あのね、父さん (はたけサクモ生存ルート 神無毘橋任務) 作:碧唯
翌朝から、オレ達
ミナト先生と別れる前、偵察と思われる一人の忍とやり合ったけど、本来忍が一人で動く事はあり得ない…。
恐らく神無毘橋周辺を警戒する小隊の一人で、偵察に出たのだろう
必ずそう遠くないどこかに、奴と同じ小隊の忍がいる筈だ…。
オレは周囲を警戒しながら、先頭に立ち歩を進める。
神無毘橋に近付くにつれ、岩隠れのものと思われるトラップが目に付く様になった。
こういう時、オレは父さんの息子で確かに得をしていると感じる。
父さんは忍界でもトップクラスと言われる雷遁の使い手で、土遁を使う事の多い岩隠れとの戦には常に最前線に立ってきた。だから、岩隠れの戦法や、こんなトラップは木ノ葉の誰よりも熟知している。
オレはその父さんに机上でも実践でも何度も教わってきたんだから、この潜入ミッションの隊長はオレにもってこい…ってとこでしょ。
うっそうとした巨大な竹が生える湿地帯を通過する時、オレは周囲に潜む敵の気配を察知しオビトとリンに合図して足を止めた。
その時、上空から先を斜めに切った竹やりが無数にオレ達に降り注ぐ。
それを真ん中を進んでいたオビトが火遁・豪火球の術で、次々に炭へと変える。
その煙に紛れて一人の岩忍が両腕の二刀を振り上げながら襲い掛かってきた。
クナイを取り出し、オレは地を蹴ると跳び上がり、その岩忍に向かい応戦する。
何度か、刀とクナイを打ち合ったところで、「キャアーッ!」というリンの悲鳴を聞いて身を翻しオビトの元へ着地した…。
見ると、オレが応戦していた岩忍とは別の巨躯の岩忍がリンを脇に抱えていた…。
…しまった。あの竹やりの攻撃はそれを迎撃する火遁も含め、オレが応戦した忍を紛れさせる為のものではなく、三人で一番攫いやすいリンの背後に迫る為のものだったんだ…。
オレと戦っていた忍もそれ以上はやろうとせず、リンを抱えた巨躯の忍が「こいつは預からせてもらう」と言うと、共に姿を消した。
「くっ!」
「待て!!」
オビトとオレが二人揃って声を上げるが、聞き入れられる訳もない…。
「ちくしょう!!」
姿を消した三人を追おうと、オビトが駆け出すが、オレはそれを引き止める。
「オビト!奴等を追うな!!」
「何だと!?お前、今何言ってんのか自分で分かってんのか!?」
すぐにでも追いかけたいであろうオビトはオレに食ってかかる…。
「ああ…」オレは静かにそう答え
「少し考えさせてくれ…今どうするのが最善か…」そう言った。
「リンは…リンはどうすんだよ!!」
「敵はこっちの作戦を知りたがってるすぐに殺されることはない。それに運良くリンは医療忍者だ。捕虜になっても手厚く扱われるだろう。…それより問題は敵にこっちの作戦が知れる事だ。情報が漏れれば奴らは直ぐに橋に警戒態勢をしくだろう。そうなれば任務はより困難になる」
オレは声を落として、冷静に話をするが、オビトは今すぐにでも追いかけて行きたいのだろう…声を荒げる。
「今は任務の事より、リンを助ける方が優先だ!! お前が言ったんじゃないか!三代目の言葉を!何を優先させるか己で判断できる忍になれって!! 今は仲間を助ける事が優先だろう!!」
オレはハッとした…。
そうだ…、父さんは戦争を回避し仲間を助ける為に掟を破り、任務を放棄した…。
どんなに非難されても父さんが堪えたのは、自分のやった事は間違っていないという強い自負があったからだ…。
このままリンを見捨て任務を遂行して、やり遂げる事が出来たとして、オレは父さんに…火影様に…胸を張って完遂の報告をする事ができるのか…?
いや、でも…父さんが放棄した時は、戦争回避が大前提だった…。今、リンを助けに行って任務が失敗に終われば、戦争はまた当分続き、命を落とす人も後を絶たない…。
一人の仲間の命と、これから死ぬかもしれない多くの仲間の命を天秤にかけろというのか…?
どうする…、どうすればいい…
「かつて″白い牙″と呼ばれた火影様は仲間の為に任務を放棄し、″掟破りのクズ″と言われたんだってな。だけどな!本当のクズは仲間を大切にしない奴だよ!!オレは掟破りのクズと言われても平気だ!でも仲間を見捨てるようなクズになんかなりたくねェ!もういい!オレは行く!!」
そう叫んで駆け出そうとするオビトの腕を掴み言う。
「分かったから……ちょっと待てって言ってんでしょーよ…」
「待ってる暇なんかあるか!」
オレの手を払い除けて、殴り掛からんばかりの勢いで叫ぶ。
「だからアツくなるなって言ってんの!」
オレは一呼吸ついてから諭すように話を続ける。
「父さんが前に言ってた。忍者に感情は必要ないって言うけど、オレはそう思わない、守りたいっていう気持ち…感情があるからこそ忍者なんだって。でも、守る為には冷静にならなきゃいけないってね…」
「じゃ…じゃあリンを助けに行くのか?」
「フンッ、オレが行かなくても、オレが止めてもお前は行くんでしょ?ま、オレは一人でも任務続行できるけど…、お前一人じゃリンを助けに行っても二人揃って捕虜になるのがオチだろーしね。ま!お前みたいな泣き虫忍者に一人で任せておけないでしょ」
「カ…カカシ…お前…」
「何だよ!オレが隊長なんだからオレの指示に従ってもらうからね!さっさとリンを助けて、任務続行するよ!」
オレがそう言うと、オビトはまたゴーグルの奥の瞳を濡らしてた…。
…まったく、だから泣き虫忍者なんて言われるんでしょーよ。
そうだ、父さんが任務放棄した時、あの時はそれしか手段が無かったと三代目が言ってた。
オレはまだ何もやってない…。リンを助けて任務続行する…その方法を必ず見付ける!
