月桂樹の花を捧ぐ   作:時雨オオカミ

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研究教室探索

 研究教室へは3グループに分かれて向かうので、それぞれの研究教室に行く人をまず決めることになった。

 アロマセラピストの研究教室にはぼくと、白銀さん、夢野さん、春川さん、星くん、東条さん。

 発明家の研究教室には入間さん、天海くん、キーボくん、真宮寺くん、ゴン太くん。

 ピアニストの研究教室には赤松さん、最原くん、茶柱さん、王馬くん、百田くん、アンジーさんだ。

 

 食堂には丁度割り箸もあったので、1から3まで番号を振ってくじ引きした結果だ。発案は真宮寺くん。

 ぼくは割り箸でくじを引くと聞いて「うっ、頭が……」という状態になったが、よくよく考えれば〝幸運〟枠がいないことに気がついてホッとした。

 結果も順当だろう。6人、6人、5人にそれぞれ分かれて研究教室に向かう。

 

 ぼくたちは植物園だ。あそこには虫がいないから植物園自体がぼくの研究教室のようなものなんじゃないかと思っているけれど、中にちゃんと研究教室もあったから今はそこを調べることになるはずだ。

 植物園自体の探索はもう少し後でもいいだろう。どうせ毒性のある植物もあるのだろうが、モノクマが言っていた凶器の在り処は研究教室なのだ。多少の憂は断っておきたい。

 

「植物園の中は随分広いね」

「うん、ぼくもまだ全然探索してないから、どのくらい広いのかはちょっと分からないな……」

 

 道中、春川さんがポツリと呟いたので答える。

 あの棺から目覚めて、ろくに探索することなく中心地で東条さんと出会い、そして移動してしまったのでまだまだ未知の世界だ。

 

「ガラス温室なのに天井が遠いよね…… 地味にお金かかってそう。こんなに綺麗な場所なんだから、撮影で来たかったなあ」

 

 植物たちはきちんと管理されていたのか結構整然と並んでいる。

 こういう場所はコスプレイヤーも使いたいだろう。ただし、花の中に入って寝転んだりするのはNGだ。あくまでこれを背景にして撮影するのならいいけれど。

 そこのところは白銀さんがそんなことをするレイヤーじゃないと理解しているのでなにも言わないが。

 

「それに香月さんにコスプレしてもらいたいものもあるし……」

「えっ」

「どう? 白雪姫になってみたくないかな?」

 

 ああ、あれか…… 確かにぼくは赤毛だけれど……

 

「遠慮しておくよ」

「そっか、残念」

 

 随分と諦めがいいな。そのほうがありがたいけど。

 

「ウチを誘ってくれてもいいんじゃぞ」

「ほら、夢野さんは身長が……」

「んあー!!」

 

 残酷なことを。

 

「男子に銀髪なんていないけどそこはどうするのさ」

「東条さんなら大丈夫だよ!」

「私が?」

 

 似合いそうなチョイスで納得してしまった。

 

「盛り上がってるところ悪いが、研究教室ってのはアレか?」

「あ、ごめんね…… うん、あそこで合ってるよ」

 

 植物園の入り口付近から少し入ったところに星くんが指差したところがある。

 そこには可愛らしいデザインの小屋のようなものが建っていた。壁板は白く塗られ、屋根は淡い赤色の植物園にあるととても目立つ建物だ。扉には月桂樹の輪に絡むように雪割草…… ミスミソウが描かれている。

 

「この機械は……」

「なにこれ、昨日はなかったよ…… ?」

 

 扉の横には、昨日はなかったはずの機械が配置されていた。

 配電盤のようになっていて、その上に小屋と同じカラーの屋根が設置されている。配電盤っぽいものの色が白なので、紅白の小屋の前にまた紅白の小さな小屋があるみたいだ。

 

 

 

 

 

ー!!

