序盤、ヒロイン達が、徐々にではあるがツムグに対して敵対意識を持ち始める?
「どうした、イチカ!?」
「…別に。」
「何が別にだ! 目が腫れているぞ!」
「それに、またやつれていますわ。」
箒とセシリアに指摘され、イチカは押し黙った。
「まさか…、奴に何かされたのか?」
偶然にもズバリ指摘した箒。イチカは、思わずドキッとしてしまい、胸を押さえた。
それを見て箒は、怒りで顔を歪めた。
そして竹刀を出すと、教室の後ろの方でこちらを見ているツムグを睨み、殴ろうと思って走ろうとしたが、それをセシリア、ラウラ、シャルロットが止めた。
「いけませんわ!」
「落ち着け、篠ノ之!」
「落ち着いて!」
上から順に、セシリア、ラウラ、シャルロットだ。
「止めるな!」
「あの男のバックは…、いえあの男自身がとてつもない権力を握っているうえに、イチカさんの命を握っているのですよ! あなたを握りつぶすことも容易いし、もし何かあればイチカさんの命が…。」
「っ!」
「理解があってよかったよ。」
ツムグは、そう言ってにやりと笑った。
「貴様!」
「よせよ、箒。」
「イチカ!?」
「…頼むから。」
イチカが止めたので信じられないとイチカを見た箒だったが、イチカが泣きそうな顔をしていたので目を見開き、再びツムグを睨んだ。
ツムグは、どこ吹く風と、ピーピーと口笛なんぞを吹いていた。
箒は、ギチギチと竹刀の持ち手が軋むほど力を込めて怒りを露わにする。
やがて授業開始を伝えるチャイムが鳴り、山田が入ってきて、竹刀を手にしている箒を見て驚いて声をかけたことで箒はハッと我に返った。
「授業だよ~。」
「くっ…。」
ツムグに言われ、箒は再び怒りがこみ上げたが、なんとか抑えた。
セシリア達も、嫌なモノを見る目でツムグを見ていた。
***
イチカは、机の上でぐた~っとなっていた。
手には、臨海学校を知らせるプリント。
世界機構の一大プロジェクトの第一検体とはいえ、学校行事は不可避だ。いや、むしろ無理矢理にでも参加させられてしまう。日常生活も含めやることなすことがすべて実験のデータになるのだからだ。
ああ…、自分には自由など許されないのだっと、実感しイチカは机に突っ伏し呻いた。
守代達に内緒で吐いてたことがバレてから、説教はあったし、ナノマシンの一部取り替えがあったし…、精神面でも体調面でもかなりキていた。
イチカは、涙ぐみそうになり、慌てて袖で目をこすった。
「いや~、一大イベントだね~。」
ツムグが近くに来て、突っ伏しているイチカの頭に手をポンっと置いてそんなことを暢気に言った。
「うっせぇよ。人ごとだと思って…。」
ツムグの手を払い、身体を起こしたイチカは悪態を吐いた。
「イチカが行くということは、俺も行くことになるんだよ? 俺なりに楽しむよ。」
「あんたがいる限り、俺は楽しめねーよ。」
「ハハハハ。久しぶりに、兎が見られるかもしれないしね。」
「? うさぎ?」
「その日なれば分かるよ。」
ツムグがこう言うときは、だいたい嫌なことが起こる前触れだ。
ツムグが予知能力者だということは、知られている。
近い未来から、遠い未来まで見る。その的中率も極めて高い。ゴジラがいた頃などは、それを基準に戦いが行われていた記録が残っているぐらいだ。
イチカは、背筋が寒くなり、身震いした。
「あと、天使も見られるかも。」
「おい…。」
「あっ。安心して、別に死ぬって意味でのお迎えじゃないからさ。」
「あんた…何を“見た”んだよ?」
「別に。いつものことさ。」
ツムグは、なんてこと無いように言う。
「人が死ぬんじゃないだろうな!?」
ツムグの預言でもっとも的中率が高いのが、死に関わる預言だ。
死の預言だけは…、どうやっても回避できない。
「さて? どうだろうね?」
「はぐらかすなよ!」
「どうやったって、死は回避できないよ?」
「っ!」
「何らかの形で必ず成就されてしまう。それが死だ。今まで何度も、回避できる方法はないか、色んな人や、俺自身も検証したけど、意味は無かった…。」
ツムグは、肩をすくめた。
ツムグには珍しく、どこか暗い。
「ま、今のところ、イチカの死はずっと遠いよ。」
「…結局死ぬってことだろ。」
「死ぬよ。生きてれば、いつかね。それは普通の生き物なら同じだよ。俺以外はね…。」
「…あんたってどうやったら死ぬんだ?」
「さあ? それが分かったら誰も苦労はしないよ。」
そう言ってツムグは笑った。
ゴジラの話がチラッと出てますが、ゴジラはこのネタでは、南極に封印されています。経過年数20年ぐらい。
死の予言の回避が出来ないというのは、ゴジラ対エヴァンゲリオン(仮)の時でも語っています。
あと、ツムグは、臨海学校で起こることをすでに知っています。