あのね、父さん (はたけサクモ生存ルート 神無毘橋任務)   作:碧唯

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第二話 上忍初任務

数日後、オレは二つの(しら)せを受け取った。

 

ひとつは上忍昇級が承認された事。

そして、もうひとつは新しい任務が決定した事。

 

 

上忍としての初任務ではあるけど、メンバーは今までと変わらずミナト先生とオビト、リンの四人一組(フォーマンセル)だ。

 

だけど、集合時間になっても一人足りない…。

 

もう一度言う…、これはオレの上忍としての初任務!

なのに、あの泣き虫忍者ときたら…!はぁ…、まーた遅刻だよ…。

 

どーせ、また、荷物を持ったおばあさんが…とか言っちゃうんでしょーよ…。

 

案の定…、遅れて滑り込むようにやって来たオビトは目薬を差しながら言い訳をした。

「途中、荷物持ったヨタヨタおばあさんに道聞かれちゃってさぁ…」

 

「ハイ!うそでしょそれ!」

オレは半目で睨みながら突っ込むけど、ミナト先生は笑いながらオビトに同意した。

「ん!そう言うなカカシ!おばあさんに付いていってあげたんだよオビトは… ね!」

 

それを聞いてオビトは自慢げに言い放つ。

「荷物も持ってあげましたー!」

 

そのバカみたいな言い方にイラっとたオレは、真に受けるミナト先生の方を呆れた様に振り返って言う。

「…先生は素直すぎです」

 

「…大体いつもいつも、そうオビトの前に困った人がいるわけないでしょうよ!」

 

そうだよ!民を守り助けるのも忍の務め、困った人がいたら助けてあげるのは当然だけど、毎回遅刻してくる程、困った人に出会うか?あり得ないでしょ!

そんな毎回オビトの前に困ったおばあさんが現れるなら、うちは一族の居住地はどれだけ高齢化が進んでるって言うのよ…!その方が問題でしょ!まったく…

 

オレはそんな事を考えながら、イライラするのを抑え、努めて冷静に三代目の言葉を口にした。

 

「多くの仲間を守る為に、忍は掟を守り、里を守り、国を守る。その時々で何を守るべきか、何を優先すべきか…己で判断出来る様な忍になれ…、三代目がそう言ってた。困ったおばあさんを助けるのは他の人にもできるけど、お前が受けた任務はお前しかできないでしょーよ!お前が遅れた事でチームが危険に曝されたり、遂行が難しくなる事だってあるのよ。困ったばあさんが居たら、誰か他の人に頼んで助けてもらう!そういう時こそ″うちは″の力を使いなよ!オビトがやらなきゃいけないのは、お前自身に与えられた役割をこなす事!そうでしょ!」

 

オレが一気にそう言うと、三人は呆気にとられた様な顔でオレを見ていた…。

 

「…ハハ、カカシ、上忍になったら一気に大人になったね」

ミナト先生は苦笑いしながらそう言った。

 

………ま、まぁ、三代目と父さんの言葉の受け売りだからね…。

 

「そうだ、カカシに上忍祝いのプレゼントがあるんだ。コレをあげるね。特注クナイだよ」

ミナト先生は先が三つ又に分かれた変わった形のクナイをオレに差し出した。

礼を言ってそれを受け取ると、今度は鞄の中をゴソゴソと漁っていたリンが振り向いて言う。

「私はコレ、個人用特別医療パック…。全て使い易いように改良してあるからさ」

 

思いっきり苦々しい顔をしているオビトをチラッと見ながら、オレはそれを受け取った。

「サンキュー!やっぱりチームに優秀な医療忍者がいるのっていいよね!ね…先生!」

オレはまた父さんの受け売りの言葉を口にした…。

 

「ん!そうだね、心強いよ」

先生もそれに同意すると、リンは照れて頬を赤く染めていて、それを見たオビトは苦虫を噛み潰した様な顔をしたから、オレは内心ガッツポーズを取り必死に笑いを堪えた。

ま!これでこの前の件はチャラにしてやるか!

