あのね、父さん (はたけサクモ生存ルート 神無毘橋任務)   作:碧唯

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第一話 父 はたけサクモ

忍び五大国と言われる火、水、土、風、雷の国、それぞれ一国一里の隠れ里を持つ。

その中でも長年五大国最強と謳われてきた火の国木ノ葉隠れの里、オレはそこに生まれた。

オレの名前は、はたけカカシ。(とし)は12。

 

隠れ里は元々忍達が共同で暮らし、学び、そして、協力して戦う事を目的とし、木ノ葉隠れの初代里長が創設したものだ。

でもいつの間にか里には忍だけでなく、沢山の一般人も住むようになった。

色々な職業の人達が集まり、隠れ里は大きな町になっていった。

 

中には一般家庭で生まれた子供が忍者を目指す事もあったけど、オレは違う。

生まれながらに忍者になることが決まっていた様なもの。

オレは両親共、代々忍者の家に生まれたからだ。

母さんはオレが物心つく前に死んだから想い出は何も無いけど、優秀な忍だったと聞く。

父さんは十代の頃から″木ノ葉の白い牙″と敵国に恐れられた忍で、今や里や国中の人達だけじゃなく、恐らく、忍界全土どんな小国の者でも知っている筈だ。

 

オレの父さんは木ノ葉隠れの里四代目火影はたけサクモ。

 

五年前、父さんが隊長として就いた任務を放棄した事が原因で火の国は多大な損害を出し、里の忍達だけじゃなく、火の国中の人々から父さんは「掟破りのクズ」と非難された。

更に、怪我が元で体調を崩して一時生死の境を彷徨(さまよ)ったけど、今となっては父さんの補佐役、腹心の部下でもあり親友でもある人の奥さんが医療忍者で、父さんの異変に気付いてくれて、何とか一命を取りとめる事ができたんだ。

 

父さんのそんな状況と、息子であるオレに対しても中傷する奴が現れたのを見かねて、先代の三代目が大名と会談し、父さんが放棄した任務の詳細を上忍会議で発表してくれた。

中忍だったオレはその席には居なかったけど、三代目が後で話してくれた。

例の任務は一歩間違えれば土の国との戦争になっていた事、父さんは戦争を避け尚且つ隊員の命を守る為に最善を尽くしたと…。

そして三代目はこうも言った。掟の為に忍が死んでは本末転倒だ。本来、掟とは里を守る為のもの、そして里は忍を守る為のもの。掟は忍を守る為のものでなくてはいけない。多くの仲間を守る為に、忍は掟を守り、里を守り、国を守る。その時々で何を守るべきか、何を優先すべきか…己で判断出来る様な忍になれと…。

 

まっ、オレは別に中傷されたからって全然気になんてしてなかったけどね。でも、父さんが悪く言われるのは気に入らなかったから、三代目には感謝してる…かな。

 

それからしばらくすると、いつの間にか、父さんを「掟破りのクズ」と(そし)っていた人達は、「里の英雄」「仲間思いの英雄」と評価を変えた。

これにはまだ今より幼かったオレも、少々…というか、かなり呆れたもんだよ。

あの任務放棄事件があるまでは、三代目の弟子にして補佐役を務める父さんを里の皆は「次期火影」と言ってはオレにまですり寄って来てた。そして、あの事件後は散々中傷し謗ったあげく、また手のひら返し…。

ま、お陰で人間ってのがどんなものか分かったけどね…。

 

汚名を雪がれた父さんは、また皆から「次期火影」と言われるようになって、三代目も大名もそれを強く望んだ。

父さんはずっとそれを頑なに辞退していたけど、第三次忍界大戦が開戦し最大の敵国である土の国岩隠れと戦い慣れていた事もあり、一日でも早い終戦を願った三代目に説得されて、今年、四代目火影の座に就いたんだ。

皆に中傷されている間も、何一つ言い訳することなく、自分の選んだ道を正しいと信じた父さんがオレは大好きで誇らしかったから、火影になってすごく嬉しかった。

 

 

オレの父さんは四代目火影、そして、オレの担当上忍は次期火影候補№1と誉れ高い波風ミナト先生

 

