IS学園VS学園都市   作:零番隊

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第8話 グループ

血、血、血、一夏の目の前が真っ赤な血に染まる。

 

今この場で追撃を受ければ只では済まない。

 

相手はまだ何人も居る。

 

下手を打てば、相手側にやられる可能性だってある。

 

それがわかっているのに動けない。

その足は止まって、その手は宙を漂って、その目は床の一点を見ていた。

 

一夏の視線の先に少女がいる。

血まみれで左肩の辺りから半身近くなくなっている。

斬られたというより、えぐられたように。

 

(なん・・で?)

 

今の攻撃は零落白夜による攻撃ではなかったはずだ。

次の攻撃で零落白夜を確実にきめるための牽制程度だったはずだ。

ISを装備しているなら、この程度の攻撃で傷つくはずがない。

ISのシールドや絶対防御がこんなにも簡単に破れるはずもない。

それなのに目の前の少女は、まるでISを装備していない生身の人間のように傷つき、血を流している。

 

――ちがう・・・ちがう違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う

 

目の前の現実を必死に否定する。

これを受け入れれば自分が壊れてしまう。

 

――そうだ、これは幻覚だ。ISの能力によって見せられた幻覚。それなら全てに説明がつく。目の前に全く同じ顔をした少女が八人も存在したことや、簪の打鉄弐式が破壊されているのに操縦者の簪が見当たらないのはおかしい。幻覚で簪を隠してるのか、もしかしたら破壊されてる打鉄弐の方が幻覚かもしれない。亡国機業ならそれくらいのことをやってもおかしくない。

 

一夏は必死に否定する。

 

目の前の少女が血を流している現実を、

 

その少女を斬ったのが自分であるという事実を、

 

否定し、拒否し、拒絶する。

 

それを認めてしまえば、自分はもう戦えない。

それを理解すれば、自分はもう立ち上がれない。

認めてしまえば心が壊れてしまう。

 

 

――でも・・・

 

しだいにそれが現実逃避でしかないことに気付いてしまう。

 

目の前の少女を傷つけたのは間違いなく自分だ。

 

言い訳しても無意味。少女の命を奪ってしまったことに申し訳なさや罪悪感、そして悲しみ、様々な感情に押し潰されそうになる。

 

一夏は無意識に自分が傷つけてしまった少女に手を伸ばす。

 

そのとき、血塗れの少女の右手がピクリと僅かに動いた気がした。

 

(まだ生きてる!?)

 

即死してもおかしくない重傷のはずだが、それでもまだ希望はあるかもしれない。

 

「お前たち、今すぐ投降してくれ!そうすれば彼女はIS学園の医療設備の治療を受けることが出来る。まだ助かるかもしれないんだ!」

 

仮に彼女の命が助かったとして、自分の罪が消えるとは思わない。この後自分は裁かれるべき所で裁かれるべきだろう。

 

彼女はテロリストかもしれないし、亡国機業の一員である可能性も高い。それでも今は彼女の命を救いたいと思った。

 

さっきからこれだけ無防備な一夏に、相手は攻撃するそぶりも見せない。相手もこれ以上戦うつもりはないのだと思っていた。

 

「・・・・お断りします。と、ミサカは告げます」

 

「――なっ!!!」

 

一夏は今の言葉が理解できなかった。

 

「すでにIS学園のIS部隊がここに向かっているはずだ!お前たちに逃げ場はないんだ!今投降してくれれば相応に罪も軽くなるはずだ!頼むから投降してくれ!」

 

こうしてる今も彼女の命は消えかけてる。即死してるはずの重傷。生きているのが既に奇跡だ。

 

それは向こうも分かっているはずなのに何故!?

 

疑問に思ったその時。

 

「一夏君!」

 

ISを装着した会長が現れた。

 

「楯無さん!」

 

楯無は最初にバラバラになった打鉄弐式を見、その次に一夏、血塗れの少女、最後に同じ顔をした少女達の順に認識していき、大雑把に状況を把握する。

 

「ご苦労様、一夏君。先生方もすぐに来るから、もう少しの辛抱よ。簪ちゃんが見当たらないけど無事なの?」

 

頼もしい生徒会長が来たことで一夏も勇気づけられる。

 

「・・・分かりません。俺が来たときにはISの残骸だけでした。それと、この子を早く治療しないと」

 

「う~ん。それにはまず目の前の奴らを何とかしないとね。私のかわいい妹と後輩を襲うような奴ら相手に背を向けるのは危ないよ」

 

「その心配はない」

 

突然声が響き、IS部隊が次々とアリーナに現れる。

 

「双方、直ちに戦闘行為を止めなさい」

 

IS部隊の中から一人の女性が前に出て、代表して話し始める。

 

「直ちに戦闘行為をやめ、武装を解除して此方に投降しなさい。すでにこのアリーナは我々が包囲しています。抵抗しても逃げようとしても無駄に寿命を減らすだけですので、大人しくこちらの指示に従いなさい」

 

「・・・・・」

 

しかし、彼女たちは答えない。

 

その顔に表情はなく、その目からは侵入者の真意が読み取れないが、動く気配もなく、武装を解除する動きも見えない。

 

「おい!! 聞こえないのか!!? 速やかに武装を解除し、こちらに投降しなさい!」

 