 

オレがスッとオビトに手を差し出すと、ヤツは真っ赤な顔をして言った。

「…な、なんだよその手は?お前にやるもんなんてなーーーんにもねーよ!」

 

一瞬イラっとしちゃったけど、でも、ま…オレはもう上忍だし。いつまでも、ガキみたいにコイツと言い争っている訳にもいかない…。なんせ、オレ…上忍だしね…。

「ま!いいよ!お前はオレの上忍としての初任務を何事も無く完遂させてくれれば、それがプレゼントだよ!」

 

オレが言い返さないのがそんなに不思議なのか、三人はまた唖然としていた…。

 

「ん、じゃあ丁度いいね、この辺で任務の説明をするね」

ミナト先生はそう言いながら、しゃがんで地図を広げ話し始めた。

 

この先、オレたちのチームは二手に分かれる。

オレを隊長としたオビトとリンの三人一組(スリーマンセル)で、既に岩隠れによる侵略が行われている草隠れ内部まで潜入し、敵の兵力、物資補給ルートを絶つ。補給ルートの要所である神無毘橋(かんなびきょう)を破壊する事だ。

ミナト先生は国境付近で戦っている前線組に合流し、敵にオレ達の動きを悟らせない様に陽動する。

 

上忍として初めての任務が隊長で、しかも戦局を左右するほどの重大ミッション…。不安が無いと言えば嘘になるけど、オレ達でできると思うからこそ任務を任されているんだ。火の国の民、木ノ葉の忍、そして何より、父さんが願って止まない戦争の終結…。絶対にやり遂げて見せる…。

 

オレにはあの術もある…

父さんはオレが小さい頃から忍術、手裏剣術、体術なんでも教えてくれたけど、雷遁だけはずーっと教えてくれなかった。あの任務放棄事件の後、生死の境を彷徨った後に、ようやく性質変化を教えてくれるようになったけど、父さんの使っている雷遁はまだ教えてもらっていない…。でもオレは密かに自分だけの新術を開発していた。

「千鳥」…オレがその術に付けた名前。

 

「あれ?ねえカカシ!」

突然呼び掛けられて、考えを巡らせていたオレはふと足を止める。

「今日はいつもの短刀じゃないんだね」

後ろを歩いていたリンは、オレの背中の短刀がいつものと違う事に気付いた様で尋ねてきた。

「うん、父さんがしばらく貸してくれって言って持っていったんだ。ま、あれは元々父さんのだからね」

 

オレがリンを振り返ってそう言うと、リンの後ろを歩いていたミナト先生が僅かに表情を動かした。…なんだろう。短刀に何かあるのかな?

 

 

その後、前線を避け神無毘橋を目指すオレ達は、岩隠れの偵察と思われる一人の忍と遭遇した。

もちろん岩隠れとしても、神無毘橋を補給の要所だと認識している筈で、警戒の為、周囲に忍を配置しているのだろう…。

オレ達に気付いた敵忍は絶対に帰す訳にはいかない…。

ミナト先生と別れる前で良かった…。

 

オレは良い機会と、開発中の新術「千鳥」を使ってみた。けど…、どうやら完璧な術では無かったみたいだ…。直線的な動きをする上に敵への攻撃は接近してからでないと当たらない。こちらの動きを見切られれば、カウンターを食らいやすい。

 

ま、それが分かったのが、初めて実戦で使った時で、しかもミナト先生がいる時で良かったと思うしか無いね…。

ミナト先生に助けて貰ったから掠っただけで済んだけど、じゃなかったら岩忍の刀をもろに受けていた筈だから…。

動かない敵なら使えても、実戦じゃ使えないな…。

 

リンに応急治療をしてもらいながらオレは考えていた…。

 

やっぱりこの任務が終わったら、父さんに雷遁教えてもらおう…。

この任務を無事やり遂げたら、きっと終戦にぐっと近付く筈だ。

そしたら、幾ら火影でももう少しは時間が取れる筈…だよね。

だから、この任務は何としても成功させなきゃ…!