当代火影を父に持ち、次期火影候補に師事するオレは、まっ、いわゆる……、エリート忍者ってとこかな。

 

ミナト先生を担当上忍とする三人一組(スリーマンセル)は、オレと、くノ一の医療忍者のはらリン、そして、泣き虫忍者うちはオビト。

″うちは″というのは、木ノ葉の創設にも深く関わった一族で、写輪眼という血継限界を持つ。

写輪眼を除いても、強力な火遁や卓越した身体能力を持つ忍が多く木ノ葉の中でもトップクラスの有力な一族だ。

だけど、オビトから″うちは″を感じ取れるのは今の所、特徴的な黒髪だけだった…。

 

手裏剣術、体術、忍術、スピード、どれを取ってもオレには敵わない。その癖にやたらとオレに張り合って、何かにつけオレに突っかかる…。

ま、その理由はなんとなく分かってるんだけどね…。

なんとなくって言うか…、オビトは分かりやすいのよ…、単純なの…。

オビトはリンの事が好きなんだ。

で、なんでオレに対抗心を燃やしているかと言うと、リンがオレに特別な感情を持っているかの様にオビトは思ってるからだ…。

でも違う。オレはそれも分かっちゃってるの…。リンはオレの事が好きなんじゃなくて、父さんの、いわゆる…ファンなんだ…。

 

実のところ、オレも少しだけ…、ほんの少しだけだけど、リンの事かわいいなって思ってる。だけど、なんかちょっと悔しいし、オビトはムカつくからこのまま誤解させておいた方がいいかなっと思って黙ってるんだ。

 

 

オレたち三人一組(スリーマンセル)はよくミナト先生のお宅でご飯をごちそうになる。父さんが帰るのがだいたい夜中だからオレはいつも一人だし、オビトは両親揃って既に亡くなっているからなんだけど、何故かリンもいつも一緒にやってくる。ミナト先生はチームワークを深める為にはいいじゃないか…なーんて言っちゃってるけど…、ま…、オレもリンが居て嬉しく無い訳じゃない…かな。

 

ミナト先生の奥さんクシナさんが作ってくれた料理を皆であらかたたいらげた頃、そのリンが突然言い出した…。

 

「ねぇカカシ!カカシの上忍昇級が決まったらカカシのお家でパーティしようよ!」

「……………」

 

オレは先日、上忍志願書を提出した。

中忍への昇級と違って、上忍昇級には特に試験など無い。中忍として一定の任務を完遂すれば誰でも志願書を提出する事はできる。ただ、承認されるかどうかは別の問題。火影様や上役達、上忍班長などが判断する。

 

「まだ決まった訳じゃないしね…」

まぁ…そこそこ自信はあったけど、一応そう言っておく。て言うか…、自信なくっちゃ志願なんてできないでしょ!ダメ元なんて言葉は忍者に必要ないのよ…。

 

「えー、カカシなら大丈夫だよ!ね、カカシのお家でパーティ!」

 

オレはジト目でリンを見た…。

上忍昇級のお祝いは口実で、オレの家でパーティをすれば父さんも来るかも…なーんて考えちゃってるのが見え見えだからだ…。

 

「そうだな!カカシなら間違いないよ!何たって、親父さんが火影だからな! ま、まー、火影様は確かにすごい方だけど…」

 

リンが「カカシなら」と言ったのが気に入らないんだろう…オビトはオレを揶揄ったつもりなんだろうが、言ってしまってから流石にマズいとでも思ったんだろう。

オビトも父さんのファンだからね…。

だけど、オレだってそう言われて黙ってはいられない。

 

「あのねー、父さんが火影なのとオレの上忍昇級は関係ないでしょ!オレがいつ父さんの権力を笠に着た?そんな事言った事一度も無いでしょーよ!お前なんて、いっつも″うちは一族は″ばっかりじゃないの!」

 

オレが一気にそう言うと、オビトも真っ赤な顔をして言い返そうとしたけど、ミナト先生がそれを制した。

 

「ん、オビト、今のはキミが悪いね。カカシが火影様の息子だからって誰も手心を加えたりなんてしないよ?それはカカシだけじゃなく、火影様や上役達にも失礼だね」

 

