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くどいようだけど、時系列をまずは整理しよう。
まず、アンジーさんと真宮寺くんが夢野さんを発見して他のみんなに報せようとする。このとき真宮寺くんは現場に残り、数分後に足音を聞いて現場を離れる。
「多分この辺りでオレが夢野ちゃんを見つけたんだと思うよ」
…… 仮に、真宮寺くんのあとに王馬くんが発見、彼はアンジーさんとと同じくみんなを誘導しにその場を離れる。
このあとぼくが王馬くんを追って体育館に行き、発見。証拠をいくつか見つけたあと殺されかけた。
そして溺れている間に、アンジーさんが知らせて連れてきた天海くんたちがやってきて死体発見アナウンスが鳴る。
続いて王馬くんが走り回って集めてきた他の人たちも集まる。真宮寺くんはこのグループと同じタイミングで戻ってきているらしい。
らしいというのは、みんなの記憶が少し曖昧だからだけど。いつのまにかいた、ということらしい。怪しいのはそこだ。
だからぼくは諸々の証拠を含め、真宮寺くんを怪しんでいる。決定的な証拠がないから裁判をごり押しで進めるわけにはいかないけど。
「これで時系列は整理できたっすね」
「あれ、でもなんかおかしくない? んー、この絶妙な不協和音…… なんだか腑に落ちないような気がするんだけど」
「赤松さん、それは多分〝 死体発見アナウンス 〟のことじゃないかな」
最原くんが顎に手を当てながら答える。
何人かが既に辿り着いている答えだ。そして、これから重要になっていく話題になる。
「アナウンス、ですか。もしかしてルールのことですか?」
「3人が見つけたらアナウンスが鳴るのだー」
「おう、そんなルールあったな」
茶柱さんたちがちょうど話題にしたところで天海くんがモノクマをまっすぐ見据えた。
「俺が発見したときにアナウンスが鳴ったっす。つまりそれ以前に2人見つけてるわけっすよね。でもおかしくないっすか? 俺、香月さん、王馬君、そして真宮寺君とアンジーさんっす。明らかに発見した人数が合わないんすよ」
「5人も……」
「どういうこと? モノクマ」
呆然と呟くゴン太くんに、すぐさま疑問をぶつけに行った春川さん。
モノクマは静観していて、語らない…… 黙秘するつてことか?
「……………… ずぴ」
あ、あれ?
その事実に気づいて思わず半目になる。寝てるよこいつ。
黒豆みたいな瞳が不気味に佇む。ああしてるとただのオブジェのように見える。あれで立ったり喋ったり、コロシアイを強制しようとしないならキモかわいいくらいはいくかもしれないけど、あんな悪魔みたいなやつ、いくら可愛いからって好きになるとは思わないでほしいね…… ちょっと、フェルト地なのか確かめてみたいけど。
「地味にお休み中…… ? わたしたち、命がけで議論させられてるのに……」
「おいモノクマ! 起きろ!」
「モノクマーズに訊いてみたらいいんじゃないですか?」
「ギクゥッ!」
「キミたちモノクマの子供なんでしょ? そのくらい分かるよねー?」
「おらぁっ、さっさと吐きやがれぇ! じゃねーと部品一個抜くぞオラ!」
「お、オイラ分かんないよ……」
「ヴェヒャーッ! 分かんねーよぉ!」
「お子様いじめはよ、よくないわ!」
「そやそや、いじめはカッコ悪いで」
入間さんたちが揃ってモノクマーズに凄むけど、あいつらはいじめだなんだと騒ぎながらお茶を濁そうとする。
仲間内で既にいじめが蔓延していると思うのだけどそれはいいのか?
「コラーッ! ボクの子をいじめるのは誰だ!? 学校にクレームつけて教師全員食っちまうぞー!」
「お父ちゃん!」
「父親の鏡やでぇ!」
うん、立派なモンスターペアレントの鏡だね。最悪だよ。
あとやっぱり自分の子供たちが末っ子っぽいモノダムいじめるのはいいの? 家族内いじめはいいの?
「だったら親が答えろよ!モノクマ……」
「へ、なんのこと?」
「ほ、本当に寝てたの?」
最原くんが凄んで見せるけど、モノクマには一切通じていない。実際、本当に寝てたのかもしれない。公平に見なくちゃいけない裁判長がそれでいいのかな?
