月桂樹の花を捧ぐ   作:時雨オオカミ

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突発的女子会

「ぼくもどうしてここにいるか分からないんだ」

 

 と、彼の質問に即答する。

 天海くんはそれに苦笑しながら 「やっぱりキミもそうなんすね……」 と呟いた。

 

 中にいた人達も記憶はないんだな。

 当たり前か。本当に、ぼくはなんでオーディションの記憶があるんだろう。いや、受けることすらしなかったけれど…… でもこの世界の真実は知ってしまっているわけだ。

 誰が、どうやって、ぼくをここに連れて来たのか。攫ったときの記憶は消しているのに、それ以前の記憶を消していない理由。

 分からない。分からない。なにか理由があるのか? ぼくも知らない、なにか特別な理由が……

 

「ここはもう一通り調べましたし、俺は外に出てみますかね……」

 

 チラチラと正面にある本棚を見ている彼に、お邪魔してしまっただろうかと考えるが、一体なにをしていたのかも分からないので首を傾げる。

 

「ぼくも、もう行こうかな」

「じゃあ一緒に外に出るっすか。隣のゲームルームには行きましたか?」

「あ、まだ行ってないね」

「じゃあそこでお別れっすね」

 

 図書室から無事に出て、階段を上って行く天海くんを見送る。

それからぼくは隣の部屋に入ることにした。さっき天海くんはゲームルームと言っていたけれど、使えるのだろうか?

 ゲームできるかできないかで随分と気持ちの有り様も変わってくると思う。娯楽くらいはないと、人と話すのが苦手な人とかが辛いよね。

 

「……」

 

 す、すごい低身長の可愛い男の子がいる…… !?

 どうやってこんな人見つけて来たんだよ。オーディションにこんな人来るの? 確かに毎回ネタ枠というか、マスコット枠みたいな人がいるけれど…… この人も、そうなのかな。

 耳みたいな二本のツノのような黒い帽子と、ライダースジャケット。それになんか鎖? 足枷? がついたボーダーのサルエルパンツを履いている。そのサイズのライダースジャケットって特注じゃない? 普通売ってないよね。身長も1メートルくらいしかないみたいだし……

 

「えっと、こんにちは。ぼくは香月泪。超高校級のアロマセラピスト…… らしいよ。き、きみは?」

「星竜馬だ」

「……」

「……」

 

 わっ、良い声してる…… じゃなくて、あれ、才能は?

 ぼくがそれに触れられずにおろおろしていると、星くんは帽子をぎゅっとずりおろして目元を隠すとため息をついた。

 なんか、ごめん。本当は名前も有名なんだろうな。分からないなんてって呆れられたのかもしれない。

 

「元、超高校級のテニス選手だ。それも昔の栄光だがな…… 今はただの囚人だ」

「元?」

 

 ああ、声に出してしまった。地雷かもしれないのに……

 

「つまり俺は犯罪者に成り下がったんだ。超高校級の称号を貰っておきながら、人殺しになったんだよ。あんたも、あまり俺に構わないほうがいいぜ」

 

 マスコット枠な上に、歴代でも毎回入っている裏社会枠か……

 初代は殺人鬼の才能。2番目は主従が裏社会系だったな。従者の方は暗殺もやってたらしいし。あと詐欺師もそうか。他にも爆弾魔とか闇医者とか、泥棒やらコレクターやら心理学者やら…… 人殺しをしている人間か、それに近いことをしている人間は必ずいる。

 それが彼ってことか。

 でも、彼自らぼくに忠告してくるってことはそこまで悪い人じゃなさそうだな。

 

 彼に思い浮かぶイメージは、 「誇り」

 誇り高い、ヒメユリの香りがする。それと、 「精神の美」 を携えたクレマチスの香り。

 

 こんな雰囲気の人が悪い人なわけがない。

 

「避けるかどうかは、ぼくが考えることだよ。だからきみのことも知りたいな」

「ッチ、物好きなやつだな」

 

 このくらいの大きさだと怖く感じないというのもある。

 星くんは咥えたタバコみたいなものをカリッと噛み砕いてそのまま食べてしまった。すかさず懐から取り出した箱を見ると、それがココアシガレットであることが分かった。

 気取りたいのか、それとも本当に好きなだけなのか…… 案外可愛い人なのかもしれない。

 

