後に香月さんと少し話したんだよ」

 

 援護はありがたい。

 事実しか話していないけど、正直こうやって証言するのが1番緊張する。少しの記憶違いや言い忘れ、ミスをするだけでそこを突かれる可能性があるから。

 クロは自分以外へ罪を被せるために手段を選ばないだろうから、気をつけて記憶を辿っていく。

 

「まずは1階を探索しようと思って…… あとついでに夜時間も近かったし、体育館の夢野さんたちがどうしてるか気になったから探索ついでに寄ったんだよ。そしたら扉が開けっぱなしになっていて、電気もつけっぱなしなのに誰もいないから…… それで、発見したんだ」

 

 あのときの静けさ、警鐘を鳴らす脳内を無視して開いたカーテン。横たわるびしょ濡れの夢野さん…… 思い出すだけで血の気が引いていくようで、くらりと視界が揺れる。

 けと、それは気のせいだ。ぼくが精神的に参っているから起こる目眩のようなもの。実際の体は動いてなんかいない。

 

「それから…… あの場にあった香りに違和感を抱いたんだ。デイジー、マーガレット、ラベンダー、ケチャップとレモン。それに僅かな血の香り…… デイジーやマーガレットは花瓶の花が倒れて、ラベンダーはマントに焚きつけたもの…… その中にケチャップなんておかしいでしょ? だからぼくはその香りがどこから来るのか辿ることにしたんだ」

 

 レモンについてはあえて触れない。

 王馬くんがなにか言いたそうな顔をして、それからこちらから目を逸らした。今それを追求し出したら話題が錯綜してぼくが説明している意味がないから。

 議論は女性の会話のようにどんどん移り変わっていくよりも、ひとつの議題で突き詰めて話し合い、結論が出てから次へ、次へと進むべきだ。

 じゃないといろんな話が交差して訳が分からなくなる。

 それは最原くんも、そして天海くんだって分かっている。

 心のメモに追加でもしといてもらって、あとで話題にしてもらうほうがこっちとしても楽だ。

 

「ケチャップの香りは夢野さんのマントにべっとりついた血痕のようなものと、壇上に上がるための階段の中から僅かに漂ってきたんだ」

「秘密子は魔法の仕組みは見せないようにしてたからねー。びっくりしたよー」

「そうですね…… 本当に、こんな形で知りたくはなかったです」

 

 検死やぼくらの捜査を見ていた2人が同意の言葉を発する。

 だけど、重要なのはここからだ。

 

「階段の下のほうか外せるようになつてたんだ。ぼくは香りを頼りにそれを見つけて、中を確認した。人を呼びに行かなかったのは…… 気が動転してて、ぼくが証拠を掴むんだって躍起になってたからだね。その、前の裁判で随分迷惑かけたから……」

「はっ、警察犬の真似事してるんじゃねーよ。くんくんじゃねーんだから」

 

 えっと、その…… 入間さんの言うくんくんって?

 

「幼児用の推理劇場の警察兼探偵だよ。犬のぬいぐるみなんだ」

 

 それははて警察なのか探偵なのか…… 最原くんがそれを知ってることは流すことにしておいて、褒められたのか? 貶されたのか?

 まあいいか、続けよう。

 

「そこでぼくは2つの証拠を見つけた。えっと、先に水中脱出の仕組みについて言っておこうかな。あの階段の中は空洞になっていて、水槽の一部が空いていて、そこからペット用の押すと開く扉みたいにして中に入って、外に出られるようになってる。だから彼女は、水中脱出の練習後に代わりのマントを着ようとしたんじゃないかな。マントを掴んだまま倒れてたのは、そのときになにかがあったからだと思う」

 

 そして、ぼくが見つけた証拠を披露する。

 

「階段の天井に近い位置に中に入るための入り口がある。そして、その真上の天井に大量のケチャップが付着してるのを見つけたんだ。あそこは狭いから、入り口を通れば夢野さんでも天井に背中を擦ったかもしれない。だから、あれは出血じゃなくてケチャップなんだ。板でこすりつけたような跡だったでしょ?」

「どうりで変だと思った。でも、それって偶然ではないでしょ。計画的犯行だよね」

 

