ゲーマー夫婦が転生したようです   作:天狼レイン

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 はい、皆さまお待たせしました。入学式編第一話となります。
一応心理描写云々のため、リクパートとシュヴィパートの二つを用意しようと思いまして、今回はリクパートから。
 なるべくすっと行けるように一話で纏めたため、少し展開早いか?とも思われますが、そこの辺りは感想にて助言いただければと思います。
 それでは、どうぞ。





第一章 入学(さいかい)
覚醒(めざめ) 1≒1= 【リクパート】


 

 

 

 

 

 

 まず始めに一つ、日々の日課について質問しよう。

 皆はどういう日課を送っている?

 早起きしてラジオ体操。

 早起きして家族の弁当を作る。

 よく聞く日課の内容だ。良い日課だと思う。

 

 さて、そろそろ質問の意図を答えよう。

 俺の両親、主に父親だが、その彼が実業家及び資産家だ。当然朝が早く、生活の管理は大変だ。

 そこから考えられるのは、仕事に関することや生活を支える執事、或いはメイド、もしかすれば、その両方だろう。

 そうなれば、必然として日々のスケジュールが狂わないように、早めに起こしてくれたりだとか色々なサポートをしてくれることだろう。

 勿論、父親一人だけを起こすためにその手のプロを雇う方よりも、どうせなら家族全員を起こしてもらう方が無難だ。

 ここまでだけ聞けば、自慢話のようにも聞こえるし、そうではない解釈もできる。

 

 だが、俺が質問した意図はそちらではなく、先程僅かに出した仕事に関することの方だ。

 可笑しな話だと思うが、俺は数年前から父親の仕事を少しばかり手伝っている。いや、正確には手伝うことにしたというべきか。

 本当に偶然でしかなかったのだが、偶々父親の仕事内容が事細かく記されていた資料や報告書があった。

 当時の俺は第一にまだ紙の資料や報告書を提出させていたのかと半ば呆れていた。既に二十一世紀末がそこまで迫っている現状でだ。

 だが、それが功を制したというべきか、俺はそこで気になるものを目にした。ある一枚の報告書だ。

 一見、いや、何度眺めても可笑しな点が一つだってあるはずがない程に綿密に記されている報告書は例え誰が見ても問題がない。

 ところが、俺の目にはそれが怪しすぎた。ずっと違和感(ゲーム)(いど)み続けていた副作用か、一目それを見て確信した。

 すぐさま、居間で休んでいた父親の元へと駆け寄り、件の報告書を提示する。流石に俺や妹達に甘い父親でも俺の行動には叱責した。そりゃ当然だろう。例え息子といえど、仕事の報告書を勝手に持ち出すのは問題でしかない。怒るのが当然だ。

 だが、その叱責に怯むことなく、俺は直ちにこの報告書を書いた部下を不信に思い始めた方がいいと警告した。あまりのことに父親は驚き唖然としていた。少し前に異常な様子を見せ苦しんでいた息子だ。その反動か何かで気が触っていても可笑しくないと思うのが当然だ。

 しかし、俺の必死な顔に嘘ではないと思ってくれたのか、父親はそれを聞いて件の部下に不信感を抱くようになった。

 そして————

 

「陸、ありがとう。お陰で社の情報を流していた狼藉者を捕らえることができた。損失は最低限。これで心配の種が無くなった。父親として誇りに思わせてくれ」

 

 後日、尻尾を出した狼藉者を逮捕したと父親は俺に感謝を伝えた。正直な話をすれば驚いた。確かに怪しいとは警告したが、本当にそれを信じていたのかと。よく信じられたものだ。いくら息子とはいえ、仕事に口を出していい道理はない。そう伝える。

 ところが、返ってきたのは思わぬ返事で————

 

「はっは! 息子を信じない父親があるものか。確かに信頼していた部下を不信に思えとは驚いたよ。でも、お前は本気だった。そんなお前を見たのは二度だけでも、その時の必死さをよく知っている。だから信じることができた。重ねてありがとうと言わせてくれ、陸」

 

 思わず笑みが溢れた。初めて必要とされたと思った。いや、必要とされたのは初めてではない。けれど、とても嬉しかった。

 漸く意味を持てたんだと嘘偽りない本心から思えたから。

 