「甘いもの、好きなの?」

「…… クールじゃねえな」

 

 無意識の行動だったらしい。

 手で帽子を下げ、バツの悪そうな顔をした彼はふいと顔を逸らした。

 

「とにかく、人殺しには近づくもんじゃねぇよ」

 

 それっきり、星くんは沈黙してしまう。

 本格的にぼくを無視しようとしているらしい。

 

「全員に自己紹介しないといつまで経っても進展がないから、気が向いたら外にも出てみてね」

「…… 考えておく」

 

 今度こそ彼に背を向けてゲームルームを出る。

 ああ、そうそう。ゲームは植物の根っこが邪魔して断線しているようで、修理しないと使えそうになかった。

 それと、ゲームルームの奥の方にも扉があったが、そちらも開かないようだった。外側の裏口からなら入れるかと思ったが、そちらの引き戸は建てつけがかなり悪く、腕一本入るくらいしか開かなかった。

 中を覗いた限りビデオルームっぽかったかな。スクリーンが設置してあった。

 

 ぼくも地下は粗方探索したので一階に上がる。

 それから、今度は行かなかった反対側の廊下に歩みを進める。

 

「あれ、香月ちゃんだ」

 

 思わず回れ右をしそうになったぼくのブレザーを強く引っ張る手がひとつ。

 にこにこと笑顔を浮かべた王馬くんは仄かにレモンの香りを纏わせながらぼくを逃さない。

 

「なにか用かな? 王馬くん」

「キー坊見かけなかった? ロケットパンチひとつも打てないポンコツ人型ロボなんだけど」

「ろ、ロボ? ロボとは、モノクマーズ以外には会ってないよ」

「そっか」

 

 ロボットなんているのか。

 変な顔をしているだろうぼくを指差してケラケラ笑った彼はそのまま二階に上がって行く。

 そのロボットとやらを探しているんだろう。見かけたら教えてあげよう。

 

 モノパッドを見て調べると、奥の体育館の方には誰もいないようだ。

 逆に、倉庫に一人。食堂には四人もいる。びっくりだ。購買と書かれた部屋には誰もいない。試しにドアを開けようとしてみたが開かなかった。鍵がかかかっているのかもしれない。

 あと二階にはさっき行った王馬くんを含めて二人。

 まあ、まずは倉庫からかな。食堂に入っちゃうと会話で盛り上がったりして、中々抜け出せなくなるかもしれないから。

 

 倉庫に入ると、そこにいたのはロボットだった。

 

「え? あ、えっと…… ?」

 

 本当にロボットがいるとは思わなくて、ぼくは意味のわからない声をあげながらロボットを指差して疑問を浮かべるしかできない。

 

「あ、王馬クンじゃないんですね…… 良かった。やっと逃げ切れました」

「き、きみが王馬くんの言っていた〝 キー坊 〟?」

 

 ロボットなんていうからもっとメカメカしい感じを予想していたのだけれど、案外人間らしい造形をしていて感心してしまう。

 体のパーツは学ランっぽくなっていて、主人公の象徴たるアホ毛を揶揄するように〝 アンテナ 〟と呼ばれるものが、そのミルク色の髪型パーツに立っている。本当にアンテナだったりして。

 ラジオとか受信できないのかな。

 ぼくが王馬くんの名前を出すとキー坊とやらは明らかに苦い顔をして 「ボクの名前はキー坊ではありません」 と訂正した。

 すごい、こんなに表情変わるんだ!