 

 

 

 

 

「それは散水装置だよー!」

「植物園の管理に役立ててちょうだいね!」

 

 2匹だけ…… ? いつまで経ってもモノキッドとモノスケ、モノダムが出てこない。

 もしかして他のところでも説明してるのだろうか。

 

「スプリンクラーってこと?」

「そうよ! でもね、急ピッチで用意したから少し足りない部分があるの……」

「足りない部分…… なにかしら」

「時間をセットできないんだよ! スプリンクラーを使うなら直接操作しないといけないんだ」

 

 うわあ、それは致命的な欠陥なんじゃないかな。

 特にぼくは朝起きられないから、早朝に水をまいておきたくてもできないじゃないか。

 

「面倒いのう」

「うん、さすがに面倒かな」

 

 こればっかりは夢野さんに全面同意する。

 

「香月、中見てもいい?」

「あ、お願いするよ。ぼくは特になにも思わないし…… むしろモノクマの言ってた凶器ってやつを探してほしい」

「なら俺たちは中だな」

「そうだね……」

 

 そんなやりとりをして春川さん、星くん、白銀さんが小屋の中に入る。

 ぼくと東条さんは引き続きモノクマーズの相手だ。

 

「その機能をつけることはできないのかしら」

「できるよ。できるけど、ちょっと時間がかかるから、2、3日は直接やってもらわないといけないよ」

「ごめんなさいね!」

 

 まあ、ここまで言われたのなら仕方ないか。意図的にやったわけじゃなさそうだしなあ。

 でも、こいつらが意図的じゃなくても裏でモノクマが糸を引いている可能性も捨てがたいし…… あんまり鵜呑みにするわけにもいかない。

 ないものはどうしようもないけどね。どうしよう、スプリンクラー……

 仕方ないから、朝食後に最初の散水をすることにしようかな。

 どうせ8時には起きられないから。

 

「それじゃあ、あとは存分に探索してちょうだい!」

「じゃあね〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…… 香月さんが良かったらだけれど、毎朝私が散水しに来ましょうか?」

「えっ、な、なんで…… ?」

「そんなに難しい顔をしていたら分かるわ。起きられるのかが心配なんでしょう?」

「う、うん……」

 

 恥ずかしい…… そんなに分かりやすく顔に出ていたか。

 でも本当に起きられないし…… でもモノクマーズもここがぼくの管轄だって言っていたようなものだし、人に任せるなんてことは……

 

「メイドだもの。私に依頼してくれればなんでもするわよ」

 

 そっか、東条さんは頼られるほうが嬉しいのかな…… ?

 なら、頼んでみるのもいいか。そのほうが仲良くなれるかな。

 

「えっと、東条さんは何時に起きてる…… ?」

「これからは朝食の用意もあるし…… そうね、6時くらいには起きているわ」

「あ、ならそのくらいの時間に散水しておいてほしいな」

「依頼、承ったわ」

 

 東条さん起きるの早いなあ。ぼくももう少し頑張らなくちゃ。

 

「それじゃあ中に入ろうか。もうみんなが調べてくれてるけど、ぼくも自分の研究教室は気になるし」

「そうね」

 

 中に入ったぼくは衝撃を受けた。

 

 向かって右側にズラリと並ぶ棚には無数のガラス瓶と、その中に蕾、実、花など部位ごとに纏められた材料たち。

 アルコールにつけられ既に溶媒抽出法…… アブソリュートが行われているガラス瓶がこれでもかと詰め込まれた棚まで…… !

 下の方には圧搾法に使う小さめのローラーと遠心分離機。凶器にはなり得ない大きさなので安心だ。1人で作業する分には十分使える物だ。しかも高級品! モノクマもいいところあるじゃないか。

 

 部屋の真ん中には大きな作業台があり、その上には水蒸気蒸留用の器具があるし、大きな蒸留釜まで完備。左側手前にはアルコール、無水エタノール、石油エーテル、グリセリン、ヒアルロン酸、アミノ酸などの副次的材料が瓶に納められ小さな棚ぎっしりと入っている。

 左奥には簡易キッチンもあり、抽出のために火を使うときに便利だ。

 

 右奥には丸テーブルと椅子が数脚重なっており、ガラスのティーセットまで…… ! 近くには精製水が出てくるらしい冷水機まであるし、一休みするスペースなのかな?

