一夏がいきなり大ピンチ。
マッド要素有、注意。
金色がかかった赤毛の男…は、まあ一見すると10代か20代くらいに見える男は、目の前で倒れている少年を見おろしていた。
少年は、縛られており、自らの血の海の上にうつ伏せで倒れていた。
周りには、少年を傷つけた男達が倒れている。全員が泡を吹いて痙攣していた。
少年の体から流れる血は、どんどん広がり、赤毛の男の足まで汚した。
男は、ふむっと声を漏らし、少年の傍らにしゃがみ込んだ。
そしてツンツンとその頭をつついた。
すると僅かに少年が呻いた。
「少年。生きてるかい?」
どう見ても答えられる状態じゃないのは誰が見ても明らかだ。
しかしそれでも、少年の目が微かに開いた。
「どうする?」
男は聞く。
少年は、ハクハクと口を開け閉めした、声が出したくてももうそんな力が残っていないのだ。
男は、口元を釣り上げるように笑い、少年の頭をひと撫でして。
「分かった。」
男は少年の体に触れると、男は少年と共にその場から消えて無くなった。
同日。
ブリュンヒルデの称号を得た織斑千冬の弟、織斑一夏が行方不明となった。
***
「まったく、おまえは、唐突だよな。」
「今に始まったことじゃないじゃん。」
「しかし、この少年は…。」
白衣の研究者は、書類を見て顔を歪めた。
「イチカだ。」
「はっ?」
「今日からあの少年は、ただの“イチカ”だよ。」
「…政府は、死亡届けを受理するってことか。」
「プロジェクトの今後のことを考えたら、安いもんでしょ。例えそれが、ブリュンヒルデの弟だとしても。」
「しかし、なぜこの少年を選んだ? もっと検体になる人間はいるだろう?」
「別に、ただの気紛れ。」
「出た。おまえの気紛れ。」
「でさ、経過は?」
「…とりあえず順調だ。あとは意識が戻るのを待つだけだ。」
「このプロジェクトが成功すれば、医療が飛躍的になるだろうね。」
「当り前だ。無限に、それも誰の体でも適合する臓器が手に入るんだ。臓器移植問題が解決すれば、下手すると世界がひっくり返るかもな。」
「成功すれば…、ね。」
クスクスと笑う赤毛の男。
「おまえの存在価値も上がるだろう、…椎堂(しどう)ツムグ。」
「存在価値なんて、望んでないよ。俺は、やりたいようにやるだけさ。」
椎堂ツムグと呼ばれた赤毛の男は、両手を大きくすくめた。
「…イチカ君が不憫だ。」
椎堂ツムグ。
その名は、教科書にも載っている。
かつて世界を震撼させ、人類共通の敵として存在していた大怪獣ゴジラがいた。
そのゴジラの細胞と人間の融合…というか、なぜそうなったのか不明だが人間でありながらゴジラの細胞を取り込んだ世界で唯一の人間であった。
発見されてすでに数十年たっているのだが、その姿は変わりことなくまるで不老不死であった。
ゴジラの細胞、通称G細胞を平和利用するなり、私利欲望のために利用しようとした人間達がいて、椎堂ツムグと名付けられた彼をこぞって研究対象とした。
だが、結果は、まったく得られず、数十年たった今もその存在は持て余されている。
その性格と、強力な超能力を使い、表向きは全世界の条約により監視・軟禁されているが、実質的に自由に行動しており、その行動を止めることは誰にもできなかった。
だが何か騒動を起こすかと言ったらそんなことはなく、多少(?)の悪戯や気紛れを起こすことはあれど国家の指示に従って大人しくしていた。
ところが最近になって、あるプロジェクトが立案された。
それが椎堂ツムグの臓器を他人に移植するという研究だった。
椎堂ツムグの細胞は、異常な再生力を誇り、例え頭部を破壊されても時間が経てば再生する。それゆえに臓器を取っても臓器が再生するので無限に取ることができるのである。
椎堂ツムグの細胞を利用した医療への研究はこれまでの行われていたが、失敗に終わっている。
なぜ今になってそれが急に立ち上がったのか?
それは、あるパワードスーツの登場によるところがある。
名を、インフィニット・ストラトス。通称IS。
篠ノ之束が開発した宇宙への進出を目的として開発されたパワードスーツである。
これに利用されているナノマシンの技術が医療の向上になり、椎堂ツムグの臓器移植のプロジェクトが立ち上がるきっかけとなった。
そして、表舞台に公表されることのない世界規模のプロジェクトの開始から、ほどなく、椎堂ツムグの気紛れにより選ばれた検体として、織斑一夏という少年が、椎堂ツムグの臓器移植第一号となった。
移植されたのは、心臓。
脳に続く、もっとも重要な器官だ。
ISによる、世界最強を決める大会で優勝した姉・織斑千冬の弟・一夏は、皮肉にもそのISからヒントを得た世界機構のプロジェクトの実験台になり、その存在が死んだことになったうえで生かされる運命となった。
なんでこんな設定にしちゃったんだろう…。
ツムグの細胞は、ゴジラ×エヴァでも書いてますが、体内に入っただけで死亡するんですが、それをISの技術を流用して克服したという流れです。
ただ臓器を動かすにあたり、複雑な仕組みが組み込まれていて、そのため椎堂ツムグと一夏は、離れられない関係性になります。