 

「ぼくの名前は香月泪。超高校級のアロマセラピストなんだ。記録しておいてね」

「記録ではなく、記憶です。キミもロボット差別ですか?」

「で、名前は?」

 

 ロボット差別…… ? と疑問を浮かべつつも先を促すと、彼はえっへんと胸を張りながら自己紹介を始めた。

 

「ボクの名前はキーボ。超高校級のロボットなんですよ! すごいでしょう」

 

 それ、すごいのはきみじゃなくて作った人なのでは? なんて思ったけれど口には出さない。

 ロボットって才能なのかな? いや、御曹司とか極道とか生まれ持った立場で才能を持ってる人も毎回いるし…… それと同じと思えばいいのかな。

 

「生まれ持った存在そのものが才能…… ってことなのかな」

「ボクは人間と同じように0歳から学習し、成長していく高性能AIなんです。だから年齢はキミ達と同じ、れっきとした高校生なんですよ」

 

 なるほど、ということは15年以上はきっちり学習し続けているんだね。それはすごいかも。

 

「どんなことができるの?」

「それ、毎回言われるんですが…… 特別なことはなにもできませんよ。あくまでボクはロボットとして生まれただけで、普通の高校生とほとんど変わりません。ロケットパンチなんて、もってのほかです! 自分の腕が飛んで行ってしまったら不便でしょう!」

 

 キーボくんが不満を持っていることはよーく分かった。

 あれだよね、日本人だって海外の人に言ったら 「ハラキリ、ニンジャ!」 って期待されるようなものなのかな。

 普通の日本人は隠れた忍者なんかではありませんってね。

 そうやって考えると、あんまり追求するのも可哀想かも。

 

「そういえば、王馬くんがきみにアロマを嗅いでもらうとかなんとか言ってたけど、どうだった?」

「ああ、あのシトラール、アルデヒド類、ケトン類、エステル類などの混ざった物質ですか」

「絶対に許さない」

「なんでですか!」

 

 やっぱり同情なんてしない。

 確かに香り成分はそれだけど! それだけど!

 空気読めって言われて空気中の成分口に出すようなものだからね!それ!

 所詮ロボはロボか……

 

 視線を周りに移すと、いろんなものが目に入った。

 倉庫と言う名の通り、大体の物はなんでも揃うようになっているのかもしれないな。

 

「無視しないでください!」

「そう思うなら、成分だけじゃなくてちゃんと香りのことを考えられるようになってほしいんだよね…… ないの? いい匂いだなぁとか」

「よく分かりません」

 

 即答……

 

「まあ、これから覚えてくれればいいよ」

「なにを言ってるんですか。皆さんで脱出するんでしょう? そんなに長時間一緒にはいられませんよ」

 

 この人は、もう…… 煽り機能でもついてるのかな。

 

「まあいいや、ぼくはもう行くね。キーボくんは暫くここに隠れていた方がいいよ」

「あ、ご忠告ありがとうございます」

 

 あとで王馬くんに密告しよう。

 ぼくは、次に目の前にある食堂の扉を開けた。

 

「ああ、さっきぶりだネ」

「いらっしゃい香月さん。香月さんは紅茶? それともコーヒーがお好みかしら」

「女子は大歓迎ですよ!」

「だらだらするのは最高じゃぁ」

 

 そこには初対面の人が二人。

 それと真宮寺くんと東条さんがいた。

 

「こんにちは。そっちの二人は初対面だよね? ぼくは香月泪。超高校級のアロマセラピストだよ、よろしくね。あ、東条さんは紅茶をよろしく」

 

 ひとまず、ずっと歩いていた休憩のために椅子に座る。

 自己紹介しつつ東条さんに紅茶を頼み、背の低い魔女っ子っぽい人の隣に座る。その子のもう一つの隣には長い黒髪を所々で結んだツインテールの女の子。頭についた手裏剣か風車のような形をしたリボンが特徴的だ。へそだしセーラー服に草履、それとリボンもあって忍者っぽい出で立ちをしている。超高校級の忍びとかくノ一とか?

 魔女っ子は十中八九マジシャンか手品師だろう。

 

「転子は茶柱転子と言います。超高校級の合気道家なのです! 香月さん、よろしくお願いしますね!」

「聞いて驚いて敬うがいい。ウチこそは超高校級の魔法使い、夢野秘密子じゃ」

 

 茶柱さんは爽やか女子だね。はきはきしていて気持ちがいい人だ。

 ノースポールとスミレの香り…… どちらも誠実が花言葉に入っている。うん、可愛らしくて良い人だ。

 それに夢野さんはそのまんま、魔法使いね。マジシャンって自分のことを魔術師とか言ってる人もいるし、人に夢を与える仕事だしそう名乗っているのかもしれない。

 

「…… 周りからは、超高校級のマジシャンと言われておるがのう」

「魔法使いって言われるくらいすごいってことでしょ? さすがは超高校級だね」

「魔法使いみたいじゃなくて、魔法使いなのじゃ」

 

 あっ、これは比喩じゃなくて本気で言ってる…… ?