 精製水は精油作りに使うものなんだけどね。いわゆる純水というやつで、不純物が全て除かれたものだ。純水であるため電気も通さない。

 あれが自動で追加されるのなら飲料にも使える。ただ、水の味を作っているミネラルなどの成分が入っていないので無味無臭。甘く感じたりはしない。だからお茶に使うと美味しくなるんだけど。

 

 入口付近にはロッカーがあったので中を見てみると、ぼくの校章が意匠に入ったエプロンと土いじり用なのか作業服とゴーグル。肥料に植物の種。

 

 あと植物園の地図やら、植物園の植物分布が書かれた書類、図鑑や花言葉の本もちらほらと見える。

 控えめに言って天国だった。やっぱり引きこもろう。あと寝る場所と食べるものさえあれば完璧だ。倉庫か購買部にあれば持ってこよう、そうしよう。

 

「すごい…… !」

「あんたには宝の山にでも見えてるの?」

 

 ぼくが興奮冷めやらぬ状態で中を見て回ると春川さんに呆れた目を向けられた。

 彼女は植物図鑑片手に棚に置いてあるガラス瓶の中身を検分している。多分毒性植物がないかを調べているんだろう。

 

「植物園の分布はあるのに、この棚にある植物のリストとかはないんだよね…… 地味に不便だよ」

「あれ、そうなの?」

「そうじゃないと調べたりなんてしない」

「香月さん、ここにある物はなにに使う器具なのかの説明をもらえるかしら」

「う、うん」

 

 東条さんに説明をしながら歩き回る。

 1部のアブソリュートは既にコンクリートと呼ばれる抽出物を取り出せる段階となっている。あとは溶液を取り除いてエタノールで再抽出して、精油と花ロウ…… ワックス成分を分離させれば完成だ。

 アロマポットなどもいくつか棚の下部にあるので今すぐ引きこもって作業に入れば明日には沢山のエッセンシャルオイル(精油)ができるだろう。

 

「香月、足元」

「えっ、あっ、わあー!」

 

 興奮していたからか、足元になぜかあった大きめのバケツに足を取られて転んだ。

 なんでこんなところに? 作業台のすぐ横だからゴミ箱? こんな邪魔な位置にあるだなんて…… まあいいや、元の位置に戻そう。

 

「大丈夫? 喜んじゃう気持ちは分かるけど……」

「ドジじゃな」

 

 白銀さんは苦笑いをしながら手を差し伸べてくれる。

 ちょっと迷ったがちゃんと手を取って起き上がる。すぐさま 「ごめん」 と謝り、タイトスカートを叩く。

 ここにいた男子が星くんで助かった。見ないふりを決めてくれているので本当にありがたいよ。

 

「結局、ガラス瓶の中身は全部安全なやつだね」

「薬効のあるやつもあるが、毒性はないみたいだな。あっても凶器になるようなもんじゃねぇ……無視できるレベルか」

「それにしても、やっぱりどれがどれだか分からないのは地味に不便だよ……」

 

 ガラス瓶にはラベルも貼っていないので少々不便だ。

 

「あ、ならぼくが直接瓶に書いておくよ。洗って使うにしても、同じ素材は同じ瓶で保管したほうがいいし」

 

 万が一混ざってしまったら困るからね。

 一休みスペースにあった油性ペンで材料の入った瓶に種類を書き込んでいく。なにも見ずに植物名をスラスラ書くぼくに春川さんが複雑そうな顔をした。

 わざわざ図鑑で調べていたからか。でも研究室の主のぼくが 「毒はないよ」 と断言しても信用できないだろうし、これは必要なことだったと思うよ。

 

「そういえば、昨日お風呂入ったとき思ったんだけど…… ここって皆同じシャンプーリンスなのかな」

「同じでしょ」

「ウチのは……」

 