 さて、話を最初に戻そう。

 俺の日課とは仕事に関することだ。それも父親の仕事の報告書含む書類の山を確認し、怪しい箇所がないかを確認するという手伝いだ。

 父親は多忙の身だ。だから仕事も朝早い。書類が怪しくないかの確認は当然朝の僅かな時間にしかない。

 

 そう、つまり————

 

 

 

 

 

「怪しいのはこれとこれ。他は特に問題ないよ、父さん」

 

「いつもありがとうな、陸。朝早くに悪い。今日だって本当はもっと寝ておきたかっただろう?」

 

「いや、いつものことだから慣れたさ。この時間に起きなきゃ、それこそ後が総崩れになるくらいには。

 ところで、まだコーヒー啜ってて大丈夫なのか?」

 

「そうだな。教えてくれてありがとう、陸。それじゃあ準備してくるよ。お前も学校楽しんできなさい」

 

「分かってるよ。少なくとも過ごしにくい生活はしないさ」

 

 書類の束を纏め、それを父————北山潮に手渡し、朝の会話を済ませる。急ぎ足で着替えなどの出社準備に取り掛かる父親に対し、肝心の息子に関しては、飲みかけだったコーヒーを呑気に啜っていた。

 これが北山陸の日課である。当然起きた時刻は日が昇るか昇らないかの瀬戸際だ。

 

「……入学式か。まさか俺が受かるとはな。ギリギリ才能がある程度なんだがなぁ〜」

 

 そう、今日は俺————北山陸の高校生活初日、つまるところ入学式当日だ。人生を決める通過点その一として知られる高校生活。事前の努力が何処の高校かを決め、三年間の高校生活にて後の進路を決める。

 その重要な過程の一つに、陸は直面していた。

 入学先は、かの有名な魔法大学付属第一高校。魔法という非現実じみた代物が技術となった現代にて、それを学ぶことに長けたある意味専門校である。他にも第二高校や第三高校など、同列の付属校はあるのだが、その中でも最も優秀だとされる第一高校に入学することが決まっていた。

 

「〝魔法〟……か。まさかあれが〝魔法〟とはなぁ〜。てっきりあんなもの、ただの技術かなんかだと思ってたんだが……」

 

 自らの右手を興味なさそうに見ながらコーヒーを啜る。別に右手に何か特別なものがある訳ではない。ただ不思議に思うのだ。果たして俺は〝魔法〟なんかを使えるような玉なのかと。

 こんなことをもしその才能がなかった人々に知られれば、罵倒雑言吐き散らされながら蹴られたりするかもしれない。

 今やこの時代、〝魔法〟を使えるというだけで優等生のようなものなのだから。

 

「さて、そろそろ着替えて準備でもするか。流石に少し早すぎる気もするけどな」

 

 コーヒーを片付けながら時計を横目に確認する。入学式開始まで後四時間ほど。流石に早すぎると思うが、日々の生活習慣のせいか、これぐらいから動かないと後が総崩れしそうなのだ。これでは早起きする意味があるのか無いのかハッキリしない。

 そうは思いながらも、当の本人は自室に戻ると、今日から着ることになる制服を手に取った。極々普通の高校制服とは異なるデザインに、細部までこだわった作りこみ。本当に高校生の制服なのかと思いたくなるようなそれに陸はこの時点から嫌な予感を感じながらも、それを着ていく。

 

「特別必要な荷物は……無いか。あとはCADか」

 

 勉強机兼作業机でもあった上に起きて早々確認作業を行っていた自身のCADを手に取った。数日前から整備し続けていた為、問題はないだろうが、心配の種は少ない方がいい。

 そう思い、CADの起動を試みる。とはいえ、流石に自宅、それも自室とはいえ流石に魔法を放ったりなどそんな危ないことはしない。

 だが、細かい設定などの調整が少しでも問題ないかだけは起動しなければ分からない。メンテナンスに特化したプロは雇ってはいるが、数年前に自分のものは自分の手でやると宣言したところだ。頼る訳にもいかない。何度も確認し、問題ないと判断してCADをしまった。