「だから、アナウンスは発見者が3人になって鳴るんでしょ? でも実際に鳴ったのは5人目の天海が発見してから」
「ああ、その話ね! なんの問題もないよ。あんまり気にしないほうが……」
イライラしている春川さんの言葉をモノクマが切って捨てようとしたそのとき、天海くんが話に割り込んだ。
「議論に必要な情報っす。ちゃんと言ってください。アナウンスが遅れただけなんて言わせないっすよ。〝 俺が3人目だった 〟から鳴らしたんすよね?」
「あー、お客様、あー、学園のルールを推理材料にするのはおやめください!」
「必要な情報っすよ。恨むならややこしくしている犯人を恨んでほしいっす」
それでなくても信用がないんだから、せめて裁判に対しては誠実に対応してほしいところだよね。
「あーもう分かったよ…… ボクはルールに則ってきっちりアナウンスをしました。これだけだよ」
なるほど。やっぱりアナウンスは正確だったってことなんだね。
その上で発見したと主張しするのは5人。
そのうち、ぼくが発見者の1人であることはもちろんぼく自身が保証できる。自分自身が証人だ。
そして、3人目の発見者である天海くんも確定だ。天海くん以外の人が最後の発見者になることはあり得ない。天海くんたちは集団で来たから、その中の別の誰かがカーテンの向こう側を天海くんより先に見ていたとしても、誤差の範囲。あの時間、あのタイミングで鳴らされたのは間違いない。
残る主張者は3人。最初に2人で発見したらしいアンジーさんと真宮寺くん。そしてぼくの前に来たらしい王馬くん。
この中では順番的に王馬くんが有力かな? でも、それだとアンジーさんたちが見たのはなんだったのかって話になるわけだ。
…… 薄々気がついていたことだけど、念のためにモノクマへ質問。
「ねえモノクマ」
「はい、ちゃんと挙手してから言いましょう!」
「…… 犯人って発見者の人数には加わらないよね? 普通に考えたら。そう思っていい?」
「げき萎えしなしな丸ですね…… またかよ。あー、あー、そうだね。原則そうなってるねー。マニュアルにはフレキシリブルな対応とか書かれてるけど、実際クロが発見者に含まれた前例なんてないですしー」
「ぜ、前例…… ?」
戦々恐々とした様子で白銀さんが声を出した。
みんな予想していることではあるだろうけど、モノクマ本人の口から〝前例〟という言葉が出て、自分たちより前にもコロシアイがあったことを匂わされてしまったわけだ。
不確定なことと、確定事項とでは意識にも差が出てしまう。
いよいよもってモノクマを操る運営側がやばい組織…… 組織なのかは分からないけど、そういうものだって理解してしまう。
死人も出て、さらにデスゲームに巻き込まれているというリアルなのに、そうではない曖昧さで精神が揺り動かされているみたいだ。
誘拐されたって、コロシアイ宣言をされたって、実際に目の前で人が死んだって、人は思ってしまうから。
まだ大丈夫、まだ大丈夫。自分は、〝 自分だけは 〟大丈夫。そんな他人事のように。
大きな災害のときのように、いつ我が身に降りかかるか分からないものを現実味がないからといって自分を誤魔化す。そんな積み木細工のような防衛本能は、上に証拠を積み上げられていくごとに重みを増し、そうして最後には無残に崩れてしまう。そういうものだよね。
コロシアイ、動くヌイグルミ、事件に死人、そして前例と証拠が積み上げられていき、そしてぼくらの心への負担になる。
メタ発言のような、多分本当の発言。モノクマのそれは自棄というより、どちらかというとぼくらへの揺さぶりや煽りを含んでいるように感じた。
「つまり、犯人はアナウンスに必要な発見者に入らない。それでいいんだよね」
ぼくが確認の声をあげると、モノクマは赤いギザギザの目をパッと光らせてこちらを見る。多分、見ている。相手は機械なのにはっきりとした視線を感じて、ぼくは少しだけ身震いした。
「うん、それでいいよ」
ごくりと喉を鳴らしてぼくは視線を揺らす。
やっぱりみんなの前で指揮するように発言するのはすごくやりづらい。思わず目が泳ぐし、声は喉に引っかかって出てきたときには掠れたようなか細い声になる。声を張って論破することだって得意じゃない。
天海くんや最原くんに任せてしまえ…… なんて何度も考えながら、それでもぼくはやる。
「それでも1人多いですね。これは、どういうことでしょうか。もしかして犯人が2人いる…… とかでしょうか?共犯がいるのなら、アナウンスの発見者に含まれてもおかしくない…… と思うのですけど」
なにより、夢野さんが死んで1番悲しんでいるだろう茶柱さんが、彼女があんなに頑張っているんだ。ぼくが怖気づいている場合じゃない。
「んー? 犯人が2人ってなるのかー?」
「ならないよ! 犯人になるのは手を下した実行犯だけだと言っておくよ!」