 一通り調べ終わっても凶器らしきものが見つからず、今では普通に世間話が始まっている。

 女子4人で風呂場にあったシャンプーリンスを報告し合った結果はやはり、同じものだと確定したらしい。

 倉庫に行けば多分他にもあると思うけど…… これは、こっそり開発に取りかかったほうがいいかな。

 春川さんは甘すぎる匂いがあるのはダメそう。夢野さんは逆にフルーツ系の甘い香り好きそう。白銀さんは爽やか系かな。東条さんは清潔感のあるシンプルな感じ…… サプライズで用意してみてもいいかもね。

 

「本当に凶器なんてあるのか?」

「うーん、もう全部調べちゃったと思うけどね……」

 

 本の中身もパラ読みして、それぞれで調べたはずなのだけどやはり凶器は見つからない。

 いつしか凶器なんか本当はないんじゃないかと思い始めている自分がいた。

 けれど、目に見える凶器がないということは目に見えないなにかがあるということで……

 

「んあー、もういいじゃろ。十分やったと思うぞ」

「あんたはあんまり動いてないでしょ」

「さてのう」

 

 夢野さんは途中から椅子に座って本を読んでるだけだったね。

 本をパラ読みしているうちに熱中してしまったようだ。掃除しているときによくあることだが、仕方ないか。

 面倒なことは嫌いみたいだし、途中まで参加してくれていたのもありがたい。

 

「どうするの? 私は植物園まで調べるのは嫌なんだけど」

「植物園内部のことはぼくがこれから毎日調査しておくよ」

「そうね…… そろそろ食堂に戻ってみましょうか。皆が集まっているかもしれないわ」

 

 残り2箇所はちゃんと収穫があったのだろうか。

 それを知るためにぼくらは食堂に引き返した。ついでとばかりにぼくは最終尾につき、みんなが外に出てからスプリンクラーを起動させる。今日からはちゃんとやっておかないと。

 少し濡れてしまった。スプリンクラーを使うときは傘が必要そうだな。

 

 食堂に戻れば、もう全員いた。

 どうやらぼくたちが最後だったようで、みんなそれぞれお菓子やらお茶やらを楽しんでいた。

 

「夢野さんお疲れ様です!」

「お主のせいでもっとお疲れになりそうじゃ」

「遅ぇぞ! オレ様の一分一秒を無駄にするんじゃねぇ!」

「はは、俺たちはすぐに見つかりましたし仕方ないっすよ」

「僕としては天海君がいて助かったヨ。他のメンバーは探索に不向きだからネ」

「役に立たなくてごめんなさい! 力仕事は得意なんだけど…… こんなの紳士じゃないよね」

「失礼ですね! ボクはちゃんと探しましたよ!」

 

 確かに…… 入間さんに、キーボくんにゴン太くんと探索に不向きそうな人が集まってしまっているな。

 天海くんと真宮寺くんが凶器を見つけて早めに終わったんだろうか。

 

「おう、全員揃ったなら成果の報告だ!」

 

 机を叩いて百田くんが立ち上がると、隣にいた最原くんが揺れて溢れそうになったカップを慌てて支えていた。

 少し溢れたコーヒーをさっと東条さんが行って、布巾で片付ける。

 「悪ぃ」 と慌てた百田くんに最原くんは苦笑いをしながら 「いいよ」 と返す。

 

「ほらほら、百田ちゃん早く報告してよー」

「テメーな…… まあいい、安心してくれ! 赤松の研究教室に収穫はなかった。あからさまに置いてあるような凶器はなかったし、きっとそんなもん最初からなかったんだな。怯える必要なんざねぇ!」

 

 自信満々に宣言する彼に少し安心する。

 赤松さんの研究教室にも凶器はなかったのか。もしかして、本当に凶器なんてないんじゃないか? そんな希望が湧いた。

 

「教室にあったのはグランドピアノと、黒板、それにいろんなクラシックのCDが入ったラックと、ラジカセくらいだよ。あと観賞用らしい壺と、楽譜かな…… そうだよね、赤松さん」

