ラウラが急にしおらしく?
わかんない展開になってしまった…。
「このたびは、私の元教え子の暴走のせいでご迷惑をおかけしました…。」
「なぜ、あなたが謝るのです?」
片腕を包帯で吊るした状態の守代が冷静な声でそう言った。
同意見なのか、他の怪我をしたスタッフ達も無言だ。
頭を下げている千冬は、それでも頭を下げずにいられなかった。
「……謝罪は不要です。」
「しかし…。」
「邪魔ですから。」
「っ!」
「我々は、あなたのために時間を使うほど暇ではありません。」
「……失礼した。」
そう言って千冬は、再度頭を下げて、去って行った。
「菓子詰めくらいはもらってよかったんじゃないの?」
「あなたが単に食べたいだけですよね?」
「なんだ、分かってるじゃん。」
「勝手に食べてください。」
「じゃ、もらうね~。」
ツムグは、そう言って千冬が置いていった菓子詰めの箱を持っていった。
「彼…、食事が必要ないというのに、貪食ですよね。」
「放っておきなさい。」
ヒソッと話しかけてきたスタッフの一人に、守代はつれなくそう言った。
***
和菓子特有の、上品な甘い豆の匂いに、勉強机で復習していたイチカは、苛立った。
「なに不機嫌な顔してんの?」
「…それ…、千冬姉が、スタッフさん達に持っていった菓子折じゃねーのか?」
「そうだけど?」
「なんであんたが食ってんだよ!」
「守代ちゃんが食べていいって言ったんだよ。」
「っ…。」
イチカの体調管理を担当しているチームリーダーである守代が、千冬に対して冷たいことは分かっていたが、ここまでとは…っとイチカは、唇を噛んだ。
「守代ちゃんのあの態度は、普段通りだから別に織斑先生に厳しいわけじゃないよ?」
ツムグは、そうフォロー(?)した。
「ま、誰に対しても基本的にああだから、そこが良いところであり、悪いところだけどね。」
「ほぼ、マイナスじゃねーかよ。」
ツムグの言葉に間髪入れずイチカがビシッとツッコミを入れた。
「……守代ちゃん、努力型だから、天才って奴に負けたくないからいっつも気ぃ張ってんの。特に、天災なんて呼ばれてる人が大嫌いみたい。」
「それって……束姉のこと?」
「これだけ世界を混乱させるような大発明をしておいて、当の本人は雲隠れときたものだから余計にだろうね。ま、その発明ごときでこれだけ様変わりする世界も世界だけど。」
「なんだよ…それ。」
「イチカ。この世界…好き?」
「はあ? なんだよ、急に…。」
「…俺は…、大嫌いだよ。」
ツムグは、フッフッフッと笑い、お茶をすすった。
イチカは、そんなツムグの笑い声に背筋が寒くなった。
***
一方、千冬は、ラウラが収容されている独房の前で目を見開いていた。
「なん…だと?」
「はい。」
「おまえを…第二の検体するだと?」
「第一検体イチカの続く、臓器移植の実験検体、私がこれ以上の失態を犯すならば、軍を退役後にそのようにすると…。」
「…っ…、なりふり構わずか…。」
「デザインベビーである私には、それ以外に使い道は無いと…。」
それを聞いた千冬は、ギリッと拳を握った。
イチカのみならず、ラウラまで奪う気か!っという怒りが彼女の中にこみ上げていた。
「教官に救われたこの命…、未来の礎になるのならば、私は構わないと考えています。」
「ボーデヴィッヒ! 私は、そんなことのために…!」
「私が代わりに検体として成功すれば、あなたの弟である彼を救うことも可能かも知れません。」
「なっ…。」
「…そうすれば…、教官はもう…夢にうなされることもないはずです。」
「ラウラ…。そんなことを…言うな!」
千冬の目に涙が浮かびかけていた。
「私は、浅はかでした…。あなたを苦しめるモノを排除すれば、あなたが解放されると勘違いしてしまい、あなたの大切な人の命を奪いかけたてしまいました。もっと違う方法で報いることができることをひとつも考えずに。」
「もう言うな!」
「私は…、教官の弟を救います。」
「やめろ、ラウラ! 頼むから…やめてくれ!」
「はいはーい、お涙ちょうだいのところ悪いけど、それはできないね。」
「! 椎堂ツムグ!?」
音も無く、ツムグが出現し二人は驚いた。
「例え君が検体になったところで、イチカは解法はされないよ。」
「なんだと!?」
「ここでは言えないけど……、色々とあってね。イチカは…、まだ返せない。」
「どういうことだ!」
掴みかからんばかりに迫ってきた千冬に、ツムグは、クスクスと笑った。
「色々と…あるのさ。」
「だから、それはどういうことなんだ!?」
「それは、まだ言えない。それを言ったら…、イチカは死ぬかもしれないよ?」
「なっ…。」
「そういうわけだから、君達のやろうとしていることは無駄だよ? 分かった?」
そう言うとツムグは、消えた。
「……私では…教官を救えないのか…。」
ラウラが愕然とした様子で呟いた。
「……頼むラウラ。お前まであの狂ったプロジェクトの犠牲にしたくない。」
「教官…。私は、どうすれば…。」
「頼むラウラ…。私は、お前まで失いたくないんだ。」
「教官…。ありがとうございます。」
独房の中で膝をついたラウラは、右目から一滴の涙を零した。
ラウラ改心?
いや…単に千冬を助けたくて、あんな暴挙をしてしまったのは、やり方を知らない子供も同然だったからというのもある?ってことで。
ラウラを第二の検体にするというのは、ラウラのせいで肩身が狭いドイツがラウラに罪滅ぼしをさせる意味です。
死刑囚とか…検体の候補はたくさんいるけど、ISとの相性とか試験管ベビーだとかで実験検体としてはイチカよりも好き勝手出来る?
でも、それをツムグ良しとしなかったのには…、ある理由がありますが、まだ内緒です。
実は、守代も関わっています。
なお、守代は、努力型で成り上がってきた科学者で、天災の束が嫌い。