IS学園VS学園都市   作:零番隊

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第20話 第七位削板軍覇

絡み合い、激突し、互いに競い合うかのようにぶつかり合いながら三つの閃光と一つの暴風が駆け上がる。

 

その正体は三機のISと一人の人間。

 

重力を無視した高速飛翔、さらには縦横無尽の機動性。そのISに一人の人間が遅れることなく互角に対抗している。

 

地下は地震対策のためかかなり頑丈に造られているが、そんなものは関係ないとばかりに強引に突破し、上へ上へと駆け上っていく。

 

地下を突破し地上に出ると三機のISは空高く舞い上がり、人間は地面に着地しISを見上げていた。

 

ISを身に纏うものの正体は一夏、箒、ラウラの三人だ。

 

三人の顔色は優れない。

 

それは研究所を破壊してしまったからでも、鈴やセシリアやシャルロットを置いて来てしまったからでもない。

 

むしろセシリア達からアイツを引き離した方がいい。

 

向こうは向こうで忙しそうだ。今はセシリア達の事はおいておく。

 

そう、今問題なのはアイツだ。

三人は地面に立つ男を見下ろした。

 

「う~んっと」

 

一夏達三人と互角に渡り合った怪物は腕を上げのんきに大きく伸びをしていた。

 

この街の人間がまともではないことは一夏たちも何となく分かったが、目の前の男はさらに輪をかけて訳の分からない存在だった。

 

広い空間とはいえ動きが制限された地下空間では目の前の男相手に分が悪いと感じたラウラは地上に誘導することにした。

 

ラウラの目論み通り地上へと誘い出すことには成功したが、三人の顔には険しさが浮かんでいる。

 

「よし!じゃあ続きをやるか!」

 

その男はパシンと拳と手のひらを打ち合わせて一夏達を見上げた。

 

「・・・・・・何なんだよお前は」

 

一夏は険しく顔を歪めたまま男を見下ろす。

 

「あれ?そういや自己紹介してなかったっけ。わりいわりい」

 

男は腕を組み仁王立ちで一夏達を見上げると大声で叫び上げる。

 

「俺の名前は削板軍覇だ!よろしくな!」

 

名乗り上げる削板を無視してラウラは右肩の大型レールカノンを削板に向けて撃ちこんだ。

 

削板は砲撃をまともに受け、煙に紛れて見えなくなる。

 

「やったのか?」

 

「・・・・・・・」

 

箒の声にラウラは答えない。

無表情のまま男のいた場所を睨み付ける。

 

いつもなら抗議の声を上げる一夏も黙って削板のいた場所を見る。

 

「名乗りを上げてる奴にいきなり攻撃してくるとは、やっぱ根性が足りてねえな」

 

煙の奥から聞こえる声にラウラは舌を打つ。

 

次第に煙がはれていく。抉れた地面、焼け焦げた土と空気が今の一撃の凄まじさを物語っている。

 

人間の身体ではとても耐えられるものではないはずだ。

だというのに削板は無傷でその場に佇んでいた。

 

「それとも足りてないのは我慢のほうか?近頃の子供はキレやすいとか世間に言われて悲しくなったりしないのか?そんなんじゃ親も泣くぞ?」

 

「・・・・・生憎私は試験管ベイビーでな。親などというものはいない」

 

「なに?そうなのか!それは悪かった!ごめんな」

 

削板は勢いよく頭を下げる。

削板は試験管ベイビーの意味を分かっていなかったが、親がいないと聞いてすぐに謝った。

 

ただ本人は真面目に謝っているのだが、熱血すぎるために空回りしている。

 

「お前はなんだ?」

 

ラウラが苛立ったように問いかける。

 

「だから言っただろう。俺の名前は―――」

 

「違う!何故お前は生きている、何故生身でISと戦える?」

 

「根性だよ、根性」

 

「・・・・・・馬鹿にしているのか」

 

「強いて言えば俺が学園都市のLEVEL5の一人、ナンバーセブンの削板軍覇であるということもあるが、そんなことはどーでもいい!今重要なのは俺の中に燃え上がる根性が溢れているってことだーっ!!」

 

大声を上げて宣言をする削板。背後ではドッカーンと謎の爆発が起こっている。

 

本人はいたって真面目にやっているが、一夏達から見ればどこまでふざけているのか分からない得体の知れない存在だった。

 

「ともかくお前はIS学園に侵入した誘拐犯の一味と思われる者の拘束を妨害した。お前が連中の一味でないのなら早く立ち去れ」

 