樹上からはるか下のほら穴の入り口を二人見下ろしていた。
「見付けた…!」そう呟いたオビトが何を思ったのか、両手で己の頬をパチパチと叩いて気合を入れ出した…。
(バカッ…!敵に聞こえたらどうすんのよ…)オレは声を潜めて言い、オビトの手を掴む。
ごめんごめんと手を合わせて謝ると、オビトはクナイを取り出して構え
「よし…行くぞ…!」と呟いた。
…あのね、オレが隊長なの…と言いたかったが違和感を感じて言葉を止めた。
オビトの背後から「何処へだ」と、その違和感の元、岩忍が姿を現す。
オレはすかさず、背中の短刀を抜いて斬りつけるが、敵もなかなかのもの…、掠っただけで躱された。
岩忍は半透明になり、次第に姿が全く見えなくなってしまった。
周囲を確認しつつ、オビトに言う。
「微かな空気の流れや物音で敵の位置を判断するしかないぞ」
「ど…どこだ?」
キョロキョロとするオビトの背後で、僅かに地面が動いたのが見えた。
「オビト後ろだ!」
オレはそう叫びながら、動いた地面とオビトの間に割って入る。
…その刹那、肩から左頬にかけて焼きごてを当てられたかの様な熱さを感じ、同時に誰かに横から身体を持って行かれる感覚があった。
ドサーッ と誰かと二人地面に転がり、土煙の中、目をうっすら開けると見慣れた金色の髪が目に入った…。
「…ミナト先生?」
「カカシ、端的に状況説明して!」
その声にオレは我に返って説明する。
「リンが敵に攫われてそこのほら穴に…、恐らく敵はあと一人です」
「恐らく…か、ならオレがリンのところに行くね。キミ達二人でこの敵を…!」
ミナト先生はオレに向かってそう言った後に、茫然と立ち尽くすオビトに向かって叫んだ。
「オビト!カカシの傷は軽くはない!キミがメインだ!しっかりしろ!」
そう言い残し、先生はほら穴の中に消えた。
オレはどうやら肩から左頬にかけてを斬られたらしく、ドクドクと脈打つのが分かるほど血が流れていた。
だけど、敵はまた姿を消していて、オビトはゴーグルを上げて目をゴシゴシ擦っている…。
先生はああ言ったけど、オレがしっかりしなきゃ…。
頬を左手で押さえながら、短刀を握り構えて警戒する。
すると、立ち尽くしていたオビトが突然動いて、何も無い筈の所にクナイを突き立てた…。
確かに何も無かった…。でも、オビトがクナイを突き立てた場所からは赤い血が流れ、岩忍が徐々に姿を現し、呻くように言った…。
「な…何故だ…、見えるわけはない…。な…何だ?その眼は…!?」
岩忍が倒れ、オビトがオレを振り返ると、その瞳が紅く輝いているのが分かった。
「オビト、お前…その目…」
「ああ…、これが″写輪眼″みてーだ…。チャクラの動きや流れが目に見える」
オビトは恐らくチャクラの流れを見ているのだろう…、不思議そうに自分の手を見ていた。
「ぐっ…」突然斬られた傷に痛みを感じた。
「大丈夫か!?カカシ!…ごめんな、オレを庇って…」
オビトはそう言いながら、紅い瞳から涙を溢れさせて、またゴシゴシ擦っていた。
…あぁあ、せっかくの写輪眼が…。
「ああ、先生が来てくれなかったら、もうちょっとズレてて目をやられてたかも知れないけど…よかったよ。それにリンにもらったコレがある。応急処置して先生のとこに行こう」
リンにもらった医療パックを取り出しそう言ったが、オレが応急処置を始める前に、ほら穴からミナト先生とリンが出てくるのが見えた。
「リン…!」
オレを心配して泣いていたオビトは、嬉しそうに顔を輝かせてリンの方へ走っていった…。
「オビトー、ごめんねぇ…。えっ!オビトその目!」
きっと、リンも写輪眼に気付いたのだろう…。
「おー!これが写輪眼だ!コレでそこの岩忍をやったんだぜ!」
自慢げに胸を張って言ってる…。さっきまで泣いてた癖に…。
「ん!よくやったね、オビト!じゃあ、リン、カカシを手当てしてあげて。行けそうならこのまま任務続行だよ」
「あ!カカシー、迷惑かけちゃってゴメンねぇ」
リンはそう言いながら、手際よく応急処置をしてくれた。
「くっ…、……ところで、先生、前線の方はいいんですか?」
オレは医療忍術独特の焼ける様な痛みを堪えるのをごまかすように、気になっていた事を先生に尋ねた。
「ん、前線の方はもう大丈夫だよ。火影様がいらっしゃったからね」
「え!父さんが!!」
オレは驚いて動いてしまい、治療していたリンに睨まれてしまった…。
先生はオレ達と別れ、前線組と合流してからの事を話してくれた。