ミナト先生にたしなめられたオビトは口ごもりながら言い訳をする。

「……そ…そりゃ…分かってるけど…。でも、12歳で上忍なんて今まで誰もなってないし…」

 

「アカデミーの同期として少しばかり悔しいのは分かるけどね。でも中忍一年目のキミ達と違ってカカシの中忍としてのキャリアはもう6年…決して飛び抜けて早いとは思わないよ?」

 

悔しいという本音を突かれ、更に正論をぶつけられたオビトはそれ以上何も言わず、リンは自分が発した言葉でこんな展開になってしまった事にオロオロして気まずそうにしていた。

オレはまだ腹が立っていた…。けど、いつまでもグチグチ言うのは大人げない…、かと言ってこの場にこれ以上居る気分でも無かった。

 

「じゃあオレは帰ります。ミナト先生、クシナさん、ごちそうさまでした」

オレはそれだけ言って、頭を下げると玄関に向かった。

 

「ん、構わないよ。またいつでもおいで。今日はお疲れ様」

ミナト先生が目を細めて微笑んでそう言った。

 

 

むしゃくしゃした気持ちで家路につくと、誰も居ない筈の家に灯がともっていた。

……!? 父さん!?

 

オレは無意識に駆け出して玄関を開けると、父さんの草履が行儀よく揃えてあって、それを見たらさっきまでの腹立ちを忘れて思わず頬が緩むのを感じた。

…父さんがこんな早くに帰ってるなら、ミナト先生んちでご飯食べなきゃ良かったな。

父さんと一緒に夕飯を食べられなかった事を残念に思いながらも、それでも父さんが居る事が嬉しくて仕方なかった。でも、オレは忍者だ。その嬉しい気持ちをぐっと堪えて、居間までの廊下をゆっくり歩いて襖を開ける。

 

「おかえり、カカシ」

座卓で本を読んでいた父さんが、顔を上げて微笑みながらそう言った。

 

本を読むなら自室の文机でもいいのに、わざわざ居間で読んでいたのはオレを待っていてくれたからだろう…。それが凄く嬉しかったけど、オレはまたそれを表に出さない様にして淡々と返す。

「ただいま、父さん」

 

父さんと呼ぶのは本当に久しぶりな気がする…。オレは任務があるし、父さんはいつも夜中にしか帰って来ないし、明け方にはもう出かける。いつもすれ違いで、家で顔を合わせるよりも、火影室で会う事の方が多い。だから、「火影様」と呼んでも、「父さん」と呼ぶ事は少なかったんだ。

だから、たわいのないこの挨拶も実はオレにとっては凄く意味のある事だった…。

 

「父さん、ご飯は?」

「ああ、お前はミナト君ちでご馳走になってると思ったから済ませちゃったよ」

「なんだ…、さっき火影室に行った時に早く帰れそうって言ってくれたらオレ準備してたのに…」

…分かってるけど、少しだけ拗ねちゃうんだよね。

「ごめんごめん、でもあそこじゃそういう話もできないしね」

 

分かってる…。父さんは″クソ真面目″だ。こういう家にいる完全プライベートな時以外は、家族としての会話は一切しない。父子でも、一歩外に出れば火影と一人の忍。そのケジメをクソ真面目に守ってる。そんな父さんを見て来たからこそ、さっきのオビトの言葉は許せなかったんだ…。

そう考えたら、またふつふつと、腹が立ってきた…。

 

「あのね、父さん…」

オレがそう言いながら、座卓の向かいに腰を下ろすと、父さんは読んでいた本を閉じて脇に置き、オレに向かった。

いつだってそう、オレがもっとガキの頃からそうだった。父さんはオレが話しかけると何かしていても中断して、必ずオレと向き合って話を聞いてくれた…。

自分が忍者になって任務に就く様になって改めて思った。

父さんはどんなに任務が忙しくても、家に居る僅かな時間をオレの為に使ってくれた。それがどれだけ大変な事か…、ようやく分かったんだ…。

 

「なんだ?何かあったのか?」

父さんは心配そうに、でもどこか嬉しそうに尋ねた。

 