警告を無視する侵入者たちに業を煮やしたのか、その声には僅かに怒気を含んでいる。

そしてそれに伴い、周囲からの視線が強くなる。

 

「・・・・仕方が無い。力尽くで拘束する」

 

女がそう言うと、包囲していたIS部隊の内数人が、武器を構えながら歩み寄る。

 

「動くなよ。一歩でも動けば、我々は容赦しない」

 

口ではそう言うものの、女は目で周りの部隊に、「出来るだけ殺さないように注意しろ」と伝えるが、周りからは「・・・努力はします」と帰ってくる。

 

彼女たちは電波障害のせいで、現場の情報をまともに得られていなかった。

 

周りは武装したISに囲まれ逃げ場はない。誰もがこれで侵入者は終わりだと思った。

 

「・・・・時間切れです。と、ミサカは告げます」

 

その言葉を理解する前に

 

「えっ?」

 

目の前の理解不能な現象に、その女性は呆然としてしまう。

 

彼女たち八人は音も無く、虚空に消えてしまった。

 

 

 

 

「お疲れ様。これで私たちの仕事は終わりよ」

 

結標淡奇(むすじめあわき)が七人の妹達(シスターズ)に声をかける。

 

結標の能力である『座標移動(ムーブポイント)』によってIS学園から離脱した彼女たちは、学園都市協力機関の病院にいた。

 

「私たちの仕事は完了したのですね。と、ミサカは確認を取ります」

 

「ああ。ここから先は海原の仕事だ。あいつは今頃IS学園で仕事してるだろ」

 

答える声は土御門元晴(つちみかどもとはる)。

 

「・・・・10032号は大丈夫なのですか。と、ミサカは不安になります」

 

「ああ、今は冥土帰し(ヘヴンキャンセラー)が見ている」

 

「あの怪我でまだ生きてるとは思えないけど?いくら冥土帰しでも死体は治せないでしょ?」

 

「第二位と同じだよ。脳と肉体を切り離して生命維持装置の中だ」

 

脳だけとなった彼女が生きていると言えるかどうかは分からないし、これから先に人間として生きられるかも分からないが、脳だけでもミサカネットワークは健在だ。彼女が第三次製造計画(サードシーズン)のような計画に利用される可能性があるが、あのカエル顔の医者は患者を見捨てることは絶対無い。

 

「そういえば、IS学園から連れ出した例の『グループ』新人候補生は?」

 

「ああ、あいつは先に車に戻ってるよ」

 

 

 

 

 

数日後、IS学園は各国の対応や現場処理などに追われながらも、一応の落ち着きを取り戻した。

 

織斑一夏の処罰は、遺体どころか血痕すら残さず消えてしまい、電磁波によって記録も失われていたので、証拠不十分で不問となった。むしろテロリストと戦った英雄として語られることになる。正体不明の侵入者を庇うものなど誰もいないので特に問題はなかった。

 

更識簪は無事に発見された。ISを破壊された後、うまく逃げ延びたらしい。

 

・・・・しかし、破壊された打鉄弐式は、破壊されたというより、一つ一つ丁寧に分解されたかのようだった。

 

 

 

 

 

学園都市第10学区。

 

そこには異様な光景があった。

 

1人の女学生を20人以上の男たちが取り囲んでいる。

 

それはいい。しかし、男たちは誰一人として一歩も動かない。いや、動けないのだ。

 

男たちは全員氷漬けにされている。

 

女性は氷死体を踏み砕いて歩いていく。

 

 

私はいつも姉さんと比べられていた。

 

どんなに頑張っても、どんなに努力しても、常に姉さんは自分より上だった。

 

それでも、自分には才能があると思った瞬間はあった。そのどれも姉さんの方がずっと才能を持ち、優秀だった。

 

自分は、姉さんの才能の残りくずを寄せ集めて造られた人形だと思う事さえあった。

 

姉が颯爽と駆けた勝利と栄光の道を、後から何も勝ち取れず誰にも振り向かれず歩いていく人形だと。

 

それでも、自分を見てくれる人がいると思えた。

 

織斑一夏。姉さんとは関係なく、自分のことを見てくれる人に会えた。

 

一緒にISを組み上げるのを手伝ってくれた。

 

嬉しかった。

 

でも、それはまやかしだった。

 

全ては姉さんの根回しだった。

 

姉さんが取り計らって織斑くんを私に近づけた。

 

優しくしてくれたと思っていた織斑くんは、姉さんに頼まれたから仕方なく接してくれただけだった。

 

織斑くんは、私があの人の妹だから、お情けで手伝ってくれただけだった。

 

私の気持ちは裏切られた。

 

結局、織斑くんも私を見てくれていなかった。

 

私は結局、どこまでいってもあの人の手からは逃れられない。

 

私は姉さんのお人形だから。

 

 

でも、それも終わり

 

これが私の力

 

私だけの力

 

姉さんにはない力

 

姉さんを越えた力!

 

学園都市のLEVEL4の氷結能力

 

私にはもうISなんて必要ない

 

もう、打鉄弐式もいらない

 

私は目の前のサングラスをかけた金髪でアロハシャツを着た男に話しかける。

 

「・・・・終わった」

 

「これでこの辺りの反学園都市組織は潰れたな。入団テストは終了だ。ようこそ『グループ』へ、更識簪」

 

対暗部用暗部「更識」の一人、更識簪が学園都市の『闇』へと、足を踏み入れる。

 

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