あのね、父さん (はたけサクモ生存ルート 神無毘橋任務)   作:碧唯

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第四話 最前線

夜のうちにカカシ達と別れたミナトは前線を目指した。

到着してみれば、木ノ葉は明らかな劣勢…

元より岩隠れとの前線では数で負けていた。

木ノ葉は雲隠れ霧隠れとも戦闘状態にあり、三方に戦力を分散していた為、手薄になっていたのだ。

 

ミナトは前線組と合流し、状況の報告を受けようとしていた。その時、背後から近付く気配を察知し、敵襲かと全員が息を呑む。

 

「遅くなって済まない…」

そう言って姿を現したのは、暗闇でもはっきりとわかる白銀の髪…四代目火影…

執務中に羽織るマントは身に着けておらず、任務服にベスト、額当て、帯刀にはチャクラ短刀という現役の頃さながらの出で立ちであった。

 

「火影様…!?」

その場にいた全員が先刻までと違う緊張感に包まれた。

 

「先代や上役達の説得に時間がかかってね…済まなかった」

 

再び詫びる里長に、どうして返していいものかと周囲の忍は一様に戸惑っていたが、ミナトは一人「やはり…」と考えていた。

「火影様が短刀を持って行かれたとカカシが言っていたので、もしや…と思ったのですが…」

 

それを聞いてサクモは微笑んで答えた。

「ああ、今回はどうしてもコレが必要だったんだ…」

「しかし…火影様自ら前線に出るなど…」

「オレはこの戦争を終わらせる為に火影を受けた。それがオレの役割だ。ミナト、お前も己の役割を果たしなさい。ここはオレ達で十分だから」

サクモがそう言うと、火影の護衛小隊を務める四人の忍が大きく頷いた。

 

サクモの護衛小隊とは殆ど名ばかりで、四人共普段は補佐役としての執務に就いている。

四人のうち二人は、スオウ、カズサという、サクモが現役の忍であった頃から、共に戦ってきた戦友であり、親友でもある二人。

そしてもう二人は、日向宗家若き当主の弟であるヒザシと、これからのうちはを率いていくであろう忍フガク。木ノ葉を支える二大一族の、うちはと日向、それぞれから一人ずつ若い忍を補佐に就かせていた。

サクモ自身、若い頃から人より抜きんでた才能を妬まれ孤立した事もあった。自らのその経験から、日向とうちはが、木ノ葉の中で孤立することを危惧しての登用だったのだ。

 

火影室ではヒザシが「日向は木ノ葉にて最強」と言えば、フガクが「うちはこそ最強」と負けじと言い争い、残りの二人とサクモがやれやれと顔を見合わせる…。その様子が当たり前になっていたが、一度戦場に立てば皆歴戦の忍だ。

この五人がいれば、今までの劣勢を覆す事ができる…。疲れ切っていた木ノ葉の忍達を奮い立たせるには十分過ぎる顔ぶれだった。

 

 

東の空が白んできたころ…、サクモが背中の短刀を抜き「来るぞ…」と呟く。

その声で、皆が一斉に臨戦態勢に入った。

 

無数の岩が飛来する音に気付くと、サクモは皆の前に飛び出て印を結ぶ。

構えたチャクラ短刀から白い稲妻が四方八方へと飛び、その稲妻は飛来した岩をことごとく砕き、バラバラと音を立て叩き落としていった…。

 

その土煙もまだおさまらないうち、まだ薄暗い周囲に白光したチャクラ刀が白い筋を描く。

サクモが先陣を切って駆け出していったのだ。

「おい、火影様に先陣切られてどうする!行くぞ!」

慌てて誰かがそう叫ぶと皆も散り散りに駆けて行った。

 

 

サクモが応戦している岩忍が驚愕の声を上げた。

「まっ…まさかっ!白い牙!?」

 

それを聞いてサクモは口元を緩めて応えた。

 

「白い牙か…そう呼ばれるのは久方ぶりだ…。お前達には冥途の土産に本当の白い牙を見せてやるよ」

 