 というか、夢野さんっていわゆる〝 のじゃろり 〟か。衣装も華やかだし舞台に立っている彼女はきっととても綺麗なんだろうなあ。

 ラベンダーの良い香りがする。あまりいい言葉はないけれど、いろんな人に愛される香りだ。ラベンダーならちょうど精油があるし、あとで二人に分けようかな。茶柱さんが夢野さんをたくさん構っていて、仲良さそうだし。

 あ、あとさっきの倉庫でトランプでも探してマジックを見せてもらいたいな。

 マジックショーとか、サーカスとかそういうのテレビでしか見たことないから見てみたいよ。

 

「今度見てみたいな」

「あっ、転子も見たいです! 夢野さんの魔法!」

「…… 気が向いたらよいぞ」

 

 楽しみにしていよう。

 

「お待たせしたわ」

「ありがとう、東条さん」

 

 目の前にコトリと紅茶のカップが置かれる。

 湯気と共に濃いアールグレイの香りがぼくを包み込むみたいだ。このまま茶葉の香りを楽しむのもいいが、残念ながらぼくは苦みが少し苦手だ。本来ならばストレートで飲むのが一番香りを楽しめるのだけど、すぐ近くに置かれたミルクを少しだけ加えればまろやかでほのかに甘い香りが混ざり込み、口当たりも柔らかくなる。

 香りを楽しんでいないわけではなく、これも一種の香りのブレンドというものなんだ。

 これに少しレモンを加えたり、ミルクの代わりにハチミツを加えたりするのもまた一興だと思う。紅茶は沢山の楽しみ方があっていいよね。

 コーヒーも香りは好きなんだけど、苦味が強くてぼくはコーヒーを冒涜してしまう。ミルクを注ぎすぎてコーヒー牛乳になってしまうから流石にちょっとね。

 それは香りの調和ではなく、香りの打ち消しだ。

 偶然とはいえ東条さんもいるし、足休めに食堂を選んだのは正解だったようだね。

 

 キョロキョロと辺りを見回してみれば、食堂にも裏口があることにすぐ気がついた。

 位置的に、外で裏庭に行くとき通ったテラスに繋がっているんだろうな。

 食堂に入って正面の壁にはなにやら書いてあり、それが食堂を使う際の注意書きであることも気がついた。

 

 曰く、食堂にある食べ物は自由に飲食可能。

 曰く、使った調理器具は片付けること。

 曰く、夜間は閉鎖される。

 

 ダンガンロンパには夜時間と、その他の時間が分かれているのが特徴的だ。

 夜時間の開始は午後10時。終了は朝の放送がある午前8時だ。その間は食堂に入れなくなってしまうため、突然喉が渇いたとか夜食が食べたいとかがある人は事前に食べ物を自室に持って行っておく必要がある。

 シャワーはその時間浴びれるのかな…… ?

 

「あれ、地味に人が多いね」

「あっ、みんなさっきぶりだねー」

 

 お茶しながら茶柱さんと夢野さんのやりとりを微笑ましく見守っていたら今度は知らない女の子と、また会ったことになる王馬くんが入ってきた。

 

「王馬くん、キーボくんなら倉庫に立てこもってると思うよ」

「おっ、ホント? ちょっと行ってくるね」

 

 すぐさま退場した。

 

「こんにちは、初めましてだよね。ぼくは香月泪。超高校級のアロマセラピストだよ」

「ぼくっ娘!? アイドルになる? それともウィッグ被って……」

「え、ええ?」

「ああ、ごめん…… ついついはしゃいじゃって。私は白銀つむぎ。超高校級のコスプレイヤーだよ」

 

 コスプレイヤー!? ぼくはまた図書委員とかそういうのかと……

 これは、泉のような…… 水の香りに紛れてエキゾチックな香り…… ってことはロータス。ハスの花の香りだね。

 ロータスの精油は持ってないから、研究教室が開いたら植物園で探してきて作るのも良いかもしれないな。

 