普通の事件ならあり得たかもしれないけど、ここのルールはあくまでモノクマ…… を通した誰かが決めている。
ダンガンロンパに共通する〝 実行犯のみがクロ 〟という凶悪なルールも、前回嫌という程実感したはずだよ。だって、そうでなければ東条さんは〝 おしおき 〟なんてされなかった。不幸な事故という結論になったはずたったんだ。普通なら、の話だけど。
茶柱さんはモノクマの指摘に顔を覆って 「あちゃー」 と言いたそうな雰囲気で呟いた。
「うう、間違えましたか…… 真宮寺さんと王馬さんで共犯。いい線行ってると思ったんですけど……」
「あれ? そこは真宮寺ちゃんとアンジーちゃんじゃないの?」
「このような卑劣なことをアンジーさんはしません! 夢野さんと仲が良かった彼女を疑うわけが、ありません。犯人は男死です! 転子の勘がそう言っています!」
「本当に犯人を見つけたいなら、その決めつけやめといたほうがいいと思うけどねー」
「余計なお世話です!」
茶柱さんの視線がぐるっと裁判場内を見渡す。
ぼくも途中で目が合い、瞬いた。なんだろう?
「女子のみなさんはもう友達です。友達なんです。転子は絶対に間違えません。これは転子の中の真実なんですよ」
「ふーん…… 裏切られなければいいけど。あんまり盲目になってると足元すくわれるよ?」
「だから余計なお世話です! というか、あなたが1番足元をすくってきそうな人物なんですよ! あなたに言われたくはありませんよ!」
っと、議論外での口喧嘩はモノクマの気まぐれとはいえ、タイムリミットがあるときにするものじゃない。
ただ、これは考えごとをするチャンスでもある。
ぼくは2人の口喧嘩を聞き流しながら目を閉じる。
死体発見アナウンスと発見者数の矛盾や違和感。
王馬くんが発見者であることが真実ならば、このことに対して誰も嘘をついていないのなら、それら全てを整理して浮かび上がることは……
薄々気がついていた事実を追いかける。
メルヘンチックな川辺。そして、渓流下り。
チューリップのようなドレスにチューリップ型のティーカップ。手に持ったティースプーンでくるくると方向を変え、速さを変え、川に突き出した岩や攫おうとしてくる
ここでご注意を。
この穏やかな
また、問題に不正解すると10%の発言力低下となり、け25%減るごとに乗りものが破壊され落下、乗り物がティーカップ→お椀→ハスの花→ハスの葉とグレードダウンしていき、最終的に発言力を無くすと雑念に溺れてしまいます。
うまく障害物を避けながら問題に答えていきましょう。
それでは、ご武運を。
まるで親指姫のように、まるで一寸法師のように川を下っていく。
周囲はメルヘンチックな木々。有名なあの遊園地のような景観と、アトラクションのようなスピード感と、時折挟まれる浮遊感。
安全バーなんてないけど、答えに辿り着くためには必要なことだ。
「わっ、問題文が空中に……」
集まってきた蝶々が密集して問題文を形作る。
正直近くで見たいものではないけど、見ないと延々とこの考え事は続いてしまう。
早く終わらせてしまおう。
【問題1 死体発見アナウンスは何人発見者が出ると流れる?】
2人
▶︎3人
4人
正解。真ん中を流れていく。
左右の川は遠くを見れば崖になっていて、選んだら滝壺行きだった。危ない危ない。
問題文が浮かんでくるところとかは、なんだか某クイズ番組でやってるトロッコの問題とかに少し似てるなあって思った。
【問題2 アナウンスの発見者に犯人は?】
含む
▶︎含まない
この辺はまだおさらいだ。
大事なのはロジックを突き詰めていくこと。
そのために前提条件というものは重要だから。
【問題3 発見者の数に対し、天海発見時にアナウンスが鳴ったのは?】
▶︎おかしい
おかしくない
モノクマによるルールではおかしいことでないと証明された。でも、発見者の人数のせいで事態はややこしくなっている。
天海くんが発見したのは5番目。なのに3番目だと証明されている。
つまり前提条件のどれかがおかしいんだ。
【問題4 発見者の組み合わせでおかしくないものはどれ?】
真宮寺・アンジー・天海
アンジー・香月・天海
▶︎王馬・香月・天海
真宮寺くんとアンジーさんか発見したのは同時。
ぼくが目撃したのも間違いようがなく、そして最後が天海くんだったのなら、1人目は2人ではあり得ない。
【問題5 この場合、真宮寺・アンジーが発見した際夢野は】
▶︎生きていた
死んでいた
……
…… うん。
【問題6 夢野がその時点で生きていた証明ができるのは誰?】
アンジー
王馬
▶︎香月
それはもちろん、ぼくしかいない。
夢野さんと同じように、毒針で身体麻痺になった、このぼく自身が証拠品だ。同じ手口で犯人が彼女を殺した証拠に他ならない。
さらに血のり代わりのケチャップが付着する仕掛けもあるし、最初の発見者を混乱させ誤魔化すつもりだったのは明らかだ。
やっと辿り着いた!