そう言いながら印を結ぶとサクモの身体を白いチャクラが纏い、それは大きな狼へと形を変えた。

横から飛んで来た手裏剣をサクモは気付いていながら避けるそぶりも見せなかった。

すると、サクモの纏った白いチャクラの狼が牙を剥き、一声吠えるとそれは一陣の風となって手裏剣を全て弾いたのだ。

 

「バッ!バカなッ!火影がこんなとこまで出張る訳ない!」

 

「生憎、木ノ葉は人材が豊富でね。オレもそう長く火影の座に就いているつもりはない…。と言っても、岩隠れにやられたんじゃ″白い牙″の名が廃るというものだ…。ここは思う存分やらせてもらう」

言葉が終わらないうちに、サクモのチャクラ短刀は岩忍の体を真っ二つにしていた。

 

サクモはミナトを見付けると隣に行き再び声をかけた。

「ミナト!ここはいいから早く戻れ!カカシは上忍になったと言ってもまだまだだ。気負い過ぎるところがあるからな…」

戦場でふと見せた父親としての顔だった。

 

「そうですね…、新術を見ましたが…あれは火影様が?」

「いや、オレが教えないから痺れを切らせて自分で開発したんだろう…」

「ご存知でしたか…」

「ああ、あの子の手にあった雷撃による火傷はオレも身に覚えがあったからな。コレが終わったらオレの術を教えてやるとするか…」

 

コレとは戦争の事だろう…。ミナトはそう考えて黙って頷いた。

カカシ達と別れる時に心配になったのは、カカシが「必ずやり遂げて見せる」と気負い過ぎている様な気がしたからだ…。

流石父親…、傍に居なくてもカカシのそういう所も見抜いてる…。

そう思うと、戦いながらも思わず頬が緩んでしまった。

 

「ここを抑えてもお前達の任務が上手くいかなければ同じだ。お前はお前の役割を果たせ!」

「ハッ!」

ミナトは短く返答し、その場を離れ、カカシの持つクナイに付けられた飛雷神のマーキングを頼りに三人に合流したのだった。

 

 

 

 

ミナト先生が語る話しの途中から、治療も終わり、オレ達は神無毘橋を目指していた。

 

「でも…父さん大丈夫なのかな…ずっと実戦には出てないのに…」

ふと心配になってオレが呟くと、ミナト先生は笑いながら言った。

「大丈夫だよ、なんて言っても″火影様″だからね。それに、あの術を使っていたから…」

「あの術…?」

「ん、伝説の術だね。実際目にした忍はごく僅か。恐らく…術を使うのも今回でまだ二回目なんじゃないかな?」

「え…、そんな凄い術ならもっとたくさん使えばいいのに…」

「あの術はね、火影様自身を守護するものなんだ。だから普段は使わない。きっと、自分だけが安全圏にいる事が許せないんだろうね。だけど、かつて一度使った時と今回は、自身が死なない事で他の皆を守る事ができる。そう思う究極の時にだけ使っていらっしゃる様な気がするね」

「……………」

よく分かんないけど、ミナト先生が大丈夫っていうなら大丈夫なんだろう…。

オレは…、オレ達は、前線で戦っている父さんの為にも、絶対に神無毘橋を破壊するんだ。

 

 

その後オレ達は無事に神無毘橋に辿り着き、用意した起爆札をあちこちに張りつけ、破壊する事に成功した。

 

跡形もなく粉々に砕けた橋を見て思った。

これでしばらくは岩隠れからの兵力や物資の補給は途絶えるだろう…。

土との戦争に一息付ければ、一気に終戦に近付く事も期待できる。

 

無残な橋の姿とは裏腹にオレは晴れ晴れとした気持ちでいた。

上忍としての初任務は無事成功した。

それにオレは、父さんが前線で戦っていたと聞いて、場所は離れていても、オレも父さんと一緒に戦えた気がして、すごく嬉しかったんだ…。

 

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