「コスプレイヤーかあ」

「って言ってもね、私は衣装を作るのが好きで、それを着てくれるなら誰でもいいんだよ。人に見られるのはあまり好きじゃないしね。でもほら、レイヤーの中にはキャラになりきることより自分を売り込みたい人もいるから…… そういう人に利用されるくらいなら自分で着てキャラの魅力を広めたいかなって。そうやって活動してたら、超高校級の称号が貰えたんだ。世の中にコスプレが認められた気がしてあのときは本当に嬉しかったんだぁ」

 

 コスプレイヤーとして認められたのが嬉しいんじゃなくて、コスプレが認められたのが嬉しいんだね……

 一を聞いたら十が返ってくるってこういうことを言うんだろうなあ。

 

「どのくらい人が見にくるとか、分かる? えっと、ほら、最高記録とか…… ?」

「数字を見る限り、パンダが初来日したときと同じくらいだよ」

「へっ!?」

 

 それ、社会現象になったんだよね?

 てことはかなりすごい人なんだなあ。

 

「私は超高校級のメイドの東条斬美よ。よろしくね。ところで白銀さんは紅茶? コーヒー?」

「あ、コーヒーお願いするね。よろしく、東条さん…… ほとんど二階にいたんだけど、地味に疲れちゃったから休憩しに来たんだ。ここで正解だったよ……」

「普通に歩き回ればいいじゃろ……」

「うーん、エンカウント対象が動いちゃうのはよくないと思って」

「あー、自己紹介したいのに移動しすぎてすれ違う…… あるあるだね」

「あるあるなんですか?」

「サマルトリア化は避けたかったんだよ」

 

 メメタアな発言だけれど、コスプレイヤーと考えれば自然なんだよね、これ。ゲームではよくある話だ。

 

「僕はちょっと肩身が狭いネ」

「男死はさっさとどっか行けばいいじゃないですか。ここは今から女子会を開くんです」

「でも、ここにいるのが一番効率がいいんだヨ。食堂なら誰もが見にくるから」

「そうだよね。地味に私もそう思って、ここに引きこもるつもりだったんだ」

 

 皆考えることは同じみたいだ。

 ぼくも、外の皆が中の皆と挨拶できるまで暫く待つことにしようかな。

 だから東条さんが淹れた紅茶をゆっくりと嗜みながら、みんなと会話に興じることにした。

 

「茶柱さんは合気道家なんだよね」

「そうですよ! 正確にはネオ合気道ですけどね」

「ネオ…… ?」

 

 なんだそのダンガンロンパタイトルにありそうな名前。 「ネオダンガンロンパ◯◯」 あれ…… 実際になかったっけ? どのナンバーだったかな。確か34辺りだったような…… ? あれ、違ったっけ? うーん、思い出せない。

 

「師匠と一緒になんとなく合気道を想像して作り上げたのがネオ合気道なのです!」

「うわあ……」

 

 よくそれで合気道家として認められたな。

 白銀さんも 「ミリしらが本家を超えることってあるんだね…… あれ、この場合は地味に乗っ取りなのかな…… 」 なんて深刻な表情で呟いている。

 人の才能をとやかく言うつもりはないが、政府の基準とやらが摩訶不思議だ。

 

「以外と指は硬いんだね」

「お裁縫してると指先が地味に丈夫になるよ」

「東条は肌荒れせんのか?」

「ちゃんとケアしてるわよ。よかったらあなたに合ったケア方法を調べるわ」

「いや、ウチには無用じゃ」

「ダメですよ夢野さん! 柔らかい肌が傷ついたら大変です!」

「東条さん、紅茶のお代わり貰ってもいいかな」

「真宮寺君はお砂糖3つだったかしら」

「よく分かったネ」

「観察していれば分かることよ」

 

 ちょっと肩身が狭そうにしながら真宮寺くんが席を移動し、ぼくたちはキッチンにあったらしいお菓子を東条さんから受け取りながら親睦を深める。

 本当に女子会みたいで胸が踊る。

 

 モノクマーズによる放送が入るのは、この数十分後のことだった。

 

 

 

 


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