IS×椎堂ツムグ、ネタ   作:蜜柑ブタ

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前の話の脅しの後のイチカ。

これ、ハーレムタグいるか?

嘔吐表現あり、注意。


第二十一話  泣くイチカ

 

 タッグトーナメントは、結局一部の組みを残して中止となった。

 試合会場の修理も必要であったので、続行は不能だと判断されたのだ。

 

 ところで、タッグトーナメント以来、イチカを取り巻く環境がちょっと変わった。

「……視線がうるせぇ。」

「いいじゃーん。嫌われるよりはさ。」

 そう、正規軍人のラウラ・ボーデヴィッヒと凄まじい激闘をしたイチカは、IS装者の技量の高さを認められ、羨望のまなざしを受けることになったのだ。

 まあ、中には嫉妬の念もあったが、戦っても勝てないと理解しているのか少数だ。あと、ツムグが常にイチカの近くにいるせいもあり、よくある校舎裏への呼び出しとか、女尊男卑の思想者達が絡んでくることもなかった。そういう意味では、ちょっとだけ、ほんとちょっとだけ、イチカはツムグには感謝していた。

「イチカ、最近調子良いよね~。」

「そういえば…そうか。」

 最近、吐き戻してない。入学当初の頃に比べれば随分と体調は良かった。

「ここ最近食べてる、箒ちゃんの手料理のおかげかな? 愛情たっぷりだもんねぇ。」

 ツムグがコテッと首を傾げて聞いた途端、イチカは、気恥ずかしそうに身をよじった。

 手料理を食べても良いという許可をもらって、箒から唐揚げをもらって以来、箒からよく手料理の差し入れをもらっていた。

「いや~、可愛いねぇ~。」

「あんたに言われると鳥肌立つ!」

「セシリアちゃんも、頑張って食べれる料理作る努力してるし、鈴音ちゃんも酢豚の味がどんどん良くなるし。いや~、モテる男は良いね。」

「うるせぇ!」

「顔真っ赤かだぞ~。」

「あっ…。」

 イチカは慌てて真っ赤になった自分の顔を押さえた。

「あと…。」

「イチカ! 今日も特訓するならば私が相手になろう!」

「ラウラ…。」

「ううん。ボーデヴィッヒさん、今日は僕がするよ。ボーデヴィッヒさん、昨日もその前もだったじゃん。」

「デュノア…。」

「IS部隊をまとめあげる私の方が適任だ。」

「でも、僕だってタッグトーナメントのためにイチカの相方を務めたんだよ? それに、ボーデヴィッヒさんばっかり独り占めするのは良くないよ?」

 なんか、見えない火花が二人の間に飛び散っているような…。

「モテる男は、つらいね~。」

「うるせぇ…。」

 なんでこうなった…。

 っと、イチカは頭を抱えた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 授業が終わり、イチカは、トイレに入った。

「う…、げぇぇぇ!」

 そして盛大に吐いた。

「はあ…はあ…。」

 便器に手を乗せ、倒れそうになる身体を支える。

 なお、ツムグは、トイレの出入り口にいる。

 吐き戻さないなんて嘘だ。

 ここ最近…、つい先日ツムグに脅されてから、イチカは、人知れず、悟られないように吐き戻しを繰り返していた。

 胃の内容物を全部吐き出し、胃液まで吐き出した。

 原因は、恐怖によるストレスだった。

 最初こそ憂鬱だったIS学園での生活も、姉と幼なじみ達との再会や新たな出会いを通じて少しづつ楽しくなってきた。

 しかし、自分が置かれた状況は、一歩踏み間違えれば、ホルマリン漬けという過酷なものだと自覚させられてしまった。

 自分が生かされている理由など、ツムグの推薦と言う名の気まぐれという実に危ういものだということを理解してしまったから…。

「……たく…ない…! 死に…た、く…ない!」

 イチカは、泣いた。

 少し前まで、死んだ方がマシだと思っていた頃もあった。

 だが今は違う。

 自分を大切にしてくれる身内との再開、そして仲間との新たな出会いが、イチカの死にたくないという気持ちを強くした。

 イチカは、盛大に大声を上げて泣いていた。

「……好きなだけ泣くといいよ。」

 トイレの出入り口の横に立っていたツムグは、イチカの大声を聞きながらそう呟き、その場に座り込む。

「フフ……、ちょっと可哀想だったかな?」

 そう言ってニタニタ笑っている顔に、同情のどの字もなかった。

「本当に、酷いですね。」

「あれ? 守代ちゃんじゃん。」

 そこへ守代がスタッフ達をつれてやってきた。

「気づかないと思いましたか?」

「ううん。そんなことはないよ。昨日の血液検査結果が良くなかったんでしょ?」

「そうです。まったく、嘘をついて嘔吐しているなんて…、きちんと伝えてもらわないとこちらも対処できないのに。」

 守代は、イチカの泣き声が聞こえてくるトイレの方を見た。

「それと、あまり感情を爆発させないようにしてもらいたいですね。心臓に負荷かかるので。」

「それは、人間なんだから無理だよ。」

「…そうですか。」

「今は、好きなだけ泣かしてあげてよ。バレてるってことがバレたら、ショック受けるだろうから。それこそ心臓に悪い。」

 ツムグは、守代を見上げながらそう言ったのだった。




一見調子良さそうだったイチカだが、実はツムグから脅しの結果、調子悪くなってた。
下手に身内と再会できたことや、知人が増えたことが相当に影響しています。
そして、そんなイチカを可哀想だとも思わないツムグ。
守代は、あくまで仕事として対応しているだけですが、まったく何も思わないわけではありません。彼女が冷静で冷酷に振る舞っているのは、仕事の関係上やそれまでの人生経験から自ら感情を抑止しているからです。

臨海学校…どうするかな?

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