 春川さんがクールに言う。

 その通りだ。あれは計画的犯行。少々偶然に頼ったものとはいえ、夢野さんが誰にも知らせてなかった水中脱出のトリックを利用した意図的な殺意。

 

「香月さんが見つけた証拠の1つというのがその天井に付着したケチャップですよね? なら、もう1つはなんだったんですか?」

 

 急かすキーボくんに頷く。

 

「今から言う2つ目の証拠が、ぼくが殺されそうになった原因だよ」

 

 そこに繋がる。

 ぼくは言った。ハンガーを見たと。

 現場に残されなかった、ハンガー。

 夢野さんがマントを着替えようとして倒れたのならば、必ずそこになければたらないはずのもの。

 それが、隠されるように階段の中に隠されていたのだと。

 

「嫌な予感がして、それを見つけてからも先に香りの確認をしたんだ。それで、階段から後退して出ようってときに触れた。そしたら、指先にチクリとした痛みが走って、体がまばたきさえできないほど硬直して倒れた」

 

 そう、ちょうど拾い上げたハンガーを取り落として、夢野さんと同じようにうつ伏せに。

 

「足音が聞こえて、後ろから階段を通して水槽に落ちるように押し上げられて、水の中に落とされた…… それからはみんなが知ってる通り。助けられたあと、探してもハンガーはなくなってたよ」

「香月さんが見つけて、そのあとなくなってたならやっぱり2つの犯行は同一人物のものだと思うな。共通点もあるみたいだし」

「そうですね、その可能性が高くなるでしょう」

 

 白銀さんとキーボくんの意見を聞きながら目線を流す。

 今の話に動揺でもしている人がいれば分かりやすくてよかったんだけど、さすがにそんな人はいないみたいだ。

 同じ話ばかりじゃなんだし、この話を発展させてみるかな?

 そうやって話題を考えていると、王馬くんから衝撃の事実が話される。

 

「ハンガーなら、体育館の扉の裏にあったと思うよ」

「えっ!」

 

 ぼくが驚愕で言葉を失っている間に話はどんどん続いていく。

 

「王馬! そういう大事な話は先に言え! それ、持ってきてねーか?」

「残念ながら持ってきてはないね。裁判場にくる直前に見つけたから。ほら、オレらが来たときも…… さっきの話じゃ香月ちゃんが来たときも体育館の扉は全開だったみたいでしょ? その裏にあったんだよ。ようは扉と壁の間だね」

 

 そっか、そんなところにあったんだ。盲点だった。

 

「そういや、俺たちが駆けつけたときも扉は開けっぱなしだったっすね。香月さん、こういうことも心のメモに追加しといたほうがいいと思うっすよ。多分、結構大事なことなんで」

 

 

 ―― アドバイス

 《コトダマ 開け放たれていた体育館 》を記憶しました。

 

 体育館の扉は普段閉められている。

 ぼくが出て行ったときもきちんと閉めたし、アンジーさんか、真宮寺くんのどちらかが開けっ放しで出てきたことになるのか。それはなぜだろう? なにかを隠すのに都合がいいから? それとも……

 

「でもさ、香月ちゃんの言うチクったする部分なんてなかったよ。あ、少しベトベトしてたけど」

 

 なくなったのは裁縫針。ハンガーに取り付けられていたのだとしたら、ガムテープかなにかで固定されていたのだと思う。それを取り外すのに時間がかかってハンガーをきちんと隠す時間がなくなってしまったのだとしたら?

 

「ねえ、そのチクっとするやつってやっぱり裁縫針のことだよね?」

「多分そうっすね」

 

 白銀さんたちの問答を背景に考え込む。

 身近に隠れ潜んでいたってことかな? でも、それだとリスクを伴うわけで……

 

「裁縫針?」

「う、うん…… 食堂の裁縫セットから1本なくなってたんだ。夢野さんたちがマント作りしてたから、てっきりそれで使ってるかと思ってたよ。地味に伝え忘れてたね……」

「針と…… あと多分神経毒かなにかなんだと思うんすけど、心当たりはないっすよね」

 