「何?そうなのか?」

 

ラウラの言葉に削板が反応した。

 

嘘は言っていない。と言うよりもラウラ達もIS学園襲撃が学園都市のどこまでの奴が関わっているのか今の段階で判別できていない。

 

だがあのタイミングで現れた事から無関係ではない可能性が高い。

 

「だけどお前ら学園都市に不法侵入してきたんじゃねえのか?さっきの子は学園都市治安維持の風紀委員だったと思うが」

 

その言葉にラウラは答えに詰まる。なんと言い訳したところで自分たちが不法侵入者である事は変わりないのだ。

 

そう、ここはIS学園じゃない。この学園都市において彼女たちが生きる世界のルールは通用しない。

 

元々ラウラは純粋すぎるところがあり策を巡らせることが得意とは言えない。

 

「・・・・・簪を助けるためだ」

 

一夏の言葉に削板が反応する。

 

「簪が、大切な仲間がお前ら学園都市の奴らに攫われたんだよ!俺たちは簪を助け出しに来たんだ。邪魔するなよ!」

 

「へえ」

 

削板は僅かに笑みを溢す。

 

「いいなお前。そいつは根性のある台詞だ。たった一人の友達を助けるために学園都市まで乗り込んできたってのか、結構結構、そりゃあ大変根性のある心意気だぜ」

 

でもなあ、と削板は言葉を切る。

 

「何でお前自身は逃げているんだ?」

 

「なに?」

 

一夏は言葉の意味が理解できない。

 

「お前がこいつらのリーダーなんだろ?俺は後から来たんで最初の方は分からねえけどよ。よってたかって物騒な玩具振り回して一人の女の子を虐めさせてる間、お前は何してたんだ?」

 

「それは・・・・・・・」

 

一夏は答えることが出来ない。

 

「俺はあの女の子の事は知ってるぜ。街の平和を守ろうと根性だして頑張っている奴だった」

 

精々顔見知り程度だが、削板は黒子を知っている。削板が困っている人を助けた時に、一般人が勝手なことするなと何度も煩く言ってきていた。それでもお互い困っている人を見過ごせない所は似通っていた。

 

「お前らの事情は知らねえ。友達のために根性出してここまで来たのかもしれねえ。でもな、これ以上この街の連中を傷つけるようなことはするな。それでもまだやるってなら」

 

正体不明、説明不能、理解不能の得体の知れない力をその身から噴出させ、学園都市第七位が君臨する。

 

「気合い入れて根性見せろよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏の雪羅による巨大な閃光が撃ち放たれた。削板に向けて撃たれた大出力の荷電粒子砲。

ただの人間であれば骨も残らず消滅しているだろう一撃。

 

だが削板が乱雑に右手を振るうと、右手に弾かれた荷電粒子砲は霧散し消滅してしまった。

 

「くそっ!!」

 

何度も同じことを繰り返し、一夏の焦りと恐怖が増大していった。

 

一夏は妹達を殺しかけてしまったトラウマでISを人に対して使うことに忌避感を感じるようになってしまった。自分が誰かを傷つけ殺してしまうことが恐かったから。

 

だが今の一夏はそんなことを忘れてしまったかのようにISを行使し、全力で目の前の男を打倒しようとしている。

 

人を傷つけたくないという思いと、ISを使い相手を倒そうとしている矛盾。

 

一夏は力に飲まれてしまっている。だがそれも仕方がない事だ。

 

圧倒的な力を前にした恐怖、そしてそれが理解できない未知への恐怖。

 

拳銃に忌避感を持つ日本人でも危機的状況に陥れば目の前の拳銃に手を伸ばしてしまうように。

 

一夏もISという分かりやすい力に頼ってしまう。

 

それは人間として当たり前の感情であり行動だ。人は手にした力を使わずにはいられない。

 

傲慢とも言えるがその感情は人が人である証だ。

 

そして人を殺す覚悟などなくとも本能で行動してしまうものだ。

 

「くそっ!なんでだよ!なんで!」

 

自分の攻撃がまるで通じていないことに苛立つ。

 

遠距離がだめなら接近戦ならどうだ。

 

雪片弐型による一閃。

 

その斬撃は人間が受ければ切断以前に砕け散って四散するだろう。

 

だが

 

「なっ!」

 

一夏の渾身の一撃が削板の手のひらで容易く受け止められていた。

 

だが削板は止めるだけで追撃を仕掛てくる様子がまるでない。

 