「うんうん! あの壺は軽くて割れやすいみたいだったから凶器にもなりずらいって最原くんとアンジーさんのお墨付きだしね」

「割れた破片なら別だけどね」

「王馬さん、あんまりケチつけないでくれます?これだから男死はネチネチと……」

 

 笑顔でそんなことを言って不興を買ってるが、まあ大事な視点ではあると納得できる。余計なことを言って怒らせたいだけにも聞こえるけど。どういった意図で言っているかは知らないが、よくあんな視線に晒されて平然と笑っていられるものだね。

 ぼくじゃ絶対無理だ。

 

「放送機械もあったって神様が言ってるよー?」

「あ、そうそう! どの教室にも、どの部屋にも放送できるように設備が整えられてたんだ。個室にも流せるみたい。普段は使わないかもしれないけど……」

 

 放送か…… モノクマたちの放送とはどうせ被らないようになっているだろう。優先順位はそちらの方が高いだろうし、肝心の放送がかき消されたら大変だ。ぼくがますます起きられなくなってしまう。

 

「楓の演奏良かったなー」

「って、アンジーさん途中から寝てたじゃん…… それに私は調律が必要かどうか確認しただけだから簡単なものしか弾いてないし……」

「超高校級のピアニストの演奏っすか…… いいっすね。聴いてみたかったっす」

「褒めてもなにも出ないよ!」

「それは残念っすね」

 

 赤松さんと天海くんのやりとりに少し笑う。なんだか微笑ましい。

いいなあ、ぼくも赤松さんの演奏聴きたい。

 

「じゃあ次は入間さんの研究教室だね」

 

 最原くんが言って、彼女を見ると入間さんはイラついたように 「おいチャラ男!」 と説明を天海くんに丸投げした。

 それを聞いても、最初から自分が説明すると分かっていたのか天海くんは苦笑するだけで話し始める。

 

「入間さんの研究教室にあった凶器はおそらくネイルガンっすね」

 

 その言葉に百田くんが顔をしかめる。

 先ほど凶器なんてないと言った後だからだろうか。

 

「いわゆる釘打ち機のことだヨ」

「本来は板なんかに密接している状態じゃないと使えないらしいっすけど、入間さんによればその安全装置が取り外せるようになってるみたいっす。人に向けて使えば長い釘は危ないっすからね」

「ああ…… ゾンビ映画なんかに出てくると強いやつだよね。あれって現実にできるんだ……」

 

 白銀さんが眉をハの字にして言う。

 コロシアイ物とかにも出てくる定番アイテムだ。ヘタしたらプレス機とか巨大シュレッダーとか恐ろしいものもあるんじゃないかと思っていたけれど、案外普通だった。良かった。

 

「とりあえず使えないように発射口に詰め物をしたっす。壊すとなにされるか分からないんで、気をつけて保管することになりますね」

「それじゃあ、香月さんたちの報告も聞こうかな…… アロマセラピストの研究教室になにがあったのか、気になるヨ」

 

 促されたので頷く。

 他の人たちと目が合ったので、ぼくが代表して言うべきだと無言で指摘されているような気がした。少なくとも春川さんはそう思っているはずだ。

 

「ぼくの研究教室に目立った凶器らしきものはなかったよ」

「えー、ホントに? 毒草とかありそうなものなのに?」

「嘘なんざついてねぇさ。全員で植物図鑑片手に調べたんだ。漏れはないはずだぜ」

「わざわざ調べたんだからあるはずない」

「それは保証するわよ。あったのは才能に必要な器具や薬品だけだったわ。その薬品も無害なものだったから安心してちょうだい」

「植物園管理用の道具もあったけど、スコップみたいなのもなかったし……」

 

 凶器っぽいものはありそうなのに、まったくなかった。まるで意図的に排除してるみたいに…… 入間さんの研究教室に凶器があったのだから、赤松さんのところにも、ぼくのところにも本来はあるはずなんだけど…… 分からない。