 なくなったトリカブト…… はそういう作用ではないな。あれは殺すために摂取させるものだ。それに針に塗布して使えるものでもない。

 

「それなら僕の吹き矢についていた毒たと思うヨ。あれは麻痺させるものと即死させるものがあったはずだからネ」

「…… そっか」

 

 思わずそっけない態度をとってしまう。

 ぼくか1番疑っているのは彼、真宮寺くんなんだ。

 なのにその彼から情報提供されると違和感しかない。

 疑いを逸らすためにやっているのかもしれないけど、ますますぼくには彼の考えることが分からない。

 

「あんまり疑いたくないんだけど、アンジーさんと真宮寺君のえっと、アリバイ? は訊かなくていいの?」

「ゴン太さん。アンジーさんと……癪ですが真宮寺さんは2人で一緒に夢野さんを発見しているんですよ。隠れて殺人をする機会はなかったはずです。お互いがお互いのアリバイを証明していることになります」

「そっか。ごめんね、ちょっと気になってたんだ」

「んー、どうたったかなー。倒れた秘密子がハンガーを持ってたような気もするしー、持ってなかったような気もするなー」

 

 アンジーさんもそこまでのことは覚えていないようだ。仕方ないといえば、仕方ないのだけど。

 

「うーんと…… 話戻すけど、針は処分されてると思う?」

「いや、処分する時間があったらハンガーごと処分するでしょ」

 

 赤松さんの問いに春川さんが答える。

 

「つまり、今でも犯人は今も針をシコシコ隠してやがんだな! せせこましいやつだなぁ!」

 

 まあ、煽りとしては間違いではない。あとはノーコメントで。

 

「今持ってる可能性のが高いんだな! よし、テメーら脱げ! これで速攻で犯人が捕まるってもんだ!」

 

 百田くんのこの問題発言により、緊張感に包まれていた裁判場はまた別の緊張感に包まれ、怒号が飛び交うことになってしまったことをここに愚痴っておこうか。

 

「殺されたいの、あんた」

「なに言ってるんですか! 論外です論外! 速攻捕まるのはあなたですよ、これだから男死は!」

「ちょっと…… それはないっていうか……」

「うわー…… うん、次の被害者は百田ちゃんだね。間違いないよ。ま、面白いからオレは別にいいけどー」

「…… 合理的判断をすると、悪くない提案だと思います。ここで針が見つかればすぐ投票できますし。内なる声もそう言っています」

「うっそだろキー坊…… キミ、恥ってもんがないの? あ、最初からなかったかあ。人じゃないもんね!」

「ロボット差別はやめてください! 然るべき機関に訴えますよ!」

「この場合逆に訴えられるんじゃないかな。キーボくんと友達になるのは少し考えるべきかも……」

「なら百田クンはいいんですか!」

「ぬ、脱げって? オレ様の最強ボディが見たいならいつでも見せてやるけどよぉ。公開ストリップなんてそんな…… こと、悪くねーじゃねーかぁ…… じゅるっ」

「倫理的に考えるべきっすよ。いくらなんでもそれは酷すぎるっす」

「裸体もまた芸術なのだー」

「……」

「あの、最原くん、なにか言ってよ! なんで顔逸らすの!?」

「えっと、それで犯人が捕まるならいいんじゃないのかな?」

「えっ、えっ? ゴン太くん…… ?」

 

 うわっ、意見が結構割れてる。

 こんなことで意見が分かれるなんて絶望的すぎるんだけど…… まあ、男子高校生ってこんなものなのかな。いや、偏見だ。百田くんのデリカシーがないだけだね。

 いつも勢いでなんとかしてしまう人だけど、今回ばかりは頼もしいと思って見過ごすことはできないね。

 

「裸っていいものだよね!」

「ありのままの姿もいいけど、一部だけ隠れてるのもエッチだわ!」

「このままいけばガッポガッポ儲けが入るんちゃうか!?」

「チチ、シリ、フトモモー!イェー!」

「ダメダヨ、ソウイウノ、ヨクナイヨ」

 