オレはミナト先生の家でオビトに言われた事を話した。

もちろん、火影に言いつけているのでは無くて、父に愚痴を言っているだけ、父さんの方も父親として聞いてくれてると分かっているから安心して話せる。

 

「アイツさ、自分は″オレはうちは一族だ″ばっかり言っちゃってるのよ?オレは″火影の息子だ″なんて一度も言った事ないのに…」

 

オレが不服そうにそう言うと、父さんは笑いながら答えた。

 

「自分は言わなくても周りにはそう見られてるんだよ。良くも悪くもね…。カカシは″火影の息子″、オビト君は″うちはの子″。うちは一族は特に優秀な忍が多いからね。オビト君は自分でそう言う事によって自分に発破をかけてるんじゃないかな?」

 

「でもアイツ…全然″うちは″らしくないよ?」

 

「んー、今はまだ頭角を現わせずにいる。だからこそなんじゃないか?今、努力して鍛錬している分、元々うちはとして素質はあるんだから、彼は素晴らしい忍者になると思うよ。それに、オビト君だって本気でそう思って言ったんじゃない事くらい、お前も分かってるんだろ?」

 

…うん、分かってる。アイツもそんな悪い奴じゃないって事はね…。でも…

不服な事を表す様に渋々頷くと、オレのその様子を見て父さんは苦笑いしながら言った。

 

「まぁ…お前もオビト君も二人共、素直じゃないし相当な意地っ張りだからね…。似てるからこそ衝突する事もあるんだろうけど、だからこそ、お互いの気持ちを一番理解できる仲間にもなるんだよ。 他人に一人の忍として見られる前に″火影の子″として見られる…お前にとってそれは悔しくもあるだろう。彼だってそれは同じ気持ちだよ。うちはとしての誇りと、プレッシャー…。それに負けない様に頑張ってるんだ。お前には負けたくないというオビト君の意地を、お前はありがたいと思わなきゃダメだよ?彼がお前の力を認めてくれてるって事だからね。いつまでもそう思って貰えるように、お前も頑張りなさい」

 

結局、最後はお説教ぽくなってしまったからか、父さんは微笑みながら続けた。

 

「お前は恵まれているよ。上忍師はミナト君、そして三人一組(スリーマンセル)には医療忍者がいて、うちはの血を引く忍もいる。それぞれが己の役割を果たしたら最強のチームになる筈だ」

 

「……そうかなぁ」

オレはまだ納得できずに呟いた。

 

「前の大戦の時にね、綱手が四人一組(フォーマンセル)の一人を医療忍者にするという提案をした事があるんだ。当時はまだ医療忍者の数も今よりもっと少なかったし、大戦中で育てる余裕も無かったから叶えられる事はなかった。あの頃より医療忍者の数が増えたといってもまだまだ足りない。それなのにお前のチームには若くとも優秀な医療忍者がいる。それに″うちは″はチャクラ、身体能力の高さもそうだけど、何と言っても写輪眼だろう…。オビト君が開眼したあかつきにはお前もきっと助けられ、感謝する事になるよ。だから、お前の父親としてそういうチームを編成してくださった三代目には感謝しているし、火影としてはお前達のチームがこれからの木ノ葉を率いていくチームになる事を期待している」

 

ビックリした…。父さんが火影としての想いをオレに語ったのは初めてだから…。

ま、ちょっと嬉しかったから、父さんに免じてオビトの暴言は忘れてやってもいいかな…。

 

「ま…、お前はお前にできる精一杯で、チームでの役割を果たす事…だね。オレもオレの役割を果たすだけだ…」

 

そう言った父さんの顔はいつになく真剣な顔をしていた…。

何か考えているのだろう…。

 

「父さんの役割…? 戦争の事…?」

 

「ハハッ、相変わらずお前は聡いな…。お前がまだ赤ん坊だった頃…、お前が忍者になる前に戦争が終わる事を願ったもんだよ…。それは叶ったけど、結局また…だからなあ」

 

父さんが数年前、任務放棄したのは戦争回避の為、そして固辞していた火影就任を受けたのは戦争終結の為…、大戦を終わらせる為にはどんな手段でも厭わないだろう。

長かった第二次忍界大戦を常に前線で戦ってきた父さんの目には、何かが見えているのかも知れない…

 

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