「勢いは認めるけどそれじゃあ駄目だ。そんな根性のない攻撃は俺には届かねえよ」

 

その余裕を思わせる態度に一夏はさらに苛立ちを募らせる。

 

「お前やる気あるのかよ!」

 

「大丈夫だ!ほら、もっと根性入れてかかってこい!」

 

話が通じていない気がする。

 

「お前らは道を踏み外して悪ぶってるだけだ!根性入れれば大丈夫だ!!」

 

「何の話だ!」

 

本当に会話が成立していない。

 

削板は削板で命をかける覚悟を全くしていない。

というより、削板はこれを戦いとすら認識していなかった。

 

スキルアウトに囲まれて銃器を向けられる延長程度にしか思っていない。

 

「そら、歯あ食い縛れよ!」

 

「くっっ!!」

 

一夏は慌てて距離をとるがお構いなしに削板は拳を振りぬく。

 

「すごいパーンチ!」

 

削板の拳が衝撃波の様に解き放たれ、一夏を襲う。

 

「ぐはっっ!!?」

 

次の瞬間、離れた距離まで下がったはずの一夏は大きく吹き飛ばされた

 

「一夏!」

 

箒が心配の声を上げている。

 

一夏はどうにか空中で踏みとどまった。

怪我はないが白式のエネルギーを大分削られてしまった。

 

一夏の無事を確認するとラウラが動き出す。

 

ISすらも縛り上げる六本のワイヤーブレードが削板を襲う。

 

「おわっ!?」

 

六本のワイヤーブレードが削板の全身に絡みつき動きを封じる。

 

一度ワイヤーブレードに絡みつかれればISであっても脱出は難しい。後は為す術なくなぶられ続けるだけだ。実際鈴とセリシアはそうだった。

 

普通なら人体を軽く切断してしまうワイヤーブレードだが、削板にそんな常識は通じないことはラウラも分かっている。

 

そのまま削板を引きずり込もうとするが、びくともせず引っ張れない。

 

「ふんっ!!」

 

全身をがんじがらめにしていたはずのワイヤーブレードがいとも容易く引きちぎられてしまった。

 

「馬鹿な・・・・・」

 

これにはラウラも唖然としてしまう。

それが致命的な隙になってしまった。

 

削板は引きちぎったワイヤーフレームを掴むと、カウボーイの投げ縄のように思いっきり振り回した。

 

「うわああああああああっっ!!!」

 

ラウラは情けない悲鳴を上げてしまう。

 

いくらISがPIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)による姿勢制御や機体制御が出来るとはいえ、こうも振り回されれば感覚を狂わされ三半規管に影響を及ぼしてしまう。

 

「ぐわあっ!!?」

 

削板は振り回すラウラを一夏に向けて叩きつけた。

 

一夏とラウラはそのまま凄まじい速度で地面に叩きつけられた。

 

「一夏!ラウラ!」

 

箒が悲痛の声を上げる。

 

巨大なクレーターが生まれ、その中心に一夏とラウラが倒れ伏していた。

 

二人とも意識は失っていないがISは大きく傷つき、戦闘どころかまともに動けるかも怪しい状態だ。

 

それでも一夏は立ち上がる。

 

「まだだ。こんな所で負けられるか!」

 

一夏は白式の単一仕様能力『零落白夜』を起動させる。

 

「俺が、俺が皆を守るんだあああああ!!!」

 

4機のスラスターを使った二段階瞬時加速(ダブル・イグニッション)

 

身体が熱い。白式が異常な熱を発しているが、それを無視して全速力で削板めがけて突き進む。

 

「馬鹿!むやみに突っ込むな!!」

 

ラウラの静止の声も今の一夏には届いていない。

 

白式は全身傷つきながらも限界速度を振り切り、今までにない最高速度に到達していた。

 

対象のエネルギー全てを消滅させる一夏の切り札。

 

「うおおおおおおおおおおおおっっ!!!!」

 

一夏の零落白夜と削板の拳がぶつかり合う。

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

一夏のIS白式は

 

 

 

 

 

 

 

 

バラバラに砕け散った

 




Qぎゃあああ主人公のISが壊れちゃったら物語どうなっちゃうんだよ!!
Aえっ?上条なんて2回も死んでるけど。


根性戦はもう少し続きます。


あれ?今回箒が空気?
まあ次回に活躍の予定です。


ちなみに削板のすごいパーンチは削板の根性と加減で威力が大きく変わるようだ。
生身ですごいパンチ3回も受けたもつ鍋さんマジ人外だ!とか思ったものである。
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