 モノクマーズでも意見が食い違ってるな。いや、味方なのはモノダムだけなんだけど。まさかメスっぽいモノファニーまで脱ぐことに賛成してるとは…… 今まであいつらの発言は聞き流してたけど、本当にヤジ入れてくるだけって感じだ。モノクマの子供に期待なんて始めからしてないけども。

 

「おっと、意見が割れたね。真っ二つだね? うぷぷぷ、待ってました! それでは変形裁判場の出番といきますね!」

「いやーホント変形っていいよねー。ロボみたいじゃん! 格好いいー!」

「あの、ロボならここにいるのですが」

「ロケパンの1つも撃てないポンコツがなに言ってんの?」

 

 興奮していた王馬くんがスン、と雰囲気を変えてすぐさまキーボくんに反論するのがなんとなく笑いを誘う。ロボットらしいことは苦手みたいに言ってるのに、そういうときだけ隣の芝が青くなるのかな。

 

「議論スクラムで意見の擦り合わせといきましょー!」

「聞き捨てなりません!」

 

 モノクマがポチッとボタンを押す直前に、茶柱さんが大声でそれを制した。

 

「んんん? なにか不満でもあるの? あんまり我儘言ってると校則違反でしょっぴくよ?」

 

 校則違反とられたら死ぬじゃないか…… エグイサルで。

 

「意見の擦り合わせ? 論外ですよ! これは戦です! 男死と女子の意見のぶつけ合い。どちらかがどちらかの意見をぶった斬る…… そういうものです! 仲良く意見をぶつけ合って擦り合わせするのとはわけが違うじゃないですか!」

「一理ある」

 

 合気道少女なのにぶった斬るってのも…… いや、確か彼女のネオ合気道は先制攻撃ありなんだっけ?

 

「あの、一応反対派の男子がいることも考慮していただきたいんすけど」

「それと、賛成派の女性がいることもネ」

「な、なんだよぉ、悪いかよぉ……」

「でも、意見のぶつけ合いなのは変わらないよね? とりあえず裁判場変形行ってみよー! レッツコンバイン!」

「そのセリフは、変わらないんだね……」

 

 裁判場が変形していく。そして、先程の意見通りに二手に分かれ、向かい合う。

 

 賛成派が百田くん、キーボくん、入間さん、アンジーさん、最原くん、王馬くん、ゴン太くんで……

 反対派が茶柱さん、赤松さん、春川さん、白銀さん、ぼく、天海くん、真宮寺くんだ。

 

 最原くんはなにも言ってないのに賛成派に回されてるのか…… 赤松さんが泣くぞ。

王馬くんは恐らく面白半分だろう。最初は百田くんにドン引きしてたわけだし。

 

 

 

 

 

「あなたちたちの意見は認められません! 転子たちが斬り伏せてあげましょう!」

 

 

 

 

 

 ――ここで突然ですがチュートリアルのお時間でございます。

 ご友人様が張り切っておりますので、あなた様もどうかご協力なさいますようよろしくお願いします。

 この白刃戦トライアルは議論スクラムの亜種となります。

 この白刃戦トライアルでは反対派の皆様からの意見をあなた様がたの反対意見で斬り伏せていくこととなります。

 お相手様の意見からキーワードを見つけ、それの反対となるキーワードをぶつけましょう。

 そう、基本的には議論スクラムと変わりません。

 それでは男子と女子との真剣勝負、開始です!

 

 

 

 

 

 

―白刃戦トライアル 開始―

 

 

「もう引けねー、さっさと犯人を見つけるためには〝 これしかねー 〟だろ!」

「〝 方法はいくらでもあります 〟! むしろそんな方法しか思いつかないなんて男死は下半身にしか脳がないんですか!?」

 

 百田くんに茶柱さんの厳しい言葉が突き刺さり、発言の真ん中に大穴が開いたような気さえする。

 

「〝 合理的 〟に考えればこの方法は悪くありません」

「〝 常識的 〟に考えてよ…… 分からないの?」

 

 キーボくんのロボットらしい意見に白銀さんから控えめな反対意見がぶつけられる。

 

「す、ストリップ……〝 悪くねー 〟提案だな! ひゃっはー、テメーらみんなオレ様の女神のような美貌にひれ伏すがいい!」

「〝 悪いに決まってる 〟でしょ。殺されたいの?」

 