 分かりづらいものか、そもそも組み合わせないと凶器にならないとかなのか、正体不明なのがなんだか恐ろしい。

 

「あ、なら植物園の中はどうかな? もしかしたらそっちに……」

「赤松ちゃん、ないならないでいいでしょ? キミの教室にもなかったんだから気にすることないんじゃない?それともあってほしいの?」

「そ、そういうわけじゃないって!」

「ああ、もう! 昨日からなんですかあなたは! 寄ってたかって赤松さんをいじめるようなら転子が容赦しません!」

「そ、そんな…… お、オレ、親切で言ってるだけなの、に…… ひ、酷いよ…… イジメだなんて…… う、うわあああああああああん!」

「騒々しいやつだな」

「ま、いいけどねー」

 

 彼のバレバレな嘘泣きが終わると、耳がキーンとした。

 なかなかあんな大音量で嘘泣きなんてできないよ…… 本当に図太いな、王馬くんは。

 

「ま、まあ植物園はぼくもまだ全部把握してないから、ちゃんと探しておくよ。用心するにこしたことはないから……」

「転ぶ前に神様に頼るといいよー!」

「えっと、転ばぬ先の杖のこと…… ?」

 

 多分それだと思う。

 

「それで、どうするんですか。凶器はボクたちの個室にもあるんですよね」

「そんなもん、このあとまた取りに行くに決まってるだろ!」

「ええ、またやるの? もういいよ。各自それっぽいの持ってきて食堂で保管すればいいでしょ」

 

 春川さんは結構疲れているみたいだ。あんまり細かい作業を長時間するのは好きじゃないのかも。

 

「そうっすね…… 食堂なら人通りも多いですし、夜時間中は立ち入り禁止区域になるっす。保管するには結構いい場所なんじゃないっすかね」

「なら、この後自由時間にして各自持ってくるってことでいいんじゃないかな……」

「そうしよっか。私も疲れちゃった」

 

 天海くんが思案しながら提案し、最原くんと赤松さんが同意する。

 

「それじゃあここで解散だね! 東条ちゃん、夕飯は何時にするの?」

「そうね、午後7時頃を予定しているわ」

「じゃあその時間までに凶器らしきものを持ってくるってことでいいよね。持って来なかった人には個室の家宅捜査に入られるつもりでいてね!」

 

 王馬くんが集合時間を決め、方針も決定したのでみんなはその場で解散することになった。

 赤松さんと最原くんはなにごとかを喋りながら連れ立ってどこかへと行き、疎らに人が減っていく。

 

「ぼくは目覚まし時計探さなくちゃ……」

 

 呟いて、歩き出す。

 少し1人になりたい。

 

「香月さん、私も手伝っていいかな?」

 

 でも、その願いは叶わないみたいだ。

 

「あ、俺も倉庫になにがあるか把握しときたいんでご一緒するっすよ」

「う、うん」

 

 一緒に行く必要あるのかな。

 でも、やはり断りきれなくて流される。

 

「えっと、よろしくね天海くん。白銀さん」

「よろしくっす。頼ってくれていいんすよ」

「そうそう、香月さんだけだと倉庫も広いしね」

 

 天海くんの指輪がたくさんついた手で撫で回され、頭を抱える。

なんだこの保護者感。ぼく1人になりたいのに……

 

 溜め息すら吐けずぼくは、ただただはにかむしかなかった。

 

 

 




・男子に銀髪はいない(断言)
 ???「ロボット差別です!」

・凶器
 既に出ています。けれどまだ描写が足りません。自由行動のときに判明すると思います。ヒント? 一章タイトルでしょうね。

・保管場所
 実際、夜時間絶対に入れない食堂がわりと安全なんじゃないかと思います。無印みたいに目撃されるでしょうし。



 1月12日はニューダンガンロンパV3一周年!!

 〝 一周年おめでとうございます! これからも皆様にV3の魅力をどんどん伝えていきたいと思います! 全員箱推しになれ! 〟
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