 

「じゃあ、今晩はここで陣を取ってしっかり休んでね。カカシ、後は頼んだよ」

少し心配そうにしていたミナト先生だったけど、オレの応急治療が終わると夜の帳の中、前線へと向かって行った。

 

 

オレは、その夜、なかなか寝付けなかった…。

傷の所為じゃない…、傷の痛みはもう殆ど無かった。

明日からは少しのミスも許されないハードな任務になる…。少しでも頭も身体も休めておかなくちゃ…そう思えば思う程、なかなか寝付けなかったんだ…。

 

何度目か寝返りを打った時、ふと隣で寝ていたオビトと目が合った。

お互いが相手も起きていた事に驚いて同時にビクッと震え…、思わず笑ってしまいそうになった…。

 

オビトはそっと立ち上がって、オレに目で合図すると藪の向こうへ歩いて行く。

寝ているリンを起こさない為だろうけど、また何か言いたいのかと、オレは内心ため息を吐いて後を付いて行った。

 

オビトはこちらに背中を向けたままで立っていた。

「……何よ?」

半目でその背中を睨みながら、リンを起こさない様に声を潜めて言う。

 

奴は背を向けたままチラッとこちらを振り返って、口を尖らせボソッと呟く様に言った。

「………この前……悪かったな…」

「…は?」

全く何の事を言っているのか分からなかった…。

だって、オビトに謝られる覚えがあり過ぎたから…。

 

「だっ!だか…」オビトは大きい声を出し過ぎたと思ったのか慌てて声を潜めて続けた。

「だから……この前……親父さんが火影だから上忍になれる…みたいな事、言っちまっただろ………クソッ」

 

…ビックリし過ぎて、オレはバカみたいに口を開けていた…。

あぁ、そうか…今日、幾度かオレが喋った後に三人がぽかーんとしていた顔…、きっとオレも今、それと同じ顔をしているんだろう…。

うん、わかった…。コイツがこんな事言うなんて…、って言う顔だったのか…。

 

「ま…まぁいいよ!お前が本心で言ったんじゃない事くらい分かってるから!」

…これも父さんの受け売りだけどね。

 

まぁ実際オレ自身も驚いていた…。ミナト先生は上忍になった途端大人になった…って言ったけど、そうじゃない。先日、父さんと話して分かったんだ。確かにオレはオビトと似て無い様で似てる…不本意だけども…。

リンの事があるにしろ、オビトがオレに対して「負けたくない」と思ってくれているのは、父さんの言う通り、奴がオレの力を認めてくれてるって事だ…。口ではなんだかんだ言っても認めてくれてるって言うのはやっぱり嬉しいものだ。

 

それにオビトが″うちは″の名を出すのにイラついていたのは、結局のところ…オレにも嫉妬心があったのかも…。ただ″うちは″の家に生まれたっていうだけで、他の誰も手にする事ができない「血継限界」を持つ事ができる。それが忍者として妬ましかったのかも知れない…。

でも父さんの言うようにオレも同じ…。

父さんの子供に生まれたっていうだけで、小さい頃から才能ある忍の教えを受ける事ができたんだ。

オレが一人でどれだけ鍛錬してるか修業してるか知らないくせに、オレの表面しか見てない奴はオレができるのは父さんのお陰だという…。

 

オレは父さんの言葉を思い出していた…。「似てるからこそ衝突する事もあるんだろうけど、だからこそ、お互いの気持ちを一番理解できる仲間にもなるんだよ」

オレが意地を張って言い返すのを止めたらオビトも意地を張るのを止めた…。

オレもオビトも父さんとミナト先生を尊敬してて、二人共仲間が大事、チームワークが大事…言ってる事は同じなんだよね…。

 

ま…、うまくやってけない方がおかしいって事でしょ!

 

「明日っからはミナト先生もいないし、三人でやるしかないんだから…、ま…、とりあえず…………その……よろしく…」

オレが目を逸らしながらそう言うと、オビトも頭をポリポリ掻きながら呟いた。

「こっちこそ…頼りにしてるよ…………隊長さん…」

 

「ま…、早く寝よーよ。明日寝不足だからってミスしても、助けてやんないからね!」

照れくさいのを隠す様にオレが最後に憎まれ口を叩くと、オビトはオレの背中を思いっきり叩いて言った。

「お前は一言多いんだよ!ったく!せっかく見直してやったって言うのに…」

「…見直してやったのはこっちでしょーよ!」

背中をさすりながら半目で睨んで言ってやった。

 

いつもの調子に戻ったオレ達は笑いながら戻って、そんな二人のやり取りを知らずすやすや眠るリンの寝顔を見て、また二人目を合わせて笑い合ってから寝床に就いた。

 

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