 そうやって意見を次々と鋭い言刃で切り裂いていく。

 そして全員分斬り伏せたところでみんなで声を揃えて言う。

 もちろんぼくも息を合わせて。

 

「ぼくたちはその意見、認めない!」

 

 

― Blake ―

 

「ふう、危機は脱したっすね」

 

 ええ、本当に。

 どうしようかと思ったよ。百田くんも引くに引けなくなった感じでゴリ押ししてくるし、勘弁してくれよもう。

 

「えっと、脱がなくていいんだよね?」

「そうだよゴン太ー。そんなクソみたいな提案真面目に考えなくてもいいよ。それよりさ、凶器の釘についてはなにかないの? あれってどこから来たのか分かってないんでしょ?」

 

 凶器の出所か…… 釘というと、限られてくるよね。

 釘、なんとなく覚えがあるような…… えっと、なんだったっけ。

 

 思考の海の中に沈み込む。

 

 いや、これは海ではなく…… そう、まるでハーバリウムの中を漂っているような不思議な感覚だ。

 水には恐怖を刻み込まれたというのに、このガラスに囲まれたハーバリウムの中はとても心地良い。

 

 ハーバリウムの上を向けば、その向こう側が自分の表層の思考だと直感的に理解した。あそこに答えを浮上させればいい。

 周りを見渡せば、下の方に沈んでいる小さな花から気泡が上がってくる。

 気泡には文字が閉じ込められていて…… 触るとパチンと弾けた。

 文字が浮上していく…… おっと、あの文字は多分違うな。そう慌てて解放した文字を追いかけて触れると、今度はハーバリウムの油の中に溶けて消えていく。

 なるほど、こうすればいいのか。

 パチン、パチン、文字を目で追いながら泳いで近づき、触れていく。

 

 夢中でパチン、パチン、と割っていたはずなのに突然ビンの中が揺れる。

 頭上を見れば、順番通りに気泡を割ったはずなのに別の文字が先にビンの外へと辿り着いて不正解になっていた。

 

「いたっ」

 

 思わず声が漏れる。

 そしてよく見れば気泡が浮上していくスピードには違いがあって、解放したあとの文字も同じスピードで浮上していくことか分かった。

 さっきは最初に割った文字を次に割った文字が追い越してしまっていたんだ。

 

 今度はスピードのことも考えながら

 気泡をパチン、パチン。

 

 よし、今度こそ!

 

【ネ イ ル ガ ン】

 

「よし、閃いた!」

「あれ、分かったの? 香月さん」

「うん、最原くん。ほら、ネイルガンだよ。入間さんの研究教室限定の凶器であったでしょ? そのネイルガンだよ! 大きな釘でもあれなら打ち出せるようになってたから、入間さんの研究教室には必ず釘があるはずだよ!」

「つまりー、美兎が怪しいのかー?」

「お、オレ様じゃねぇよぉ!」

「待ってよ。あのときにはすでに入間さんは確保して縄で縛ってあったし、反抗は不可能だよ」

「研究教室なら誰でも入れますしね。せめて女子の研究教室には鍵をつけほうがいいと思いますが……」

 

 最原くんの話を聞く限り、入間さんとゴン太くんはすぐに捕まったって言ってたし…… 違うんだろう。

 入間さんが縄で縛られていたのは初耳な気がするけど。

 

「待って、ゴン太混乱してきたよ…… 誰がどうなってたんだっけ?」

「調律が乱れてきてるね…… 1回事件の流れをざっと振り返ったほうがいいのかもしれないよ。今まで分かったことや推測も含めて時系列をちゃんと考えようよ」

 

 それもそうだね。

 今回の事件。時系列は大事だ。それじゃあ、もう一度振り返ってみよう。

 

 

 




・白刃戦トライアル
意見のすり合わせというよりゴリ押しダメ出しに近い転子ちゃん専用モード

・閃きバブリング
ハーバリウムの中で気泡を割ってくゲーム。
気泡の上がるスピードも考慮しないといけないので、背景が綺麗なこと以外はわりとクソゲーかもしれない。
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