 

「CADも問題はない。それじゃ、行くか。まだ雫や渡は寝てるだろうし静かにしなきゃな」

 

 軽い手荷物を持ち、静かに自室の扉を閉め、玄関へと向かう。自分の靴を出そうとしゃがんだところで、二人よりも先に起きていたハウスキーパーの黒沢智恵理が靴を先に用意していたことに、いつものことながら苦笑しつつも感謝して玄関を出た。

 

「思ったよりも涼しいな。まぁ途中で暖かくもなるか」

 

 少しばかり薄暗い気もしなくはない空を見て、心なしか少しは高校生活を楽しみにしている自身にこれまた苦笑しながら、陸は第一高校に最も近い第一高校前駅に行くべく、近くの駅へと向かった。

 

 

 

 

 

 ———*———*———

 

 

 

 

 

 入学式開会まで、まだ三時間もある中、陸は既に第一高校へと着いていた。朝が早かったのもあるが、流石に早すぎた気がすると時刻を確認しつつ、もう少し時間を潰してからにするべきだったと反省する。

 校内を軽く見て回っているが、食堂兼カフェテリア兼購買や、来訪者のためのオープンカフェなども混乱を避けるためか運営していない。これではどう足掻こうとも時間を潰すことは無理だろう。

 

「駅前で何か買っておくべきだったかなぁ……いや、どうせ買ってもそんなに変わらなかったか」

 

 陸は不思議なことに現代において、かなり特異な考えを持つ。その一つとして、〝魔法〟という技術が齎す影響力などへの関心がそうだ。戦争の道具としての魔法、技術としての魔法、様々な魔法の用途があるが、酷く現実的に見るせいか幻想的なイメージが浮かばない。

 よく小説などであるロマンチックな展開など、残念ながら信じることもないのだ。そのせいか、駅前にある小説や雑誌を取ったところで、大方現実的なもののページに少し目を向け、その後、いくらか自分で考察した後、興味を失ってしまう。無駄だと思っている訳ではない。

 ただ————

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 今を生きている自分達に必要なのは今を上手く生き抜き、確かな明日へ繋げる。ただそれだけだろうと陸は考えている。背伸びして届かせたそれは今に活かせるのか、本当に必要なのかを考えて見ると意外に必要なく、今後にしか使い道がないことが多い。

 そういう面をよく分かってしまっているせいか、陸はかなり冷めていたといえよう。

 どうしてこんな性格になったのかさえ、自分で考える気はなく、未だにあの違和感(ゲーム)に全てを捧げていたのだから。

 

「さて、どうしたもんかなぁ。今から三時間も暇を持て余す訳にもいかないし、校内の探索でもするべきか。……いや、やめておこう。下手すれば面倒事になりかねない。父さん達に迷惑かける訳にもいかない」

 

 目線だけを動かし辺りを見渡すが、やはり静かだ。ここまで出会った生徒は一人としていない。恐らく僅かな人数だけが最終の準備などに取り組んでいたりするのだろう。そこに新入生が紛れ込むのは流石に迷惑でしかない。本当に暇を潰す手段がなくなった。

 

「……流石に困ったな。これじゃあ、やることが一つだって————」

 

 ない、そう言いかけた僅かな瞬間。ゾッと背中に冷たい戦慄が走り————

 

 

 

 

 

 ————なぁ、本当にそれでいいのか? 『意志者(シュピーラー)』リク・ドーラ。

 

 

 

 

 

 聞き覚えのない、しかし、何処か願っていたような気がそこはかとなく感じられて————思いっきり何かが脳を揺さぶった。

 

 呼吸が詰まる。汗が噴き出す。あるはずのない無数の傷や痛みが押し寄せる。熱い痛い苦しい。感じたはずのない全てが、またあの時のように繰り返された。

 

「————ッ!? カッ————ハ!?」

 

 声が出ない。何から何まで吐き出したい衝動にすら駆られる。以前とは比べ物にならない壮絶な苦痛が身体を蹂躙する。

 いや、身体だけで済めば、どれだけ良かったことだろう。苦痛は脳までも蹂躙していた。

 

