今回は、ラウラへの謝罪と、イチカがツムグに脅される。
ラウラが目を覚ました後……。
「ごめん! 俺が悪かった!」
「な、なんだ!?」
イチカから、土下座で全力で謝られて困惑した。
イチカの隣には、千冬もいた。
ラウラは、謝られた理由を聞くことになった。
曰く、椎堂ツムグが、ラウラが第二の検体にされるのを回避する大きな不測の事態を引き起こす方法を遠回しに提示し、それに乗ったイチカがラウラをわざと挑発してVTシステムを発動させたということだった。
シュヴァルツェア・レーゲンに、VTシステムを積んでいたことはラウラも知らなかったことで、彼女の感情に反応して発動するよう仕込まれていたらしい。
千冬のデータをもとに性能を無理矢理に底上げされていて、教員部隊を全員倒した上に、アリーナのシールドを破壊寸前にやったことは、条約を破ったドイツ本国に追求され、ラウラを椎堂ツムグの臓器移植の第二の検体にする話どころではなくなった…ということになった。
ドイツは、ラウラに現状維持と、落ち着くまでIS学園に在籍することを指示した。
ラウラの愛機っであったシュヴァルツェア・レーゲンは、コアを回収され、VTシステムを取り除いたうえで修理されることになった。
「そうだったのか…。」
「本当に、ごめん!」
「いや、いい…。イチカは、私のためにやってくれたのだろう?」
「ボーデヴィッヒ…。」
「ラウラ…と呼んでくれないか?」
「…分かった、ラウラ。本当にごめんな。」
「謝らないでくれ。私はむしろ感謝しているのだから。」
「…そっか。」
「しかし…。」
「それ以上言うな、ラウラ。」
「教官…。」
「おまえが第二の検体になったところで、イチカは解放される見込みはないのだ。」
「…ですが…。」
「私は…、おまえまで失いたくはない。」
「……はい。」
ラウラは、泣いた。
イチカは、とりあえずラウラが自分と同じにならずにすんだことに、ホッと胸をなで下ろした。
***
イチカが保健室を出ると、入り口の横にツムグが立っていた。
「めでたしめでたし?」
「…結局、あんたの思い通りになっちまったな。」
「まあね。でも、乗ったのはイチカだよ?」
「…ちっ。」
イチカは、舌打ちした。
「今回のことで、イチカの評価も上がったし。」
「何の評価だよ?」
「IS装者としての、商品価値がね。」
「なんだよ、それ…。」
「つまり、ホルマリン漬けにするには勿体ないってこ・と。」
「っ!」
「あれだけ各国の要人達の前で、正規軍人のラウラ・ボーデヴィッヒとやり合ったんだ。イチカの評価はうなぎ登りだよ。」
言葉を失っているイチカの右肩に、ツムグが手を置いた。
「これもひとつの生き延びる手段だよ。」
ツムグは、そう言って笑い、ツムグは手を離した。
「あとは……、アレが完成すればいいんだけどなぁ。」
「…あのさ。」
「なに?」
「あんたや、守代さんが言ってる…、アレってなんだよ?」
「それはまだ秘密。」
「なんだよそれ。俺について関わっているんだろ? あんたがラウラを検体にしたくない理由も、そこにあるんじゃないのかよ?」
「……イチカ。」
「っ…。」
ツムグの顔から笑みが消え、冷たい声で名前を呼ばれ、イチカは、たじろいた。
「あまり詮索すると…、速攻でホルマリン漬け行きになるかもしれないぞ?」
「さ、さっき俺の価値が上がったって…。」
「例えどんな凡人だろうと英雄だろうと、一歩何かを踏み間違えれば消される。消された後は、適当な理由付けや憶測とか、故意の改ざん、情報操作、時間で、人間は簡単にそいつを忘れるんだ。永遠に。そうなりたくなかったら、踏み間違えないように気をつけることだよ。ただのホルマリン漬けAなんて名称付けられたりしたくなかったらね。」
ツムグは、そこまで言うと、微笑み、青ざめているイチカの頭をくしゃりとなで回した。
「ま、俺としては、イチカにはそうなって欲しくないんだけど。」
「……。」
「頑張って、生きようね。イチカ。」
ツムグは、ニッコリと笑ってそう言ったのだった。
イチカは、頭の上にツムグの手を置かれたまま、俯き微かに震えていた。
ツムグと守代達がやろうとしていることは、世界機構側が掲げている臓器移植計画と同時に行っているある実験と開発です。
イチカを解放できないのは、それに理由がある。それは後々。
ツムグが脅しておりますが、彼としてはイチカを推薦したのは気まぐれだし、天秤に例えると、少しだけイチカに生きてて欲しいに傾いているだけです。
実験と開発の引き継ぎは、別の検体に受け継がせることは、実は可能。ただ費用と手間がかかる。ならイチカが生きてた方が得ってだけ。
イチカが怖がっているのは、過去にツムグがそうやって人を物理的にも社会的にも殺しているのを目の当たりにしているからです。