「…………」
「おい王馬テメー本当に嘘はついてねーんだな?」
「やだなあ、こういう嘘はつかないよ」
「嘘つけ!」
「嘘だよー」
「嘘なんですか!?」
「違うよ、嘘つけって言われたから嘘だって言ったんだよ。オレは入間ちゃんのリクエストに答えてあげただけ」
「屁理屈じゃないですか!」
「ロボットに理屈なんて通じるの?」
「ロボット差別です!」
うん、まあ疑心暗鬼にもなるよね。
特に王馬くん相手なら仕方ないよ。
「あのさ、おかしなアナウンスのタイミングについて…… 分かったことがあるんだ。聞いてほしいんだ」
「香月さんも…… うん、僕は香月さんの推理を聞いてみたいな。多分、僕よりも香月さんや茶柱さんが解決するべきなんだと思う」
「え、いいの? 最原くん」
「うん、茶柱さんみたいに言うなら探偵の勘…… かな」
「パクリは悪ですよ最原クン!」
キーボくん、それは最悪のタイミングだよ。これだから空気の読めないロボットは……
「えっと…… 5人の発見者が矛盾なく繋がる仮説があるんだ。それは……」
劇的な反応。期待の眼差し。
でも、ぼくがこれから言うことは、絶望に他ならない。
…… 特に、アンジーさんにとっては。そして、茶柱さんにとっても。
だって、茶柱さんがあの場にいればこの事件は起こらなかったかもしれない。そして、夢野さんが生きていることをアンジーさんか気づけば、この事件は防げていたんだ。
これこそが残酷な真実なんだと思う。
それをぼくが言わなければならない。
でも、ぼくがやるべきなんだ。なによりも友達だから。ただそれだけのために。
「真宮寺くんとアンジーさんが夢野さんを見つけたとき、まだ彼女は生きていた。殺されかけたぼくみたいに、毒針に刺されて体が麻痺してただけで、ケチャップが血のように見えていただけで、意識があるのに指先ひとつ、なにもかも麻痺して動かせなくなってただけなんだ!」
そう、毒に侵されていても意識ははっきりとしていた。
殺されかけたときの恐怖は今でもはっきりと思い出せる。
だけどぼくは生きている。助けられたから。
でも、夢野さんは体がなにもかも動かせない状態で、うつ伏せでなにも見えない状況でそのときを迎えた。
いくら叫びたくても、自分は生きてると主張したくても、アンジーさんには届かない。
頼りのアンジーさんが離れていく足音。そばに佇む彼への不信と恐怖。
そして、背中に釘を突きつけられたときの絶望感。
意識だけがはっきりとしているのに、体が動かない。
すぐそばの死に対して、抵抗ひとつ満足にすることができない。
ゆっくりと、着実に近づく死の恐怖。
それがどれだけのものだったのか、計り知れない。
叫びながら涙が滲んできた。
こんなにも残酷な殺人、許してなるものか!
「つまり、あの場に残った人物こそが夢野さんを殺せる人物だったんだよ。そうだよね?」
…… 真宮寺くん。
それでも彼は、おどけたように、 「僕かい?」 と首を傾げた。
あと2話で裁判編終われたら…… いいなあ(フラグ)
気づいている人は気づいているのでしょうか。今回のトリックは探偵学園Qネタでもあるんですよね。ありましたよね、こういうトリック。