 手始めに機能全てに何かを訴えるように、大脳小脳脳幹全てが高熱を帯びているかのように痛い熱い辛い苦しい。

それが例え僅か数秒であろうとも、立っていられないほどに苦痛にもがき苦しんだ。どうしてこのタイミングで来たんだと考えることすら許さずに。

 そして、次に蹂躙の対象となったのは————

 

「やめ————ろ。それだ————けは、やめろ…………」

 

 記憶。今まで北山 陸として生きてきた証が蹂躙される。

自我を得た瞬間、初めて蝋燭を消した瞬間、初めての怪我、その他諸々全てに至るまで。フラッシュバックするかのように全てが脳内に浮かび覆っていく。余計な思考が入らないよう、覆われたのか不明だが、今までの記憶が全て浮かび上がり、その後、何も変えることなく、元通りに戻っていった。

 

「————どうい、うこと、だ?」

 

 分からない。そう思考が断言し、身体を蹂躙する苦痛が今も続いているのにそれすら忘れ、呆然と今しがた起きた意味不明の事態に思考をたっぷり使ってーーたった一つだけ覚えのない何かに辿り着いた。

 

「しゅゔぃ……どーら?」

 

 誰かの名前だろうか? どうしてこんな知らない名前が————そう言い切ろうとした瞬間、第二波が記憶を蹂躙した。

 身体を蹂躙していた苦痛と全く同じタイミングで共鳴・協調するように記憶を蹂躙する第二波は、次々と覚えがないはずなのに懐かしい記憶を詰め込んでいく。まるで借りパクされていた物を返されたような不思議な気分を尽く味わいながら。

 

 無数の記憶の情報。

 誰かは知らないが、ずっと俺が挑み続けていた最強のプレイヤー。

 一瞬で奪われた生まれ故郷と育ち故郷。

 全ての重みを背負って歩いた数年間の苦痛。

 それを終わらせるかのように運命を変えた二度目の邂逅。

 『機凱種(エクスマキナ)』にして、後の妻————シュヴィ・ドーラとの生活、もっとも自分が幸福に感じた瞬間の数々。

 そして、胸をもっとも強く裂いた、シュヴィとの死別。

 その果てに、リク・ドーラ()は————

 

「————————」

 

 激痛の暴風雨がピタリと止んだ。蹂躙されていた記憶も身体も痛くない。またあの時と同じ感覚だ。不思議にずっと感じていたあの感覚。

 

 だが、今は以前と全く異なっていた。違和感は最早何処にもない。

 漸く俺は違和感(ゲーム)に勝利できた。長かったと思う。

 それでも、()()()()()()()()()()()は一人じゃ勝てないから。俺達は二人で一人だとあの瞬間に思ったから。

 

 だから————

 

 

 

 

 

「ああ、待ってろ、シュヴィ。必ず俺が迎えにいく。今度は絶対に離さないからな」

 

 

 

 あの時、叶えられなかった本当の願いを今度こそ果たしてみせる。

今度こそは完全勝利を。『引き分け(ステイル・メイト)』で終わらせはしない。“次”を勝つのは俺達だから。

 

 

 

 

 

 さぁ————第二の人生(ゲーム)を始めよう。

 

 悠久の『大戦(クソゲー)』を終わらせた英雄が再び盤上に登った。

 今度こそシュヴィ(たいせつなひと)と共に生きる為に。

 

 

 

 

 




 入学式編第一話
 リクパート。
 題名の『1≒1=』とは、1は1でも1ではない。つまり、北山 陸は北山 陸でも北山 陸ではないということです。
 はい、ぶっちゃけ意味不明です。なので、無茶苦茶噛み砕くと、今の北山 陸は北山 陸でも、元々の北山 陸ではないということです。
 要するに本編最後の北山 陸はリク・ドーラの転生が完全に為されたリク・ドーラが主な北山 陸です。つまるところ、本来のあるべき人格・記憶・経験を取り戻した状態です。
別に前の北山 陸がいなくなったとかではありません。元々彼は繋ぎでしたから(あっさり)。

 さて、次回はシュヴィパートです。頑張ってみますので応援ことお気に入り登録や評価などで助言などをよろしくお願いします。

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